現場フィードバックがシステム品質を左右する|「使いにくい」を防ぐための開発ノート

開発受託において、要件定義を固めたあとに実装に入っても、「いざ使ってみると現場から不満が出る」というケースは後を絶ちません。
実はこの問題、開発側の技術的な問題というよりも、「現場フィードバックの扱い方」に根本原因があることが少なくありません。
本記事では、実際の開発現場で起きがちな「現場とのズレ」から、どうやってフィードバックを活かすべきか、実務的な観点で掘り下げていきます。
よくある現場とのズレとその背景
操作の手間が多い
「帳票を印刷するだけなのに、5回もクリックが必要」など、実務上の頻度が考慮されていないケースです。
背景には、画面設計時に「どの操作がどれくらい繰り返されるか」の分析が不足していることがあります。
表示内容が現場にとって分かりづらい
「商品コードしか表示されず、商品名がない」「日付が西暦で見づらい」など、現場視点での情報設計がされていないことによるズレです。
入力ミスが頻発する
「日付の入力でハイフンを入れないとエラーになる」「数値の桁区切りがないので見間違える」など、実装上の制限がUIに現れてしまっているケースも多いです。
技術よりもプロセスの工夫が鍵
こうしたズレの多くは、技術的な未熟さではなく、「開発プロセス上で現場の声がうまく組み込まれていない」ことに起因しています。
成果物確認のタイミングが遅すぎる
完成間際まで現場が操作画面を見られないと、「できてから気づく」しかありません。
解決策としては、UIのモックアップ段階でのレビューや、プロトタイプを使った実機検証が効果的です。
フィードバックの拾い方に偏りがある
「管理職が良いと言っていたから」「本社の担当者からOKが出たから」として、実際に使う現場の意見が反映されていないパターンもよく見られます。
テスト段階で現場ユーザーを必ず含める設計にしておくことで、偏りを防ぐことができます。
フィードバックを活かす設計・開発のポイント
1. 操作ログの活用
「どの操作が多いか」「どの項目でエラーが出ているか」を数値で可視化し、主観に頼らない改善提案を可能にします。
2. フォーム設計でのバリデーションと補助
- 日付や数値入力のフォーマット補助(プレースホルダー、カレンダー入力)
- 入力値の即時バリデーション表示(リアルタイムに赤字でエラー表示)
これにより、操作ミスのストレスを大幅に軽減できます。
3. 検索・一覧表示の柔軟性
- デフォルトのソート順は現場の利用実態を調査して設定
- 絞り込み条件の保存機能を設けることで、日常業務への馴染みやすさが高まります
4. 現場用のヘルプUIや入力ガイド
- 入力欄ごとの簡易説明やツールチップ
- 動画やGIFなどの操作ガイドリンクの設置
現場スタッフのITリテラシーにばらつきがある場合でも、問い合わせ対応の工数削減に寄与します。
開発会社が提示すべき提案視点
- テスト工程に現場メンバーを巻き込む体制づくり
- UIレビューのプロセスを契約やスケジュールに明記
- 操作ログや画面アクセス統計を取得できる仕組みの導入
- 「使いやすさ」の評価軸を明示した上での開発提案
特に受託開発においては、「出来てから直す」のではなく、「途中で気づける設計」が求められます。
まとめ:フィードバック設計がプロジェクトの成否を分ける
現場フィードバックを早期に・適切に取り込める体制を整えることは、品質と満足度の両方を高める最短ルートです。
システム開発会社を選ぶ際も、見積もり金額だけでなく「どのタイミングでユーザーの声を取り入れるか」「それをどうUIに反映するか」まで提案できるパートナーを選定することが、プロジェクト成功への近道となるでしょう。