BUSINESS COLUMN
昇給の基準を先に決める。決めないまま離職と採用を繰り返す
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基準がない職場では声の大きい人から上がり、黙って働く人が先に辞めます。相場の調べ方、評価の三項目、上げ幅と時期、伝える順番を並べました。
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給料を上げてほしいと言われたときに、上げる理由も上げない理由も説明できない。小さな会社でいちばん多い状態です。
そのままにしておくと、辞めると言われてから慌てて上げることになります。引き止めのために出した金額は、他の社員にも必ず伝わります。基準を作るのは、公平にするためというより、離職と採用を繰り返さないためです。
基準がないと何が起きるか
決めていない職場では、声の大きい人から順に上がります。
黙って働いている人ほど据え置かれ、その人が最初に辞めます。抜けた穴を埋めるために求人を出し、新しく採る人には相場の金額を出す。結果として、残った人より新しく来た人のほうが高いという状態になります。
この逆転は必ず知られます。そして次の退職が続きます。
採用にかかる費用と、引き継ぎに使う時間と、その間に落ちる仕事の質。これを足すと、先に上げておいたほうが安かったと分かります。
基準を作る目的は、全員を上げることではありません。上げない人にも理由を説明できるようにすることです。

先に相場を知る
自社の中だけで考えると、必ずずれます。外の数字を見てから決めます。
見るのは、同じ地域・同じ職種の求人票に出ている金額です。公的な統計より、いま出ている求人のほうが実態に近く出ます。
自社の人が転職の相談に行けば、いくらの求人を紹介されるか。それが実際の相場です。ここから離れているほど、辞める理由が金額になります。
相場を上回る必要はありません。下回っているなら、その差を何で埋めているのかを説明できるようにします。休みの取りやすさ、通勤の短さ、任される範囲。どれかが無ければ、ただ安いだけです。
年に一度は求人票を見る時間を取ります。半日で足ります。
何で上げるかを三つに絞る
評価の項目を増やすほど、運用されなくなります。三つまでです。
多くの職場で機能するのは、できる仕事の範囲が広がったか、一人で判断できる範囲が増えたか、他の人が育ったか。この三つです。
売上の数字だけで決めると、数字を持たない持ち場の人が一生上がりません。事務や製造や検査の人が抜けたときの痛手を考えれば、その扱いが正しくないことは分かります。
勤続年数だけで上げるのもやめます。長くいるだけで上がると分かると、伸びる人から先に出ていきます。
三つの項目それぞれについて、上がった状態を一行で書きます。「一人で見積を出せる」「新人に教えられる」のような書き方です。抽象的な言葉を使うと、結局は印象で決まります。

上げ幅と時期を決める
基準だけ作って金額を決めないと、運用が始まりません。
決めるのは、見直しの時期を年に何回にするか、一段上がるといくら増えるか、上限をどこに置くか、の三つです。
一段の幅は、生活が変わる額にします。月に千円や二千円の昇給は、上げた側が思うほど効きません。むしろ「その程度か」と受け取られます。
上限を決めることも大事です。いまの持ち場でこれ以上は上がらないと分かれば、本人は次の段階に進むか、外に出るかを考えられます。伝えないまま頭打ちにするほうが不誠実です。
賞与で調整する形にすると、毎月の手取りは変わりません。生活の見通しが立たないという理由での転職は、賞与では止まりません。決めた幅が外と比べて妥当かは、【strategy career】
のようなキャリアの相談先が同じ職種に出している金額と並べれば分かります。
本人に伝えるときの順番
決めた基準は、上げるときだけでなく、上げないときにも使います。
伝える順番は、いまの評価、その理由、次に何ができれば上がるか、いつ見直すか。この四つです。
三つ目が本題です。「今回は上がりません」だけで終わると、その人は理由を自分で作ります。たいていは会社に不利な理由です。
面談は短くて構いません。三十分でも、この四つを話せば伝わります。
本人が納得できない場合は、その場で議論しません。次の見直しまでに何を見るかだけ合意して終わります。若い社員ほど数年先の像を持っていないので、人生単位のキャリアを、20代のうちに設計する【猫の手AGENT】
のように人生単位でキャリアを設計する相談先を本人が持っていると、この面談も具体的になります。
制度にする前に運用を試す
きれいな規程を先に作ろうとすると、たいてい途中で止まります。
まず、いまいる社員を三つの項目で並べてみます。紙一枚で足ります。この時点で、明らかに低すぎる人が何人か見つかります。
そこを先に直します。制度が完成するのを待つ必要はありません。
一年運用してみて、続けられそうなら就業規則に書きます。書き方や不利益変更の扱いは社会保険労務士に確認してから進めてください。
制度が無いこと自体は問題ではありません。説明できないことが問題です。紙一枚から始めます。
一度上げた金額は下げられないと考えて、慎重になりすぎる経営者が多くいます。手当として出す部分と基本の金額を分けておけば、業績に応じて動かせる余地は作れます。
自分が働く側だったら、いくらで、何ができるようになれば上がるのか。その二つを聞けない会社に何年もいるかどうか。そう考えると、決める順番は自然に見えてきます。
決めた内容は、全員に同じ場で伝えます。個別に伝えると、必ず違う受け取られ方をします。
そして、決めた基準を経営の側が守ります。基準を作っておきながら、業績を理由に毎年見送る職場では、無い場合よりも不信が強く残ります。
よくある質問
Q. 何を基準にすればよいですか
A. できる仕事の範囲、一人で判断できる範囲、他の人が育ったか。この三つに絞ります。増やすほど運用されなくなります。
Q. 相場はどこで調べますか
A. 同じ地域と職種の求人票に出ている金額です。統計より、いま出ている求人のほうが実態に近く出ます。
Q. 辞めると言われてから上げるのは駄目ですか
A. その金額は必ず他の社員に伝わります。同じことを言えば上がると分かると、次の退職の申し出が続きます。
Q. 上げられる余裕がない場合はどうしますか
A. 上げられないことを、時期と条件を添えて伝えます。何も言わずに据え置くのが最も人を失います。
まとめ
基準が無い職場では、声の大きい人から上がり、黙って働く人が先に辞めます。
年に一度、同じ地域と職種の求人票を見て相場を確かめます。
項目は三つに絞り、上がった状態を一行で書きます。勤続年数だけでは上げません。
見直しの時期・一段の幅・上限を決めます。幅は生活が変わる額にします。
上げないときにも同じ基準で説明します。次に何ができれば上がるかを必ず伝えます。
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