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ダークモード対応は必要か?設計・実装・運用から見た現実的な判断基準とは

近年、多くのアプリやWebサービスで導入されている「ダークモード」。

ユーザーの目の疲労軽減やバッテリー節約の観点から支持される一方で、実際に開発・運用する側にとっては、想像以上に考慮すべき設計ポイントや実装コストが存在します。

本記事では、ダークモード対応を検討する際に押さえるべき判断軸や、実装方法、プロジェクトに与える影響を「開発現場目線」で整理します。

よくある誤解:「色を反転するだけでしょ?」

ダークモード対応は単に「白背景を黒にすればいい」と思われがちですが、現実はそう単純ではありません。

以下のような課題に直面するケースが多くあります。

  • ロゴ・アイコンなどの画像素材が背景に溶け込み見えづらくなる
  • 特定の配色でしか成立しないブランディング設計が破綻
  • ダークモードとライトモードでUXが一貫しない(コントラストやアクセントカラー)
  • コンポーネントごとのスタイル分岐が煩雑化し、保守性が低下

結果的に、「実装してみたけど中途半端な出来になり、使われない」という事態も起こり得ます。

対応を検討する際の判断基準

対象ユーザーの利用環境

  • モバイルユーザー中心であれば、バッテリー節約観点から支持されやすい
  • 業務用システムなど、長時間使用するUIでは目の疲労軽減が有効
  • 高齢者・弱視ユーザーなどアクセシビリティへの配慮が必要な場合は導入価値が高い

ブランド・デザインとの親和性

  • 明確なブランドカラーや背景画像を多用しているサービスは、ダークモードでの再構成に工数がかかる
  • スタイリッシュさや先進性を印象づけたいプロダクトでは、対応が評価されることも

開発・保守コストと継続運用性

  • 初期構築だけでなく、今後追加する画面すべてに分岐処理が必要になる
  • 運用チームにとって、「毎回両テーマでの動作確認が必須」になる点も考慮が必要

実装パターンと設計方法

CSSメディアクエリによるシステムテーマ準拠

@media (prefers-color-scheme: dark) {
  body {
    background-color: #121212;
    color: #ffffff;
  }
}
  • OSやブラウザの設定に自動で追従
  • 最も手軽な導入方法だが、ユーザー切り替えUIがない

テーマ切り替えUIとトグル実装

  • ユーザーが任意にライト/ダークを選べるようにUIを設計
  • 選択状態を localStoragecookie に保持
  • React/VueなどのSPAでは、状態管理と連携したテーマ切り替え機構を実装

デザイン・コンポーネントレベルでの共通設計

  • Tailwind CSSなどのユーティリティフレームワークでは、dark: プレフィックスでスタイル分岐
  • Design System(Figma, Storybookなど)でも、ライト・ダーク両テーマのコンポーネントを管理

ダークモード専用アセットの設計

  • ロゴ、アイコン、イラストなど、背景色に応じた切り替えパターンを用意
  • SVGに切り替え可能なCSSクラスや、<picture>タグを活用した出し分けが有効

開発現場での注意点と課題

テストの複雑化

  • テーマごとに動作確認が必要
  • テストケースも2倍になることを考慮し、CI/CDにも切り替え状態を反映

ドキュメント/運用体制の整理

  • デザイナーとエンジニアで、切り替え仕様・制約・非対応箇所の合意が必要
  • 社内ガイドラインを作成し、今後の画面追加・改修の際の混乱を防止

段階的な導入戦略

  • まずはログイン画面や設定画面など一部に限定して導入し、運用に慣れていく
  • ユーザーからのフィードバックを踏まえ、全体への拡大可否を判断

開発依頼時に確認すべき仕様観点

  • 自動切り替え(OS準拠)か、ユーザー手動切り替えか?
  • テーマ切り替えの保持方法(セッション・Cookie・DB)
  • 非対応画面・非対応コンテンツの定義と対応方針
  • ダークモード用の画像・アイコン・ロゴの有無
  • 開発後のQA・保守体制(両テーマでの確認有無)

まとめ:ダークモード対応は「トレンド」ではなく「設計力」が問われるテーマ

ダークモードは、見た目の問題以上に、設計・保守・運用にかかわる総合的なテーマです。

対応すべきかどうかの判断は、単なるトレンド追随ではなく、ユーザー特性や運用体制との整合性を見ながら慎重に検討すべきです。

発注担当者としては、「対応しているか」ではなく「なぜ対応するのか」「どこまで対応するのか」を明確にし、開発会社と認識を揃えてプロジェクトを進めることが、スムーズな実装と継続運用の鍵になります。

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