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アプリ・システム開発の基礎知識

ノーコード/ローコードとプロ受託開発を融合するハイブリッド開発戦略入門

ノーコード/ローコード開発の現在地

近年、ビジネスユーザー自身がアプリや業務システムを短期間で立ち上げられるノーコード/ローコード開発プラットフォームが急速に普及しています。Microsoft Power Platform や Google AppSheet、OutSystems、Mendix といった主要サービスは、要件定義からデータベース設計、UI作成、ワークフロー自動化までをドラッグ&ドロップで行えます。
これにより、要件変更のたびに高額なシステム開発費用を掛けずに、柔軟かつアジャイルにサービスを刷新することが可能です。Webシステム開発の中でも特に、小規模業務システム開発や社内向け管理ツールでは工数を70%以上削減した事例も報告されています。
ただし、ノーコードツールはビジネス要件が複雑化すると限界が生じ、パフォーマンスやセキュリティ要件、他システム連携の自由度で制約を受けます。そのため、本格的なプロダクト開発や大規模な業務システム開発を検討する際には、プロフェッショナル受託開発との組み合わせを検討する必要があります。

プロフェッショナル受託開発との棲み分け

従来の受託開発を行うシステム開発会社は、要件定義からシステム設計、プロジェクト管理、テスト、保守運用まで一気通貫でカバーします。Web開発会社やアプリ開発会社は、高度なカスタマイズ要件やパフォーマンス最適化、多様な外部API連携、独自アルゴリズム開発などを得意としています。
ノーコード/ローコードで対応しきれない部分を、プロ受託開発側が専門的に実装する形にすると、開発フロー全体のコスト削減と品質担保を両立できます。例えば、社内向けの申請・承認ワークフローはノーコードで迅速提供し、その承認結果を基に行うBIレポート出力やAI予測機能だけを受託開発で実装するといったハイブリッド化です。
この棲み分けを明確にするには、要件定義フェーズでノーコード部分とカスタム実装部分をマトリクス化し、各社への見積もり依頼(見積もり比較)テンプレートに盛り込むのが効果的です。

ハイブリッド開発のメリットと留意点

ハイブリッド開発戦略を採用すると、以下のようなメリットが得られます。

  • 開発費用相場を抑制しつつ、迅速なリリースを実現

  • 特定機能はプロフェッショナル品質で実装、ノーコード部分はビジネス側が自走可能

  • 将来的な要件変更に対し、ノーコード部分のみ改変することで保守運用コストを低減
    一方で、留意すべき点は以下の通りです。

  • ノーコードとカスタム実装間のデータ連携・権限管理をあらかじめ設計

  • プラットフォームのAPIや拡張機能のライセンス費用を加味した費用対効果シミュレーション

  • ノーコード更新時に発生するテスト・リグレッション対応をプロジェクト管理フローに組み込む
    これらを要件定義書に明記し、開発会社選びの評価軸に加えることで、後のコスト膨張を防げます。

開発会社選びのポイント:予算・費用相場・発注手順

ハイブリッド開発に対応できるパートナーを選定する際は、以下を比較しましょう。

  • ノーコードプラットフォーム経験:対象ツールでの業務システム開発実績

  • カスタムAPI/プラグイン開発力:JavaScriptやTypeScriptでの拡張実装経験

  • 見積もり透明性:要件定義、設計、開発(ノーコード/カスタム)、テスト、保守運用の工数内訳

  • プロジェクト管理体制:スクラムやカンバンでの短期リリースサイクル対応可否

  • サポート体制:ノーコード更新後の障害対応やバージョンアップ対応まで含むSLA提示
    特に「システム 開発会社 選び方 予算 費用 相場 発注」をキーワードに、A社・B社・C社の見積もり比較を行う際、上記観点をチェックリスト化してスコアリングすると、比較が容易になります。

プロジェクト管理と開発フローの最適化

ハイブリッド開発では、ノーコード/ローコード部分とカスタム部分それぞれで異なる開発フローを統合管理する必要があります。以下のフローを参考にしてください。

  1. 要件定義:ノーコード対応範囲とカスタム実装範囲をWBSで切り分け

  2. 設計フェーズ:ノーコード構成図(画面遷移+ワークフロー)とAPIシーケンス図を並列作成

  3. 開発フェーズ:

    • ノーコードチームはPower Platform等で画面・ワークフロー作成

    • カスタムチームはGitHubでソース管理、CI/CDパイプライン構築

  4. テストフェーズ:

    • ノーコード用テストケース(手動/テスト自動化ツール)

    • カスタム用ユニットテスト、E2Eテスト

  5. リリース:GitOpsとデプロイ設定画面を活用し、ノーコード・カスタム両方を同時反映

  6. 保守運用:

    • ノーコード部分はビジネス側セルフ変更+レビュー

    • カスタム部分は運用チームが障害監視ツールでアラート管理
      このように明確な開発フローを定義し、JIRAやAzure DevOpsでタスクを統合管理することで、開発費用を最適化しながら高品質な成果物を提供できます。

具体的なユースケース:営業支援アプリの迅速立ち上げ

中小規模企業では、営業担当者が訪問先で見積もりや受注情報をリアルタイムに入力し、社内システムへ自動連携する営業支援アプリのニーズが高まっています。従来、このようなアプリをスマホ向けにネイティブ開発すると、要件定義からテスト、公開まで最低でも3~4か月、費用も500万円~1,000万円が相場でした。しかし、ノーコード/ローコードとプロ受託開発を組み合わせれば、以下のような流れでコストと工期を大幅に削減できます。

  1. ビジネス要件の簡易定義(1週間)

  2. ノーコードプラットフォーム上で画面遷移設計とワークフロー作成(2週間)

  3. プロ受託チームがCRM連携APIや請求システム呼び出し機能など、カスタム部分を実装(3週間)

  4. 統合テストおよびマニュアル作成(2週間)

  5. 本番リリースと運用サポート(1週間)

合計9週間、費用は約300万円~500万円程度に抑えつつ、機能拡張やUI調整はビジネス側が自走で可能です。このハイブリッド戦略により、プロジェクト管理が複雑化せず、リリースサイクルを短縮できます。

成功事例:製造業向け在庫管理システムの刷新

ある中堅製造業では、旧来のAccessベースの在庫管理システムが老朽化し、月次棚卸し時の手作業負荷が課題でした。プロ受託開発会社を選定し、ノーコード/ローコード部分で「現場入力」「リアルタイム検索」「レポート出力」を構築し、カスタム実装部分で「バーコードスキャン連携」「ERP連携バッチ処理」「複雑条件での自動発注ロジック」を実装しました。

初期導入から6か月で、棚卸し作業時間は従来の120時間/月 → 40時間/月に短縮。人的ミスも70%減少し、在庫廃棄ロスの抑制にも貢献しました。開発費用は約800万円、従来開発に比べて30%コスト削減に成功し、保守運用費用も年間200万円程度で推移しています。

コスト比較シミュレーションの進め方

ハイブリッド開発の効果を検証するには、以下のステップで費用対効果シミュレーションを行います。

  1. 要件洗い出し:機能を「ノーコード化可能部分」と「カスタム実装部分」に分類

  2. 工数見積もり:

    • ノーコード部分:ライセンス費用+開発工数(社内/受託)

    • カスタム部分:受託会社提示の工数単価で算出

  3. 他社比較:

    • フルカスタム開発のみ見積もり依頼

    • フルノーコード開発のみ見積もり依頼(ライセンス+サポート)

    • ハイブリッド案の見積もり依頼

  4. 費用対効果分析:初期費用、月次保守運用費用、想定リリース周期を加味し、3年トータルコストを比較

  5. 感度分析:ライセンス費用変動、要件変更頻度、保守対応レベルに応じたシナリオを3パターン作成

これにより「ノーコードライセンス費用増加時でもカスタム費用削減でペイできるボリューム」を可視化し、開発予算の妥当性を定量的に説明できます。

保守運用フェーズでの最適化

ハイブリッド開発後の保守運用では、ノーコード部分の画面追加やワークフロー変更をビジネス部門が軽微に行い、重大改修やAPI連携更新は受託開発側が担当する体制が理想的です。

  • ノーコード更新ガイドライン作成:内部ユーザーが固定フォーマットを前提に変更可能とする

  • カスタム部分のAPIバージョン管理:Gitリポジトリにタグ付けし、CI/CDパイプラインで自動テスト

  • 定期レビュー:四半期ごとに改善要件をリスト化し、軽微案件はノーコード更新、大規模案件は受託発注

この運用設計により、月次保守工数を従来比50%削減し、追加費用を年間100万円未満に抑えた事例もあります。

まとめ

ノーコード/ローコードと受託開発のハイブリッド戦略は、システム開発フローの最適化と開発費用相場の抑制を同時に実現します。要件定義フェーズでの明確な範囲切り分けと、複数社への見積もり比較によって、開発会社選びの透明性を高めましょう。プロジェクト管理フローを統合し、保守運用も見据えた体制構築を行うことで、ビジネス側と開発側双方の負荷を最小化し、費用対効果の高いシステムを長期運用できます。

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