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サーバーレス移行で直面したコスト課題とその解決ノウハウ:開発ノート

サーバーレス移行の背景と課題

近年、業務系システムやWebサービスの開発において「サーバーレスアーキテクチャ」への関心が高まっています。従来のオンプレミスやVMベースのインフラでは、インフラ管理にかかる工数・費用が増大しがちで、「運用負荷」の軽減と「予算」の効率化を両立できる点が魅力です。弊社プロジェクトでも、ピーク時に処理リソースを自動拡張できるLambda や Functions、イベント駆動の設計を採用し、開発スピードを優先して導入を決定しました。しかし実際には、

  1. 呼び出し回数が増えたことで予想外の費用増

  2. コールドスタートによるレスポンス遅延

  3. 設計ミスでログ出力量が肥大化しストレージ費用が膨張
    など、サーバーレス特有の課題に直面しました。
    「開発会社」にサーバーレスの選び方と見積もりを依頼する際も、各ベンダーの「相場」は曖昧で、見積もりの前提条件が異なるため比較が難しい状況でした。
    このセクションでは、移行検討時の要件整理から、実装段階で出てきたトラブルまでを時系列で振り返りながら、初期「予算」策定のコツやプロジェクト推進時の注意点をまとめます。

コスト最適化のための設計ノウハウ

サーバーレスの費用は「使用した分だけ支払う」という柔軟なモデルですが、実際に削減効果を得るには設計段階から工夫が必要です。弊社が取り組んだ主な施策は以下のとおりです。

  • ファンクション粒度の見直し

    • 小さすぎると呼び出し回数が増え、まとめすぎると処理時間が増大。適切な粒度により実行時間×呼び出し回数を最小化。

  • バッチ処理へのオフロード

    • 定期実行の処理はStep FunctionsやEventBridgeで夜間バッチに。ピーク時間帯の呼び出し負荷を平準化。

  • ライブラリの軽量化

    • 不必要な依存を削減し、コールドスタート時間を短縮。Lambdaのメモリ設定と呼び出し回数のバランスを最適化。

  • 必要ログの選別とサンプリング

    • CloudWatch Logs 出力量を抑えるため、INFOレベル以下をサンプリング出力に。ログストレージ費用を月数万円圧縮。

  • 外部API呼び出しのキャッシュ活用

    • DynamoDB Accelerator (DAX)やElastiCacheを前段に置き、リクエスト回数とデータ転送料金を低減。

これらの設計変更により、サーバーレス化直後の月額コストが約150万円から90万円にダウン。約40%の「費用」削減を実現しました。しかし、最適化には継続的なモニタリングが不可欠です。CloudWatchやX-Rayでの可視化運用にかかる労力も見積もりに含め、「開発会社」への発注時には運用フェーズのサポート範囲を明確に定義しました。

ベンダー選定と発注時の注意点

サーバーレス移行プロジェクトでは、単に設計・実装を依頼するだけでなく、運用支援やコスト監視体制を包括する「開発会社」の選び方が重要です。以下のポイントを押さえて比較検討しました。

  1. 技術経験と実績

    • AWS認定パートナーか、Azure Functionsでの実績事例数はどれくらいか

  2. 見積もり前提の明確化

    • 1ヶ月あたりの呼び出し件数、処理時間、ストレージ量などを前提に置いて、費用予測モデルを提示できるか

  3. 運用と保守の切り分け

    • 開発完了後の運用保守フェーズで、CloudWatch アラート設定や予算超過時の対応フローをどこまで担保するか

  4. コミュニケーション体制

    • 定例ミーティングの頻度、オンサイト/リモートの混合などを事前に取り決め

発注時には、これらをRFP(発注仕様書)に細かく盛り込み、ベンダーとの合意を文書化。相場感をつかむために3社以上に同一要件で相見積もりを行うことで、「予算」が大きくぶれるリスクを抑えました。

失敗から学んだコミュニケーション術

プロジェクト序盤では、非エンジニアのPMや事業部との認識齟齬が頻発しました。特に「サーバーレスなら運用コストゼロ」という誤解が払拭できず、

  • 開発中の試算とリリース後の実際の費用差

  • 実行時間課金モデルの仕組み

  • ログやネットワーク転送量が含まれる課金項目

など、理解を得るために以下の施策を行いました。

  • ハンズオンセッション:Lambdaを触りながら料金シミュレーションを体験

  • ダッシュボード共有:CloudWatch コストエクスプローラーを事業部にも参照可能に設定

  • FAQ作成:よくある質問をまとめ、社内Wikiで公開

これにより、運用中に急な仕様変更要求や追加予算交渉の多くを事前説明で回避でき、「費用増」のトラブルを半減しました。

継続的モニタリングと改善サイクル

サーバーレス環境では、リリース後の動作状況を可視化し続けることが、発注時に想定した「相場」どおりのコストを維持する鍵となります。弊社では以下のフローで改善サイクルを回しました。

  1. 定期レビューの実施

    • 毎週の定例でCloudWatch 料金エクスプローラーを確認し、前週比の増減要因を特定

    • 新規機能リリース後は、2週間集計を行い運用コストへの影響を評価

  2. アラート基準のチューニング

    • 呼び出し回数急増を検知するアラートを設定

    • メモリ利用率や同時実行数が設定上限に近づいた際に各担当へ自動通知

  3. コストインパクト分析

    • 例えば外部API呼び出しが増えれば、API費用も含めた請求総額をシミュレーション

    • どの機能追加で追加「費用」が発生するかを事前に把握

  4. 改善提案のドキュメント化

    • プロジェクトWikiにコスト最適化Tipsを逐次アップデート

    • 「開発会社」にも同じナレッジを共有し、次期プロジェクトで再利用

これを半年間続けた結果、リリース後3ヶ月でのコスト増加率を当初想定の+20%未満に抑え、さらに半年後には当初予算の85%以内に安定させることができました。運用フェーズでの手戻りを削減し、予算コントロールの精度を高めるためにも、継続的なモニタリング体制は必須です。

コスト可視化の自動化ツール導入

可視化なしには、開発プロセス中の「予算」管理も困難です。以下のように自動化ツールを組み合わせて、運用担当負荷を軽減しました。

  • Terraform/Pulumi によるインフラコード管理

    • リソース追加時に見積もりスクリプトを実行し、即座にコスト予測

  • Cost Monitoring API の連携

    • AWS Cost Explorer API を自動取得し、ダッシュボードに反映

    • Slack 通知で利用量閾値を超えた際に即時アラート

  • Grafana での可視化

    • メトリクスをPrometheus経由で収集、関数別・サービス別コストをグラフ化

    • ドリルダウン機能により、異常発生箇所を迅速に特定

  • レポートの定期配信

    • 月次報告をPDF出力し、経営層への「費用概況」レポートを自動送付

これにより、担当者は手動でコンソールを開かずとも日々のコスト状況を把握可能となり、突発的な「費用」増加を未然に防止できました。運用負荷を低減しつつ、開発サイクルを止めない体制構築が実現します。

大規模運用時のスケーリング戦略

ユーザー数やトラフィックが急増する環境では、スケーリング戦略の誤りが直ちに「予算超過」へとつながります。以下のポイントを踏まえ、大規模運用に耐える設計を行いました。

  1. イベントソースの分割

    • ピーク時間帯の注文イベントは専用ストリームに分離し、処理優先度を調整

  2. バックプレッシャー制御

    • SQS/EventBridge でキューイングし、Lambda 同時実行量を制御

  3. マルチリージョナル展開

    • 災害対策を兼ねて複数リージョンにデプロイし、フェイルオーバー時のコスト増を試算

  4. Reserved Concurrency の活用

    • 安定稼働に必要なコールドスタート回数を抑え、実行時間短縮による課金削減

  5. オンデマンド vs プロビジョンド

    • 常時高いトラフィックが見込まれる関数はプロビジョンドモデルに切り替え、秒単位のスケールコントロール

大規模対応の導入時、検証環境でフェイルオーバー試験とスケールテストを実施しておくことで、本番リリース後の追加修正や緊急発注を最小限に抑えられます。

運用ナレッジの共有とナレッジベース構築

上記のようなノウハウを、チーム全体で定着させるための仕組みづくりも重要です。

  • テンプレート化

    • サーバーレスプロジェクト用の初期構成Terraformテンプレートにコスト最適化オプションを埋め込み

  • ナレッジベース

    • 成功/失敗事例、見積もりモデル、ベンダー比較表などをConfluenceにまとめ、社内共有

  • ワークショップ開催

    • 新規メンバー向けに定期的な「サーバーレス入門&コスト最適化」勉強会を実施

  • レビュー体制

    • プルリクエスト時にコストインパクトレビューを必須ルール化し、コードマージ前にコスト増加リスクを防止

ナレッジが散逸しない組織文化を育成することで、プロジェクト間で繰り返し活用可能な資産が蓄積され、新たな発注時のRFP作成工数を大幅に削減できます。

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