ローコード×フルスクラッチ徹底比較!開発会社選び・費用相場・発注ポイント完全ガイド

はじめに:ローコード×フルスクラッチ時代の“基礎知識”をアップデートしよう
生成 AI の隆盛、SaaS の加速度的普及により「すべてをフルスクラッチで書く」時代は終わりつつあります。一方で、大規模な業務システムではカスタムロジックや複雑なデータ統合が不可欠です。本稿では ローコード/ノーコード と フルスクラッチ を組み合わせ、システム開発会社と共創しながら“ちょうど良い”アーキテクチャを組むための最新ナレッジを徹底解説します。キーワードは システム 開発会社 選び方 予算 費用 相場 発注──発注担当者が最初に読むべき完全ガイドです。
1. ローコード・ノーコードとは何か──定義と最新動向
ローコード開発とは、ドラッグ&ドロップ UI やテンプレートを用い、ソースコードを最小限に抑えてアプリや業務フローを構築する手法を指します。Microsoft Power Platform、OutSystems、Mendix などが代表例です。ノーコードはさらに抽象度が高く、ほぼプログラミング不要で実装できるツール群を指します。共通点は「開発スピードが劇的に速い」ことですが、複雑なビジネスルールや高トラフィックが求められる場合はフルスクラッチの力も欠かせません。
2. フルスクラッチ開発の強みと弱み──なぜ今も必要か
フルスクラッチは要件に 100 % 対応可能で、OSS や最新フレームワークを自由に選べる点が魅力です。たとえば大規模 Web システム開発やレガシー基幹のラップ&リプレースでは、細かいパフォーマンスチューニングやセキュリティ要件を満たすために不可欠です。反面、開発期間・費用が膨らみやすく、技術的負債のコントロールが課題になります。
3. ハイブリッド開発戦略──“80:20 ルール”で設計する
最適解は「80 % をローコードで作り、残る 20 % をフルスクラッチで差別化する」ハイブリッドモデルです。業務フロー・マスタメンテはローコード、エッジケースや独自アルゴリズムはコードで実装――と役割分担することで、開発スピードと拡張性のバランスを取れます。
4. 予算・費用相場を具体化する五つのステップ
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機能をローコード可・不可で分類
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工数見積りを「ローコード人日」「スクラッチ人日」に分割
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ライセンス費(月額/年額)とインフラ費を積算
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運用保守を “SaaS 管理”と “コード保守” に分けて算出
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予備費 15 % を見込む
システム開発費用は「初期 300 万+月額 15 万」が小規模ローコード案件の最安ライン、ハイブリッド型中規模案件では「初期 2500 万〜6000 万+月額 80 万〜」が相場です。
5. システム開発会社の選び方──10 の比較軸
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実績:ローコード導入事例とフルスクラッチ統合実績
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プラットフォーム取り扱い:複数ローコード SaaS に精通しているか
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アーキテクチャ力:マイクロサービスやイベント駆動設計の経験
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コスト構成の透明性:人日単価・ライセンス費を明確に提示
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PoC 提案力:小規模スプリントで ROI を示せるか
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PM 手法:スクラム/ウォーターフォールの使い分け
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保守 SLA:稼働率 99.9 %、MTTR 1 h など明記
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セキュリティ認証:ISMS、SOC2、ISO/IEC27017 の有無
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内製化支援:ローコードの社内展開をサポート
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多言語・多通貨対応:グローバル展開視野の可否
6. 要件定義の落とし穴──“作ってはいけない機能”を早期特定
要件定義では「作らない機能リスト」が極めて重要です。ローコードで済む箇所までスクラッチ要件にしてしまうと、開発費用は倍以上に跳ね上がります。たとえば、CSV インポートや通知メールテンプレートなどはプラットフォーム標準機能を活用し、カスタマイズは最小限にとどめましょう。
7. プロジェクト管理──ローコード版 WBS とベロシティ計測
ローコード開発は UI 変更が速いため、従来の WBS では進捗が見えづらくなります。ストーリーポイントよりも 画面数 × 機能タイプ でベロシティを測ると精度が上がります。また、スクラッチ側は通常の CI/CD・自動テストを適用し、ローコード側は「環境同期」「バージョン管理」の運用手順を整備することが不可欠です。
8. 品質保証(QA)戦略──ローコードとコードのテスト分離
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ローコード領域:シナリオベースの自動 E2E テスト (Playwright)
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フルスクラッチ領域:ユニット→統合→負荷テスト
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結合領域:API コントラクトテスト
これにより「ローコード更新でスクラッチ部が壊れる」リスクを最小化します。
9. セキュリティとコンプライアンス──SaaS 依存リスクをどう抑えるか
ローコードプラットフォームは優れたガバナンス機能を備えていますが、顧客情報や機微データを扱う場合は データ隔離 と 暗号化キー管理 が必須です。自社 Key Vault を BYOK (Bring Your Own Key) 方式で接続できるか確認しましょう。
10. 運用保守──“プロダクトオーナーシップ”の社内定着
導入後は業務担当者がローコード画面を自律的に改修できる体制に移行すると、保守コストを 40 % 以上削減できます。開発会社には「運用ドキュメント」「動画マニュアル」「ローコード研修」を納品物に含めるよう交渉しましょう。
11. 開発費用シミュレーション──モデルケースで学ぶ
項目 | ローコード比率 80 % ケース | スクラッチ比率 80 % ケース |
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初期開発費 | 3000 万 | 6500 万 |
ライセンス (年) | 120 万 | 0 |
保守費 (年) | 200 万 | 450 万 |
3 年総コスト | 3960 万 | 7850 万 |
TCO で見ると 3 年間で約 3890 万の差。費用対効果が明確になるため、経営層合意が取りやすくなります。
12. 発注前のチェックリスト──必須 12 項目
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見積書の人月単価と内訳
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ローコードライセンスの値上げリスク
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運用時の追加費用オンオフ (API コール課金など)
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データ移行計画の有無
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SLA とペナルティ条項
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機能範囲外作業の料金規定
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ソースコード・設定の権利帰属
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外部サブプロセッサ一覧
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テスト証跡の提出形式
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教育コンテンツの提供範囲
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内製化支援オプション料金
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保守切替時のエクスポート可否
13. 失敗事例から学ぶ──よくある三つの落とし穴
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要件肥大化:PoC 成功後に全社横展開を急ぎ、プラットフォーム制限に詰まる
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SaaS ロックイン:ベンダー変更時にデータ移行コストが想定の 5 倍
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スキルギャップ:内製チームにプラットフォーム知識がなく保守が停滞
14. まとめと次の一手──PoC を 4 週間で走らせよう
まずは小規模業務を対象に PoC を実施し、KPI とコスト構造を可視化しましょう。その結果を元に、ハイブリッド開発で最大の ROI を生むスコープを決定する――それが成功への最短ルートです。