デザイン思考で始める!はじめてのシステム開発入門

企業が自社の業務課題をITで解決しようとするとき、「何から始めればよいのか」「どの開発会社に発注すれば安心か」「予算や相場はどれくらいか」といった疑問が必ず湧いてきます。本記事では、IT未経験の事業担当者や経営者が、最小限のリスクでシステム開発に踏み出せるよう、デザイン思考のプロセスをベースにした新しい切り口で基礎知識を解説します。
なぜデザイン思考がシステム開発に有効なのか
デザイン思考とは、ユーザー(社員や顧客)の潜在ニーズを観察・共感し、「解くべき課題」を定義したうえで、プロトタイプを繰り返して解決策を創出するアプローチです。システム開発の世界では、要件定義の段階で仕様が固まり切らず、途中で大幅な仕様変更や追加費用が発生しがちですが、デザイン思考を取り入れることで以下の効果が得られます。
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ニーズのすり合わせ:開発会社選びの前に自社内部で課題を具体化し、開発会社へのヒアリング項目が明確になる
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小規模プロトタイプ:最初に簡易版をつくり、早期に業務フローやUI/UXを検証。見落としがちな改善ポイントを低コストで洗い出せる
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共創ワークショップ:経営層から現場までが一堂に会し、システム導入後の運用イメージを共有することで、導入後の受け入れ抵抗を減らす
このように、ユーザー視点を強化し、開発会社や社内の要件定義担当と同じ土俵に立つコミュニケーションが可能になります。
ステップ1:共感フェーズで「本当の課題」を掘り下げる
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現場観察
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関係者の業務フローを実際に見学し、どのタイミングで手戻りやストレスが発生しているか記録
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マニュアルや過去のトラブルログをチェックし、業務のボトルネックを可視化
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インタビュー
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経営者、管理職、現場担当者の3層に分けてヒアリング。期待値のズレを洗い出す
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質問例:「何に一番時間を取られていますか?」「このシステムが完成したら、最初に試したい業務は何ですか?」
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共通課題の整理
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付せんやホワイトボードを使い、課題を「業務」「心理」「技術」の観点で分類
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優先度マトリクスを作成し、「早急に解決すべき領域」を特定
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このフェーズで漏れなく課題を把握することが、予算や費用の見積もりの精度を上げ、後工程での追加費用リスクを抑える秘訣です。
ステップ2:定義フェーズでソリューションの方向性を決める
課題を洗い出したら、次は「本当に解くべき問題」を定義します。
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ペルソナ設定:システムを使う代表的なユーザー像を複数描き、その業務シナリオをストーリーボード化
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ユーザージャーニーマップ:業務開始から終了までのタッチポイントを可視化し、システム導入後の理想フローとギャップを明示
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How Might We 質問:課題を「どのようにすれば解消できるか?」に翻訳し、解決策の種をつくる
この段階で、自社内で描いた要件をもとに複数の開発会社へ発注相談すると、選び方の比較材料が揃いやすくなります。求める技術力や相場感も明確になり、数社から受注見積もりを取る際の回答精度が向上します。
ステップ3:アイデア出しからプロトタイプ作成
定義した課題に対し、開発会社も交えたワークショップでアイデアをブレインストーミング。
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SCAMPER法(代替・結合・調整など7つの視点でアイデア出し)
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モックアップ作成:紙やPowerPointでUI画面の簡易版を用意し、エンドユーザーに操作感をヒアリング
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最低限の機能定義:MVP(最小限の有効製品)を決め、開発範囲を絞る
このプロトタイプで得られたユーザーの反応をもとに、必要最低限の機能と追加機能を分けて予算を最適化。開発会社への正式な要件書・RFP(提案依頼書)に反映します。
ステップ4:開発会社の選定と相見積もり
プロトタイプを共有したうえで、複数の開発会社から見積もりを取得し、以下の観点で比較検討します。
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技術スタックの適合度:既存システムとの連携要件がある場合は、対応可能なフレームワークか
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開発体制:プロジェクトマネージャー・エンジニアの配置比率、テスト工程の実施方法
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費用内訳:工数×単価だけでなく、保守・サポート費用や、要件変更時の料金体系
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コミュニケーション:リモートMTGの頻度、ツール(Slack/Teams/Backlogなど)の指定可否
選定後は、発注契約書に「追加要件は都度見積もり、事前価格設定」「○○日以内に成果物を納品」「保守開始後△か月間バグ対応無料」といったスコープ管理ルールを盛り込み、費用増を未然に防ぎます。
ステップ5:ウォーターフォール vs アジャイルの選び方
要件がほぼ固まっている場合はウォーターフォール、一方で要件が流動的・改善サイクルを早く回したい場合はアジャイル開発がおすすめです。
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ウォーターフォール
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要件書を先に完成させ、設計→開発→テストを一気通貫で進行
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予算・スケジュールが固まりやすい
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アジャイル
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短期間(1~2週間スプリント)でプロトタイプをリリースし、都度ユーザーフィードバック
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仕様変更が発生しても柔軟に対応可能だが、管理工数が増える
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大企業の基幹システム刷新など予測性重視の案件はウォーターフォール、中小規模の業務改善ツール導入ならアジャイル、といった具合に相場感をイメージしながら選択しましょう。
テストと品質保証で「信頼できるシステム」をつくる
開発が一通り終わったら、テストフェーズに入ります。ここで手を抜くと、導入後のトラブル対応や緊急改修で想定外の費用が発生しかねません。以下のポイントで品質を担保しましょう。
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単体テスト(ユニットテスト)
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各モジュールが仕様どおり動作するかを自動化テストでチェック
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エンジニアレベルでの品質基準をクリアにし、バグ混入を防ぐ
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結合テスト(システムテスト)
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複数のモジュールを組み合わせ、データの受け渡しや画面の動きを確認
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外部システム(既存の基幹システムやクラウドサービス)との連携テストも必須
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ユーザーテスト(UAT)
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現場担当者に実際の業務データを使って操作してもらい、業務フローとしての完成度を検証
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マニュアルや操作ガイドの分かりやすさも併せてチェック
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負荷試験・セキュリティテスト
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同時アクセス数や大量データ処理で性能劣化が起きないかを検証
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脆弱性スキャンやペネトレーションテストを実施し、情報漏えいリスクを低減
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ここまでやり切ることで、導入後のシステム障害による業務停止リスクや保守費用の増大を防ぐことができます。タスク管理ツールや自動化フレームワークを活用し、テスト計画・結果を可視化しておくと、開発会社との認識齟齬も起きにくくなります。
ローンチと初期フォローで定着化を図る
いよいよシステムを本番環境へリリースします。しかし、ここで終わりではありません。以下の施策で定着化を図り、開発会社への追加発注を最小限に抑えましょう。
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リリース前トレーニング:関係者向けに操作説明会を開催し、マニュアルで補足
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パイロット運用:一部部署で試験的に利用し、改善要望を回収
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サポート窓口設置:初期トラブルはヘルプデスクで一次対応し、開発会社は二次対応に集中
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スピーディーなバグフィックス:リリース直後の1か月は、軽微な不具合を優先的に無償対応する契約を締結
ユーザーの満足度を高めることで使用率が上がり、結果的にシステム化効果が最大化します。開発会社とのコミュニケーションを密に保ち、運用中の改善ポイントを速やかに共有すると良いでしょう。
保守・運用フェーズのコツ
システムが安定稼働し始めたら、長期的な保守・運用体制を整備します。費用を最適化しつつ、安定稼働を継続させるためのポイントは次のとおりです。
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SLA(サービスレベル合意)
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障害発生時の対応時間やアップタイム保証率を契約に明記
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SLA違反時のペナルティ条項で、開発会社の責任を明確化
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定期メンテナンス
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月次・四半期単位でソフトウェアのバージョンアップやパッチ適用を計画
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クラウド利用料やライセンス費用を見直し、無駄を削減
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ログ監視とアラート設定
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サーバー負荷、エラーログ、セキュリティ攻撃兆候をリアルタイムで監視
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自動アラートを設定し、異常時は迅速に対応チームへ通知
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リソース予測
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利用状況のトレンドから将来のユーザー増加やデータ増大を予測
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クラウドリソース(CPU/RAM/ストレージ)のスケーラビリティ計画を立案
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適切な保守契約を結び、固定の月額費用である程度の対応を含めておくと、予算コントロールが容易になります。事前に要望の優先度を整理し、毎年の見直しを実施する体制が理想的です。
費用最適化と相場感の把握
ここまでのプロセスを経て、開発から運用までの全体像が見えてきます。最後に、費用を最適化するためのポイントをまとめます。
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見積もりの内訳を理解
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工数×単価だけでなく、要件定義、設計、開発、テスト、ドキュメント作成、保守の各工程の割合を確認
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フェーズ分割発注
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フルスクラッチとパッケージの組み合わせなど、コスト効率の高い手法を検討
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クラウドサービスの活用
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AWSやAzureのマネージドサービスを利用し、インフラ運用コストを削減
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相場情報の収集
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同規模・同業界の開発事例を調査し、予算の目安(相場)を把握。交渉材料に活用
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これらを踏まえ、開発会社との費用交渉や発注計画を策定することで、自社に最適な開発予算を組み立てられます。
まとめ:デザイン思考で安心のシステム導入を
後半では、テスト・品質保証、ローンチ、保守・運用、費用最適化までを詳しく解説しました。最初に共感フェーズで「本当に解きたい課題」を明確にし、プロトタイプや相見積もりで要件をブラッシュアップ。開発会社の選定からSLAの締結、メンテナンス計画までを一貫して進めることで、追加費用やトラブルを最小限に抑えながら、価値あるシステムを導入できます。
これらのステップを踏みながら、ぜひ「3分でわかる!スマホアプリ・Web開発の費用感をスピードチェック。」でご自身のプロジェクトの費用感を確認し、最適な予算策定のヒントにしてください。