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イベント駆動アーキテクチャとは?マイクロサービス時代に求められる設計思想を解説

近年、Webシステムや業務アプリケーションの開発において注目されているのが「イベント駆動アーキテクチャ(Event-Driven Architecture)」です。

マイクロサービス化やクラウド環境でのシステム構築が一般化する中、処理の連携を「イベント」という単位で行う方式が柔軟性・拡張性・保守性の面で有利とされ、実践的な導入が進んでいます。

本記事では、イベント駆動アーキテクチャの基本概念から、導入のメリット・検討すべきポイントまで、非エンジニアの方にもわかりやすく整理してご紹介します。

イベント駆動アーキテクチャとは?

イベント駆動アーキテクチャとは、「何かが起きた(=イベント)」という事実を起点にして、処理を連携・実行する仕組みです。

例としては以下のようなシナリオが該当します:

  • ユーザーがフォームを送信 → メール通知を自動送信
  • 注文が完了 → 在庫を減らす、出荷処理をキューに登録
  • ファイルがアップロードされた → 画像をリサイズ&クラウドへ保存

各処理は「イベントリスナー」「イベントハンドラー」として待機しており、特定のイベントが発火したときにのみ動作します。

このような設計は、従来の「リクエストごとの順次実行」よりも非同期かつ疎結合である点が特徴です。

なぜ今、イベント駆動が注目されているのか?

1. マイクロサービスとの親和性

マイクロサービスでは各機能が独立しており、他機能との連携も疎結合が求められます。イベント駆動は、サービス間連携の柔軟性を担保する手法として有効です。

2. サーバーレス/クラウド環境での実装が容易

AWS LambdaやGoogle Cloud Functionsなど、イベントトリガー型の実行環境が一般化しています。

3. 処理のスケーラビリティと効率性

バッチ処理を逐次ではなく「イベントが発生した時にだけ」実行できるため、処理の無駄を省きやすくなります。

構成の基本要素:プロデューサー・イベントバス・コンシューマー

イベント駆動アーキテクチャでは、以下のような役割分担で構成されます。

  • プロデューサー(Producer):イベントの発行元(例:注文完了処理)
  • イベントバス(Event Bus):イベントを配送する中継役(Kafka, RabbitMQ, SNSなど)
  • コンシューマー(Consumer):イベントを受信して処理を行う側(通知送信、DB更新など)

これにより、各機能が「知らない相手」とも疎結合で連携できるのが最大の特徴です。

イベント駆動導入時の技術的考慮ポイント

冪等性(Idempotency)の担保

イベントが重複して届いても問題ない設計(同じ通知が何度来ても処理が一貫)にする必要があります。

エラーハンドリングと再試行設計

一部処理に失敗した場合にどうリトライするか、どこにログを残すかも重要な設計観点です。

メッセージスキーマの管理

イベントに含まれるデータ構造(JSON形式など)のバージョン管理や型保証も考慮が必要です。

観測性(Observability)

各イベントの流れを把握するため、ログやトレーシングの仕組み(OpenTelemetryなど)を導入するケースが増えています。

どんなプロジェクトで有効か?

イベント駆動は、以下のようなプロジェクトに特に向いています:

  • 通知・連携の多い業務システム(例:予約、在庫、配送管理)
  • 段階的な処理が求められるワークフロー(例:承認フロー、レポート作成)
  • IoTやリアルタイム性が必要なシステム(センサーデータの受信・処理など)

また、将来的な機能追加や他システムとの連携を想定した開発案件でも、初期段階からイベント駆動を見越しておくことで拡張性を確保しやすくなります。

導入を検討する際に開発会社へ確認したいこと

  • 自社プロジェクトの要件に対し、イベント駆動の導入が現実的か
  • 使用を想定するメッセージブローカー(Kafkaなど)と既存環境の相性
  • イベントの監視・再送処理など、運用面での支援体制
  • イベント設計書やスキーマ管理のルール策定支援の有無

まとめ:イベント駆動は“将来の変化に強い設計”を可能にする

イベント駆動アーキテクチャは、変化の多い現代の業務要件において、スピーディーで安全な処理連携を実現する手法として大きな注目を集めています。

とくに複数機能が連携するシステムを構築・拡張したい企業にとって、イベント駆動の思想を理解しておくことは大きな武器となります。

開発会社と設計思想のすり合わせを行う際にも、「イベント単位で処理を分けられるか?」という視点を持つことで、スケーラブルで柔軟なシステムが実現しやすくなるでしょう。

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