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顧客ごとに変わる「検収プロセス」の地雷とその避け方:システム開発における現場視点の注意点

システム開発を進める中で見落とされがちな要素の一つが「検収プロセス」です。多くの開発会社では納品物を完成させることに集中しがちですが、その後の検収がスムーズに行かなければ、プロジェクトの完了と請求・入金にも大きな影響を与えます。本稿では、特に受託開発で起こりやすい検収時のトラブルと、その原因、解決策について実務の視点から深掘りします。

検収プロセスとは何か:その役割と重要性

検収とは、クライアントが納品されたシステムやアプリの内容が契約・要件定義に合致しているかを確認し、正式に受け取るプロセスです。開発会社にとっては請求処理のトリガーであり、クライアントにとっては品質保証の最後の砦です。

この検収フェーズは、形式的なプロセスに見えるかもしれませんが、プロジェクトの信頼関係の集大成でもあります。検収の結果次第で再修正が発生したり、請求が滞ったりすることもあるため、非常に重要な工程です。

なぜ検収でトラブルが起こるのか:よくあるパターンと根本原因

要件定義と期待値のズレ

最も多いのは「想定していた動きと違う」というクライアント側の反応です。これは、仕様書に明記されていなかったが打ち合わせ中の会話では確かに話していた、というグレーな機能やUI挙動に関する部分で起こります。

チェック項目の不一致

開発会社側では「正常に動作している」と判断していても、クライアント側で独自のチェックリストを用意していて、その観点から見るとNG、というケースもあります。両者の「完成定義」がズレていると、検収をすんなり通すことができません。

検収環境の不整備

テスト環境がクライアント側に用意されておらず、動作確認が後ろ倒しになる。あるいは、検証に必要なテストデータがクライアントから支給されていないなどの理由で、検収が始まらないケースも多発しています。

検収トラブルを防ぐために:事前にできる4つの備え

1. 検収基準の文書化と合意

「どうなっていればOKか」という完了基準を、開発着手前、もしくは要件定義段階で明文化し、双方が確認しておくことが何より重要です。機能ごとにテストケースを設定しておくことで、検収フェーズでの揉め事を減らせます。

2. クライアントの検収リテラシーを把握する

システム開発に不慣れなクライアントの場合、検収というプロセス自体に慣れていないこともあります。その場合は、納品時にどういった点をチェックするのか、どんな資料を準備するのかを事前にレクチャーしておくとスムーズです。

3. ステージング環境とテストデータの整備

納品前にステージング環境(本番同等環境)を構築し、検収対象システムをそこにデプロイしておくことで、クライアント側の確認作業を早めることができます。また、開発会社が事前にテスト用アカウントやデータも準備しておくとベターです。

4. 検収期間のスケジュール化と合意

「検収は〇日以内」と契約書に明記し、それに沿ってスケジュールを組んでおくことで、検収フェーズの長期化を防ぎます。開発完了後の放置状態が続くことを防ぐためにも、納品と検収を分けて捉え、管理することが大切です。

実際にあった事例とその解決策

ある中堅製造業の受託案件では、クライアント側の部門横断の確認が必要で、想定以上に検収に時間がかかりました。開発側としては1週間程度を想定していたものの、実際には約1ヶ月。要因は「検収責任者が明確になっておらず、各部門の意見が交錯したこと」でした。

このような場合、納品前に「誰が承認するのか(役職・部門)」を特定し、その人物に確認の責任を持ってもらうことがポイントになります。また、ステークホルダーの意見が多岐にわたる場合は、UAT(ユーザー受入テスト)としての位置づけで事前に一度確認してもらうプロセスを設けるとスムーズです。

開発会社が取り組むべき検収支援

検収は「クライアントが行うもの」と捉えがちですが、実は開発会社側にも積極的に支援すべきポイントがあります。たとえば、以下のような取り組みが有効です。

  • テストマニュアルやチェックリストの提供

  • 管理画面の操作ガイドの事前配布

  • 不具合報告フォーマットの雛形共有

  • 検収会議の主導とスケジューリング提案

検収を「開発の外」ではなく「開発の最後の工程」として扱う意識を持つことで、より円滑なプロジェクト完了と信頼関係の構築につながります。

まとめ:検収を制する者が受託開発を制す

受託開発において、検収は単なる「最後の儀式」ではなく、請求・入金・次案件への関係性まで左右する重要なフェーズです。だからこそ、要件定義・進捗管理・テストのすべてのフェーズで「どう検収するか」という視点を持っておく必要があります。

特に複数のクライアントを抱える開発会社にとっては、検収対応ノウハウがあるかないかで案件回転率や利益率も大きく変わります。「検収でつまずかない」ための設計思想と、現場での対応力。この両軸がそろった会社こそが、真に信頼される開発パートナーといえるでしょう。

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