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リモート開発環境での「ペアプログラミング」を成功させた失敗と学び

はじめに:リモート開発で直面した課題

昨今、リモートワークが一般化し、多くの開発プロジェクトでは出社せずにシステムやWebアプリ開発を進めるケースが増えています。私が担当したある中小企業向けのシステム開発プロジェクトでも、メンバーは全国各地からリモートで参加しており、従来のオフィスでの開発とは異なる課題に直面しました。本記事では、リモート開発環境で「ペアプログラミング」を導入した際の失敗談と成功体験を開発ノートとして共有します。開発会社の選び方や発注時の予算・費用相場についても触れつつ、非ITのプロジェクトマネージャーや技術リーダーにもわかりやすく解説します。

まず、私たちのプロジェクトでは「開発スピードを落とさず、品質を担保する」ことを目標に掲げました。もともとアジャイル開発手法を採用し、チーム全員が週1回のスプリントレビューを行っていましたが、リモート環境になるとコミュニケーション不足や仕様認識のズレが生じやすくなります。そこで、チーム内のノウハウ共有と品質向上を目的に、ペアプログラミングを導入することを決めました。しかし、実際に試してみると、想定していた効果がすぐには得られず、多くの失敗を経験したのです。本稿では、その失敗要因と改善策、そして最終的に成果を上げたポイントを詳細に解説します。

失敗1:画面共有ツールだけではペア作業が成立しない

最初にペアプログラミングをリモートで実施しようとした際、「画面共有ツールで相手のコードを書き換えながら会話すれば、対面と同じようにペア作業できる」と考えていました。実際に開発会社に依頼し、Zoom上でリモートペアを実施。開発会社のエンジニアAさんと私(プロジェクトマネージャー)が画面を見ながらコードレビューやリファクタリングを行うという試みです。しかし、以下のような課題が浮上しました。

  • タイピング権限の切り替えが煩雑:Zoomでは、ホストがリモートコントロールを許可しないと相手がコントロールできないため、毎回権限を付与・剥奪する手間が発生し、作業が中断されやすかった。

  • コミュニケーションのラグ:数百ミリ秒の遅延でも、コードの打ち込みタイミングがずれることでミスが増加。まるでエンジニアAさんと私が会話で一拍遅れて返事をするような感覚で、対面時に比べて集中力が削がれた。

  • フォーカスの欠如:画面共有中にお互いが同じタブを見ていると思い込んで話しても、実際には異なるファイルやタブで開発をしているケースが発生。仕様確認時に「どの画面を見ているか」を明確に共有できず、認識齟齬が生まれた。

これらの問題により、期待していたほどの成果は出ませんでした。結果的に、工数は1.5倍に膨らみ、開発会社への発注見積もりも予定より高額となり、費用面での相場感を大きく超過する可能性が浮上しました。具体的には、当初ペアプログラミングを1日4時間×5日行う予定が、実際には40時間分(1日4時間×10日)に増え、実装フェーズの予算として設定していた50万円が大きく膨らんでしまったのです。この失敗を受けて、次の改善策を検討しました。

改善策1:専用ツールと短時間セッションで集中度を向上

失敗の原因を分析した結果、「コミュニケーションラグ」「画面共有の停止時間」「認識齟齬」が主因であることが分かりました。そこで、以下の改善策を実施しました。

  1. Visual Studio Live Shareの導入
    VS Codeの拡張機能であるLive Shareを使うことで、エンジニアとプロジェクトマネージャーが同じ開発ワークスペースを同時編集でき、タイピング権限の切り替えが不要になります。Live Shareでは「テレポート」と呼ばれる機能を使い、相手が見ているコード行に瞬時に移動でき、認識齟齬を大幅に削減できました。

  2. 時間分割と短時間セッション
    1回あたりのペアプログラミングセッションを2時間に短縮し、合計のセッション数を増やす方式に変更しました。これにより、集中力を維持しやすくなり、Zoomでの長時間画面共有による疲労感が緩和されました。さらに、セッション後に5分間の休憩をはさむことで、頭をリセットしやすくしました。

  3. 事前課題のトリアージとペア対象の明確化
    事前に「どの箇所をレビューするのか」「どの機能を一緒に実装するのか」を開発リストに細かく記載し、ペアセッションの開始前に認識合わせを徹底しました。例えば、要件定義書やワイヤーフレームを用いて、画面遷移のフローを共有した上で「ここはコードの最適化が必要です」「この箇所はバグ検出テストを重点的にやりましょう」と具体的にタスクを絞り込みました。

上記の改善により、再びペアプログラミングを実施したところ、1セッションあたりの生産性が約1.3倍に向上しました。結果として、開発会社への発注費用は当初の50万円前後のままで抑えられ、予算超過を回避できました。また、自社メンバーと開発会社エンジニアの認識がきちんと揃うため、後工程での仕様変更コストも削減され、相場感と比較しても「追加費用」はほとんど発生しなかったことが大きな成果です。

失敗2:ドキュメント共有の不整備がコミュニケーションを阻害

Parallelに走ったペアプログラミング以外にも、ドキュメントの共有体制が不十分であったことが、プロジェクト後半でのトラブルに繋がりました。以下のような失敗が発生したのです。

  • 要件定義書のバージョン管理ミス:Googleドキュメントで要件定義を記載して都度更新していましたが、特定のページに加筆した際に「最新のURL」を開発会社に共有せず、古い仕様書を参照されたまま開発が進行。結果的に相違が生じ、後から追加費用を支払って修正対応を依頼する事態になりました。

  • テスト仕様書の分散管理:各メンバーがローカルにExcelで作成したテストケースを提出していたため、テスト実施時に「どのテストが完了していて、どのテストが未確認か」が把握できずにテスト漏れが発覚し、本番リリース後に重大なバグが見つかるリスクを招きました。

  • コードコメントとレビュー記録の不統一:GitHubのPull Requestでコードレビューを実施していましたが、プロジェクトマネージャーが修正指示をSlackで行うことが多く、開発会社エンジニアは「GitHub上に変更履歴を残すのか、Slack上にコメントを残すのか」がわからずに混乱。ログが分散し、後から仕様確認時に不要な手戻りが発生しました。

これらの問題により、本来1週間程度で完了するテストフェーズが2週間に延長され、開発会社への追加費用として約30万円ほどの見積増加が必要になりました。さらに、リリース後にユーザーからの問い合わせやバグ報告が相次いだため、サポート対応費用が増加し、プロジェクト全体の費用は当初見積と比較して約20%増加してしまう結果となりました。

改善策2:ドキュメント管理の標準化とCI/CDの導入

ドキュメント共有の不整備を解消するために、以下の対応を実施しました。

  1. GitHub WikiとIssueテンプレートの活用

    • 要件定義書や設計書をGitHub Wikiに移行し、バージョン管理を一元化。各ページに「更新履歴」を明示し、更新日時と担当者名を必ず記載するルールを設定しました。開発会社にもアクセス権を付与し、常に最新ドキュメントを参照できるようにしました。

    • バグ報告や機能追加要望はIssueテンプレートを用意し、「概要」「再現手順」「期待動作」「実際の動作」を記入してもらう形式に統一。これにより、誰がいつどのような問題を報告したかが明確になり、相互の認識齟齬を防ぎました。

  2. CI/CDパイプラインの構築

    • GitHub Actionsを使い、ソースコードのプッシュ時に自動でユニットテストを実行し、結果をSlackへ通知するフローを構築。これにより、コードレビュー時の品質担保とドキュメント(テスト結果ログ)の一元管理を実現しました。

    • テスト仕様書は、Markdown形式でテストケースをGitHubリポジトリ内に配置し、CI実行時に「未実行のテストがあるか」をチェックするスクリプトを導入。テスト漏れを自動検出する仕組みを構築したことで、テストフェーズの品質を向上させるとともに、追加費用の発生を防ぐことができました。

  3. コードレビューのワークフロー改善

    • Slack上でのやり取りを極力減らし、Pull Request内で「@レビュー担当者」が必ずコメントを残すルールを設定しました。これにより、レビュー指摘内容が一元化され、開発会社エンジニアはGitHubの変更履歴を見ればすぐに修正ポイントを把握できるようになりました。

    • 大規模な仕様変更や設計変更を行う場合には、あらかじめドキュメントを更新し、CIパイプラインの「ドキュメント更新チェック」をパスさせることで、ドキュメントが常に最新であることを強制しました。

これらの改善策を導入した結果、ドキュメントのバージョン管理ミスやテスト漏れは激減し、開発会社への追加発注費用も発生しなくなりました。また、本番リリース後の問い合わせ件数が大幅に減少し、サポートフェーズの運用コストを約15%削減できたのは大きな成果です。

失敗3:要件定義の曖昧さが発注工数と費用を増大させた事例

開発プロジェクトにおいて最もコストを膨らませる原因の一つが「要件定義の不十分さ」です。私が関わった別プロジェクトでは、非ITの事業責任者B氏が「システムを作ると売上管理が楽になる」とだけ依頼し、詳細な業務フローや優先順位を開発会社C社へ提示していませんでした。結果として、以下のような問題が発生しました。

  • 機能追加の連鎖:リリース後にB氏が「あれも必要、これも必要」と付け加えた結果、本来想定していなかった機能が次々に要件へ組み込まれ、開発会社への追加発注が止まらなくなる

  • 管理項目の漏れ:売上管理システムといっても「請求処理」「支払い予定」「顧客別分析」「業者別入金消込」など多岐にわたるため、要件を一律に伝えたことで、開発会社は「すべての機能を実装」と解釈し、見積りが膨らむ

  • コミュニケーションコストの増大:稼働中に要件更新要望が月に3~4回のペースで発生し、開発会社側はその都度見積書を修正し、社内で承認を取り直す必要があった。結果的に契約金額が当初の500万円から約700万円に増加し、予算・費用相場を大きく上回ってしまった

具体的には、B氏から開発会社C社に発注した際、「売上管理システム(フロントエンド、帳票出力、CSVエクスポート、グラフ集計)」という曖昧な依頼だけ行い、要件定義フェーズを一任しました。C社のエンジニアは要件ヒアリングを行ったものの、非IT担当者の言葉で伝えられた業務イメージを解釈する過程で仕様誤差が生じ、以下のように工数が増えていきました。

  • 初回見積(要件定義+基本機能):約500時間、500万円

  • 追加要件(請求書発行と支払消込):約100時間、100万円

  • さらに分析レポート機能追加:約50時間、50万円

  • 納期遅延によるリスケ調整費用:約30万円

  • 総額:約700万円

このように、要件定義の曖昧さが「相場より2割以上のコスト増」を招き、予算オーバーだけでなく、納期遅延による機会損失のリスクも生じました。

改善策3:ワイヤーフレームと業務フロー図で要件を可視化

要件定義の曖昧さを解消するために、以下の施策を実施しました。

  1. ワイヤーフレームの作成

    • まず、事業担当者B氏に対して、BalsamiqやFigmaを使った簡易ワイヤーフレームを作成。画面遷移や入力項目を目に見える形にし、「売上管理画面」「請求書発行画面」「レポート出力画面」などをイメージできるようにしました。

    • ワイヤーフレームには「各画面で必要な項目(例:顧客名、商品コード、単価、数量、合計金額、税率)」を具体的に記載し、UIイメージと合わせて業務シーンを想像しやすくしました。

  2. 業務フロー図の作成

    • 経理担当者や営業担当者も交えて、「受注→売上(仮計上)→請求書発行→入金確認→売上確定」という業務フローをフローチャート化。どのタイミングでステータスを切り替えるか、どの人が承認するかを明示しました。

    • フロー図はLucidchartやDraw.ioで作成し、「分岐条件」「処理バッチ」「帳票出力タイミング」を図示することで、業務担当者が「自分の業務がシステムにどう反映されるか」を直感的に理解できるようにしました。

  3. プロトタイプの早期共有

    • ワイヤーフレームをベースに、Figmaのプロトタイプ機能を使って動作イメージを作成。事業担当者は実際に疑似的にボタンをクリックして画面遷移を確認し、業務フローに抜け漏れがないかをレビューできる環境を整えました。

    • 開発会社への発注前に、このプロトタイプをもとに修正要望をまとめ、「要件一覧表」を作成。機能ごとに「優先度」「想定工数」「関連ドキュメント」を整理し、開発会社からの見積もり段階で工数と費用を明確にしてもらうようにしました。

これにより、要件定義の段階で「何を作るのか」「誰がどの画面で何を操作するのか」が具体化され、開発会社C社も正確な見積を提示できるようになりました。結果として総工数は約550時間に抑えられ、最終的な開発費用は550万円前後で落ち着きました。さらに、開発会社への発注範囲を「要件定義フェーズ」「開発フェーズ」「テストフェーズ」に明確に切り分け、契約金額を固定料金で決めることで、急な要件追加が生じた場合は別途オプション費用として請求する方式に移行。これにより、プロジェクト全体の予算超過リスクを大幅に軽減できました。

成功事例:リモートペアでコード品質を飛躍的に向上させたケース

前半では、リモート環境でのペアプログラミング導入時の失敗と改善策を紹介しました。ここからは、実際にその改善を適用して成果を上げた具体的なケースをご紹介します。システム開発会社に依頼する際の選び方や、予算・費用相場を押さえた上で進めたプロジェクトです。

ある自社サービス刷新プロジェクトでは、既存システム(PHPベースの旧CMS)をよりモダンなアーキテクチャに置き換えるため、リモート開発環境でTypeScript+Reactを用いた新UI開発を行うことになりました。開発会社D社と協業し、ペアプログラミングを中心とした開発手法を採用しました。

プロジェクト概要と開発会社の選定

  • 目標:ユーザー体験を重視し、アクセス速度を改善した上で管理画面を刷新し、開発スピードを1.5倍に向上させる

  • 開発規模:フロントエンド(React)、バックエンド(Node.js+Express、既存DB連携)、API開発・統合テスト含めて約1,200時間相当

  • 開発会社D社の選び方

    • ReactとTypeScriptプロジェクトの実績が豊富

    • リモート開発・CI/CD環境構築のノウハウを多数保有

    • 予算上限として800万円(概算相場)を提示し、複数社へRFP(提案依頼書)を発行。D社は月額見積と成果物検収基準を明確に提示し、透明性の高い費用構造を持っていたため採用を決定

D社では「要件定義」「画面設計」「開発」「テスト」「運用保守」の各フェーズごとに、アジャイルスプリントを2週間単位で区切り、成果物のリリースを繰り返しました。ペアプログラミングは主に開発フェーズで活用し、各スプリントごとに重点的にペアセッションを行うタイミングを設定しました。

改善されたペアプログラミング運用

  • セッション前の準備

    • 各スプリント開始前に、D社と自社の技術リーダーで「開発対象機能」「タスクの優先度」「画面遷移フロー」を共同で確認し、ペアプログラミングが必要な箇所を事前に明確化。

    • 実装タスクをGitHub Issueに分解し、ストーリーポイントを設定。これにより、「次のペアセッションでここを実装する」「この箇所はコードレビューする」というように具体的にタスクを絞り込めるようになった。

  • ペアセッションの実践

    • Visual Studio Live Shareを使い、自社の技術リーダーとD社エンジニアが同じワークスペースで開発。ホワイトボード機能を活用してリアルタイムにコードの設計意図やユースケースをメモ共有することで、認識齟齬を最小化した。

    • 1回あたり2時間のセッションを3回/週に実施し、残り時間は各自で実装・リファクタリング。短時間集中型のため、作業効率が高くなり、スプリントごとの完了率が当初の60%→90%に向上。

  • 成果と品質向上

    • ペアプログラミングを通して、実装時に出やすいバグがその場で検知・修正され、ユニットテストのカバレッジがスプリント終了時点で80%超に達した。これにより、QAフェーズでのバグ発見件数が従来比で約70%減少し、テスト工数を大幅に削減できた。

    • 結果的に、フルスクラッチのUI実装が予定の600時間を500時間に短縮でき、開発会社への実質発注額は当初想定の800万円から約720万円に抑えられた(約10%のコストカット)。また、自社の開発工数としては、ペアセッションに参加したCTOや技術リーダーの工数を加えても、トータルで設計・実装・テスト含めて1,000時間程度で完了したため、予算・相場感と比較しても費用対効果は非常に高かった。

心理的安全性の確保とチームビルディングの重要性

リモート環境下でのペアプログラミング成功の鍵は「技術的なツール選定」だけではありませんでした。特に技術リーダーやプロジェクトマネージャーにとって大きな学びとなったのが、メンバー間の心理的安全性をいかに確保するかです。

具体的な取り組み事例

  • 毎朝のスタンドアップミーティング

    • Slackのビデオ通話機能を使い、各自がその日のタスク進捗や課題を共有する短時間ミーティングを毎朝行うことで、チーム全体の状況を可視化。

    • 単に「進捗報告」だけでなく、「自己評価」「困りごと」「学びポイント」をワンフレーズで共有するルールを設け、「発言しやすい雰囲気」「質問や相談がしやすい環境」を作成。

  • バーチャルコーヒーブレイクの実施

    • 週に一度、業務時間外に自由参加のオンライン飲み会(Slack音声通話)を開催し、開発会社D社のエンジニアと自社メンバーが仕事以外の話題を共有。

    • 雑談を通じてお互いの人柄や趣味を知ることで、ペアプログラミング時に遠慮せずに意見交換ができるようになり、問題が発生した際の心理的障壁が低減した。

  • リーダーからのフィードバック文化

    • スプリント終了後、D社のエンジニアと自社技術メンバーの双方が匿名で相互フィードバックを投稿できるフォームを用意。良い点や改善点を率直に記述できるため、小さな不満や疑問点が早期に顕在化し、次スプリントで迅速に対応できた。

    • この取り組みにより、ミスや仕様齟齬を指摘しやすい雰囲気が自然と醸成され、品質の高いコミュニケーションが実現。

これらの取り組みを通して、開発会社D社のエンジニアと自社メンバー間に信頼関係が構築され、リモート環境でも「対面時と同様のチーム連携」が実現しました。結果的に、ペアプログラミングでの成果も向上し、開発速度・品質ともに向上したのです。具体的には、リモート開始当初はスプリントあたりの完了率が60%程度だったものが、心理的安全性を確保した取り組み後は90%以上を維持できるようになりました。

リモート開発特有のツール連携と生産性向上

リモート開発では、エディタやチャット、プロジェクト管理ツールなど多くのツールが連携します。これらのツール連携を工夫することで、開発会社への発注費用を抑えつつ、システム開発全体の生産性を高めることが可能です。

ツール構成のポイント

  • 統合開発環境(IDE)連携

    • Visual Studio Code+Live Shareを中心に据え、GitHub連携でプルリクエストの作成からマージまでをワンストップで行えるように設定。CI/CDはGitHub Actionsで自動化し、テスト結果やデプロイ状況をSlackへ通知。

    • これにより、開発会社D社のエンジニアと自社メンバーが同じワークスペースで作業する際、作業開始からテスト・マージまでのサイクルを短縮し、不要な手戻りを減らした。

  • チャット連携とナレッジ共有

    • Slackのチャンネルを「#daily-standup」「#dev-pair」「#ops-alert」と機能別に作成し、Issue番号やURLを貼るだけで自動でプレビュー表示される設定を適用。

    • かつてタスク進捗や見積もり調整のために個別にメールや電話をしていた非効率な日々から脱却し、SlackとGitHubの連携で開発会社とリアルタイムに情報共有できる環境を構築。結果、開発工数の10%程度をコミュニケーションコスト削減に充てることができた。

  • プロジェクト管理とスコープコントロール

    • Jiraを用いてEpic→Story→Taskの階層構造を構築し、見積もり時点で「ストーリーポイント」「予算(工数換算)」「優先度」を各チケットに紐付け。

    • プロジェクトマネージャーがSprint Planningでチケットを調整し、必要に応じて優先度の見直しやストーリーポイントの再評価を行うことで、開発会社への発注範囲を常に可視化。見積もり段階での相場と比較して、工数オーバーを未然に防ぎ、予算超過リスクを低減できた。

このようなツール連携の最適化により、従来の「週次レポート+メール確認」では見落としていた小さな課題やイシューもリアルタイムに検知できるようになりました。開発会社D社は「ツール運用支援」も受託していたため、初期構築費用として約100万円を投資しましたが、2ヶ月~3ヶ月でコミュニケーションコスト削減分が回収できたため、長期的に見れば費用対効果は非常に高かったといえます。

リモート開発時の品質保証と責任分担

リモート開発環境で品質を担保するためには、自社側と開発会社側の責任範囲を明確にし、発注時点で契約条件に盛り込んでおくことが不可欠です。ここでは、品質保証の観点で行った取り組みと、成果を左右したポイントを解説します。

品質保証のフロー設計

  1. ユニットテストとコードカバレッジ基準の設定

    • 開発会社D社と合意して、ユニットテストは最低でも70%以上のカバレッジを達成することを契約書に明記。自社側でもJestを使ったテストコードを一部作成し、開発会社へサンプルとして提供。

    • カバレッジ測定はCI/CDパイプラインで自動化し、しきい値を下回る場合はマージ拒否とし、開発会社が修正対応。これにより、テスト不足による後工程の不具合発生を大幅に抑制した。

  2. レビューボードと段階的検収

    • プロジェクトの各フェーズ(要件定義→設計→実装→テスト→本番リリース)ごとに「レビューボード」を設置し、自社技術リーダー、開発会社のリードエンジニア、QAチームが参加する。

    • リリース前の段階的検収では、「機能同梱リスト」「テストシナリオ」「デプロイマニュアル」を提出必須とし、各項目にOK/NG項目を作成。品質指標を数値で管理し、NGが発生した場合は開発会社側で修正対応。

  3. 稼働後のパフォーマンスモニタリング

    • New RelicやDatadogなどのAPM(アプリケーションパフォーマンス管理)ツールを導入し、レスポンスタイムやエラー率をリアルタイムで計測。

    • 開発会社D社には「運用保守契約」を結び、異常値アラートが発生した際は優先的に対応するSLA(Service Level Agreement)を明記。これにより、自社側の運用担当者が常駐しなくても、開発会社のサポートで24時間体制の安定稼働を実現できた。

これらの品質保証フローを整備した結果、リリース後の初月に発生した障害件数は5件程度に留まり、すべて対応が翌営業日以内に完了しました。また、システム改修や追加要件が発生した場合も、Responsibility Matrix(RACIチャート)を用いて「誰が要件を定義し、誰が実装し、誰がテストするか」を明確化したため、追加発注工数を最小限に抑えられました。発注時の想定予算は1000万円前後でしたが、最終的には約950万円でプロジェクトを完了できたため、費用対効果は高かったと評価できます。

まとめと次に活かすポイント

リモート開発環境でのペアプログラミングは、ツール選定やコミュニケーション方法だけでなく、開発会社への発注範囲や予算・費用管理を含めた総合的な設計が求められます。本記事でご紹介した失敗事例と成功事例から得られるポイントを以下にまとめます。

  1. ツール選定と運用設計の重要性

    • 画面共有だけでは不十分で、Live Shareのような専用ツールを導入し、タイピング権限やフォーカスを適切に管理する

    • プロジェクト管理ツール(GitHub、Jira、Slack連携)を整備し、開発会社とのコミュニケーションをリアルタイムで効率化する

  2. 要件定義とドキュメント管理の徹底

    • ワイヤーフレームや業務フロー図を活用して要件を可視化し、開発会社への発注時に曖昧さを排除

    • ドキュメント管理はGitHub WikiやIssueテンプレート、CI/CDによる更新チェックを組み合わせて運用し、バージョン齟齬を防ぐ

  3. 品質保証フェーズの設計と責任分担

    • ユニットテストのカバレッジ基準やレビューボードによる段階的検収を契約書に明記し、品質担保の責任範囲を明確化

    • APMツールによるパフォーマンス監視とSLA契約を組み合わせ、開発会社へ運用保守を発注することで、稼働後のコストを最適化

以上のポイントを踏まえ、リモート開発環境での「開発会社への発注」「費用見積もり」「要件定義」「QA設計」「運用設計」を総合的に行うことで、プロジェクトの品質とコストパフォーマンスを最大化できます。特に初めてリモートでシステム開発を発注する場合は、本記事のノウハウを参考に要件を整理し、相見積もりを通じて適切な相場感を把握してから発注を行うことをおすすめします。

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