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意外と難しい「時間」の設計|タイムゾーン・フォーマット・夏時間対応まで、開発で見落とされやすい落とし穴とは?

システム開発の中で、「時間」を扱う処理は一見シンプルに見えるかもしれません。
たとえば、「予約日時を登録する」「お知らせを送信する」「作成日時を記録する」といったケースです。ですが実際の開発現場では、この“時間の扱い方”が原因でトラブルや誤動作が起きることが少なくありません。

非エンジニアの立場では「何時に、何をする」という話が複雑になるとは想像しにくい領域ですが、提案や設計の精度を見極めるうえで「時間に関する設計」の難しさを知っておくことは、開発依頼者としての判断材料になります。

本記事では、開発現場で実際によくある「時間処理の落とし穴」と、発注者が事前に確認しておきたいポイントを、実例を交えながら解説します。

よくある課題:日時のズレ、表示ミス、通知の誤送信…

以下は、実際の開発プロジェクトや運用で起こりがちな“時間まわりの問題”の例です。

  • 管理画面とユーザー画面で表示される時刻が1時間ずれている

  • 海外ユーザーにだけ通知メールの送信タイミングがずれて届く

  • データベースにはUTCで記録されているが、表示はJSTに変換し忘れている

  • 「00:00〜23:59」を1日と想定していたが、サマータイムの導入国では通用しなかった

  • 複数拠点の予約を受け付けるサービスで、各拠点の現地時間に合わせた処理ができていない

これらの問題は、根本的には「時間の扱い方が曖昧」「システム全体で統一されていない」といった設計上の甘さに起因するものです。

特に、予約管理やスケジューリング、通知配信、分析集計など“時間がキーになる機能”では、初期設計が不十分だと運用後の修正が難しくなります。

技術的背景:時間の設計で考えるべき4つのポイント

システム開発における「時間の設計」では、次の4つの要素を整理しておく必要があります。

1. タイムゾーン(時差)への対応

たとえば、日本の標準時はJST(UTC+9)ですが、サーバーはUTC(協定世界時)で動いていることが一般的です。
そのため、保存時・表示時・通知時など、どのタイミングでどのタイムゾーンを使うのか明示しないと、時間のズレが起きます。

特に以下のケースでは注意が必要です。

  • 海外拠点や多国籍ユーザーが利用するシステム

  • 日本国内でも沖縄や北海道など、ローカルイベントが発生するケース

  • サマータイム制度がある国向けの展開

対策:

  • DB上はUTCに統一して保存し、表示時にローカルタイムに変換する設計を採用

  • タイムゾーンをユーザーごとに設定可能にする

  • システム全体で扱うタイムゾーンを1つに統一し、明文化しておく

2. 日付と時間のフォーマット

日付の表示形式は、システムでよく議論になります。
「YYYY/MM/DD」「YYYY年MM月DD日」「MM/DD/YYYY」など文化や業種によって異なるため、UI側での設計に注意が必要です。

また、入力形式の違いによってバリデーションエラーや予期せぬ動作が起きることもあります。

対策:

  • 入力フォーマットと表示フォーマットを明示的に定義する

  • バリデーションエラーを起こしにくい入力補助(カレンダーUIなど)を設計

  • 表示形式は国際化(i18n)対応を想定して柔軟に切り替え可能にする

3. 日跨ぎ・月跨ぎ処理

「1日の範囲」や「営業日・締め日」などは、必ずしも00:00〜23:59とは限りません。
たとえば、飲食店やシフト制の職場では「朝5時〜翌4時59分」を1日とすることもあります。

また、月末が31日までない月では、繰り返し処理(毎月末など)の計算がずれるリスクもあります。

対策:

  • 日次処理の「1日の定義」を業務フローに応じてカスタマイズ可能にする

  • 月次処理では月末の曖昧さを考慮したロジック設計(例:28日固定処理)を採用

  • 定期ジョブや通知処理では、想定外の時間帯でも正しく処理されるようリトライ・検知設計を入れる

4. 時刻をキーとした並び順・集計

システム内で「最新の投稿」「直近の予約」「過去30日分の履歴」など、時刻をもとにした並び替えや集計処理は多用されます。
このとき、フォーマットやタイムゾーンの不統一があると、正確な結果が出なくなります。

対策:

  • ソートや集計対象は必ずUTCなど統一された形式で実行

  • 表示用とロジック用の時間データを分けて管理(内部はISO8601推奨)

  • ユーザーごとの表示時刻と、処理ロジック用の基準時刻を明示的に区別する

提案・見積もり時に確認しておきたいポイント

「時間の設計」は仕様書に細かく書かれないことも多く、曖昧なまま開発が進むことでトラブルの原因になります。
見積もりや提案の段階で、以下のような点を確認しておくと安心です。

タイムゾーンの扱いが明記されているか

  • DBへの保存形式(UTC統一か、ローカル時刻か)

  • 表示時に変換処理があるか

  • 多言語・多国対応を前提とした設計になっているか

日時表示・入力のフォーマットが定義されているか

  • 日本語対応(例:YYYY年MM月DD日など)や業務特有の表示形式に対応しているか

  • 入力補助機能(カレンダーUI、時刻選択など)が提案されているか

通知や定期処理のタイミングが具体的に書かれているか

  • 「毎日送信」「前日通知」などが実際に何時に行われるかが明記されているか

  • システム負荷や時差対応を考慮したタイミング設定か

サマータイムや海外展開の可能性が見越されているか

  • サマータイムを扱うかどうかの判断ポイント

  • 今後の拡張性として、多言語・多国展開への対応が見込まれているか

こうしたポイントが事前に共有されていることで、納品後の「想定と違った」を減らすことができます。

まとめ:「時間」はすべての処理の前提であり、システムの信頼性に直結する

アプリやシステム開発において「時間の設計」は、すべてのデータ・処理・UIの前提となる要素です。
一見、技術的に簡単そうに見えて、タイムゾーン、表示形式、通知タイミング、ロジック処理など、多くの落とし穴が潜んでいます。

発注者としては、「何時に」「誰が」「どこで」使うのかという視点で、時間まわりの仕様がどこまで詰められているかを見ることで、開発会社の設計力や提案力を見極めることができます。

相見積もりや提案書を比較する中でも、「時間処理がどう設計されているか」を見落とさずにチェックすることで、運用開始後の混乱を未然に防ぐことができるでしょう。

時間は、誰にとっても当たり前に存在するもの。
だからこそ、“その当たり前”を丁寧に設計することが、使いやすく信頼性の高いシステムの第一歩となります。

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