「フリーズするのはなぜ?」調査依頼が来たときに開発側が確認すべき視点とは

「アプリが固まります」「画面が動かなくなりました」「応答が返ってきません」
システム開発会社や受託開発の現場において、“フリーズ”の相談は非常に多く寄せられる不具合報告のひとつです。
しかし、「どこで」「どのように」「どんな条件で」フリーズが起きているかの情報が不十分なままでは、調査に時間がかかるだけでなく、誤った箇所に対して工数をかけてしまうリスクもあります。
本記事では、フリーズ報告を受けた際に開発側が押さえておくべき調査の観点を、実務目線で整理します。
よくある“フリーズ報告”の曖昧さとその影響
ユーザーやクライアントからの報告には、以下のような表現が使われることがあります。
- 「真っ白な画面になります」
- 「タップしても反応しません」
- 「フリーズして落ちます」
こうした表現は現象の印象としては伝わりますが、技術的にはさまざまな状態を指している可能性があります。
- クライアント側の描画が停止(レンダリング不良)
- バックエンドとの通信が詰まりローディングが続く
- メモリリークや処理の無限ループによるハングアップ
- 非同期処理の例外で画面状態が更新されない
- 端末やブラウザ依存の一時的停止
このように「止まっているように見える状態」は複数の原因が考えられるため、まずは現象の正確な特定が調査の第一歩になります。
調査に必要な情報のチェックリスト
開発側としては、まず以下のような情報を依頼側に確認することが重要です。
- どの画面で発生したか?(URL、画面名)
- どのような操作のあとに発生したか?
- その操作は毎回同じように再現されるか?
- 端末の種類(iOS / Android / Windows / Mac)
- 使用ブラウザまたはアプリのバージョン
- ネットワーク環境(Wi-Fi / 4G / オフライン)
- 発生時刻とスクリーンショット、動画などのログ
これらの情報が揃えば、クライアント側・ネットワーク側・サーバー側のいずれに原因がありそうかの絞り込みが可能となります。
調査手順を段階的に分けるとどうなるか?
- 再現性の有無を確認
- ローカル環境や検証端末で再現できるかどうかをチェック
- ステージング環境での検証も含める
- ログ調査(クライアント&サーバー)
- JSコンソール、アプリログ、APIレスポンス、エラーログの確認
- ネットワーク通信のスタックトレースやタイムアウト状況
- メモリやCPU使用率の確認
- 長時間操作によってアプリが重くなる場合、メモリリークの可能性
- 特定端末やOSでのみ起きる場合はスペック依存も疑う
- 非同期処理の状態チェック
- API呼び出し後のハンドリング、Promise未解決、例外未捕捉など
- UIフリーズ系の原因確認
- 画面遷移のトリガーが発火していない、イベントが未バインドなど
- フレームワークのバージョン差異による影響も考慮
フリーズ対応における開発体制上のポイント
- 報告時のテンプレートを用意する:現象報告の粒度を標準化する
- 検証用のログ出力を残す:本番ログだけでなく検証用のデバッグ出力も活用
- UIフリーズ検知の自動化:Sentryなどのツールでエラー傾向を早期検出
- ステージング環境の整備:再現検証しやすい環境づくり
フリーズが「発生する」より「報告される」ことの重要性
見落としがちなのは、「本当に発生している」よりも「ユーザーにそう感じさせてしまう」ことが問題である点です。
例えば、レスポンスが遅れていてもローディング表示や「処理中」の案内があれば、ユーザーの印象は大きく変わります。
つまり、「体感的フリーズ」をいかに減らすかも重要な設計要素となるのです。
まとめ:現象特定と予防策が“フリーズ対応”の肝
フリーズは「なんとなく止まったように見える」という主観的な体験と、「実際に処理が止まっている」技術的な原因のどちらも含むため、事実と印象を切り分けて確認することが重要です。
開発会社としては、報告の精度を高めるためのテンプレート整備やログ設計、UI設計の工夫といった「未然防止」の仕組みも並行して整備することが、再発防止と信頼性向上につながります。
特に初めて外部の開発会社へシステム開発を依頼する企業にとっては、「不具合時にどう調査・対応されるか」も選定基準の一つです。
プロジェクトの信頼性を左右する要素として、開発現場のフリーズ対応体制は軽視できないテーマです。