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“非同期処理フレームワーク”が業務システム開発を変える?Python×Celeryによるジョブ設計の実践解説

非同期処理が必要になる場面とは?

業務システムやWebアプリケーションの開発において、「非同期処理」の設計が必要になるシーンは年々増えています。
たとえば以下のようなケースが典型です。

  • ファイルアップロード後のウイルススキャンやリサイズ処理

  • バッチでの大量データの集計・分析処理

  • 外部APIとの通信結果を非同期で待ちたいとき

  • ユーザーの操作後に通知メールやレポートをバックグラウンドで生成

これらは共通して「処理に時間がかかるため、同期的にやるとユーザーの体験が損なわれる」という課題を持っています。

このような処理は、非同期・バックグラウンドで安全に実行される仕組みを設計する必要があります
ここで登場するのがPythonの「Celery(セロリ)」という非同期タスク実行フレームワークです。

Celeryとは何か?その特徴と立ち位置

Celeryは、Pythonベースのバックグラウンドタスク実行ツールで、以下の特徴を持っています。

  • タスクの分散処理に対応

  • タスクのキューイング、リトライ、タイムアウトなどを管理可能

  • DjangoやFlaskと簡単に統合できる

  • RedisやRabbitMQなどのメッセージブローカーと連携して非同期実行を実現

システム構成としては、以下のような構造をとります。

  • Webアプリケーション(Djangoなど)

  • メッセージブローカー(Redisなど)

  • Celeryワーカー(実際の非同期処理を担当)

つまり、「Webアプリ」から重い処理の依頼を出し、「Celery」がそれを別プロセスで処理してくれるイメージです。

よくある非同期タスク設計の問題と背景

非同期処理を取り入れたいと思っても、次のような設計ミスがよく見られます。

  • 同期処理との整合性が取れておらず、結果にズレが生じる

  • タスク失敗時のリカバリロジックが実装されていない

  • タスクの状態をユーザーにどう伝えるかが曖昧

  • 再実行・再通知の設計がされていない

このような問題を避けるためには、非同期処理そのものをシステム設計の初期段階で考慮する必要があります

Celeryはそうした運用課題に対して、優れた制御機能と柔軟な拡張性を提供します。

Celeryの導入ステップ(Djangoとの連携例)

DjangoプロジェクトにCeleryを導入する基本手順は以下の通りです。


Celeryの導入ステップ(Djangoとの連携例)

DjangoプロジェクトにCeleryを導入する基本手順は以下の通りです。


1. CeleryライブラリとRedisのインストール

pip install celery redis

2. プロジェクト直下に「celery.py」を作成し、Celeryアプリを定義

from __future__ import absolute_import, unicode_literals
import os
from celery import Celery

os.environ.setdefault('DJANGO_SETTINGS_MODULE', 'myproject.settings')

app = Celery('myproject')
app.config_from_object('django.conf:settings', namespace='CELERY')
app.autodiscover_tasks()

3. __init__.py に初期化処理を記述

from __future__ import absolute_import, unicode_literals
from .celery import app as celery_app

__all__ = ('celery_app',)

4. 任意のアプリ内に tasks.py を作成し、タスクを定義

from celery import shared_task

@shared_task
def add(x, y):
    return x + y

5. ワーカーを起動

celery -A myproject worker --loglevel=info

Celery活用事例:どのような業務に向いているか?

Celeryの強みが活きるのは、以下のような業務システムです。

  • 請求書や帳票PDFの一括生成・配信

  • 通知処理(Slack連携・メール配信・Webhook)

  • 統計集計や機械学習モデルのバッチ実行

  • CSVインポートの非同期パース処理

  • 管理者向け定期バッチ処理(毎日0時に集計など)

これらは「同期でやると処理が止まり、UIレスポンスが悪くなる」系の処理であり、Celeryとの親和性が高いです。

開発会社選定で確認すべき視点とは?

非同期処理フレームワークを使いこなせる開発会社は、以下のような点で信頼できます。

  • バックエンドアーキテクチャの理解が深い

  • 処理の失敗時・再実行時の安全設計を考慮している

  • リソースの分散設計(スケーラブル設計)に慣れている

  • 保守運用フェーズを見据えた開発体制を取っている

発注側としては、「Celeryや非同期タスク設計に対応していますか?」と聞くことで、開発会社の設計力を測る材料になります。

コストへの影響と導入判断の目安

「非同期処理は便利だけど、開発費用が上がるのでは?」と懸念されるケースもあります。
しかし、適切な判断基準で導入することで、以下のような費用対効果が得られます。

  • ユーザー満足度の向上(高速レスポンス)

  • オペレーション工数の削減(手動確認不要)

  • バグの早期発見と保守費用の圧縮

  • スケーラブルな設計による長期運用コストの最適化

判断基準としては、「3秒以上かかる処理」や「ユーザーに完了を待たせる処理」が発生する場合は、非同期化を検討すべきです。

まとめ:非同期処理は「便利機能」ではなく「開発戦略」のひとつ

Celeryのような非同期処理フレームワークを使いこなすことは、単に開発技術を上げることではなく、ユーザー体験を損なわないシステム設計、長期的な運用コストの最適化、ひいてはビジネス価値の最大化につながります。

見積もりの内訳に「非同期設計」「Celery導入」とあったら、それはコストアップではなく、品質と拡張性への“投資”です。

開発会社を比較・検討する際は、ぜひ非同期処理の実績や設計思想にも注目してみてください。

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