BUSINESS COLUMN
教える人によって内容が違う。そろえる範囲を決める
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同じ作業を教わっても、指導する先輩ごとに手順が違う。全員でそろえる範囲と個人の裁量に任せる範囲を線引きし、教育の土台を作る手順を示します。
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入社三か月の社員が、先輩に言われたとおりの手順で作業したところ、別の先輩から「そのやり方は違う」と指摘されました。本人はどちらに従えばよいか分からず、その場では黙っていました。同じことが何度か続き、確認の回数が減り、自己流で進めるようになっています。
教える内容が人によって違うのは、教える側の怠慢ではありません。手順が文章になっておらず、それぞれが自分の経験を伝えているためです。個人の責任にすると、教えることを引き受ける人がいなくなります。ここでは、そろえる範囲を決めて教育の土台を作る手順を扱います。
全部をそろえる必要はない
最初に線を引いておきます。作業のすべてを統一しようとすると、現場は窮屈になり、うまくいっている工夫まで潰れます。そろえるべき範囲と、各自の裁量に任せてよい範囲を分けてください。
そろえるべきなのは、安全に関わること、記録として残すこと、他の人が引き継ぐことになる部分、そして間違えると相手に影響が出る部分です。それ以外の、作業の順番や道具の持ち方といった部分は、結果が同じなら個人差があって構いません。この線引きを先に共有すると、統一への抵抗がぐっと減ります。

違いを集めるところから始める
そろえる前に、実際にどこが違っているのかを集めてください。教える側の人を集めて、同じ作業を説明してもらうと、違いはすぐに表面化します。会議室で三十分あれば十分です。
このとき、どちらが正しいかをその場で決めようとしないでください。まずは違いを書き出すだけにします。書き出すと、多くの場合は三種類か四種類に収まります。そして、そのうち一つか二つは、明らかに古い手順であることが分かります。集める作業自体が、教える側にとっても気づきの機会になります。
決める人を先に決める
違いが並んだら、どれを標準にするかを決めます。ここで多数決にすると、経験の長い人の意見が通りやすくなり、必ずしも良い手順が残るとは限りません。
決める人をあらかじめ決めておいてください。現場の責任者でも、その作業に最も詳しい人でも構いません。決める人が、それぞれの手順の理由を聞いたうえで一つを選び、選ばなかった理由も一言添える。この形にすると、選ばれなかった側も納得しやすくなります。決めた後で不都合が出たら、また決め直せばよいと伝えておいてください。

基礎の部分は外の教材に任せる
社内で教えるべきことと、外の教材で足りることを分けると、教える側の負担が軽くなります。業界に共通する基礎や、道具の基本的な使い方は、社内で一から教える必要がありません。
たとえば表計算の関数の使い方、文章の書き方、Webや制作に関わる基礎の技能。こうしたものは、体系だった教材のほうが正確で網羅的です。Web制作コースのような講座で基礎を共通に受けてもらってから、社内でしか教えられない部分に時間を使う。この分担にすると、教える側は自社固有の話に集中でき、教わる側も土台がそろいます。
標準を文章にして、写真か図を添える
決めた手順は、文章にしてください。口頭で伝えている限り、必ず揺れます。文章は長くなくて構いません。一つの作業につき、手順を番号で並べ、注意点を数行添える程度で足ります。
文章だけで伝わりにくい部分には、写真か図を添えます。道具の持ち方、機械の設定、画面の場所。言葉で説明すると長くなるものほど、一枚の写真が効きます。作った文章は、教える側の人に一度読んでもらい、抜けを指摘してもらってください。最初から完璧なものを作ろうとすると、いつまでも完成しません。
教える人の側を支える
内容をそろえても、教え方の巧拙は残ります。ここを個人の資質の問題にしないでください。教える機会が初めての人には、何を最初に見せ、どこで手を出し、どこまで任せるかの目安を渡します。
技能そのものを体系的に学び直す機会も有効です。【PyQ】if文から学ぶ、積み上げ式Python機械学習のように段階を追って学べる教材を使えば、教える側自身が「なぜそうするのか」を言葉にできるようになります。理由を説明できる人が教えると、教わる側の理解も速くなります。教える側への投資は、結果として全体の育成の速さに返ってきます。
教わる側が確認できる形にする
教わる側が「どちらが正しいのか」を聞ける相手を、一人決めてください。複数の先輩に囲まれた状態で、誰に聞けばよいか分からないのが、いちばん困る状況です。
決めた相手が不在のときの二番手も決めます。そして、標準の手順を書いた文章がどこにあるかを、初日に伝えてください。困ったときに自分で確かめられる状態があるだけで、新しく入った人の心理的な負担は大きく下がります。
半年後に、実態と照らす
標準を決めても、現場は動きます。半年後に、実際の作業が標準どおりか確かめてください。違っている場所が見つかったら、現場が間違っているのか、標準が実態に合っていないのかを見ます。
多くの場合、後者です。標準を作った時点では想定していなかった状況が出てきて、現場が対応した結果です。その対応が妥当なら、標準のほうを更新します。標準は守らせるものではなく、更新し続けるものだと考えると、運用が続きます。
よくある質問
Q. 統一すると現場の工夫が失われませんか
A. そろえる範囲を、安全、記録、引き継ぎ、相手への影響の四つに限れば、工夫の余地は十分に残ります。すべてを統一しようとすると窮屈になり、守られなくなります。線引きを先に共有してください。
Q. 教える人が「自分のやり方が正しい」と譲りません
A. どちらが正しいかを議論するのではなく、理由を聞いてください。理由を並べると、状況によって使い分けるべきものと、単に慣れによるものが分かれます。決める人をあらかじめ決めておくと、議論が長引きません。
Q. 手順書を作る時間がありません
A. 全部を一度に作る必要はありません。教える機会が最も多い作業を一つ選び、その手順だけを一枚にしてください。効果が見えると、次を作る時間が確保しやすくなります。
Q. 外部の教材を使う費用が出ません
A. 無料で学べる範囲から始める方法もあります。ただし、教える側の時間を金額に換算すると、教材の費用のほうが安く済むことが多いです。教育に何時間かかっているかを数えてから判断してください。
まとめ
教える内容が人によって違うのは、手順が文章になっていないからです。個人の責任にすると、教える役を引き受ける人がいなくなります。
まず、そろえる範囲を決めてください。安全、記録、引き継ぎ、相手への影響の四つに限れば、現場の工夫は残ります。
違いは、教える側を集めて説明してもらうと三十分で表面化します。その場でどちらが正しいかは決めず、まず並べるだけにします。
基礎の部分は外の教材に任せ、社内では自社にしか無い部分に時間を使ってください。教える側の負担が大きく減ります。
決めた手順は文章と写真で残し、聞ける相手を一人決める。そして半年後、標準のほうを実態に合わせて更新してください。
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