ノーコード vs 低コード開発:はじめてのシステム導入で失敗しない選び方ガイド

はじめに
近年、システム開発の世界では「ノーコード」や「低コード(ローコード)」と呼ばれるツールが注目を集めています。ITに詳しくない経営者や事業担当者の方が初めてシステム開発を発注する際、どちらを選べばよいのか判断が難しいものです。本記事では、ノーコードと低コードそれぞれの特徴をわかりやすく解説し、システム開発会社の選び方、予算の立て方、費用の相場感までまとめました。最後まで読めば、自社の用途に最適な「ノーコード or 低コード」導入のポイントがつかめるはずです。
ノーコードと低コードの違いを理解しよう
まずは基本用語から押さえましょう。
-
ノーコード
-
プログラミング不要で画面設計や業務フロー定義をビジュアル操作だけで完結
-
主にフォーム作成やデータベース連携、簡易的な業務アプリ向け
-
-
低コード
-
最低限のコード(スクリプト)を書くことで、より高度なカスタマイズや業務ロジックを実現
-
大規模システムや複雑なバックエンド処理にも対応可能
-
ノーコードのメリット・デメリット
-
メリット
-
発注から1か月以内にPoC(概念実証)が可能
-
開発会社に依頼せず、自社で内製化しやすい
-
導入予算はおおむね50万~200万円程度からスタート可能
-
-
デメリット
-
業務要件が複雑化すると対応が難しく、カスタム費用が割高に
-
ベンダーロックインが起こりやすい
-
低コードのメリット・デメリット
-
メリット
-
エンタープライズ向けの複雑な業務要件にも対応
-
将来的にAPI連携やAI機能を組み込みやすい
-
-
デメリット
-
ノーコードより初期費用が高く、相場は200万~1,000万円以上
-
自社内製化にはそれなりのITリテラシーと研修が必要
-
導入目的別の選び方ポイント
次に、実際の利用シーンを3つのパターンに分け、自社に合う選択方法を考えます。
-
日次業務の効率化(例:申請・承認フロー)
-
ノーコードのワークフロー機能で十分対応可能
-
平均開発期間:2~4週間
-
-
外部システム連携を伴うシナリオ(例:CRMと通販システムのデータ同期)
-
低コードでAPI連携をカスタマイズ
-
専門ベンダーへの発注がおすすめ
-
-
AI・IoT連携を視野に入れたDXプロジェクト
-
初期は低コードPoC、実運用ではSIerと協業
-
予算は相場より+20~30%を見込む
-
開発会社選びのチェック項目
ノーコード/低コードいずれを採用するにしても、開発会社の選定は要件定義の成功を左右します。以下の観点で比較しましょう。
-
プラットフォーム認定パートナーか
-
各ツールベンダーの認定資格保有数
-
-
類似事例の有無
-
同業界・同規模案件の実績
-
-
内製化支援の体制
-
トレーニングパッケージやマニュアル整備
-
-
保守運用サポート
-
SLA(稼働保証や応答時間)の具体値
-
機能要件の優先順位付け
多数の要件を一気に詰め込むと、ノーコードならボトルネック、低コードでもコスト高騰のリスクがあります。
-
フェーズ1:必須機能(KPI計測・業務フロー)
-
フェーズ2:拡張機能(レポート自動化、メール連携)
-
フェーズ3:将来機能(AIレコメンド、チャットボット)
番号付きリストで優先度をつけ、予算とスケジュールに落とし込むと失敗しづらくなります。
見積もり・予算の立て方
-
ノーコード見積例
-
ライセンス費用:月額3万円~
-
初期構築:100万~300万円
-
-
低コード見積例
-
ライセンス費用:月額10万~30万円
-
初期構築:300万~800万円
-
相場としては、小規模ノーコードが150万、大規模低コードが800万前後です。どちらも予算は余裕を持ち、+20%を見込むのが賢明です。
詳細な要件定義の進め方
ビジョンから要件へ落とし込む
開発プロジェクトは、まず「何のためにシステムを導入するのか」というビジョンを共有することが大前提です。経営者や事業部門の代表者と開発チーム(ノーコード/低コード含む)が一堂に会し、以下のステップで要件を具体化していきます。
-
ビジョン共有ワークショップの実施
-
目的:業務改善ポイントの“なぜ”を深堀り
-
成果物:ペルソナ、現状課題リスト、KPI候補
-
-
業務フロー可視化
-
ツール:ホワイトボード、付箋、オンラインマインドマップ
-
ポイント:「業務の分岐」「例外処理」をしっかり洗い出す
-
-
機能要件の粒度設定
-
必須機能と推奨機能を色分け
-
ノーコードのスコープ、低コードのスコープに分けて検討
-
-
非機能要件の整理
-
セキュリティ:ログイン認証方式、データ暗号化レベル
-
パフォーマンス:月間アクセス数想定、応答時間上限
-
運用性:ログ保存期間、バックアップ頻度
-
要件定義フェーズでは、参加者全員が“言ったつもり”にならないよう、言語化した成果物をドキュメント化してレビューを重ねます。後戻りを減らし、開発コストが膨らむのを防ぐことが重要です。
要件定義ドキュメントの構成例
-
プロジェクト概要:背景・目的・範囲
-
利用者像:ユーザーペルソナ、利用シナリオ
-
業務フロー図:現状→ToBe
-
機能一覧:優先度付きリスト
-
画面レイアウト案:ワイヤーフレーム
-
非機能要件:性能・セキュリティ・可用性
-
開発スケジュール:マイルストーン設定
要件定義ドキュメントはおおむね20ページほどにまとめ、ステークホルダーの承認を得てから開発フェーズに進むことで、途中の認識齟齬を最小限に抑えます。
テスト計画と品質保証
テストフェーズの種類と役割
開発完了後は、以下のテストを段階的に実施して品質を担保します。
-
単体テスト
-
担当:開発チーム内部
-
内容:各モジュール(画面・API・データ処理)の動作確認
-
ポイント:ノーコードの場合、ビジュアルフローの分岐テストを丁寧に
-
-
結合テスト
-
担当:開発チーム+QAチーム
-
内容:複数機能連携、外部システム連携の動作確認
-
ポイント:API連携や認可・認証フロー、IO件数増加時の動作
-
-
総合テスト(UAT、ユーザー受け入れテスト)
-
担当:事業担当者
-
内容:実際の業務手順と要件定義を照らし合わせた動作確認
-
ポイント:現場環境で起こりうる例外処理の再現テスト
-
-
負荷テスト・セキュリティテスト
-
担当:専門ベンダーまたは社内セキュリティチーム
-
内容:同時アクセスによる応答性能、脆弱性診断(XSS/SQLインジェクションなど)
-
各テストフェーズで発生した不具合は、分類タグ(重要度、再現度、影響範囲)を付与し、開発チームへフィードバックします。ノーコードプラットフォームの場合は障害チケットをプラットフォーム側にエスカレーションする場合もあります。
テスト計画書のポイント
-
テスト観点マトリクス:機能×環境×データパターン
-
テストケース設計:正常系・異常系・境界値テスト
-
テスト日程:並行テストと逐次テストのバランス
-
合格基準:致命的障害ゼロ、重要障害30日以内に修正
テスト計画書を要件定義ドキュメントに紐づけて管理し、テスト実施後は必ずレビュー報告会を行い、関係者へ進捗と品質状況を共有します。
本番リリースから運用・改善サイクル
リリース準備とチェックリスト
本番環境へのデプロイは、システムの安定稼働を最優先に計画的に行います。
-
最終リリースタイミング調整:業務負荷の少ない夜間/週末
-
リリース手順書の整備:ロールバック手順も含める
-
データ移行テスト:既存DBからのデータ移行リハーサル
-
ステークホルダー承認:事業側、IT統制部門からのリリースOK
リリース当日は必ず「当日待機メンバー」を定め、リリース後72時間の障害即応体制を整えます。
運用後のKPIモニタリング
導入後は、事前に定義したKPIを定期的に計測し、効果検証を行います。
-
業務効率化KPI:申請〜承認に要する平均時間、処理件数/日
-
利用率KPI:MAU(月間アクティブユーザー)、機能別クリック数
-
コストKPI:外部委託費用、追加機能開発コスト
ノーコードなら内製化率/サポートチケット数、低コードならコード行数削減率なども指標として加えると、自社のITリテラシー向上度合いを定量的に把握できます。
改善サイクルの回し方
-
データ分析フェーズ
-
BIツールやダッシュボードでKPI可視化
-
定例報告会で事業部とIT部門が定量・定性で振り返り
-
-
改善要件の再要件定義
-
PoCフェーズと同様、ビジョンに立ち戻り優先度を整理
-
-
スプリント計画
-
2週間~1か月程度の小規模改善サイクルを繰り返し
-
-
本番反映と効果検証
アジャイル的に高速にPDCAを回すことで、システム導入後も継続的に価値を出し続けることが可能になります。
まとめ:ノーコード or 低コード、あなたの正解は?
この記事では、
-
ノーコード/低コードの違いとメリット・デメリット
-
導入目的別の選び方
-
開発会社の選定ポイント
-
詳細な要件定義とテスト計画
-
本番リリースから運用・改善の流れ
をご紹介しました。ITに詳しくない経営者や事業担当者の方でも、これらのステップを押さえれば「システム 開発会社 選び方 予算 費用 相場 発注」時の失敗リスクを大きく減らせます。
最後に、導入後のコスト感をスピーディに把握したい方は、ぜひ以下リンクのツールをご活用ください。
それでは、あなたのプロジェクト成功をお祈りしています!