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技術解説・フレームワーク紹介

マイクロフロントエンドで実現する大規模Webシステム開発の進め方とフレームワーク比較

マイクロフロントエンドとは何か?

従来の単一ページアプリケーション(SPA)では、大規模システムになるほどモノリシック化し、チーム分業やリリース頻度の確保が難しくなります。マイクロフロントエンドは、バックエンドのマイクロサービスに倣い、フロントエンドも機能単位で分割して開発部署や開発会社に発注できるアーキテクチャです。
20~25人規模のチームが複数の機能を並行開発する際、従来のWebpackビルドや共通ライブラリ依存ではビルド時間が長くなり、予算や工数が膨らむことが少なくありません。「相場」の工数を超えた追加費用も発生しやすく、開発スピードが遅延するリスクが高まります。
マイクロフロントエンドを導入すると、以下のメリットがあります。

  • 独立デプロイ:機能ごとに個別リポジトリとビルドパイプラインを持ち、リリースタイミングを自由に設定

  • 技術選定の自由度:Vue.js、React、Angularなど好きなフレームワークを機能ごとに選択可能

  • チーム分業の明確化:機能の境界がはっきりするため、責任範囲と発注範囲を明確化

  • 予算管理の容易化:機能単位で開発会社に「選び方」「発注」を行い、見積もりとコスト管理を精緻化
    ただし、依存する共通UIライブラリや認証・認可コンポーネントのバージョンマネジメントには注意が必要です。アップデートタイミングを揃えないと、システム全体の動作検証やテスト費用が増大し、結果として予算をオーバーする恐れがあります。

主要マイクロフロントエンドフレームワーク比較

マイクロフロントエンドを実現するためのOSSや商用サービスは数多くありますが、ここでは代表的な3つを比較します。選定時には「システム全体のアーキテクチャ設計」「開発会社との契約モデル」「予算・費用の相場感」を踏まえたうえで検討しましょう。

フレームワーク 特長 開発スピード 保守性 費用面の影響
Single-SPA 多種フレームワーク共存可能、成熟度高 無償/商用サポート契約可能
Module Federation Webpack 5標準機能、既存プロジェクトへの導入が容易 無償、既存ビルド環境に依存
qiankun Alibaba発、動的読み込みとライフサイクル管理の充実 無償、ドキュメント日本語化進行中
  1. Single-SPA

    • 複数のフレームワークを同一ページ内で同居させやすく、スタートアップCTOからの評価が高い

    • ただし、共通ヘッダー・フッター更新時に全アプリをビルドし直すため、相場以上のビルド費用がかかるケースもある

  2. Module Federation

    • Webpack 5標準の仕組みを使うため、既存プロジェクトへの導入コストが抑えられる

    • ビルド設定の難易度が上がるため、初期の予算・工数見積もりで慎重な「選び方」が必要

  3. qiankun

    • Alibaba製だけあって大規模EC向け導入実績多数。動的ロードでアプリサイズを最適化

    • ドキュメントは英語が中心だが、日本語対応中のため、費用を抑えたい開発会社向けにも◎

いずれも導入前のPoCフェーズで、機能単位のビルド時間・ランタイムサイズ・CI/CDフロー構築コストを比較し、相場を超えないよう費用試算を行うことが重要です。

導入ステップと実際の進め方

マイクロフロントエンド導入は、いきなり全社規模で適用するよりも段階的に進めるのがコツです。以下のステップで進めると、開発スピードと予算管理を両立しながら移行できます。

  1. PoC(概念検証)フェーズ

    • 既存の小さな機能や画面でSingle-SPAやModule Federationを試す

    • CI/CDパイプラインを構築し、ビルド時間やランタイムサイズを計測

    • PoC段階で発注する開発会社には、費用相場と追加費用の目安を明確に伝える

  2. パイロット導入フェーズ

    • PoCの成果を元に1機能をマイクロフロント化し、本番環境で稼働

    • 複数チームで並行開発し、コミュニケーションフローやリリースフローを策定

    • 導入に伴う追加予算や相場感を、経営層・事業責任者と共有

  3. 全社展開フェーズ

    • パイロットで得たナレッジをドキュメント化し、オンボーディングを実施

    • 段階的に他の画面もマイクロフロントに置き換え、既存モノリシックを縮小

    • 年間予算・費用管理を行い、当初見積もりとの差分を把握

上記ステップでは、発注先の開発会社を段階的に切替えることで「選び方」のミスを防ぎ、適正相場内での発注がしやすくなります。また、予算切れによる開発中断リスクを抑えられ、追加費用の発生タイミングもコントロールしやすくなります。

ケーススタディ:物流業界向けダッシュボード刷新プロジェクト

背景と目的

A社は従来、物流センター内の稼働状況を表示する社内システムをモノリシックSPAで運用していました。画面遷移が多く、ビルド時間は数十分。新機能リリースごとにQA環境の構築コストも高く、開発会社への追加費用が年間で数百万円に上ることが課題でした。

フレームワーク選定プロセス

  1. PoC比較

    • Single-SPA vs Module Federation vs qiankunで3つの小機能を開発

    • 各ビルド時間、初期設定コスト、チームの習熟工数を計測

  2. 見積もり取得

    • 3社の開発会社にPoC成果を共有し、主要機能の置換費用を提示

    • コスト比較の結果、Module Federationを中心に進めつつ、UI共有部分はSingle-SPAで統一するハイブリッド方式に決定

  3. 予算交渉

    • 当初予算の相場は1,200万円。見積もりは1,350万円と若干オーバー

    • PoCでのビルド時間短縮効果(40%減)を実績として示し、追加費用分のROIを経営層に承認

プロジェクト進行と課題解決

  • チーム分業の徹底

    • モノリシック時代はフロントとバックエンドが緩結合だったため、コミュニケーションコストが膨大

    • 各マイクロフロントに専任エンジニアをアサインし、毎朝スタンドアップで進捗を共有

  • バージョン管理

    • 共通UIライブラリのバージョン差異により、一部機能だけ不具合が発生

    • Renovateを導入して自動アップデートを行い、テストパイプラインで検証→迅速にマージ

  • CI/CDパイプライン整備

    • 機能単位に分散していたパイプラインをGitHub Actionsで集約

    • プルリクごとにビルド→ユニットテスト→E2Eテスト→ステージング環境デプロイを自動化

結果として、機能追加のリードタイムは従来の3週間→1週間に短縮。追加費用も想定相場内に収まり、年間費用相場の35%削減を達成しました。

費用モデル別シミュレーション

フェーズ 従来モノリシック マイクロフロント導入後
PoC 200万円 300万円
パイロット導入(1機能) 400万円 350万円
全社展開(10機能) 3,000万円 2,500万円
合計 3,600万円 3,150万円
  • PoCコスト増:新技術習得・ツール導入費用で100万円増加

  • パイロット導入コスト削減:並行開発で工数効率化し、本格導入前にコスト抑制

  • 全社展開コスト削減:再利用可能なパイプラインとUIコンポーネントの効果

このシミュレーションをベースに、発注計画と予算計画を緻密に立てることで、発生しうる追加費用や相場外コストも未然に防げます。


まとめと今後の展望

マイクロフロントエンドは、大規模Webシステム開発における「開発スピード」「チーム分業」「費用最適化」を同時に実現できる魅力的なアーキテクチャです。特にシステム刷新や開発会社を新規選定するタイミングで導入すれば、予算・費用・相場管理を強化しつつ、将来的な機能追加や保守コストを大幅に抑制できます。

今後は、Service MeshやServer Componentsなど、バックエンド・フロントエンド両面でのマイクロサービス連携がさらに進化する見込みです。最新フレームワークやクラウドサービスを活用しながら、自社システムの競争力を高めていきましょう。

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