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生成AIエージェント×RPAハイブリッドで業務自動化を最速実現する開発ノート

はじめに

ChatGPT をはじめとする生成 AI のブームは、これまで RPA だけでは自動化し切れなかった「判断を伴うタスク」を機械に任せる大きなチャンスをもたらしました。本ノートでは、受託開発を前提に 生成AIエージェントRPA を組み合わせ、最短 3 カ月で社内ワークフローを自動化するまでの道筋を詳解します。システム開発会社や Web 開発会社に依頼する担当者が、相見積もりで失敗しないための視点を盛り込みました。

ポイントは以下の三つです。

  • RPA が得意な「画面操作」を生成 AI で 意思決定ループ に拡張

  • プロンプト仕様書で要件定義を可視化し、後工程コストを削減

  • LLM API 課金と RPA ライセンスを合算した 費用シミュレーション で予算説得力を高める

生成AIと RPA ハイブリッドの全体像

最初に全体アーキテクチャを俯瞰します。
Edge RPA Bot(UiPath/Power Automate):社内システムやブラウザ操作を担当
LLM エージェント(OpenAI GPT-4o など):文脈理解と分岐判断を担当
業務API(REST/GraphQL):データ取得・書き込みを高速化
ワークフローオーケストレーター(Temporal/Microsoft Orchestrator):タスク実行とリトライ制御

具体例として「請求書 PDF のメール受信 → ERP 登録 → 顧客問い合わせ返答」という一連の流れを考えます。RPA がメール添付を取得し、AI エージェントが OCR 結果とナレッジベースを照合して仕訳候補を提案、ユーザが UI 上で承認したら ERP API へ登録――という具合です。

この分割により、従来 RPA のフロー設計で発生していた if 文スパゲッティ を LLM エージェントへオフロードでき、保守運用が劇的に楽になります。

要件定義フェーズでのプロンプト仕様書

生成 AI 導入プロジェクトで最も手戻りが多いのが プロンプト設計 です。ブラックボックスに見える LLM を「仕様書」に落とし込むため、次の 4 観点でテンプレート化します。

  1. ゴール定義:入力→期待出力を JSON スキーマで明文化

  2. コンテキスト:ナレッジ・ポリシー・業務制約を列挙

  3. スタイル:敬語/表記ゆれ/回答粒度など UI 要件

  4. 評価指標:BLEU やラベル整合率など自動スコア

開発会社と見積もり比較を行う際、「プロンプト仕様書 1 本あたりの単価」と「リビジョン数上限」を項目化しておくと、費用対効果を数値で比べやすくなります。

プロジェクト管理――スプリント設計と KPI

RPA+AI はタスク単位で分割しやすいため、1〜2 週間サイクルの マイクロスプリント が望ましいです。

  • スプリント 0:PoC と API レート試算

  • スプリント 1:メール→OCR→構造化 JSON 生成

  • スプリント 2:仕訳候補作成→ERP API 登録

  • スプリント 3:社内ポータル通知→チャットボット応対

各スプリントで 業務 KPI(処理件数・誤判定率・作業時間削減)を測定し、次スプリントのスコープを決めます。システム 開発会社 選び方 予算 費用 相場 発注 を行う際、この KPI と連動した 成果報酬モデル を提案できるかが競争力の差になります。

LLM API 課金と RPA ライセンスの費用シミュレーション

発注前に必ず作るべきは 総保有コスト(TCO) の見積り表です。月間 5,000 件の請求書ワークフローを例に、1 レコードあたりのトークン使用量と RPA Bot 実行時間で算出すると――

項目 単価 月間使用量 月額合計
GPT-4o 128K API ¥0.0006/1K token 1.2M token ¥720
OCR API ¥0.12/1 ページ 5,000 ページ ¥600
UiPath Unattended Bot ¥70,000 1 ライセンス ¥70,000
Orchestrator ¥30,000 1 テナント ¥30,000
合計 ¥101,320

注目すべきは トークン課金比率が 1 %未満 である点。AI 導入では「API コストが読めない」との不安がつきものですが、RPA ライセンスに比べ微々たる金額で済むことを示せば、経営層の合意を得やすくなります。

Prompt E2E テスト自動化で品質担保

LLM を本番投入する際は、リグレッション回避のため Prompt E2E テスト が必須です。

  1. 固定入力&期待 JSON を Git にコミット

  2. CI で 3 回ずつ呼び出し、スコア平均が閾値未満ならビルド失敗

  3. 成功時のみ RPA ロボットに最新版プロンプトをデプロイ

この仕組みを先に用意しておくと、要件追加によるプロンプト改修でも品質低下が検知でき、保守運用コストを低減できます。

ROI シミュレーションと経営層への説得ロジック

コスト項目だけでは投資判断に至りません。ROI(投資対効果) を示すため、削減できる人的工数を金額換算し、LLM 品質向上による売上増加も加味します。

  • 人件費削減:60h × ¥3,500/h × 12 カ月 = ¥2,520,000

  • 誤登録減による回収遅延解消:年間効果 ¥1,200,000
    合計効果 ¥3,720,000 / 年間コスト ¥1,215,840 → ROI 3.06 倍

ここまで数値化すれば、開発会社との交渉でも価格の根拠を明確にできます。

セキュリティ・コンプライアンス要件の深掘り

LLM は外部 API を使うため、個人情報や機密データの取り扱いが最重要です。

  • 分類ポリシー:PII はマスキング、社外秘は匿名化

  • 暗号化:TLS1.3、KMS でトークン暗号化

  • ログ保管:アクセスログ 90 日保存、個人情報は除去

  • 監査証跡:プロンプト/レスポンスのハッシュをブロックチェーン記録

開発会社が ISO27001 や SOC2 を取得しているか、サブプロセッサ(OpenAI など)のデータ保持期間を説明できるかを RFP の必須項目に含めてください。

RFQ/RFP 作成テンプレート

見積もり依頼を作る際は次を網羅すると、回答精度が上がり比較もしやすくなります。

  • 業務プロセスフロー図(BPMN)

  • データ分類マトリクス

  • KPI 表と目標値

  • 既存システムの API 仕様書

  • 想定トラフィックとピーク時バッファ率

  • 評価基準:価格 30 %/実績 20 %/提案力 20 %/技術力 20 %/保守体制 10 %

特に評価ウェイトを公開すると、開発会社側が重点を絞って提案でき、相見積もり比較が容易になります。

プロジェクト体制と担当者スキルマップ

生成 AI×RPA 案件では、従来の RPA デベロッパに加え プロンプトエンジニアMLOps エンジニア が鍵を握ります。

ロール 主要スキル 工数割合 派遣可否
RPA デベロッパ UiPath, Power Automate Desktop 35 %
プロンプトエンジニア LLM API, JSON Schema 20 % 部分可
MLOps エンジニア Docker, K8s, VectorDB 15 % 不可(常駐推奨)
プロジェクトマネージャ スプリント管理, SLA 交渉 15 %
セキュリティ担当 IAM, DLP 10 % 不可
テクニカルライター マニュアル, Prompt Doc 5 %

不足ロールをどこまで請負パートナーに委ねるかを決めておくと、見積もり範囲がクリアになります。

データ移行とレガシー連携の実践例

オンプレ ERP や CSV 連携がボトルネックの場合、iPaaS(Workato, MuleSoft)を中継し変換ロジックをノーコード化すると効果的です。

  1. RPA で CSV を SFTP から取得し iPaaS へ API POST

  2. iPaaS の Mapper で JSON に変換し LLM へプロンプト送信

  3. 返却 JSON を ERP SOAP API へ送信

変換処理を iPaaS へ寄せることで、LLM プロンプトがシンプルになりトークンコストを抑制できます。

失敗事例から学ぶアンチパターン

  • プロンプト肥大化:1 リクエスト 120 KB 超で課金 10 倍

  • RPA 分岐地獄:LLM 出力揺らぎで if 文急増

  • テスト不足:表記ゆれで ERP 登録エラー

早期 PoC 段階で 品質ゲート を設置し、自動テストと観測性を導入することで回避できます。

ガバナンス運用――継続的プロンプト改善サイクル

LLM は継続学習が難しいため、Prompt Governance Board を設置し失敗例を週次でレビューします。

  1. エラー/例外ログをトリアージ

  2. ビジネス部門が対処方法を付与

  3. 改善案をチケット化し KPI への影響を試算

  4. CI で A/B テストを実行し向上時のみマージ

このサイクルにより、数カ月で誤判定率が半減しトークンコストも安定的に低下した実例があります。

まとめ――生成 AI×RPA を成功させる 10 のチェックポイント

  1. プロセス選定:判断×繰り返しタスクを優先

  2. プロンプト仕様書:JSON スキーマで出力定義

  3. 費用シミュレーション:RPA ライセンス込みで TCO 算出

  4. セキュリティ:データ分類と暗号化方針を明記

  5. KPI 設計:業務指標とモデル品質指標を分離

  6. スプリント管理:マイクロリリースでリスク低減

  7. 観測性:ログ/メトリクス/トレースを 30 秒粒度で可視化

  8. テスト自動化:Prompt E2E+RPA 回帰

  9. パートナー選定:Edge 実績と Prompt ガバナンス支援力

  10. ガバナンス:改善ボードと A/B テストで継続向上

まずは現行業務のトークン試算から着手し、ROI を可視化したうえで専門開発会社へ相談してみてください。

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