1. HOME
  2. ブログ
  3. 開発ノート
  4. IaC導入の教訓とコスト管理ガイド:開発ノート
BLOG

ブログ

開発ノート

IaC導入の教訓とコスト管理ガイド:開発ノート

IaC導入に至った背景と最初の壁

あるWebシステム開発プロジェクトでは、開発環境と本番環境の差異に起因する障害が頻発していました。手動でVMやコンテナを起動し、設定ファイルをコピーしていたため、環境ごとのライブラリバージョンやネットワーク設定のズレでデプロイ失敗が常態化。これによりシステムリリース予定日の遅延、追加工数による費用超過が発生し、当初の予算相場を大幅に上回る事態となりました。発注した開発会社も同様の課題を抱えており、両社で協議した結果、Infrastructure as Code(IaC)導入を決断。社内SEやCTOからは「予算を振り分けて自動化に投資すれば、長期的なコスト削減につながる」と説得力ある判断がありました。しかし、すぐに成果が出たわけではありません。最初の壁は「モジュール設計経験が不足している」こと。初期PoCではTerraformの基本スクリプトを一本化してしまい、環境ごとの微調整に都度手動修正が発生し、開発スピードが鈍化。プロジェクトマネージャーからは「自動化による費用対効果を見える化しづらい」「相場や発注単価に見合う成果を急いでほしい」というプレッシャーを受けました。この経験から学んだのは、IaC導入も「要件定義」と同様にスコープを明確化し、モジュール単位の再利用設計を初期段階で固める必要があるということです。

モジュール設計と再利用化戦略

モジュール設計はIaC導入成功の要です。プロジェクトではまず下記の設計方針を定義しました。

  • 環境ごとに変わるパラメータ(リージョン、インスタンスタイプ、ネットワーク設定)は変数化

  • 共通リソース(VPC、Subnets、IAMロール)は独立モジュールとして切り出し

  • モジュールバージョン管理はGitタグ+リポジトリ単位で実施

  • 内製モジュールとサードパーティモジュールを併用し、開発工数を削減

これにより、新たにステージングやQA環境を作るたびに手動設定が不要となり、スピードが向上。さらに、再利用モジュールは内部のTerraform Registryに公開し、開発会社や外部パートナーへ「発注」する際の標準テンプレートとして利用できるようにしました。これが長期的にはシステム拡張やマイクロサービス構築の際に工数を30%削減し、予算内で複数環境を維持するための「費用対効果」を高める結果となりました。

テスト・検証パイプライン構築の学び

IaCの品質を担保するには、テストと検証の自動化が欠かせません。本プロジェクトでは、以下のテストフローをGitHub Actions上に構築しました。

  1. terraform fmtterraform validate:フォーマットと構文チェック

  2. terraform plan:変更内容の確認

  3. terratest:実際に一時環境を立ち上げてインフラ動作を検証

  4. セキュリティスキャン:tfsecやCheckovでベストプラクティス違反検出

テスト失敗時は自動でSlackへ通知し、プルリクエストマージをブロック。これにより、誤った変更が本番環境に適用されるリスクを大幅に低減しました。特に、モジュール更新時の影響範囲をテストで洗い出せるようになり、「発注先の開発会社」への説明も容易に。テスト自動化の導入には初期工数とツール習熟のコストがかかりますが、運用フェーズでの障害対応工数が半減し、追加発注を抑制する大きな効果がありました。

本番環境への安全な適用フロー

本番環境への適用はBlue-GreenデプロイとTerraformのワークスペースを併用し、以下のステップで実施しました。

  • プラン確認:ステージング環境でterraform planを実行し、変更差分をチームでレビュー

  • コードマージ:Pull Requestで承認を得た後、mainワークスペースにマージ

  • canaryリリース:本番環境の半数インスタンスにだけ新設定を適用し、正常性チェック

  • 全体適用:問題なければ残り環境へロールアウト

このフローによりダウンタイムをゼロ近傍に抑え、誤適用時も迅速にロールバック可能な体制を構築できました。ロールバック時のコストを事前に想定し、緊急時には「予備予算」を用意しておくことで、本番適用に伴うリスクと費用超過を最小限に抑制しています。

チーム体制とガバナンス整備

IaC導入プロジェクトでは、以下のようにチーム体制を最適化しました。

  • インフラエンジニア:モジュール設計・Terraform実装

  • DevOpsエンジニア:CI/CDパイプラインとテスト自動化

  • セキュリティ担当:コードスキャンポリシー設定

  • プロジェクトマネージャー:予算管理と外部ベンダー連携

  • 社内SE/CTO:要件定義とガバナンスレビュー

また、ガバナンスとして「IaC標準ポリシー」をドキュメント化し、全メンバーが遵守する体制を整えました。特に外部の開発会社に┐ IaCスクリプトを提供する際は、ポリシーチェックリストを必須とし、違反があればマージを拒否するルールを設けています。これにより、品質とセキュリティ要件を統一しつつ、発注パートナーの選び方も明確化できました。

定期的改善とナレッジ共有

プロジェクトでは、月次でIaCレビュー会を開催し、以下の観点で継続的改善を図りました。

  • モジュール追加:他プロジェクトでも使える共通モジュールを開発

  • ベストプラクティスの更新:Terraform公式ドキュメントやコミュニティ情報を取り込み

  • テストカバレッジ拡大:セキュリティチェックやコスト最適化ルールを追加

  • ナレッジベース整備:社内Wikiに導入手順やトラブルシュート事例を蓄積

これにより、チーム全体のIaCリテラシーが向上し、新規プロジェクトへの適用工数も20%削減。本番負荷試験中に発見されたパラレル実行のタイミング問題も、モジュールに組み込む形で解決できました。ナレッジ共有は「開発会社」や他チームへの展開にも有用で、社内横断的な技術底上げと「費用対効果」を最大化する施策となりました。

運用コスト削減と予算管理のポイント

IaC導入によって自動化された環境構築は、日々の運用コストを大幅に削減します。以前は手動で行っていたパッチ適用や設定変更をTerraformで自動化し、運用担当者の工数を月間約40時間削減できました。この成果は「費用対効果」の観点で非常に大きく、運用保守フェーズの追加予算を確保せずに済んだほどです。予算管理のポイントとしては、以下を押さえましょう。

  • 予算枠の切り分け:開発予算と運用予算を明確に分離し、IaC自動化の初期投資を運用予算から捻出

  • コスト可視化:Terraform CloudやCloudHealthなどのダッシュボードで、実際のインフラ費用をリアルタイムに監視

  • コスト削減ルールの組み込み:モジュール内でスポットインスタンスや自動停止スクリプトをデフォルト化

  • 予算消化率の定期レビュー:月次で「予算対実績」を開発会社と共有し、超過リスクを早期に検知

これらをガバナンス文書に明記し、発注段階で開発会社にも同じルールを適用することで、思わぬ追加費用を未然に防止できます。

レガシー環境との統合事例

ある基幹システム移行プロジェクトでは、オンプレMySQLからクラウドRDSへのデータ移行をIaCで管理しました。しかし、旧環境には手動作成されたスキーマ変更履歴が散在し、TerraformのStateと食い違いが発覚。データ不整合を防ぐために、一時的にカスタムスクリプトでスキーマ比較・同期を自動化し、そのスクリプトもTerraformモジュール化しました。この取り組みにより、移行工数を当初見積もりの120時間から90時間に短縮し、追加費用を約25万円削減できました。レガシー統合時は以下に注意が必要です。

  1. 既存リソース検出:terraform importを活用し、Stateに既存リソースを取り込む

  2. バージョン不整合対策:プロバイダやモジュールのバージョンをLockfileで固定

  3. ロールバック設計:失敗時にすぐ旧環境へ復帰できるPlaybookを用意

  4. テスト環境でのRehearsal:本番を想定したテスト環境で完全移行をリハーサル

これらの教訓を社内SEや外部ベンダーと共有し、発注書にも明示することで相場感に見合った移行を実現しました。

開発会社選びと外部パートナー連携

IaCプロジェクトの成功には、インフラ自動化経験豊富なベンダー選定が不可欠です。候補企業には以下の観点でヒアリングを行いました。

  • Terraform実績数:実際に運用中のプロジェクト規模と環境数

  • モジュール設計能力:モジュール化による再利用性向上のノウハウ

  • CI/CDパイプライン構築経験:GitOpsやテスト自動化の導入事例

  • セキュリティ対応:tfsecやOPA Gatekeeperを使ったポリシー執行

これらを定量評価し、総合スコアで上位の開発会社に発注。契約には「成果物定義」「工数報告頻度」「テスト合格基準」を盛り込み、リスク共有の仕組みを構築しました。パートナーとは月次レビューで進捗と課題を共有し、要件変更時の追加費用発生フローも事前に合意しておくことで、想定外のコスト増を防げます。

予備予算設定とリスク管理

どんなに綿密に設計しても、予期せぬトラブルや要件変更は起こります。IaCプロジェクトでは予備予算を本開発予算の10〜15%程度用意し、以下のリスクに備えましょう。

  • クラウドプロバイダAPI変更:Terraformプロバイダのアップデートに伴うモジュール修正工数

  • ネットワーク・IAM設定ミス:アクセス権限誤設定による再設計/再実装コスト

  • ツール互換性問題:Terraformバージョン間の互換性調整

  • サードパーティモジュールの脆弱性:セキュリティパッチ適用に伴うQA工数

リスク発生時の追加作業は「変更多層見積もりプロセス」を契約書に織り込み、閾値超過でのみ追加見積もりを行うルールを設定。これにより、急な費用膨張を抑え、予算内でプロジェクトを完遂できました。

ROI評価と効果測定

IaC導入効果を経営層にアピールするため、以下のKPIを設定し定量的に評価しました。

  • 環境構築時間:手動平均3営業日 ⇒ IaCで30分(99%削減)

  • デプロイ失敗回数:月5件 ⇒ 0件(100%改善)

  • 運用工数:月60時間 ⇒ 30時間(50%削減)

  • インフラコスト:予算相場比で10%削減

これらの成果を基に投資対効果を算出し、2年で初期投資を回収できる試算を提示。ROIレポートはBIツールでダッシュボード化し、リアルタイムに経営層へ共有しています。このような効果測定プロセスを発注フローに組み込むことで、次回以降の「予算」策定や「相場」判断がより精度高く行えるようになります。

次世代IaCツールと今後の展望

Terraform以外にも、AWS CDKやPulumi、Crossplaneなど新しいIaCツールが登場しています。これらはプログラミング言語でインフラを定義できるため、既存の開発エコシステムに統合しやすいメリットがあります。また、GitOpsツール(ArgoCD、Flux)と組み合わせた継続的デプロイモデルは、IaCコードレビューと本番適用フローをGit操作で完結できる点が注目されています。導入検討する際は以下を評価ポイントにしましょう。

  1. エコシステムとの親和性:既存CI/CDツールやコード管理ツールとの連携性

  2. チームのスキルセット:TypeScript/CDKかYAML/Terraformかなど

  3. コミュニティとサポート:ベンダーサポートやOSSコミュニティの活発度

  4. 費用対効果:ライブラリ依存や実装工数の違いによる総合コスト

次世代ツールの導入には新たな学習コストがかかりますが、長期で見れば生産性向上と「費用対効果」のさらなる改善が期待できます。IaCプロジェクトを成功させる鍵は、技術選択とパートナー「選び方」を絶えずブラッシュアップし、予算・費用管理を継続的に最適化することです。ぜひ

で貴社の費用感をチェックし、新たなIaC導入計画にお役立てください。

お問合せ

不明点やお見積りの依頼などお気軽にください。




問い合わせを行う

関連記事