レガシーシステム刷新の開発ノート:リファクタリングで成功する実践ガイド

プロジェクト背景とレガシー課題の可視化
ある製造業向け受注管理システムは、開発会社に20年以上前に納品されて以来、画面のレイアウト変更や新機能追加のたびにコードが複雑化し、バグ修正や追加開発に膨大な「費用」と「時間」がかかる状態でした。初期投資後の「予算」追加も数百万円単位で発生し、内製チームの工数も圧迫。相場を調査すると、同規模システムのワンポイント保守は月額50~100万円が一般的であり、X社の状況はすでに相場を超過していました。そこでプロジェクト責任者は「開発会社」への追加発注を一時凍結し、自社エンジニアを中心としたリファクタリングチームを編成。まずは現行コードの課題可視化から着手しました。
可視化のポイントは次のとおりです。
-
ビジネスフローとコードの紐付け:業務担当者と共同でプロセスを洗い出し、対応するソースファイルをマッピング
-
コードメトリクス分析:Cyclomatic Complexityや行数をSonarQubeで計測し、高複雑ファイルを優先対象に設定
-
テストカバレッジ調査:ユニットテストやE2Eテストが未整備な領域を特定し、品質リスクを可視化
これらを踏まえ、リファクタリングの優先度を決定。まずは影響範囲が広い受注登録画面のモデル層とコントローラ層の整理を選択しました。結果として、初回のリファクタリングでバグ件数が月間20件から5件に激減し、保守コストを30%圧縮することに成功。最終的に、この経験を基に「システム刷新に向けたフェーズ1」の発注見積もりを開発会社に提示し、追加「予算」を明確化して合意を得ました。
スモールスタートで始めるリファクタリング戦略
リファクタリングは大規模一斉実施ではなく、スモールスタートで継続的に進めるのが鉄則です。具体的には「毎スプリント1箇所」の改善をルール化し、次のステップでカバレッジを広げる方式を採用しました。この際、開発会社から支援を受けるポイントは下記の通りです。
-
専門家レビュー:自社エンジニアだけでは見落としがちな設計パターンの問題点を指摘してもらう
-
共同ペアプログラミング:ベンダーのリファクタリング経験者と1タスクずつ対面でコードを改善
-
リファクタリングテンプレート:改善すべき典型的アンチパターンをドキュメント化し、自社チームが発注前に参照
導入当初は、リファクタリングだけで1スプリントあたり80人時程度の工数を見込んでいましたが、テンプレート共有により徐々に効率化。5スプリント目には40人時まで短縮でき、追加「費用」も半減しました。さらに、継続的改善の成果物として、社内用リファクタリングガイドを整備し、新規メンバーへのオンボーディングコストを削減。これにより、次の大型機能追加フェーズでは既存コードへの理解工数が削減され、結果として追加予算を抑制できました。
テスト自動化と品質向上の取り組み
前半でリファクタリングと継続的改善の基本戦略を紹介しましたが、品質を担保しつつ「開発会社」への追加発注費用を抑えるには、テスト自動化が不可欠です。以下のポイントで進めましょう。
-
ユニットテストの拡充
-
重要なビジネスロジック(受注計算、在庫判定、価格計算など)を対象に、テストカバレッジ80%以上を目指します。
-
Jest(JavaScript/TypeScript)、RSpec(Ruby)、JUnit(Java)など、言語・フレームワークに最適なツールを選定。
-
テストコードは「ドキュメント」としても機能し、後続開発会社や新規エンジニアのオンボーディングコストを低減します。
-
-
E2Eテストの導入
-
CypressやPlaywrightを使い、ブラウザ操作を自動化。主要な画面フロー(ログイン→受注登録→明細確認→完了)を定義し、リグレッションを防止。
-
CIパイプラインに組み込み、プルリクエスト毎に検証。テスト失敗時は自動でSlack通知し、早期対応を徹底します。
-
-
契約テスト(Contract Test)
-
サービス間連携が多い場合はPactを活用し、APIドキュメントと実装のズレを検出。これにより、外部パートナーへの追加「費用」発生を回避。
-
マイクロサービス化を進める中で、各サービスの契約仕様を明文化し、独立デプロイと安全なマージを実現します。
-
-
テスト成果の可視化
-
SonarQubeで静的解析レポートを定期的にチェックし、品質ゲートライン(重大度Blocker/Criticalの発生件数0)を設定。
-
デイリースタンドアップでテスト結果を報告し、品質課題をチーム全体の「課題」として共有します。
-
これらの施策により、不安定だったリグレッションバグが90%削減され、保守コストを月額¥200,000以上節約できた事例もあります。投資したテスト自動化費用は1年で回収し、その後は新機能開発に集中できる体制を構築しました。
CI/CDとデプロイ自動化の実践
継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)は、リリースと運用コストの最適化に直結します。具体的には以下を実装しましょう。
-
Gitフローの確立:main/develop/featureブランチ運用を徹底し、プルリクエスト時点で自動ビルドとテストを実行。
-
パイプライン設計:GitHub ActionsやGitLab CI、CircleCIを利用し、ビルド → ユニットテスト → E2Eテスト → Dockerイメージ生成 → デプロイ のステージを構築。
-
ステージング自動デプロイ:プルリクエストマージ時にステージング環境へ自動デプロイ。関係者によるQAサイクルを効率化。
-
本番デプロイ戦略:Blue-Green DeploymentやCanary Releaseを採用し、切り戻しリスクを最小化。AWS CodeDeployやArgo CDを活用するケースが増えています。
CI/CD導入で、リリースにかかる稼働時間が従来2人日から2~3時間に短縮。これにより、緊急パッチ対応や本番改善要望も迅速にリリースでき、顧客満足度の向上につながりました。自動化スクリプトの保守は年1回の見直しで済み、追加発注の必要性を大幅に削減しています。
インシデント対応とSLA設計
開発ノートの視点から、障害対応とSLA(Service Level Agreement)の設計も重要です。実際にX社で行った取り組みを紹介します。
-
インシデント管理フロー整備
-
PagerDutyとSlackを連携し、重大障害時には自動でエンジニアへアラート。
-
インシデント発生時の対応手順をRunbookとして整備し、初動対応を5分以内に完了できる体制を構築。
-
-
SLAレベル分け
-
ゴールド:99.9%可用性/メンテナンス通知72時間前
-
シルバー:99.5%可用性/メンテナンス通知48時間前
-
ブロンズ:99.0%可用性/メンテナンス通知24時間前
外部パートナーや顧客向け契約時に、上記をベースに費用設定。ゴールドは追加月額¥200,000、シルバー¥100,000、ブロンズ¥50,000程度が相場です。
-
-
ポストモーテム実施
-
障害後72時間以内に振り返り会議を実施し、原因分析と再発防止策を決定。
-
再発防止策はJIRAチケット化し、リファクタリングやモニタリング設定として実装。
-
これらの運用により、障害再発率が前年度比70%減少し、障害対応にかかる社内コストを年間¥1,000,000以上削減できました。
開発ノートまとめと次のステップ
ここまでご紹介した各施策をまとめると、レガシーシステム刷新の成功ポイントは以下の通りです。
-
課題可視化フェーズを徹底し、リファクタリング優先度を明確に
-
スモールスタート×継続改善でコストを分散し、追加予算リスクを抑制
-
テスト自動化とCI/CD導入で品質担保とリリーススピードを両立
-
インシデント管理とSLA設計で運用コストと信頼性を最適化
次のステップとしては、以下を検討してください。
-
業務分析ツール(アナリティクス)連携によるUX改善サイクル導入
-
マイクロサービス化の本格推進とイベント駆動アーキテクチャの検証
-
AI/機械学習を活用した自動障害予測モデルのPoC実施
開発ノートとして蓄積された知見は、次回以降のプロジェクトでの「選び方」や「相場」感を判断する際に不可欠なナレッジとなります。ぜひ社内Wikiやドキュメント管理ツールに残し、継続的にアップデートしてください。
最後に、今回ご紹介したノウハウを踏まえ、開発費用の見通しを立てたい方は、以下のリンクから3分で費用感をスピードチェックしてみてください。発注計画のブラッシュアップにお役立てください。