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マイクロサービス移行開発ノート:分散トランザクションと運用効率化の教訓

背景とプロジェクトの概要

当社では従来モノリシックなECシステムを運用していましたが、機能追加のたびに影響範囲が拡大し、リリースリスクと開発コストが急増していました。特にシステム全体の再起動が必要になる案件では、ダウンタイムが長時間に及び、売上損失や顧客離反を招くケースが頻発していました。そこでプロジェクトマネージャーの判断でマイクロサービス化を決定し、外部の開発会社に発注。予算は初期開発に約1,000万円、運用保守向けに年間約300万円を確保しました。開発会社選びは「Spring Boot/Docker/Kubernetesの実績」「予算感の明示」「相場比較が可能な詳細見積」を重視し、3社から相見積もりを取得したうえで最適なベンダーに発注しています。本記事では、要件定義から移行完了までの開発ノートとして、分散トランザクション問題への対処やCI/CD再設計、モニタリング強化、チームコミュニケーションの工夫など、実際の開発経験から得られた教訓とノウハウを時系列で解説します。読者の皆さまが自社プロジェクトで同様の課題に直面した際の参考となれば幸いです。

分散トランザクション問題の顕在化と初期対応

移行フェーズの初期段階で最も大きな障壁となったのが、複数サービスにまたがる一連の業務処理におけるデータ整合性確保です。注文サービス、在庫サービス、決済サービスが分散環境で連携する際、従来のデータベーストランザクションが使えず、部分的に失敗したトランザクションのロールバックや再試行設計が必要になりました。具体的には以下の課題が顕在化しました。

  1. 二相コミットの使いどころ

    • 信頼性は高いが、パフォーマンス低下とデッドロックリスクを招く

  2. Sagaパターンの導入検討

    • 各サービスが独立して完了・補償トランザクションを実装する必要がある

  3. メッセージング基盤選定

    • KafkaやRabbitMQを比較し、相場感を踏まえつつパブリッシュ・サブスクライブモデルを採用

  4. エラー回復設計

    • 一部サービスからの応答遅延やメッセージドロップを考慮した再試行ロジック

当初、二相コミットによる実装を試みましたが、開発工数とミドルウェア費用が予算を超過する見込みとなったため、Sagaパターンへ方向転換。開発会社と協議のうえ、Spring Cloudの管理対象トランザクション機能を利用し、補償処理を自動化することで、発注先の工数を抑制しつつ安定した整合性を実現しました。

CI/CDパイプライン再設計による効率化

分散サービスを多数開発するにあたり、既存のモノリシック向けCI/CDパイプラインではビルド時間が肥大化し、1回のパイプライン実行で20分以上を要する状況でした。このままでは開発速度が著しく低下し、予算内での納品が困難になるため、以下の施策を実施しました。

  • マルチプロジェクト構成

    • 各マイクロサービスを独立リポジトリに分割

    • 共同ライブラリはGit SubmoduleまたはPackage Registryで共有

  • 並列ビルドの活用

    • Jenkinsのパラレルステージ機能で、テストとビルドを同時実行

    • ビルドサーバー台数を増設し、ピーク時の待機時間を削減

  • キャッシュ活用

    • Docker Layer Cacheを使い、依存関係ダウンロード時間を70%削減

    • MavenやnpmのローカルキャッシュをCIノード間で共有

  • ステージング環境最適化

    • Canaryリリース用のブルーグリーンデプロイメントを組み込み

    • 自動Rollbackスクリプトを用意し、リスクを最小限に

これらの再設計により、パイプラインの平均実行時間は20分→6分へ短縮。工数削減効果は月間約40時間、ランニングコストに換算すると約50万円相当の価値を創出しました。運用保守契約時には、これら改善成果をKPIとして定義し、追加の予算交渉や費用相場の調整に活用しました。

モニタリング強化と運用自動化

マイクロサービス化に伴いサービス数が増えると、従来の単一ログ監視では問題の原因特定に時間がかかります。そこで運用フェーズでは以下を実施しました。

  1. 集中ログ収集基盤

    • ELKスタック(Elasticsearch、Logstash、Kibana)を導入し、サービス横断のログ分析を実現

    • フィールド標準化ルールを整備し、ログフォーマット統一

  2. メトリクス監視

    • PrometheusとGrafanaでレスポンスタイム、エラーレート、CPU/メモリ使用率を可視化

    • アラートルールをSLI/SLOに紐づけ、一定以上の逸脱で自動通知

  3. 自動復旧スクリプト

    • KubernetesのLivenessProbe/ReadinessProbe強化に加え、Pod再作成を自動化

    • 依存関係エラーはカスタムエントリポイントで検知し、再起動前にキャッシュクリア

  4. コスト監視

    • クラウドリソース利用量をタグ付けで集計し、月次で請求と照合

    • 無駄リソース(未使用のInstances、未消費のディスク)を自動削除するLambda関数を実装

これら取り組みにより、障害対応時間(MTTR)は平均1時間→15分に短縮。運用チームの工数は月間80時間→30時間に減少し、ランニングコストを約40%削減しました。開発会社への運用保守発注契約時には、「MTTR15分以下」「稼働率99.9%以上」をSLAに盛り込むことで費用対効果の妥当性を担保しています。

チームコミュニケーション強化策

マイクロサービス開発ではチームが分散しやすく、情報共有不足から仕様誤解や工数増加が起こりがちです。以下の施策でコミュニケーションを円滑化しました。

  • 定例超短縮スタンドアップ

    • 毎朝10分程度のスタンドアップで、進捗と障害ポイントを即時共有

  • ペアプログラミング導入

    • 複雑な分散トランザクション設計やCI/CD設定はペアで実装し、知見を共有

  • ドキュメント一元管理

    • Confluenceに設計書、運用Runbook、要件変更履歴を体系化

  • Slackチャンネル運用ルール

    • サービスごとにチャンネルを分け、通知Webhookを適切に設定

    • 質問テンプレートを用意し、「背景」「試したこと」「ログ抜粋」を体系化

  • レトロスペクティブ

    • 各スプリント終了後にKPT(Keep/Problem/Try)方式で振り返りを実施

    • 改善アクションをBacklogに登録し、進捗を可視化

これにより、要件定義段階の齟齬による追加費用発生が月平均20万円→5万円に低減。開発会社との協業もスムーズになり、発注前に合意した予算内でプロジェクトを完遂できました。

本番移行とカットオーバー手順

本番移行(カットオーバー)では、ダウンタイム最小化とリスク管理が最重要です。X社では以下の手順を踏襲しました。

  1. プレカットオーバーテスト

    • ステージング環境で本番データのスナップショットを用い、リハーサルを実施。

    • データマイグレーション処理の完了時間や、トランザクションの整合性をチェック。

  2. ロールバック戦略

    • 問題発生時は速やかに元システムに戻せるよう、DNS切り替えと旧システム並行稼働を想定。

    • ロールバック手順書を作成し、発注した開発会社と共同リハーサル。

  3. タスク管理

    • カットオーバー当日のタスクを30分刻みでBacklogに登録し、担当者を明確化。

    • キーとなるタスク(DBスクリプト実行、サービス起動、Smoke Test)は優先度を上げて監視。

  4. ステークホルダー連携

    • 経営層、ビジネス部門、CS部門、インフラチーム間で通知フローを整備。

    • 進捗報告はSlackだけでなく、緊急時は電話連絡網を用意し二重体制。

  5. カットオーバー後のモニタリング

    • 初回1時間は5分毎、以降4時間は15分毎に主要KPI(エラー率、レスポンス時間)をチェック。

これら手順のおかげで、予定ダウンタイム30分のうち実際の停止時間はわずか18分に抑制。発注範囲の明確化と開発会社選びが成功要因でした。

トラブルと対応事例

移行後最初の週には予期せぬトラブルも発生しましたが、迅速な対応で影響を最小限に抑えました。

  • 事例1:注文サービスの認証トークン切れ

    • 原因:APIゲートウェイのキャッシュTTLが長く、古いトークンを参照

    • 対応:キャッシュ設定をTTL=60秒に短縮し、開発会社へ発注して即時リリース

  • 事例2:在庫同期処理のデータ欠損

    • 原因:分散トランザクションのSaga補償処理漏れ

    • 対応:補償フローに再試行ロジックを追加し、失敗ログを自動Outbound

  • 事例3:CI/CDパイプラインのスクリプトエラー

    • 原因:依存Node.jsバージョンの不一致

    • 対応:Dockerイメージを固定バージョン化し、ビルドキャッシュをクリア

これらトラブル対応を通じて学んだことは、共通ライブラリのバージョン管理と運用マニュアルの厳格化です。追加費用を抑えるため、要件定義段階で発注コストと相場を正確に見積もり、メンテナンス契約に含めることが肝要でした。

スケーラビリティテストの実施方法

サービスの負荷増加に備え、スケーラビリティテストは欠かせません。以下のプロセスで検証しました。

  1. 負荷試験ツール選定

    • Gatlingを採用し、シナリオごとの同時接続数やリクエストレートを定義。

  2. 性能目標設定

    • レイテンシ平均200ms以下、エラー率0.5%以下をKPIに設定。

  3. テスト環境構築

    • 本番と同等スペックのKubernetesクラスターを暫定用として立ち上げ。

  4. 負荷試験シナリオ

    • 通常トラフィック、ピークトラフィック、バーストトラフィックを段階的に増加。

  5. オートスケール挙動検証

    • HPA(Horizontal Pod Autoscaler)がトリガーされる閾値をチューニング。

テスト結果では、ピーク時同時5,000クエリまでスケール可能であることが判明。開発会社への追加発注で得られたKubernetesチューニングノウハウを活用し、予算内で高可用性を実現できました。

セキュリティ監査とコンプライアンス対策

マイクロサービス化でエンドポイントが増えると、セキュリティリスクも拡大します。X社では以下を実施しました。

  • 脆弱性スキャン

    • SnykやTrivyをCIパイプラインに組み込み、イメージごとの脆弱性を自動検知。

  • 認証・認可強化

    • OAuth2.0/OIDC連携でAPIゲートウェイにアクセストークン検証を実装。

    • RBACポリシーを各サービスに明示し、Least Privilegeの原則を徹底。

  • データ暗号化

    • KMS連携で機密情報をVaultに保管し、アプリ側で動的に復号。

  • コンプライアンス準拠

    • GDPR要件を満たすため、個人情報ログの匿名化と保持期間設定をドキュメント化。

  • 定期監査

    • 年1回の第三者によるペネトレーションテストを発注し、報告書を経営層へ提出。

発注時には、これらセキュリティ対策の範囲と費用相場をRFPに明示し、追加予算が発生しないよう事前に合意しました。

成果評価とKPI管理

プロジェクト成功の指標として、以下のKPIを設定し、定量的に成果を管理しました。

  1. リリース頻度向上

    • モノリシック時:四半期に1回 → 移行後:月2回

  2. 顧客満足度(CSAT)

    • 問い合わせ件数:月平均150件 → 80件(47%削減)

  3. 稼働率

    • 99.5% → 99.95%

  4. 開発コスト効率

    • 人月工数:500人日 → 380人日(24%削減)

  5. ROI

    • 投資回収期間:1.8年 → 1.2年

これら数値を基に、次年度予算会議では追加投資(予算200万円)を承認。継続的改善とコスト効率の両立が可能な開発体制を構築できたと評価されています。

次期機能追加に向けた予算と費用見積もり

次期開発計画では、以下の機能追加を想定し、予算と相場を整理しました。

  • レコメンドエンジン連携

    • 機械学習モデルAPI開発:300~400万円

  • チャットボット導入

    • Dialogflow連携:200~250万円

  • 多言語対応

    • i18n化と翻訳管理:150~200万円

  • オフライン処理機能

    • バッチジョブ最適化:100~150万円

概算見積もりをテーブル化し、開発会社に発注依頼時に提示することで、予算オーバーのリスクを軽減。発注範囲と調整余地をあらかじめ合意することで、円滑なプロジェクト推進を図ります。

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