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「導入前チェックリストの設計」がプロジェクト成功を左右する理由|要件定義を現場から逆算するという発想

システム開発会社やアプリ開発会社への依頼時に、最も多くの時間と労力を費やすフェーズが「要件定義」です。しかし、見積もり依頼の段階で必要な情報を出し切れず、「提案がピンとこない」「ヒアリングが多すぎて進まない」と感じる企業も少なくありません。

この背景にあるのが、「開発のための要件定義」が“現場視点の検討”と乖離しているという構造です。

本記事では、そのギャップを埋めるアプローチとして、「導入前チェックリストの設計」による要件可視化のフレームワークをご紹介します。開発フローを熟知したプロが、現場に近い発注者のために作った知識として、実務目線で徹底解説します。

要件定義がうまく進まない企業の共通点

まず、要件定義でつまずきやすい企業には次のような共通項があります。

  • 社内での「やりたいこと」は共有されているが、外部に伝えられる言葉になっていない

  • 現場からの改善要望が散発的で体系化されていない

  • 業務フローを図式化したことがない

  • システム会社から「画面イメージを描いてください」と言われて詰まる

これらは「情報がない」のではなく、「情報が整理されていない」だけです。

つまり、開発会社に渡す前の“社内視点での整理フロー”を持つことで、驚くほどスムーズに開発準備が進みます。そのツールこそが「導入前チェックリスト」なのです。

「導入前チェックリスト」とは何か?

本記事で提案する「導入前チェックリスト」は、ExcelやGoogleスプレッドシートで誰でも作成可能な形式で、以下のような項目で構成されます。

  1. 利用者の種類(誰がこのシステムを使うのか)

  2. 実現したい業務の目的(効率化/記録化/見える化 など)

  3. 現状の運用手段(紙/Excel/口頭指示 など)

  4. 課題の内容と頻度(例:月に5回、入力ミスで二重処理)

  5. 必須で実装してほしい項目(例:通知/エクスポート/履歴保存)

  6. あればうれしい機能(例:スマホ対応/音声読み上げ)

これをプロジェクトの発端で整理しておくと、「要件定義の半分は終わったようなもの」です。

なぜチェックリストからスタートすると成功率が高くなるのか

多くの開発依頼が失敗する原因は、「詳細な仕様が決まっていないこと」ではなく、「前提の共有がされていないこと」です。

たとえば…

  • 「通知機能」といってもメールかプッシュ通知かで実装が大きく変わる

  • 「ユーザー」は社内スタッフか取引先かでUI/UXの優先順位が異なる

  • 「スマホ対応」は“モバイルファースト”か“PC版の簡易閲覧”かで工数が変わる

こうした認識差を早期に吸い上げておくためにも、チェックリストによる“質問の先出し”が有効なのです。

チェックリストを活用した要件定義のステップ

ここでは、導入前チェックリストを活用した開発依頼のステップを解説します。

ステップ1:現場からのヒアリング

まずは各部署や関係者にチェックリスト形式でヒアリングを行います。「○か×か」で回答できるように設計すると、情報が集まりやすくなります。

例:

  • 現在この業務に紙を使っていますか?

  • データのエクスポートは必要ですか?

  • 同時に複数人が同じ画面を編集するケースはありますか?

ステップ2:チェックリストの統合とカテゴリ分け

集まった回答を「利用者視点」「機能視点」「運用視点」の3カテゴリに分けて集計します。ここで、業務フローとのマッピングも行い、「どの業務で、誰が、何をしたいのか」が浮かび上がってきます。

ステップ3:開発会社への共有資料化

このチェックリストはそのまま、開発会社との初回相談や見積もり依頼時に提出する「情報ベース」となります。ドキュメントとして提出すれば、伝達の齟齬も減り、ヒアリング工数も大きく削減されます。

導入前チェックリストが与える「費用対効果」

開発費用の大部分は、見積もりの精度と手戻りの数で決まります。チェックリストの活用によって、以下のようなコスト削減効果が見込めます。

  • 初期ヒアリング回数の削減(工数減)

  • 要件の曖昧さによる後戻りリスクの低下(修正費削減)

  • 見積もり時の誤差低減(予算管理のしやすさ)

これは結果的に、プロジェクトの「総費用対効果の改善」に直結するポイントなのです。

「チェックリスト視点」で見極める良い開発会社の特徴

チェックリストを提出した際、開発会社の対応はその実力を測る指標にもなります。

  • 項目ごとに工数や難易度を丁寧にフィードバックしてくれる

  • 「目的に対してこの機能は不要かもしれません」と逆提案してくれる

  • 「この内容ならこういう技術スタックが最適です」と道筋を示してくれる

こうした会社は、要件の言語化支援や業務理解にも長けており、結果的に保守運用や改善フェーズでも高い満足度を生み出す傾向があります。

まとめ:「作る前の準備」が開発の成功率を劇的に上げる

システム開発を依頼する際、まだ画面イメージも設計書もなくて構いません。しかし、「何に困っていて、誰が使って、どんな場面で役立たせたいのか」だけは、導入前の段階で明確にしておくべきです。

その最適な手段が「導入前チェックリストの設計」です。

このチェックリストを元に、開発会社とより建設的な対話ができれば、仕様書や工数の精度は飛躍的に上がり、無駄な改修や予算超過のリスクは大幅に軽減されます。

次に開発を依頼する際は、「まず社内でチェックリストを作る」というステップから始めてみてください。それが、システム開発の成功を大きく引き寄せる第一歩になるはずです。

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