時間の扱いはなぜ難しい?タイムゾーン処理がシステム設計に与える影響とは

「日時がずれて表示される」「予約が1日ずれる」「海外ユーザーと日本の表示が合わない」──こうした問題に直面したことはありませんか?
時間や日付の処理は一見シンプルに見えて、実は非常に奥深く、システム設計の根幹に関わる重要な要素です。この記事では、開発現場でたびたび問題となるタイムゾーン処理について、よくある落とし穴や、発注時に確認すべき観点をわかりやすく解説します。
よくある課題:タイムゾーン処理を曖昧にしたまま開発が進む
開発現場でありがちなのが、次のような状況です。
- サーバーはUTC、日本のフロントはJSTのまま処理してしまう
- 保存はUTCなのに、画面表示がローカル時間になっていない
- ユーザーが複数の国からアクセスするサービスなのに、日本時間でしか扱っていない
- サマータイム(DST)を考慮していない
その結果、以下のようなトラブルが頻発します。
- 予約システムで1時間ずれた確認メールが送られる
- レポートの集計タイミングが意図せず変わる
- 海外ユーザーが日付で検索したときに正しくヒットしない
こうした課題は、「日時そのもの」ではなく「どのタイムゾーンで解釈されているか」が原因であることがほとんどです。
タイムゾーンとは?基本の理解
タイムゾーンとは、地球上の標準時の区切りです。たとえば日本標準時(JST)はUTC+9で、協定世界時(UTC)に対して9時間進んでいます。
地域 | タイムゾーン | 差分 |
---|---|---|
日本(東京) | JST | UTC+9 |
アメリカ(NY) | EST/EDT | UTC-5(夏は-4) |
イギリス(ロンドン) | GMT/BST | UTC±0(夏は+1) |
システム開発では、保存・表示・入力・集計それぞれのタイミングで、タイムゾーンを明示的に取り扱う必要があります。
システム設計におけるタイムゾーン処理の基本方針
1. 保存はUTC、表示はローカル時間が原則
- DBには「UTC」で保存し、フロントでユーザーのタイムゾーンに変換して表示する
- 一貫性を保つため、APIレスポンスやログ出力もUTC基準にしておくとよい
2. タイムゾーン情報はユーザーごとに管理する
- グローバル対応を考慮するなら、ユーザーが使っているタイムゾーン情報を保持する
- 初回アクセス時のブラウザ情報(Intl API)から取得して登録することも可能
3. サマータイムへの対応を意識する
- 米国やヨーロッパの一部では、年に2回の時刻調整がある
- 日時演算や表示でライブラリがサマータイムを認識していないと、1時間のズレが発生
4. 日付だけ扱う場面でも注意が必要
- 「2025-04-01」は、タイムゾーンによっては「2025-03-31T15:00:00Z」などになる
- 特にCSVやAPI連携時に「日付のずれ」が生じやすい
開発現場で起きやすい設計ミスと防止策
1. 日時を文字列でそのまま扱ってしまう
- タイムゾーン情報を含まずに”2025-04-01 10:00″のような文字列で保存・送信すると、解釈が環境依存になる
- ISO 8601形式(例:2025-04-01T01:00:00Z)で扱うようにする
2. JavaScript側でのタイムゾーン誤解釈
- new Date(“2025-04-01”) のような曖昧な記述が、実行環境によって異なる結果になることがある
- 常にUTC指定やタイムゾーン指定を意識することが重要
3. テストデータにタイムゾーン考慮がない
- ローカル環境で作ったデータが、本番では時差によってずれるケース
- テスト時にもタイムゾーンを明示的に指定することが推奨される
発注者側が確認すべきポイント
非エンジニアであっても、以下の観点から提案や設計書をチェックできます。
対象ユーザーの地域に応じた対応になっているか
- 日本国内のみならJSTでもよいが、将来的に海外展開があるならUTC設計を前提にしておく
表示と保存のタイムゾーンが一致しているか
- UI上の表示と、DB/API上の値が合っていないとトラブルになりやすい
- フロント側での変換処理があるか、どこで変換しているかを確認する
サマータイムや日付演算の設計が明記されているか
- 「1日後」の計算が24時間単位ではなく、カレンダー上でどう解釈されるのか明記されているか
API連携・CSV出力時のタイムゾーン表記が統一されているか
- APIレスポンスやエクスポートファイルで、日付時刻の形式・タイムゾーン情報が統一されているか
まとめ:時間の扱いは“意識して設計する”ことが何より大切
システム開発において、「時間」は非常に基本的かつ重要な概念です。しかしその一方で、設計段階で曖昧なまま進んでしまうと、後から修正が難しい領域でもあります。
特にグローバル展開、予約管理、レポート分析などの機能では、正しくタイムゾーンを扱えるかどうかが運用の信頼性や顧客体験に直結します。
開発を依頼する側も、「どの時間を、誰に、どのように見せたいのか?」という視点から、タイムゾーン処理の必要性を理解し、設計内容を確認することで、精度の高いシステムづくりにつなげることができます。
時間の扱いをあなどらず、丁寧な設計を進めること。それが、後悔しない開発の第一歩です。