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サーバーレス vs コンテナオーケストレーション──次世代アーキテクチャ選定ガイド

システム開発の世界では、従来のサーバーベース構成から脱却し、サーバーレスやコンテナオーケストレーションといった次世代アーキテクチャへの移行が加速しています。しかし、「どちらを選ぶべきか」「自社の予算・費用感に合うのはどちらか」と迷う開発リーダーやCTOも少なくありません。本記事では、サーバーレス(Functions as a Service)とコンテナオーケストレーション(Kubernetesなど)の基本を押さえ、導入にあたっての開発会社選びや予算・相場の観点を交えながら、失敗しない選び方とノウハウを解説します。

サーバーレス・アーキテクチャの基礎知識

サーバーレスとは、インフラ運用をクラウドベンダーに委ね、コードの実行単位(関数)と実行時間に応じて課金される仕組みです。代表的なプラットフォームとして AWS Lambda、Azure Functions、Google Cloud Functions などがあります。

サーバーレスの特長は以下の通りです。

  • フルマネージド:OSやランタイムのパッチ適用、スケーリングをクラウドが自動で担う

  • スケーラビリティ:リクエスト量に応じてインスタンスを水平に自動生成し、ピーク時の負荷にも対応

  • イベント駆動:HTTP リクエスト、ストレージ変更、メッセージキューなど多様なトリガーを関数に紐付け可能

  • 費用最適化:使ったリソースにのみ課金される従量課金制で、アイドルタイムの無駄がない

ただし、短時間実行に最適化されているため「コールドスタート」対策や、長時間バッチ処理、大量連続リクエストには不向きなケースもあります。サーバーレスを発注する際は、開発会社に上記の特徴と自社要件をすり合わせ、予算に合った費用感(相場)を確認しましょう。

■ サーバーレス活用におけるチェックリスト

  1. 処理実行の粒度は関数で管理できるか

  2. コールドスタート発生時のレスポンス要件は満たせるか

  3. ログ収集・モニタリングツールの連携はスムーズか

  4. 長時間実行タスクはステートフルワークフローで補完可能か

コンテナオーケストレーションの概要

コンテナオーケストレーションとは、Docker などのコンテナを複数台のクラスタで動かし、スケーリングやフェイルオーバーを自動で管理する技術です。代表的なフレームワークとして Kubernetes、Amazon ECS、Google Kubernetes Engine(GKE)などが挙げられます。

コンテナオーケストレーションのメリットは以下です。

  • ポータビリティ:コンテナイメージさえあればどのクラウドでも動作

  • 環境再現性:開発環境と本番環境を同一のコンテナで整備可能

  • 豊富なエコシステム:Ingress コントローラー、サービスメッシュ、CI/CD統合ツールなど多彩なプラグインが利用可能

  • 長時間バッチ・ステートフル処理:StatefulSet やジョブ機能でバッチ処理も対応

一方で、クラスタ構築や運用のための初期設定工数と継続的なインフラ運用コストが発生します。特にノード数やリソースプランニングにより、月額費用の相場が大きく変動するため、開発会社と合わせて予算枠を慎重に詰めておくことが重要です。

■ オーケストレーション導入前の検討事項

  • クラスタ設計(ノード数、リージョン分散)の要件定義

  • CI/CDパイプラインとの統合方針

  • セキュリティポリシー(認証・認可、イメージスキャン)

  • コストモニタリングとオートスケール設定

パフォーマンスとスケーラビリティ比較

サーバーレスとコンテナオーケストレーションを比較する際、まず注目すべきはパフォーマンスとスケーラビリティです。サーバーレスは極めて高速にスケールアウトでき、急激なトラフィック増加時にも自動で関数インスタンスを生成します。コールドスタートが発生する場合、一部レイテンシが増えるものの、プロビジョニング済みインスタンスを使う設定やウォームアップ機能を利用すれば大幅に軽減可能です。一方、コンテナオーケストレーションでは、Pod の起動時間やノードの追加時間が数秒から数十秒かかることがあり、大規模トラフィックへの即時対応にはサーバーレスと比べやや劣るケースがあります。

とはいえ、コンテナは水平スケールだけでなく垂直スケール(ノードのリソース増強)も自在です。CPU/メモリなどリソース単位でコンテナを再割り当てできるため、バッチ処理やビッグデータ分析など、長時間かつ高負荷なワークロードには適しています。サーバーレスの場合、一定時間を超えるタスクは分割やステートレス設計が必要で、アーキテクチャの複雑化を招くことがあります。

また、サーバーレスは関数実行環境が抽象化され、開発者はコードに専念できます。リクエストに対する応答速度はトリガーから実行まで含めて設計されており、軽量関数であれば数十ミリ秒以内に処理が完了します。対して、コンテナオーケストレーションは、サービスディスカバリやロードバランシング機能を自前で設定する必要があり、ネットワーク越しのレイテンシやヘルスチェックの頻度設定など、チューニング項目が増える分、初期パフォーマンスはやや低く見えることもあります。

パフォーマンス比較のポイント

  • 関数コールドスタートの頻度と影響

  • Pod 起動時間やノード追加のリカバリー速度

  • ネットワークレイテンシ(ロードバランサー設定)

  • タスク実行時間の上限とバッチ処理への対応

自社システムのスループット要件が秒間数千リクエストを超えるか、あるいは長時間バッチ処理を多用するかで、最適なアーキテクチャが異なります。予算・費用感と併せ、どのくらいのスケール要件があるのか開発会社に具体的に伝えて、コストとパフォーマンスのバランスを見極めましょう。

セキュリティ観点での違い

サーバーレスとコンテナオーケストレーションでは、セキュリティモデルにも大きな違いがあります。サーバーレスはクラウドベンダーがインフラをフルマネージドで運用し、OSパッチ適用やミドルウェアの脆弱性対策といった多くの責任を肩代わりしてくれます。その一方で、関数単位で実装されるため、関数間通信外部リソースアクセスの認可設計が甘いと、権限昇格や情報漏洩リスクが高まります。

コンテナオーケストレーションでは、自社でネットワークポリシーを定義し、Pod 間の通信ルールや外部サービスへのアクセス制御を細かく設定できます。マルチテナント環境や複数のチームが同じクラスタを共有する場合、NamespaceServiceAccountPodSecurityPolicy の活用で、より厳格なセキュリティガードレールを敷くことが可能です。一方、設定が複雑になるほどミスのリスクも高く、継続的な監査と運用ノウハウが求められます。

どちらも「ゼロトラスト」モデルで設計し、最小権限の原則に基づく IAM 設計が肝要です。サーバーレスでは関数実行ロールを厳格に制限し、不要な API 呼び出しをブロック。コンテナではネットワークポリシーとイメージスキャン、自動脆弱性検出を組み合わせて、攻撃面を最小化します。これらを実現できるよう、開発会社やセキュリティ専門ベンダーに具体的な要件を提示し、見積もり段階で追加費用が発生しないか確認しておきましょう。

主なセキュリティ対策

  • 関数/コンテナ実行権限の最小化

  • ネットワークポリシーや IAM ポリシーの厳格化

  • イメージ/パッケージの脆弱性スキャン

  • ログ収集と監査証跡の保持

適切なセキュリティ対策を講じることで、運用コストの増加を抑えつつ、企業の信頼を維持できます。特に外部システムとの連携が多い場合は、セキュリティ要件を早期に固め、発注時に見落としがないようにしましょう。

実際の導入事例:スタートアップX社の選択

あるスタートアップX社は、初期段階ではサーバーレスを採用し、小規模な MVP を短期間でローンチしました。AWS Lambda を中心に API Gateway、DynamoDB を組み合わせ、開発サイクルを驚異的に短縮。ローンチから1か月で初期ユーザーを獲得し、リリース直後のトラフィック急増にも自動スケールが役立ち、追加予算をかけずに対応できました。

しかし、サービス拡大フェーズでバッチジョブや、データ分析基盤の構築が必要となり、サーバーレスの長時間実行制限(15分)とコスト上昇がボトルネックに。ここでX社はコンテナオーケストレーションに段階的に移行。GKE のクラスターを構築し、一部マイクロサービスをコンテナ化しました。これにより、データ集計処理が安定し、リソース単価を下げつつパフォーマンスを確保できました。

ケーススタディからの学び

  • ステージに応じたアーキテクチャ選定:初期はサーバーレス、中期以降はコンテナ混在も検討

  • 費用対効果のモニタリング:運用コストを常に可視化し、閾値を超える前のアーキ変更を準備

  • 開発会社との定期的なレビュー:要件変化に応じて構成を見直し、無駄を削減

予算編成時には、MVP フェーズのサーバーレス費用と、拡大フェーズのクラスタ費用を分けて試算し、相場感を掴むことが重要です。また、発注先の開発会社には、このようなフェーズ移行を見越した運用サポートプランを確認しておきましょう。

導入後の運用ポイント

サーバーレス/コンテナいずれを選んでも、導入後の運用が成功の鍵を握ります。以下のポイントを押さえて、長期的に安定したサービス運営を実現しましょう。

  1. モニタリングとアラート

    • サーバーレスは CloudWatch、コンテナは Prometheus+Grafana 等でメトリクスを収集

    • レスポンスタイムやエラー率、コスト警告をアラート設定

  2. CI/CD パイプライン

    • 関数は SAM CLI/Serverless Framework、コンテナは GitLab CI や Argo CD で自動デプロイ

    • ステージング環境との同期テストを自動化

  3. コスト管理

    • サーバーレスはリクエスト数・実行時間、コンテナはノード利用率を定期レポート

    • AWS Budgets や Kubernetes Cost Monitoring で予算オーバー防止

  4. バックアップと災害対策

    • DynamoDB オンデマンドバックアップ、EBS スナップショット

    • マルチリージョン・マルチゾーン構成で耐障害性向上

  5. ドキュメントとナレッジ共有

    • Playbook や Runbook を整備し、オンボーディング工数を削減

    • 定期的な技術レビュー会議で最新情報をキャッチアップ

これらの運用ポイントは、開発会社に「導入後の運用保守サービス」として見積もりを依頼し、追加費用がどの程度になるかあらかじめ把握しておくことをおすすめします。安定運用には、自動化と可視化の両輪が欠かせません。

開発会社選定のコツと予算感

アーキテクチャ選定と同様に重要なのが、開発会社の選び方です。以下の観点で複数社を比較し、信頼できるパートナーを見極めましょう。

  • 技術スタックと実績

    • サーバーレス/Kubernetes 両方の導入実績があるか

    • 類似業界やユースケースでの成功事例

  • チーム体制とコミュニケーション

    • 専任のクラウドアーキテクトや DevOps エンジニアがいるか

    • 週次レビューや仕様調整会議の頻度

  • 見積もりの明確さ

    • 工数単価、固定&従量費用、保守運用費を分かりやすく分離

    • 追加要件発生時のレートや手順

  • サポート体制

    • 24×365 の障害対応、プラットフォームアップデート対応

    • SLA(稼働率保証)とペナルティ条件

  • 予算感の擦り合わせ

    • サーバーレス初期構築は300万~800万円が相場

    • コンテナクラスタ構築は500万~1500万円+月額ノード利用料

    • 運用保守は月額50万~200万円が一般的

これらを複数社で比較し、技術力とコストバランスが最適な開発会社を選定してください。発注前には必ず PoC(概念実証)を短期間で実施し、チームとの相性やコスト見積もりの精度を確認することが失敗回避につながります。

まとめ:自社に最適なアーキテクチャの見つけ方

サーバーレスとコンテナオーケストレーションは、それぞれ強みと課題が異なる技術です。初期フェーズの迅速な開発とコスト最適化にはサーバーレスが向き、長期的な運用安定性やステートフル処理にはコンテナが適しています。

ポイントを整理すると:

  • ローンチ~MVP:サーバーレスで高速開発&低予算発注

  • スケール拡大:コンテナ混在アーキテクチャでパフォーマンス最適化

  • セキュリティ:ゼロトラスト設計と最小権限運用を両モデルで徹底

  • 運用:モニタリング自動化と運用保守サービス契約で安定稼働

開発会社選定では、技術実績・見積もりの透明性・サポート体制を重視し、複数社の提案を比較検討してください。予算・費用感とアーキテクチャ要件をすり合わせ、PoC を通じて最適なパートナーを決定すれば、長期的にコストメリットとビジネス成長の両立が可能です。

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