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開発ノート

建設現場DXを実現!進捗管理モバイルアプリ開発ユースケース

プロジェクトの背景と現状の課題

ある中堅建設会社A社では、複数の現場を同時並行で進めるなか、現場責任者が紙ベースの進捗報告をまとめ、事務所に持ち帰って再入力するという非効率な運用に悩んでいました。書類紛失による遅延や、入力ミスで発注見積りにずれが生じるなど、システム化ニーズは高まる一方でした。中でも以下の課題が顕在化していました。

  1. レポート回収に要する時間が平均3日以上

  2. 進捗報告のフォーマット統一が困難

  3. 事務作業に割かれる工数が全体の20%以上
    これらの背景から、タブレットやスマホで現場からリアルタイムに進捗・写真を報告できるモバイルアプリの構築が本プロジェクトの発端でした。既存システムとの連携や将来的な機能拡張も視野に入れ、「発注から報告まで一気通貫で効率化できるシステム」を目指しました。

開発会社選定のポイント

A社が開発会社を選ぶ際に重視したのは、次の3点です。

  1. 業務理解力:建設現場の用語や工程を理解し、要件定義をスムーズに進められるか

  2. 技術スタック:React Native や Flutter などマルチプラットフォーム対応技術の採用実績

  3. 予算感と相場:初期開発費用の提示と、月額保守費用の相場感を明示できるか
    特に「業務理解力」は見積り精度に直結します。相見積もりでは、見積額が最も安価な会社が必ずしも最適ではありません。A社では、複数の開発会社に30万円ずつの予算枠で試算依頼を行い、質問回答のスピードと提案の具体性でパートナーを絞り込みました。

要件定義と予算策定の工夫

要件定義フェーズでは、以下の手順で進めました。

  • ワークショップ開催:現場責任者、事務スタッフ、経営陣を交えた1-dayワークショップを2回実施

  • ユーザーストーリーマッピング:紙・ペンから始め、Miro でタスクフローを可視化

  • MVP範囲の明確化:初期版で最低限必要な「進捗入力」「写真添付」「報告受領」の3機能に絞り込み

  • 追加機能の優先順位づけ:「マテリアル発注」「品質チェックリスト連携」は次フェーズに繰り越し
    こうした工夫で、初期予算300万円の中に要件を収め、費用超過リスクを抑制できました。予算の決め方としては、過去の類似プロジェクト相場を元に、開発会社各社の見積り幅(200〜400万円)を比較し、真ん中の300万円を目安に設定。見積書には「DEVELOPMENT」「DESIGN」「YOUR MARGIN」「保守費用」の内訳を必ず明示してもらうように依頼しました。

開発初期フェーズでの工夫

開発開始後、スムーズに立ち上げるために次の施策を実施しました。

  1. デイリースクラムの徹底:オンラインミーティングで開発会社と毎朝15分、進捗・課題を共有

  2. デザインシステム適用:A社のCIに合わせたカラーパレットとアイコンセットをStorybook化し、UI/UXを迅速に統一

  3. バックエンドAPI仕様の固定化:Swagger/OpenAPI でインターフェースを明確化し、受発注と工数管理を自動化

  4. 進捗可視化ダッシュボード:開発管理ツールにJira を採用し、チケットステータスを経営層でも閲覧可能に
    特に、デザインシステムを使ったことでパーツ単位の再利用が進み、UI修正コストが30%削減。バックエンド仕様の固定化は、APIリリース時の齟齬を防ぎ、開発会社側の手戻りも最小限に抑えられました。以上の取り組みで、初回スプリントから安定した納期・品質を確保できました。

導入効果の可視化とROI分析

新システム導入後、A社ではまずKPIを明確化し、プロジェクト投資に対するROIを算出しました。具体的には「進捗報告回収工数の削減率」「報告遅延による手戻りコスト削減額」「発注ミス件数の減少数」の3つを重視しました。進捗報告回収工数は従来平均5時間/週だったものが1時間まで短縮され、年間で約200時間の工数削減効果が確認できました。報告遅延の手戻りコストは、これまで月1件発生していた大規模手戻りがゼロになり、想定コスト削減額は年間約150万円に上りました。発注ミスは従来比70%減少し、資材費用の無駄削減に貢献しています。これらのデータをBIツールで可視化し、経営会議の場で毎月レポートとして提示。定量的に効果が示せたことで、経営層の理解と追加予算承認も円滑になりました。

・進捗回収工数削減:80%
・手戻りコスト削減額:約150万円/年
・発注ミス削減率:70%

これにより導入初年度に要した約300万円のシステム開発費用は、工数削減とコスト削減効果だけで1.2年以内に回収可能との試算が得られました。発注からコスト回収までのペイバック期間が具体的に示されたことで、同業他社への横展開検討や社内SEチームへの予算配分も説得力が増しました。

保守運用コストとベンダーリレーションの最適化

システム稼働後は、初期保守フェーズとして3ヶ月間の無償サポート期間が設定されました。その後は月額20万円の保守契約に移行。保守内容には以下が含まれています。

  1. 障害対応:24時間以内の一次対応、72時間以内の復旧保証

  2. 機能改善:年2回の定期アップデートに伴う機能追加やUI修正

  3. セキュリティパッチ適用:外部脆弱性公表後1ヶ月以内

さらに、保守運用を自社内で効率化するために「ナレッジベース」の整備を並行実施。Q&A形式で過去の障害事例や対処手順をストックし、次回以降は保守ベンダーへの依頼を半減できるようにしました。システム改修要求はJira上で管理し、優先度ごとにロードマップを共有。これにより保守費用が高騰するリスクを抑制し、予算感を安定化できます。

拡張フェーズの進め方と追加機能開発

導入初期のMVP構築が安定稼働した後、A社では次フェーズとして「在庫管理連携」「品質チェックリスト」「受発注自動化」を追加で開発しました。要件定義では「まず現状運用フローをヒアリングし、最も業務負荷が高い箇所を特定」する手法を採用。

  • 在庫管理連携:倉庫システムAPIと接続し、資材入出庫データをリアルタイム表示

  • 品質チェックリスト:安全点検項目をスマホで入力し、ペーパーレス化を実現

  • 受発注自動化:見積りデータを自動作成し、メール送信までをワンクリックで完了

これらの追加機能は、初期開発と同じ開発会社に依頼することで工数単価を引き下げ、総開発費用を約200万円に抑えました。予算面では「初回開発費用の15%割引」を交渉で獲得し、追加予算承認をスムーズに獲得できたことが成功要因です。

運用フェーズでのユーザー定着化施策

システムが使われ続けるかどうかは運用フェーズの定着化が鍵となります。A社では以下の3つの施策を実施しました。

  1. 現場担当者トレーニング:導入初期3ヶ月は週1回のハンズオン研修を実施し、操作習熟度を高める

  2. FAQサイト立ち上げ:社内Wikiによくある質問と回答を掲載し、自助努力で解決できる環境を整備

  3. 利用状況ダッシュボード:ログイン率や機能利用率を可視化し、定期的に利用促進キャンペーンを実施

これにより、現場責任者のシステム利用率は90%以上を維持。報告漏れも大幅に減少し、チームコミュニケーションの改善にも寄与しました。ユーザーの声を定期的にフィードバックミーティングで吸い上げることで、継続的なUI改良が可能になり、結果として「使いやすさ」の向上と工数削減を両立できました。

トラブル対応と改善サイクルの構築

全社展開を進める過程で、ネットワーク不安定時の写真アップロード遅延、API仕様変更による一時的なデータ乖離など、いくつかのトラブルが発生しました。A社はこれらを以下のプロセスで迅速に解決しました。

  1. インシデント管理体制の整備:障害発生時はSlack通知+Jiraチケット自動起票

  2. ポストモーテムの実施:発生原因と対策をドキュメント化し、社内ナレッジに反映

  3. 改善サイクルの定期化:月次振り返りで優先課題を決定し、次月リリースに反映

結果として、システム稼働率は99.8%を維持。障害から復旧までの平均時間も従来の48時間から6時間に短縮できました。定期的な改善サイクルが根付いたことで、運用は成熟フェーズへと移行し、新たな業務要件も柔軟に取り込める基盤が整いました。

スケール展開と他現場への横展開戦略

A社では当初の1現場運用から、全社20現場への横展開を計画。横展開時の工夫ポイントは以下の通りです。

  • テンプレート化:プロジェクトごとに微妙に異なる報告フォーマットを、アプリ設定画面で簡単に切り替え可能に

  • ガバナンス強化:各現場管理者に権限を委譲し、現場単位でのユーザー管理・マスターメンテを自律運用

  • コスト最適化:スケールメリットを活かし、クラウド利用料は従量課金からReserved Instancesへ変更

これらにより、横展開に伴う追加開発コストは一現場あたり20万円以内に抑制。全社展開後も運用費用は月額30万円前後で安定し、相場感から見ても十分に競争力のあるコストで展開可能となりました。

まとめと今後の展望

本ユースケースでは、建設現場向け進捗管理モバイルアプリを開発し、要件定義から運用定着化まで一気通貫で解説しました。ポイントは以下の通りです。

  • 要件定義段階でMVPを明確化し、初期予算内に機能を絞り込む

  • デザインシステムとAPI仕様固定化で開発効率を最大化

  • 定量的なROI分析で経営層の合意を得て追加予算を確保

  • 保守・運用フェーズも含めた体制構築で長期的に利用される仕組みを整備

今後はAIを活用した進捗予測機能や、IoTセンサー連携による自動検知機能など、更なるDX推進を検討中です。システム化に伴う運用コストや開発会社選びのポイントを押さえつつ、次のフェーズでも費用対効果を最大化していくことが成功の鍵となるでしょう。

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