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ノンブロッキング処理を味方に:業務アプリ開発で活きる「イベントループ設計」の実践入門

はじめに:なぜ今「イベントループ設計」に注目すべきか

Webアプリケーションや業務システムの開発において、非同期処理の設計は年々重要性を増しています。特に「ユーザーからの入力」「外部APIとの連携」「バッチ処理」など、リアルタイム性や同時性が求められるシーンでは、適切なイベントループ設計がシステムの保守性と応答速度を大きく左右します。

この記事では、これから受託開発を検討している企業担当者や、業務システムを刷新しようとしている現場リーダーに向けて、「イベントループ」によるノンブロッキング処理設計の基本と、具体的な業務ユースケースでの活用法を解説します。

非同期処理の重要性とイベントループの基本

業務アプリにおける非同期処理の典型シーン

業務アプリでは、以下のような処理が非同期対応を要する代表例です。

  • ファイルアップロード/ダウンロード処理
  • PDFなど帳票生成のバックグラウンド処理
  • 顧客管理画面におけるリアルタイム検索補完
  • 外部サービス連携(CRM/LINE/チャット連携)
  • 管理画面での一括CSV処理やインポート作業

これらの処理は、待ち時間がユーザー体験を損なう要因になるだけでなく、同期的な設計だとリソースの無駄遣いにもつながります。

イベントループとは何か?

JavaScriptやNode.js、Pythonのasyncio、Goのgoroutineなど、モダンな開発言語は「イベントループ」ベースでの非同期処理設計を可能にしています。

イベントループとは、処理の順番を「時間」ではなく「イベントの発生」によって制御するプログラミング手法です。すべての処理は、イベントキューに入り、順番に実行されます。非同期処理の完了通知もこのループ内で制御されるため、処理ブロックが発生しません。

イベントループを業務システム設計に活かす視点

同期設計の落とし穴:一括処理が重たくなる瞬間

たとえば、顧客データの一括インポート画面でCSVを読み込む処理を同期で実装してしまうと、画面がフリーズするだけでなく、タイムアウトやブラウザクラッシュのリスクを抱えます。ここで「非同期でイベント駆動的にファイルを分割し、段階的に処理を返す」ことでUXと安定性を同時に確保できます。

イベントの粒度設計が保守性を決める

イベントループベースの設計では、「どんなイベントを定義するか」が設計の核となります。たとえば:

  • UploadFileStarted
  • UploadChunkReceived
  • UploadCompleted
  • UploadFailed

といったイベント単位で業務ロジックを切り出していくと、状態遷移が明確になり、開発者間での認識ずれも減ります。

実務に役立つイベントループ構成のサンプル

Node.jsによるバックエンド非同期処理

Node.jsではイベントループを活かした非同期I/Oが基本です。たとえば以下のように、CSVファイルを1行ずつ読みながらDBに反映する処理が構築できます。

const fs = require('fs');
const readline = require('readline');

async function processCSV(filePath) {
  const rl = readline.createInterface({
    input: fs.createReadStream(filePath),
    crlfDelay: Infinity
  });

  for await (const line of rl) {
    await processLineToDatabase(line); // DB登録を非同期で実行
  }
}

Python + asyncio でバックグラウンド業務処理

import asyncio

async def fetch_data(client_id):
    await asyncio.sleep(1)
    return f"Data for client {client_id}"

async def main():
    clients = ["A", "B", "C"]
    tasks = [fetch_data(c) for c in clients]
    results = await asyncio.gather(*tasks)
    print(results)

asyncio.run(main())

複数タスクを並列実行しながらも、リソース消費を抑えて結果をハンドリングできます。

設計で考慮すべき運用上の注意点

エラーハンドリングの分散化リスク

イベントベース設計は、非同期で処理が分散するぶん、エラー検知が難しくなりがちです。ログ設計や通知設計を最初から入れ込むことが重要です。例:

  • 各イベントの成功/失敗をログで出力
  • 想定されるエラーコードごとのアラート分類
  • Slackやメールとの通知連携

デバッグとトレースの難しさ

状態が明示的に管理されていない場合、イベントの流れが複雑化し、原因究明に時間がかかることがあります。対策として:

  • 状態遷移図やイベントマップを設計初期から整備
  • OpenTelemetryやDatadogでのトレース実装

イベントループ設計を受託開発で活かすために

イベントループ設計は、単に技術的な選択肢というよりも「現場の業務体験をなめらかにするための武器」です。開発会社に依頼する際には、以下の観点で相談するのがおすすめです。

  • ユーザーの操作が止まらない設計にしたい(応答性重視)
  • 同期処理がボトルネックになっている部分を再設計したい
  • 状態遷移を明示的に設計して、チームの開発認識を揃えたい

まとめ:非同期とイベント設計で、業務システムはもっと強くなる

イベントループ設計は、複雑なアプリケーションを「分かりやすく・止まりにくく・拡張しやすく」保つための実践的な戦略です。

特に受託開発においては、業務要件を正確に捉えたうえで「どこをイベント化し、どこを非同期化すべきか」を見極める力が求められます。

今後のシステム開発では、単に機能を積むのではなく「どう反応するか・どのタイミングで処理するか」を設計する視点が、保守性と拡張性の鍵を握る時代になっていくでしょう。

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