1. HOME
  2. ブログ
  3. 開発ノート
  4. 「開発プロジェクトの“途中からの参加”を成功させる技術と体制:引き継ぎ案件に強い受託開発の進め方」
BLOG

ブログ

開発ノート

「開発プロジェクトの“途中からの参加”を成功させる技術と体制:引き継ぎ案件に強い受託開発の進め方」

近年、企業からの開発依頼において増えているのが「途中からの開発引き継ぎ」です。たとえば以下のような状況において、システム開発会社やWeb開発会社が新たに参加するケースが増えています。

・別のベンダーで進めていたが納期が遅れて頓挫した
・内製開発していたが、技術的に限界を迎えて委託したい
・仕様が曖昧なまま進行し、ドキュメント不足で現場が混乱している

こうした引き継ぎ案件には、高度な技術力と同時に「状況を把握する力」「人の感情を考慮したプロジェクト進行力」が求められます。本記事では、引き継ぎプロジェクトに強い開発体制の作り方を、実務視点から解説します。

なぜ引き継ぎ案件は「地雷」と呼ばれるのか

引き継ぎ案件はしばしば「地雷プロジェクト」と言われることがあります。その主な理由は以下の通りです。

  • ドキュメントが不足しており、ソースコードの意図が不明

  • 仕様変更が多く、関係者の合意形成が取れていない

  • すでに炎上しているため、信頼関係が崩れている

つまり、技術面・プロジェクト管理面・心理面の三つの観点でハードルが高いのです。このため、開発費用が割高になりやすく、発注側も受注側も不信感を持ちやすい構造となっています。

引き継ぎプロジェクトに強い開発体制とは

引き継ぎ案件を成功に導くためには、「体制設計の初動」が何より重要です。具体的には次のようなポイントが鍵を握ります。

1. 状況分析と技術スクリーニング

まず最初に行うべきは「何が引き継がれて、何が引き継がれていないのか」の棚卸しです。

  • ソースコード:リポジトリのアクセス権、コメントの有無、命名規則

  • ドキュメント:要件定義書、設計書、API仕様書などの存在確認

  • デプロイ環境:本番・ステージング環境の構成とアクセス情報

  • 技術選定:使用技術が現場に適しているか(React?Laravel?独自フレームワーク?)

この技術スクリーニングフェーズを徹底することで、開発見積もりの精度も大きく向上します。

2. ヒアリングと関係者マッピング

次に行うべきは「関係者マッピング」です。前任開発者・発注担当・運用部門など、誰がどの情報を持っているかを明確にします。

  • 「言語化されていない仕様」がどこにあるかを把握

  • 「前任者しか知らないこと」を引き出す質問設計

  • 「誰に何を聞けばいいのか」を可視化する図解の作成

ここでUXライターや業務フロー設計に強いディレクターが参加していると、意思疎通の質が大きく変わります。

3. 技術的負債の定量評価と解消ステップの設計

ソースコード内に技術的負債が潜んでいるケースは少なくありません。以下のようなツールを活用し、可視化します。

  • 静的解析(SonarQube, ESLint)

  • コードカバレッジ(Jest, PHPUnit)

  • バグトラッキング履歴(Redmine, GitHub Issues)

その上で、負債を「緊急修正対象」と「将来的な改善対象」に分類し、リファクタリングやアーキテクチャ見直しのスケジュールを引き直します。

引き継ぎを受けた開発フェーズごとの対応ノウハウ

どのフェーズで引き継ぐかによって、求められる対応は変わります。以下にそれぞれのケースでの実務対応を示します。

UI実装フェーズでの引き継ぎ

  • Figmaデータの解析とCSS命名規則の確認

  • コンポーネント再利用設計とAtomic Designへの置き換え検討

  • i18n対応/レスポンシブ最適化の再設計

API開発フェーズでの引き継ぎ

  • APIドキュメントのOpenAPI化(Swagger)

  • 認証方式(JWT/OAuth)の確認とセキュリティレビュー

  • バージョニング戦略の再策定(v1→v2移行)

テストフェーズでの引き継ぎ

  • テスト仕様書の有無と網羅率の確認

  • E2Eテスト(Cypress, Playwright)導入の有無

  • CI/CD設定の妥当性とステージング環境の信頼性確認

成功した引き継ぎ事例の紹介(要約)

とある教育業界向けSaaS開発では、ベンダー交代のタイミングで開発がストップしていたプロジェクトを、2か月で再稼働させた実績があります。

  • 初期2週間で状況整理と関係者ヒアリングを集中実施

  • 仕様の不明点はMiro上で可視化し、認識統一

  • APIの一部をGraphQLにリプレイスし、複雑性を緩和

  • 4か月後、保守運用込みで新体制へ完全移行に成功

引き継ぎ時の透明性と、開発手順を可視化できる文化が成功の鍵でした。

まとめ:「途中からの開発」が当たり前になる時代へ

今後、プロジェクトの途中段階でのベンダー交代や部分的委託はますます増えていくと予想されます。こうした状況に対応できる開発体制とプロジェクト設計力は、受託開発会社の競争力そのものです。

  • 設計の言語化と可視化

  • 状況理解を支えるチーム体制

  • コードと仕様のトレーサビリティ確保

これらを仕組みとして実装できるかどうかが、「信頼できる開発パートナー」の条件になります。ぜひ、自社に合った開発会社選びの参考にしてみてください。

お問合せ

不明点やお見積りの依頼などお気軽にください。




問い合わせを行う

関連記事