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オンボーディング期間の設計で開発が変わる?新メンバーを“戦力化”するための開発現場マネジメントの工夫

開発チームの立ち上げフェーズに潜む「見えないリスク」

システム開発会社やWeb開発会社が受託案件に取り組む際、新メンバーの参加は避けられません。
とくにプロジェクト型で動く受託開発や業務システム開発では、「アサイン直後から即戦力として動いてもらう」前提でスケジュールが組まれているケースも多いのが実情です。

しかし現実には、

  • 開発環境のセットアップに丸2日かかった

  • ドキュメントの場所が分からず手が止まった

  • コードレビューで毎回仕様の確認が発生する

  • 想定していた技術スタックの理解に時間がかかる

といった問題が頻発します。

これらはすべて、「オンボーディング設計の不備」からくるものです。
そしてこの問題は、コードの品質や納期、ひいては開発費用の増加にも直結します。

オンボーディングとは何か?開発現場における定義

一般に「オンボーディング(Onboarding)」とは、新入社員や新規加入者がその組織や業務に馴染み、戦力化していくプロセスを指します。

開発プロジェクトにおけるオンボーディングとは、より具体的に言えば、

  • チームの文化やツールの使い方に慣れる

  • 開発環境を整え、作業ができる状態になる

  • プロダクトのドメイン知識や仕様を理解する

  • コードベースに手を入れる初期の作業をこなす

といった段階をスムーズに進める支援のことを意味します。
このプロセスの設計が甘ければ、新メンバーがスロースタートとなり、チーム全体の生産性が大きく落ちることになります。

よくある失敗例とその背景

オンボーディングに関して、多くの開発現場では以下のような失敗が見られます。

● ドキュメント不足
「口頭で説明すればいい」「Slackの過去ログを読んでね」といった文化では、後続がつまずきやすくなります。

● 手順が属人化している
環境構築の方法が特定の人しか分からない、ライブラリのバージョン管理がされていない、などのケースはとても多く見られます。

● 「慣れれば分かる」前提で教育がない
UI設計やAPI仕様の意図が共有されず、コードレビューで毎回補足することに。

● 初日から「このタスクやって」と渡してしまう
まずリポジトリ構成や命名規則、開発フローを理解してもらうステップが抜けがちです。

こうした問題を防ぐには、オンボーディングそのものを「プロジェクト設計の一部」として捉え、明文化する必要があるのです。

オンボーディング設計で押さえるべき7つの要素

  1. 「初日〜3日間の行動計画」
     → 環境構築/リポジトリの確認/プロジェクト背景の共有/担当領域の説明などを時系列で整理。

  2. 「開発環境セットアップマニュアル」
     → OS依存/ライブラリ/DB設定/.envファイルのサンプルなど、詳細な手順を明文化。

  3. 「ドメイン知識の共有方法」
     → 業務シナリオや用語、業界背景の理解を助ける資料の整備。

  4. 「ルール集・コーディング規約」
     → Lint設定、命名規則、レビュー方針、テストの書き方などを1ページで見せる。

  5. 「最初に取り組むタスク」
     → 軽量なバグ修正やテスト改善など、小さな成功体験を得られるタスクの用意。

  6. 「質問・相談の窓口明示」
     → 誰に何を聞くかを役割ベースで明記(例:仕様→PM、コード→リーダー)

  7. 「定着度の確認」
     → 1週間後、2週間後にフィードバック面談やペア作業を入れるなど定着を促す設計。

これらの要素をシステム開発会社側があらかじめ設計しているかどうかは、チームとしての成熟度の指標でもあります。

オンボーディングがうまくいく現場の共通点

● 入門資料がGitHubやNotionで一元管理されている
● 社内用「初回ログイン専用ダッシュボード」がある
● Slackやチャットツールに「#onboarding」チャンネルがある
● 毎週の定例で新規メンバーの進捗確認がある
● ペアプログラミングで実務と知識共有を両立させている
● 評価基準に「オンボーディング支援」が含まれている

このような文化が整っている開発会社は、メンバーの育成だけでなく、プロジェクトのスピードや品質にも優れています。

開発依頼時に確認すべき「オンボーディング」に関する質問例

受託開発を検討する際、開発会社に以下のような視点で質問することで、体制の成熟度を確認できます。

  • 「新しいエンジニアが入った際、どのようにキャッチアップしていますか?」

  • 「御社ではオンボーディング用の資料やプロセスを整備していますか?」

  • 「リモート開発でもスムーズに立ち上げできる仕組みはありますか?」

  • 「外部のパートナーに合流してもらう場合、どのようなサポート体制ですか?」

こうしたやり取りを通じて、“納品して終わり”ではなく、継続的に価値を提供できるパートナーかどうかを判断する材料となります。

まとめ:「オンボーディング設計」は“開発スピードの鍵”

オンボーディングは、単に新しい人を受け入れるだけのプロセスではありません。
それは「チームの知識を共有財産として継承し、スムーズに稼働できる状態をつくるための設計行為」です。

  • 環境構築や開発フローの標準化

  • ドメイン知識のドキュメント化

  • 質問しやすい文化とフィードバック体制

  • 初期タスクの丁寧な設計

これらを実現することで、プロジェクトの立ち上げスピード、品質、チーム満足度のすべてが向上するのです。

ぜひ、開発依頼時には「技術力」だけでなく、「チームとしての成熟度」を測る視点として、オンボーディング設計にも注目してみてください。

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