複数ファイルアップロード機能の設計で見落とされやすいポイントとは?

システム開発の現場で、問い合わせフォームや資料管理システムなどに「複数ファイルをアップロードしたい」という要望は頻繁に登場します。しかし、見た目上はシンプルに見えるこの機能も、実際にはさまざまな技術的・設計的配慮が必要です。
この記事では、複数ファイルアップロード機能の設計・実装でよくある落とし穴をテーマに、非エンジニアでも分かる観点で、開発依頼時に確認しておきたいポイントを解説します。
よくある課題:「アップロードできない」「途中で止まる」
エンドユーザーから寄せられる典型的な声は次のようなものです。
- 複数ファイルを選択したのに、1つしか送れなかった
- 通信エラーで途中までしかアップロードされなかった
- 送ったファイルの順番が変わってしまう
- 同じファイル名で上書きされてしまった
一見すると単純な「添付機能」に見えるかもしれませんが、実際には容量制限・進捗管理・通信エラー対策・順序制御・ファイル名の扱いなど、多くの設計判断が求められます。
複数ファイルアップロードに求められる基本設計
1. UI/UXとしての使いやすさ
- ドラッグ&ドロップ対応や一括選択など直感的な操作
- ファイル一覧表示(プレビュー・サイズ・削除ボタン)
- 順番の並び替え(必要に応じて)
2. 通信と処理の安定性
- アップロード中のプログレス表示
- 通信エラー時のリトライ設計
- 大容量対応:アップロード時に一時保存→バッチ処理
3. ファイル制限の柔軟な設計
- 拡張子やMIMEタイプによる制限(画像/PDF/Excelなど)
- サイズ上限(ファイル単体・合計サイズ)
- 同時アップロード可能なファイル数の上限
4. サーバー側の受信と保存処理
- 同名ファイルのリネーム処理(UUID付与・タイムスタンプ追加など)
- フォルダ分けの設計(ユーザー別/日時別など)
- 非同期処理との組み合わせ(キューイングや処理ステータス管理)
開発現場で起きやすいトラブルと設計ミス
通信タイムアウトや不安定な環境への配慮不足
- モバイル回線や地方ネットワークでの利用を想定していないと、アップロードが途中で失敗する
- フロントエンドとサーバー間でのファイル分割/再送処理を考慮していない
フロントとバックでファイル順序の認識がズレる
- フロントで表示されていた順序が、サーバー保存時にバラバラになる
- 並び順を明示的に送信し、保存順と紐付ける必要がある
ファイル名の上書きやセキュリティリスク
- 同じ名前のファイルで上書きされてしまう
- ファイル名にスクリプトが埋め込まれているケースに対応していない(XSSリスク)
メモリやストレージ容量の過負荷
- 多数ユーザーによる同時アップロードでストレージ圧迫
- 一時ファイルが大量に残り、クリーンアップが自動化されていない
発注・提案時に確認しておきたいチェックリスト
開発会社に見積もりや提案を依頼する際、複数ファイルアップロード機能に関して次のような点を確認しましょう。
操作面
- 一括選択/ドラッグ&ドロップ対応か?
- 並び順の保持や変更が可能か?
- プレビュー表示や削除機能はあるか?
制限設定
- 拡張子・ファイル数・サイズ上限の設定は柔軟か?
- 管理画面などから変更可能にできるか?
通信・安定性
- 通信失敗時のリトライ設計はあるか?
- アップロード中の進捗表示は?
- タイムアウトや長時間接続対策はされているか?
保存方式
- 同名ファイルへの対応(リネーム方法)
- 保存先のディレクトリ構成(ユーザー単位/日付単位など)
- 永続保存か一時保存かの違いと運用設計
セキュリティ
- 拡張子やMIME偽装のチェック方法
- ウイルススキャンやファイル内容チェックの導入可否
- ファイル名によるXSS・インジェクション対策は?
まとめ:小さなUIでも、運用と品質の基盤になる設計を
複数ファイルアップロードは、一見すると地味な機能に見えるかもしれません。しかし、ユーザーの体験やシステムの安定性、安全性に直結する繊細で重要な設計要素です。
開発を依頼する際は、「アップロードできます」だけではなく、
- どんな形式を想定しているか
- どのようなエラー処理や制限があるか
- 保存・整理・セキュリティの設計がどうなっているか
といった観点でしっかり確認し、要件や仕様として明記することが重要です。
業務において添付ファイルを扱うすべてのシステムにおいて、この設計がきちんとしているか否かで、運用の負荷もユーザー満足度も大きく変わってくるのです。