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マイクロサービス移行に向けたレガシーモノリスリファクタリング実践ノート

プロジェクト背景と目的

多くの企業システムは、歴史的経緯により肥大化したモノリシックアーキテクチャで構築されています。機能追加や保守ごとに依存関係が複雑化し、新機能リリースのたびに全体テストが必要となるため、開発サイクルは次第に長期化。結果としてビジネス要件への迅速な対応が困難になっています。本プロジェクトでは、「Strangler Fig パターン」を用いて既存モノリスを段階的にマイクロサービス化し、リリース頻度と可用性を向上させることを目指しました。要件定義フェーズでは、新旧並行運用の影響範囲やデータ移行要件、APIゲートウェイ導入の影響を整理し、複数パートナーからの相見積もりに対応可能な形で要素分解を行いました。

アーキテクチャ全体像

初期段階では、モノリスから切り出すドメインを「ユーザー管理」「商品カタログ」「受注処理」「決済」の4領域とし、APIゲートウェイ(AWS API Gateway+AWS Lambda Authorizer)をフロントに配置。リクエストはまずゲートウェイで認証・ルーティングされ、対象ドメインのマイクロサービス(Node.js+Express or Spring Boot)へ流れます。一方、旧モノリスは「カタログ参照」など影響の少ない静的APIのまま並行動作。段階的にサービス切り出しを進めることで、開発費用相場の見積もり精度を高めるアプローチを採用しました。

ドメイン境界の定義とDDD適用

ドメイン駆動設計(DDD)の戦術パターンを活用し、ビジネスに最も近い「ユビキタス言語」をモデル化。チームごとに「バウンデッドコンテキスト」を定義し、例えば受注チームは「OrderContext」のリポジトリを所有。エンティティや集約ルートを明確化した上で、マイクロサービス間はEvent-Driven Architecture(AWS SNS/SQS)を介して非同期に連携します。これにより、データ整合性を最適化しつつコスト削減を図り、開発会社選びの判断材料として「イベントバス設定」「メッセージスキーマ定義」「コンシューマ実装」の要件を整理しました。

データ移行と共存フェーズ

既存データ(MySQL)は、アプリケーションテーブルを参照フェーズと移行フェーズに分割。初期は双方向コピーを用いるCDC(Change Data Capture)で、Debezium+Kafka Connectを構築。既存システムの書き込みをKafkaに流し、マイクロサービス側MySQLへレプリケーション。検証が完了したデータのみを新サービスへ切り替え、最終的にモノリスDBを廃止するフローです。この設計により、データ移行の不安要素を軽減し、移行コストのシミュレーションを可能にしました。

CI/CDパイプライン設計

サービス単位でのリリースを加速するため、GitHub Actionsを用いたCI/CDパイプラインを構築。プルリクエスト作成→ユニットテスト(Jest/Maven)→インテグレーションテスト(Docker Compose上でKafka/SNSモックを組み合わせ)→コンテナビルド→ステージング環境デプロイまでを自動化。ステージングではZapierでSlack通知を発行し、関係者へのレビュー依頼を促進します。マイクロサービスの切り出し数とCIジョブ数を要件に含めることで、相見積もり資料に「CI構築工数」を明確化して提示できます。

セキュリティと認可設計

フロントエンドとマイクロサービス間はOAuth2.0/JWT認可を適用。APIゲートウェイで認証トークンを検証し、各サービスには必要最小限のスコープのみを承認。Spring SecurityやPassport.jsを利用し、各マイクロサービスのエンドポイント保護を統一的に管理。セキュリティ要件をプロジェクト定義書に盛り込むことで、開発会社間の「認証・認可実装工数」比較が可能となります。

テスト戦略と品質保証

モノリスからマイクロサービスへ分割した後も、機能横断的な結合テストが欠かせません。各サービスの単体テストにはJUnit(Spring Boot)やJest(Node.js)を用い、ビジネスロジック層とリポジトリ層の網羅率を80%以上に維持します。次にサービス間連携を含む統合テストでは、Testcontainersを活用し、Kafka、SNS/SQS、MySQLなどをDockerコンテナで起動してE2Eテストを自動化。OrderContextでの注文登録から決済Contextへのイベント伝播、ユーザーContextへの通知までを一連のシナリオとしてCypressやPlaywrightで検証し、リリースブランチのマージ前ゲートとします。

さらに、契約テスト(Contract Testing)としてPactを導入し、プロバイダ/コンシューマー間のAPI仕様適合性をCIパイプライン内で常時チェック。プロバイダサービスが変更された際には、事前にConsumerテストが失敗することで影響範囲を可視化し、リグレッションリスクを低減します。品質KPIは「デプロイ成功率99.5%」「テストカバレッジ90%」「契約テスト失敗率0.1%以下」を設定し、GitHub Actionsの必須チェックとして組み込むことで、安定的なリリースフローを実現します。

モニタリングと運用保守

本番運用後は、マイクロサービスごとの可観測性を確保するため、全サービスにOpenTelemetryエージェントを組み込み、各API呼び出し/イベント処理/DBアクセスを分散トレースとしてJaegerに送信。Prometheus Exporterを通じて「リクエストレイテンシ」「エラー率」「メッセージ遅延時間」「DBコネクションプール使用率」などを取得し、Grafanaでリアルタイムにダッシュボード化します。

運用チームは、Alertmanagerで以下のアラートを設定し、Slackの#ops-alertsチャンネルとPagerDutyに通知。

  • マイクロサービスの95パーセンタイルレイテンシが1秒超過(継続3分)

  • KafkaコンシューマLagが1000件超(継続5分)

  • DBコネクションプール使用率が90%超(継続2分)

  • エラー率が1%超過(継続1分)
    これらの監視・アラート設計により、MTTR(平均復旧時間)を60分から30分へ短縮し、SLAの「月間稼働率99.9%」を安定的にクリアしています。

パフォーマンス最適化

膨大なリクエストを捌くため、各サービスにおけるパフォーマンスチューニングも継続的改善の対象です。Spring Bootサービスでは、Hibernateの二次キャッシュ(Ehcache)を導入し、Read-HeavyなエンドポイントのDBアクセスを50%削減。Node.jsサービスでは、APIゲートウェイからのリクエストをBrotli圧縮で高速化し、平均レスポンスタイムを200ms以下に維持します。

さらに、Kafkaのパーティション戦略を再設計し、OrderContextならびにPaymentContext用に専用トピックを設置。各トピックでは3パーティション/レプリケーションファクター2を設定し、可用性とスケーラビリティを両立。KubernetesのHorizontal Pod AutoscalerはCPU使用率70%を閾値とし、急激なトラフィック増にも自動で対応できる体制を整えました。

コストシミュレーションと予算管理

マイクロサービス移行プロジェクトの初期費用は、以下の要素で算出しました。

  • 要件定義・アーキテクチャ設計:400万円

  • DDDモデリング・ドメイン定義:300万円

  • マイクロサービス切り出しと実装:600万円

  • データ移行基盤構築(Debezium+Kafka):300万円

  • CI/CDパイプライン整備:200万円

  • テスト自動化/監視設定:200万円

  • 運用保守Runbook整備:200万円
    合計:約2,200万円

ランニングコストは、Kubernetesクラスタ運用(月額20万~30万円)、Kafka MSK(月額10万~20万円)、Observability(月額5万~10万円)を見込み、年間約420万~660万円と試算。AWS Budgetsと連携し、予算使用率が80%を超えた段階でSlack通知が飛ぶ仕組みを構築し、コストオーバーランを未然に防止しています。

システム 開発会社 選び方 予算 費用 相場 発注

マイクロサービス移行プロジェクトの受託先選定では、以下の観点で要件定義書とWBSを提供し、見積もり比較を行ってください。

  1. DDD適用実績:バウンデッドコンテキスト定義とイベント駆動設計の事例

  2. データ移行基盤:Debezium+Kafka Connect構築経験

  3. CI/CD/GitOps:TestcontainersやGitHub Actionsを活用した自動化事例

  4. 可観測性導入:OpenTelemetry/Prometheus/Grafana統合ノウハウ

  5. パフォーマンスチューニング:キャッシュ戦略とKubernetesオートスケーリング実績
    相場感は、小規模(1,800万~2,500万円)、中規模(2,800万~4,000万円)、大規模(4,500万~6,500万円)を目安に、固定価格型・時間単価型ともに条件を比較し、コスト対効果の高いパートナーを選定しましょう。

まとめ

本記事では、レガシーモノリスを段階的にマイクロサービス化するリファクタリングの実践ノートとして、DDDを用いたドメインモデリング、データ移行基盤の構築、CI/CDパイプライン設計、テスト戦略、モニタリング、パフォーマンス最適化、コストシミュレーション、開発会社選びのポイントまでを網羅的に解説しました。迅速な業務システム開発依頼を成功させるには、まずPoCで移行戦略の検証を行い、複数社の見積もり比較を通じて最適な受託先とともにプロジェクトを進めてください。

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