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モノリスからマイクロサービスへ──分割プロジェクトの実践ノート

プロジェクト背景と課題認識

ある製造業向け基幹システムでは、長年の開発によってモノリス化が進み、新機能追加やバグ対応に多大な時間がかかっていました。
開発チームは「システム全体の再起動が必要」「特定機能の改修で全サービスのテストが膨大」といった深刻な生産性低下を実感。
また、運用保守コストの増大も課題で、リリース頻度を高めたい一方で「テスト・検証フェーズで予算超過」「相場感を超える追加費用」が発生しやすい状況でした。
事業責任者は「イノベーションが阻害され、新規プロジェクトへの予算配分が難しい」と判断し、アーキテクチャ刷新を決断。
この判断にあたり、「開発会社選び」「予算」「発注」「費用対効果」を経営層に明示し、稟議を通過させる必要がありました。
プロジェクトリーダーはフェーズ1として「モノリス機能の洗い出し」「サービス分割の候補抽出」「優先順位付け」を実施。
ここで重視したのは、依存関係の可視化と「ビジネス上最もクリティカルな機能」を最初に切り出すことでした。
並行して、既存システムのテスト工数やバグ修正コストを可視化し、マイクロサービス移行による見込み効果を試算。
その試算には「平均リリース時間短縮」「テスト自動化による削減時間」「ランニングコスト差分」を含めています。
結果、初期投資として約1,200万円の予算を承認され、相場感から大きく外れない範囲で開発会社を3社選定しました。
要件定義フェーズでは「切り出し対象サービス」「インターフェース定義」「データ移行方法」「運用影響」をドキュメント化。
この背景と課題を明確に共有したことで、開発会社との合意形成と「発注範囲」のすり合わせがスムーズに進みました。

開発方針決定と技術選定

モノリス分割のアプローチには複数のパターンがありますが、本プロジェクトでは以下の方針を採用しました。

  1. データベース分割:各サービスが専用スキーマを持ち、依存度を低減

  2. APIゲートウェイ導入:サービス間通信を一元管理し、認証・ロギング要素を共通化

  3. イベント駆動:Kafkaによる非同期連携で処理遅延とスケーラビリティを担保

  4. サイドカープロキシ:サービスメッシュ(Istio)でトラフィック管理と可観測性を強化

これにより、開発会社に「マイクロサービス構築」「予算管理」「費用見積もり」の明確な指示が可能になりました。
技術選定では、言語は既存Java資産を活かすためSpring Bootを軸に、
Container化にはDockerとKubernetesを採用しました。
予算面では「クラウドリソース利用料」「Kubernetes運用費用」「CI/CDツール利用料」を算定し、
相場感と乖離しないように開発会社に詳細見積を依頼。
発注時には「要件定義終了」「PoC完了」「本番リリース」の3段階で支払いマイルストーンを設定し、
予算消化状況を管理しやすくしました。
これらの技術方針を基に、開発会社とのRFPでは「切り出し対象」「スキーマ変更計画」「テスト戦略」「運用支援」を盛り込み、
プロジェクト全体の透明性を高めています。

マイクロサービス分割の実践と落とし穴

実際の分割作業では、以下のような落とし穴に直面しました。

  • 依存解析不足:API呼び出し元の特定漏れでランタイムエラー多発

  • テストデータ整備:モノリス環境のテストDBをそのまま流用し、データ不整合を頻発

  • バージョン管理の複雑化:サービス間インターフェース変更が追いつかず、リリース計画が頓挫

  • CI/CD設定漏れ:新サービスの自動デプロイ設定が不足し、手動作業が増大

これらを回避するため、以下の対策を講じました。

  1. 依存関係可視化ツールを導入し、静的解析で呼び出し箇所を網羅

  2. 契約テスト(Consumer-Driven Contract Testing)を用いてサービス契約を自動検証

  3. テスト用データ自動シーダーを実装し、各サービスごとにDB初期化を自動化

  4. **インフラコード(Infrastructure as Code)**をTerraformで管理し、CI/CDで環境一致性を担保

これにより、分割作業中のバグ再現性が向上し、追加費用や時間を大幅に削減できました。

CI/CDとインフラ自動化の重要性

マイクロサービス化に伴い、CI/CDパイプラインの整備は必須です。特に以下のポイントを重視しました。

  • パイプライン構成:サービスごとにビルド→テスト→デプロイを分離し、並列実行で効率化

  • インフラ自動化:TerraformとHelmでクラウドリソースをコード管理、手動操作を排除

  • テスト戦略:ユニットテスト、契約テスト、E2Eテストを組み合わせた多層防御

  • 環境分離:開発/ステージング/本番で同一構成を自動プロビジョニング

こうした整備により、マージから本番デプロイまでのリードタイムが3時間→30分に短縮。
初期構築には約400万円、月額保守運用費用は約30万円を見込んで予算化しました。
これらの費用と人月単価を見積もる際に、「発注範囲」「環境構築要件」「運用保守要件」を明確にしておくことで、
開発会社とのトラブルを防ぎ、スムーズな予算管理につなげています。

コミュニケーションとガバナンスの工夫

マイクロサービスプロジェクトでは、複数チームが並行開発を行うため、コミュニケーションとガバナンスが重要です。以下の取り組みを実践しました。

  1. チームシナリオレビュー:毎週全サービスのスクラムレビューを開催し、

    • 依存関係の変更

    • スキーマ改修予定

    • リリース日程
      を共有

  2. APIカタログ管理:OpenAPI/SwaggerとAsyncAPIで非同期イベント仕様をドキュメント化し、

    • 自動生成されたSDK

    • APIエクスプローラー
      を提供

  3. 予算・工数トラッキング:JIRAチケットに見積工数と実工数を紐づけ、

    • 予算消化率

    • コストアノマリー
      をダッシュボード化

  4. 品質ゲート:SonarQubeやOWASP ZAPによる静的解析とセキュリティテストをCIパイプラインに組み込み

これらの仕組みにより、開発会社や社内チーム間の意思疎通が円滑化し、品質基準と予算管理が一元化されました。

フェーズ3:データマイグレーションと後方互換対応

マイクロサービス化が進む中で最も慎重を要するのがデータ移行です。モノリスの一枚テーブルを分割後、各サービス専用DBへ安全にデータを移すには、以下の手順が必須です。

  1. バルクエクスポート/インポート計画

    • 本番スナップショットを取得し、リハーサル環境で流し込み検証

    • 予備費を見込んだダウンタイムを定義(相場:数時間~半日)

  2. 双方向レプリケーション

    • DebeziumなどCDC(Change Data Capture)ツールでデータ同期を維持

    • レプリケーションテーブルを各サービスが読み込む設計でダウンタイムをゼロ化

  3. 後方互換API

    • 古いモノリスAPIをラップしたFacadeサービスを用意

    • フェーズ移行中も旧クライアントが動作可能なまま、徐々に新サービスへスイッチ

  4. 切り戻しプラン

    • 問題発生時に自動でモノリスへフェールバック

    • ロールバックスクリプトと同時に運用手順を整備

このデータマイグレーションフェーズには、専門的な工数とツール費用(DebeziumライセンスやKafkaインフラ構築など)が必要で、初期予算に対し約300万円~500万円の上積みを想定します。発注時には「データ移行テスト計画」「切り戻し条件」「DR要件」を明記しておくことで、開発会社の見積もり精度が高まります。

モニタリングと可観測性強化

サービス分割後の運用フェーズでは、可観測性がシステム安定性の生命線となります。以下のコンポーネントを導入しました。

  • 分散トレーシング

    • OpenTelemetry収集エージェント+Jaeger/Zipkinでリクエストフローを可視化

    • サービス間コールツリーをダッシュボード化し、遅延箇所を瞬時に特定

  • メトリクス監視

    • Prometheus+GrafanaでCPU/メモリ/レスポンス時間/エラー率を収集

    • アラートルールをSLO/SLIベースで定義し、運用チームへSlack通知

  • ログ集約

    • ELKスタック(Elasticsearch, Logstash, Kibana)による構造化ログ集約

    • セキュリティログはSIEMと連携し、不正アクセスを検知

可観測性基盤の初期構築費用は約250万円、月額運用費用は約20万円です。発注要件には「ダッシュボード項目一覧」「アラート閾値定義」「ログ保持期間」を含め、費用と範囲を明確化しましょう。

フェーズ4:自動スケーリングとキャパシティプランニング

マイクロサービスの真価を引き出すには、自動スケーリングによるリソース最適化が不可欠です。取り組み例は次のとおりです。

  1. Kubernetes Horizontal Pod Autoscaler

    • CPU/メモリ使用率トリガーでPod数を動的調整

    • カスタムメトリクス(キュー長やレスポンスレート)連動でSLAを維持

  2. Cluster Autoscaler

    • ノード数を動的に増減し、運用コストを抑制

    • スポットインスタンス活用でリソース費用を20%削減

  3. サーバーレス化試験

    • 一部バッチ処理をLinuxコンテナではなくFaaS(AWS Lambda)へ切り出し

    • 実行時間従量課金でアイドルコストをゼロ化

これらの自動化導入には約200万円の開発費と、ツール設定の学習コストが発生します。開発会社へ発注する際は「Autoscaler要件」「FaaS試験スコープ」「コスト試算モデル」を明確に提示し、余裕を持った予算編成を行いましょう。

フェーズ5:セキュリティ・コンプライアンス対応

マイクロサービス化に伴い、サービス間通信やデータ管理に新たなセキュリティ課題が生じます。プロジェクトでは以下の取り組みを実施しました。

  • マイクロセグメンテーション

    • IstioのAuthorizationPolicyでサービスごとにアクセス制御

    • ポリシーはKubernetes CustomResourceとしてコード管理

  • シークレット管理

    • HashiCorp VaultでDBクレデンシャル/APIキーを動的発行

    • Vault Agent InjectorでPod起動時に自動マウント

  • 脆弱性スキャン

    • CIパイプラインにTrivyを組み込み、コンテナイメージ脆弱性を自動検出

    • SnykやDependabotでライブラリ脆弱性も継続把握

  • 監査ログ

    • Kubernetes Audit LogsをElasticsearchへ送信し、SIEMで長期保存

これらのセキュリティ対策導入には約350万円の初期費用と、月額約30万円の運用費が見込まれます。RFPには「セキュリティテスト計画」「コンプライアンス要件」「監査ログ保持期間」を含め、開発会社への発注範囲を正確に伝えましょう。

継続的改善:技術選定の振り返りとベストプラクティス

プロジェクト完了後、以下の点を振り返りレポートとしてまとめ、今後の開発ノートに活かしました。

  1. 技術選定の妥当性

    • Spring Boot+Kubernetesは既存Java資産にマッチし、学習コストを低減

    • Kafkaイベント駆動は非同期処理の柔軟性を確保

  2. 開発会社との協力体制

    • RFPの精緻化がミスマッチを防ぎ、追加費用依頼を最小化

    • マイルストーン支払い設定でキャッシュフロー管理を強化

  3. 予算管理と費用相場比較

    • 実際の費用は当初見積1,200万円×1.1=1,320万円に収まり、相場感と整合

    • 追加フェーズ(セキュリティ、自動化)で約800万円の予算確保が可能に

  4. ナレッジ蓄積

    • ConfluenceとGitリポジトリで設計ドキュメント・IaCコードを体系化

    • 社内勉強会で「モノリス分割」「Kubernetes運用」「セキュリティIaC」を共有

これらのベストプラクティスを社内の開発ガイドラインに反映し、次回プロジェクトではさらに効率的な進行とコスト最適化を目指します。

まとめ:開発ノートから得る示唆

モノリスからマイクロサービスへの移行プロジェクトは、技術的チャレンジだけでなく、開発会社の選び方、予算・費用・相場感の管理、発注時の要件定義の精度が成否を分けます。

本記事で紹介したように、

  • 段階的フェーズ設計

  • 自動化と可観測性

  • セキュリティとガバナンス

  • 継続的改善の仕組み

を組み込むことで、リスクを最小化しながら高いROIを実現できます。事業責任者や技術リーダーの皆さまは、開発ノートとして本事例を参考に、自社プロジェクトの「発注」「予算」「費用」「相場」「開発会社選び」をより戦略的に計画していただければ幸いです。

なお、開発費用感のスピードチェックには

をご活用ください。

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