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開発ノート: AI連携ローコードプラットフォームを活用した受発注ワークフロー自動化システム構築

プロジェクト背景と目的

製造業や卸売業では、受注から発注、在庫管理、納期調整といった一連のワークフローが複雑化し、ヒューマンエラーや対応遅延による機会損失が発生しやすくなっています。本プロジェクトの目的は、AIを活用した自動応答チャットボットとローコードプラットフォーム(例:OutSystems、Mendix、Power Appsなど)を連携させ、営業担当者や購買担当者の問い合わせ・発注業務を自動化する受発注ワークフロー自動化システムを構築することです。これにより、問い合わせ対応時間を従来比約70%削減し、見積依頼から発注確定までのリードタイムを最短化します。また、システム開発受託を検討する企業担当者に向け、要件定義や設計フェーズで留意すべきポイント、費用対効果のシミュレーション、開発会社選びの観点を整理したノウハウを共有します。

技術スタック構成と選定理由

本システムは以下の技術スタックで構成しました。

  • フロントエンド:ローコードプラットフォームの画面テンプレート+カスタムJavaScript/TypeScript拡張

  • チャットボット:Azure Bot Service+QnA Makerによるナレッジベース連携

  • AI処理:Azure Cognitive Services(LUIS)でユーザー意図抽出とエンティティ解析

  • バックエンドAPI:Node.js+ExpressでAPI Gatewayを構築、ローコード側からREST呼び出し

  • データベース:Azure SQL Database+Cosmos DBで取引データとセッション情報を分散管理

  • ワークフローエンジン:Power Automate/Logic Appsで見積ワークフローと承認ルートを自動化

  • インフラ:Azure DevOpsによるCI/CD、Terraformによるインフラ IaC 管理

選定理由として、ローコードプラットフォームは短期間で業務画面を立ち上げられる点、AIチャットボットは自然言語での問い合わせをサポートする点、Azureエコシステムは同一ポータルで管理可能かつセキュリティ要件を満たしやすい点が挙げられます。特に、Power AutomateとLogic Appsは承認や通知のワークフロー構築をノーコードで実現でき、開発コストを大幅に削減できるため、本プロジェクトのコストパフォーマンス向上に寄与しました。

要件定義と業務フロー整理

要件定義フェーズでは、営業部門と購買部門のキックオフワークショップを実施し、「問い合わせ受付→見積作成→承認依頼→発注通知→納期調整」の一連フローを業務フロー図と画面モックで整理しました。ヒアリング時のポイントは以下の通りです。

  • ユーザー(営業/購買)がチャットで問い合わせる際の発話パターンとエンティティ(商品コード、数量、納期希望など)

  • 見積計算ロジック(割引率、部材コスト、輸送費)をAPI経由で呼び出す方式

  • 承認ルート(上長承認、予算超過時の経理承認など)の分岐条件と担当者マスタ

  • 納期確定後のEDI連携やメール通知仕様、ダッシュボード表示要件

これらを基に、ユーザーストーリーとユースケースをJIRAで管理し、各ストーリーに必要な画面要件、API仕様、ワークフロー定義を紐づけることで、開発範囲とスコープを明確化しました。また、複数社への見積もり依頼時には、この要件定義書を配布し、見積もり比較の公平性を担保しました。

ローコードプラットフォーム連携設計

ローコードツールでは標準のフォームやボタン配置をベースに、以下のカスタマイズを実装しました。

  • JavaScriptウィジェットでのチャット画面埋め込み:Bot ServiceのWebチャットコントロールをカスタムスタイルで統合

  • REST APIコールのコンポーネント化:見積計算API用のコネクタをローコードの再利用可能モジュールとして作成

  • CSV/Excel出力機能:取引履歴をクライアントサイドでBlob化し、自動ダウンロード

  • モバイル対応:レスポンシブデザインではなく、プラットフォーム固有のネイティブビューをローコード画面から切り替え

ローコードプラットフォームのメリットとして、画面設計とデータバインドがGUIで完結し、開発担当者の学習コストが低い点があります。一方で、複雑なビジネスロジックや高頻度のバッチ処理はパフォーマンス面で制約があるため、その部分はバックエンドAPIで実装し、ローコード側はあくまでUI/オーケストレーションに特化するアーキテクチャを採用しました。

AIモジュール実装とカスタムプラグイン開発

チャットボット部分は以下の構成で開発しました。

  1. QnA MakerでFAQナレッジベースを作成し、よくある質問応答を即時対応

  2. LUIS(Language Understanding)で発注Intent(注文登録/変更/キャンセル)とエンティティ(商品コード、数量、日付)を解析

  3. Bot Framework Composerで対話フローを設計し、発話内容に応じた分岐とAPI呼び出しロジックを実装

  4. Azure FunctionsでAI前処理(文字列正規化、ビジネスルール適用)とAPI認証トークン発行を行うサーバーレス関数を開発

さらに、ローコードプラットフォーム向けに「LUIS結果を自動バインドするカスタムプラグイン」を開発し、チャット入力欄とフォーム入力欄のデータ同期を実現。これにより、ユーザーがチャットで入力した情報が自動的に画面のフォームに反映され、二重入力の手間を排除しました。

実装フェーズでの課題と解決策

実装中に直面した主な課題とその解決策は以下の通りです。

  • Bot Serviceのスロットリングによるリクエスト遅延:Adaptive Cardsのキャッシュ制御を導入し、同一セッションでの多重呼び出しを抑制

  • LUISモデルの誤判定:ユーザー発話ログを一定期間収集し、バッチ処理でエンティティ辞書を自動更新する仕組みをAzure Data Factoryで構築

  • ローコードUIでの動的レイアウト崩れ:カスタムCSSとJavaScriptで画面描画後に要素幅を補正するポリフィルを実装

  • 承認ワークフローの複雑化:Power Automateの条件分岐アクションを共通モジュール化し、承認ルート変更時の設定コストを70%削減

これらの対策により、システム全体のパフォーマンスと安定性を担保しつつ、開発サイクルを短縮できました。

テストと品質保証

本システムでは、UIカスタマイズを含むローコード画面とAIチャットボット、バックエンドAPIが密接に連携するため、テスト戦略を多層化しました。まずユニットテストでは、Azure FunctionsやNode.jsのビジネスロジックをMocha+Chaiで網羅的に検証し、発注計算や承認条件の判定ロジックに誤りがないことを担保。LUISモデルのエンティティ抽出については、Intentごとに代表的な発話例をpytestで自動評価し、誤認識率が3%以下になるまで継続的に学習データを調整しました。
インテグレーションテストでは、Bot Service API、チャットUI、ローコードプラットフォーム画面を組み合わせて対話シナリオをPlaywrightで自動操作。該当シナリオが期待どおりに完了するかを検証し、エンドツーエンドでの品質保証を実施しました。

セキュリティとガバナンス

システム全体のセキュリティ要件として、Azure Active Directoryによるシングルサインオンを導入し、RBACで最小権限アクセスを厳格に設定しました。チャットボットからバックエンドAPIへの呼び出しはOAuth 2.0 Client Credential Flowを採用し、JWTトークンの検証をAPI Gatewayで行うことで、不正リクエストを遮断しています。
ガバナンス面では、Terraformのプラン段階でConftest+OPAによるPolicy as Codeを適用し、インフラリソースの命名規則、タグ付与、ネットワークACLの設定ミスを防止。さらに、Dependabotによる依存ライブラリの脆弱性スキャンと、自動パッチ適用をGitHub Actionsに組み込むことで、セキュリティ運用の自動化を図りました。

運用・保守体制構築

本番リリース後は、Azure MonitorとApplication Insightsを組み合わせ、システム稼働状況を24時間365日監視。CPU/メモリ使用率、HTTPレスポンス時間、エラー率、LUIS呼び出し回数などをメトリクス化し、Grafanaダッシュボードで可視化することで、担当チームがリアルタイムにボトルネックを把握できる体制を構築しました。
障害対応手順(Runbook)には、Bot Serviceの異常切り分け、ローコード画面のキャッシュクリア手順、DB接続リトライ設定、API Gatewayログ確認手順を詳細に記載。四半期ごとにゲームデイ演習を実施し、オンコールチームがRunbookに習熟した状態を維持しています。

データガバナンスとバックアップ戦略

取引データとセッション情報はAzure SQL DatabaseとCosmos DBに分散保存し、データライフサイクルを厳格に管理。SQL Databaseでは自動バックアップを有効化し、7日間のポイントインタイムリストアを保証。Cosmos DBはGeo-Redundant Replicationを利用し、リージョン障害時のフェイルオーバーを5分以内に完了する設定としました。
また、長期アーカイブ用にはAzure Blob Storageに週次でスナップショットをエクスポートし、削除ポリシーを一年後に設定。復旧手順をCICDパイプラインに組み込み、コードとして管理することで、DRサイトへの復旧準備時間を最短化しました。

プロジェクト管理とリスクマネジメント

開発スケジュール管理にはAzure DevOpsのBoardsを活用し、要件定義からリリースまでのWBSをタスク化。スプリントプランニング、デイリースクラム、スプリントレビューを定常化することで、進捗と品質を同時に管理しました。
リスク管理ではリスクレジスターを用い、発生確率と影響度をスコアリング。優先度が高い技術的リスク(LUISモデル精度、ローコードパフォーマンス)には、POCやロードマップにバッファを設定し、早期検証・回避策を策定しました。

システム 開発会社 選び方 予算 費用 相場 発注

受託先選定では、以下の観点で複数社から要件定義書とWBSを同一フォーマットで提供し、見積もり比較を実施しました。

  1. 技術対応力:AIチャットボット、ローコード連携、Azureエコシステムの実績

  2. 契約モデル:固定価格・時間単価のどちらが自社予算に最適か

  3. 開発費用相場:小規模(500万〜700万円)、中規模(800万〜1,200万円)、大規模(1,500万〜2,500万円)

  4. 保守運用体制:SLA応答時間、Onsite/Offsiteサポート

  5. コミュニケーション:定例MTG頻度、ドキュメント共有ツール

これらを基に、コスト削減策や開発予算内での品質担保条件を交渉し、最適なパートナーを決定しました。

コストシミュレーションと予算管理

本プロジェクトの初期開発費用は約900万円、内訳は要件定義150万円、設計200万円、実装400万円、テスト100万円、導入支援50万円。
ランニングコストには、Azure Bot Service・LUISの従量課金(月額約10万〜20万円)とローコードプラットフォームのライセンス費(月額約30万〜50万円)を含め、年間総額を約600万円と試算しました。これらをAzure Cost Managementでタグベースにアロケーションし、予算超過時には自動アラートを発報する仕組みを構築しています。

まとめと今後の展望

本開発ノートでは、AI連携ローコードプラットフォームを活用した受発注ワークフロー自動化システムの構築プロセスを詳細に解説しました。要件定義から設計、実装、テスト、保守運用、パートナー選定、コスト管理まで、一連のノウハウを網羅。今後は、AIチャットボットの多言語対応、近接センサー連携による自動在庫検知、拡張現実(AR)を活用した納期可視化ダッシュボードなど、新技術を取り入れた機能拡充フェーズに移行します。
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