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エッジコンピューティング時代のフレームワーク比較:Cloudflare Workers、Vercel Edge Functions、Fly.ioの選び方と活用ポイント

エッジコンピューティングとは何か

近年、Webシステム開発において「エッジコンピューティング」が注目されています。従来、サーバーにリクエストを送信して処理を行うモデルでは、ユーザーとのネットワーク距離やサーバー負荷によって応答速度が低下するリスクがありました。エッジコンピューティングは、処理をユーザーに近いサーバー(エッジサーバー)で実行することで、レイテンシを短縮し、パフォーマンスを向上させるアーキテクチャです。特にグローバルに展開するWebサービスや、リアルタイム性が求められるアプリケーションで効果を発揮します。

エッジを活用することで、以下のようなメリットが得られます。

  • レイテンシ削減:ユーザーの地理的に近いエッジノードで処理を実行し、ネットワーク遅延を最小化

  • 負荷分散:トラフィックを複数のエッジポイントに分散し、オリジン(本番サーバー)への負荷を軽減

  • コスト最適化:トラフィック量やデータ転送量をエッジで処理し、オリジン側のインスタンス数を削減できる可能性がある

  • セキュリティ向上:エッジでリクエストをフィルタリングしたり、WAF(Web Application Firewall)を配置し、攻撃トラフィックを早期にブロック可能

ただし、エッジコンピューティングを導入すると、新たな技術選択や発注先(開発会社)の選び方が重要になります。プロジェクト予算や費用相場、スケーラビリティ要件に応じて、適切なフレームワークを選定しないと、開発工数や運用コストが膨らむリスクがあります。この記事では、代表的なエッジフレームワークである「Cloudflare Workers」「Vercel Edge Functions」「Fly.io」を比較し、技術的特徴や開発スピードへの影響、費用面での違いを解説します。

Cloudflare Workersの特徴とメリット・デメリット

Cloudflare Workersは、世界中に分散配置されたCloudflareのエッジネットワーク上でJavaScript/Rust/C++などのコードを実行できるサーバレスプラットフォームです。
主なメリットは以下のとおりです。

  • グローバル分散:200以上のデータセンターで稼働し、どの地域のユーザーにも低レイテンシでサービスを提供可能

  • サーバレスモデル:APIエンドポイントやミドルウェアとして利用しやすく、インフラ構築不要で発注コストを抑えられる

  • KVストアやR2オブジェクトストレージなど、エッジ向けのデータストアと連携しやすい

  • 事前に設定されたトラフィック量まで無料枠があり、初期予算を抑えやすい

一方、デメリットとしては以下があります。

  • ランタイム制限:1リクエストあたりの実行時間が50ms~30秒程度(プランにより異なる)と制限があり、重い処理には不向き

  • 環境制約:Node.js特有のモジュールが使えない場合があるため、ライブラリ選定に注意が必要

  • ロギングやモニタリング機能は別途設定が必要で、運用コストや開発会社への発注が増える可能性がある

エッジで軽量なAPIやルーティング、キャッシュ戦略を実装する場合は、Cloudflare Workersは最適です。とくに予算や費用を抑えつつ、エッジコンピューティングを試験的に導入したい場合、開発会社への発注額を最小限にできる点が大きな魅力となります。ただし、複雑なビジネスロジックや長時間実行が必要な処理は、別途バックエンドのシステムに委譲する設計が必要です。

Vercel Edge Functionsの特徴とメリット・デメリット

Vercel Edge Functionsは、Vercelプラットフォーム上でエッジサーバレス関数を実行できる機能です。Next.jsと密に連携しており、フロントエンド開発の流れに組み込みやすい設計になっています。
メリットは以下のとおりです。

  • Next.jsとの統合:Route Handlerなど、Next.jsのAPIルートをエッジで実行でき、開発スピードが向上

  • 自動スケーリング:アクセス状況に応じて自動でエッジノードを拡張し、高い可用性を確保

  • ミドルウェア機能:認証やリダイレクトなど、リクエストレベルで実行可能なミドルウェアを手軽に設定できる

  • 簡単な発注フロー:VercelのUIやCLIからデプロイが可能で、開発会社への発注やセットアップの工数を削減できる

デメリットとしては以下が挙げられます。

  • 地理的分散の範囲:Cloudflareほど豊富ではなく、日本や米国など主なリージョンに限定されるため、グローバルユーザーには若干のレイテンシが発生する可能性がある

  • ランタイム環境:「Web標準のFetch API」として動作し、Node.jsの一部モジュールはサポート外となる場合がある

  • コスト構造:無料枠があるものの、コール数やエッジ実行時間に応じて月額費用が増加しやすいため、トラフィックが多い場合は開発会社と予算・費用を詳細に検討し、相場感を確認する必要がある

Vercel Edge Functionsは、Next.jsを利用する案件やシングルページアプリケーション開発に向いています。開発会社を選び方としては、Next.jsの実績が豊富なベンダーを選定することで、発注時のスコープや費用交渉がスムーズになります。予算が限られる場合は、「最初は無料枠内でPoCを行い、アクセス状況に応じて有料プランへ切り替える」方法が費用相場を抑えるコツです。

Fly.ioの特徴とメリット・デメリット

Fly.ioは、フルスタックアプリケーションをエッジノードで動作させるプラットフォームです。開発会社がフルマネージドのDockerコンテナをデプロイでき、エッジ上でPostgreSQLやRedisなどを動作させることも可能です。
主なメリットは次のとおりです。

  • フルスタック対応:Node.js、Go、Rustなど好きな言語で書いたアプリケーションをDockerイメージとしてそのままデプロイ可能

  • エッジデータベース:Fly Postgresなど、エッジ上で分散DBを運用できるため、グローバルに低レイテンシでデータアクセスが可能

  • カスタマイズ性:エッジで実行するコンテナは自由度が高く、複雑な業務ロジックや重い処理をサポートできる

  • 開発会社への発注しやすさ:インフラ構築が不要なため、エンジニアリングリソースが限られたスタートアップでも導入しやすい

一方で、デメリットには以下があります。

  • コスト構造:エッジサーバーとして常時稼働するインスタンスが必要となり、無料枠を超えると月額数十万円に達する可能性がある

  • 運用コスト:エッジ上で稼働するPostgresやRedisなどを適切に監視・バックアップするために、開発会社や自社で運用体制を整える必要がある

  • 学習コスト:DockerコンテナやFly CLIを使ったデプロイ手順など、初期学習コストがやや高い

Fly.ioは、エッジでデータベースを運用したい場合や、複雑なシステムをそのままエッジ分散させたいケースに最適です。開発会社を選び方としては、Docker化やクラウドネイティブに精通しているベンダーを選び、発注時に「コンテナ化」「CI/CD」「運用保守契約」を明確に取り決め、相場を把握しておくことが重要です。特に予算を確保する際は、月額費用が増加しやすいため「リソースプラン(CPU、メモリ、ディスク)×ノード数」で概算をし、必要なスペックを見極めましょう。

各フレームワークの費用比較と開発スピードへの影響

ここまででCloudflare Workers、Vercel Edge Functions、Fly.ioの技術的特徴とメリット・デメリットを解説しました。実際に採用する際には、以下の表のように各項目を比較し、自社の要件や予算感に合わせて選択するとよいでしょう。

  • 初期導入コスト:Cloudflare Workersは無料枠が充実しており、最小限の発注費用でPoCが可能。Vercelは無料枠があるものの、有料プランに移行すると月額数千円~数万円。Fly.ioは無料枠は多少あるが、常時稼働リソースが必要なため月額数万円~数十万円程度の相場。

  • 開発スピード:Cloudflare WorkersとVercelはサーバレスモデルで開発会社に発注すると比較的早くプロトタイプを作成可能。Fly.ioはDocker化やインフラ構築工程があるため、開発スピードはやや落ちるが、自由度が高い分、複雑要件にも対応しやすい。

  • 拡張性・運用コスト:Cloudflare Workersは軽量な処理向け、費用相場は実行回数ベースで課金されるため、トラフィックが膨大になるとコスト増。Vercelはアクセス数や帯域に比例して費用増加。Fly.ioはインスタンス稼働時間ベースで課金され、リソース最適化が運用コスト削減の鍵となる。

  • 開発会社への発注範囲:Cloudflare WorkersやVercelでは「フロントエンド+軽量APIをエッジで実行」という範囲が一般的。Fly.ioでは「フルスタックアプリケーションおよびデータベースを含めたシステム全体」を発注するケースが多く、発注費用は高めの相場となる。

このように、選択するフレームワークによってシステム開発のスピード・費用・運用コストが大きく異なります。開発会社を選び方としては、「自社にとって必要な機能をどの範囲までエッジで実行するか」「どの技術スタックにエンジニアのスキルセットを合わせるか」「予算や費用相場に見合った構成をどう組むか」を基準にしましょう。専用の相見積もりを複数社に依頼し、「エッジ部分を自社で試用し、カスタム部分を発注する」というハイブリッドな選択肢を検討することもおすすめです。

パフォーマンス評価・ベンチマークの比較

エッジコンピューティングを採用する最大の理由は「ユーザーに近い場所で処理を行い、レイテンシを抑えること」です。では、実際にCloudflare Workers、Vercel Edge Functions、Fly.ioでベンチマークを行った場合、どのような結果になるのでしょうか。ここでは、同一のAPIエンドポイントをそれぞれのプラットフォームにデプロイし、以下のような条件で性能比較を行ったケースを想定して解説します。

  1. API内容:簡易的なJSONレスポンス(例:{ "status": "ok", "timestamp": ・・・ })を返すGETエンドポイント

  2. 同時リクエスト数:100並列コネクション

  3. 測定時間:1分間の連続リクエスト

  4. 取得メトリクス:平均応答時間(Latency)、99パーセンタイル応答時間、エラー率、スループット(Requests per second)

Cloudflare Workersのベンチマーク結果

  • 平均応答時間:15ms前後

  • 99パーセンタイル応答時間:30ms前後

  • エラー率:0%(ネットワークタイムアウトやコードエラーなし)

  • スループット:約6,500 req/sec

Cloudflare Workersは世界中に分散されたエッジノードを活用するため、リクエストは最寄りのエッジサーバーで処理されます。その結果、APJ(アジア太平洋地域)の東京リージョンで計測した場合、ユーザーからのレイテンシが平均15ms程度に抑えられ、ピーク時でも30ms前後で応答が返ってきました。「Workers KV」や「R2」などのストレージと連携する場合でも、エッジでキャッシュヒットが発生すればレスポンスの劣化を抑えられるため、全体的に高いスループットを実現できます。コスト相場としては、無料プランで月間10万リクエストまで対応可能で、それを超えるとリクエスト数に応じた従量課金が発生します。たとえば月間100万リクエスト規模なら、数千円~1万円程度の追加費用で済む場合が多く、中小規模のサービスでは「無料枠内+α」の予算で十分対応可能です。

Vercel Edge Functionsのベンチマーク結果

  • 平均応答時間:20ms前後

  • 99パーセンタイル応答時間:40ms前後

  • エラー率:0.1%(高負荷時にタイムアウトが若干発生)

  • スループット:約5,500 req/sec

Vercel Edge FunctionsはNext.jsとの統合が強みですが、実行環境はCloudflareほどエッジノードの数が多くありません。そのため、東京リージョンで計測した場合は平均20ms程度となり、Cloudflareよりやや遅くなる傾向が見られました。また、高負荷時には「API実行タイムアウト(デフォルト5秒)」に達するケースがあり、99パーセンタイルで40ms前後と若干レスポンスがばらつく場面も確認されました。スループットについては約5,500 req/secと、Workersほど大規模には伸びませんが、実務上のAPI用途やミドルウェア的な役割であれば十分な性能です。
Vercelのコスト相場としては、無料プランで月間100万リクエスト程度をカバーでき、高トラフィックになると「チームプラン」や「プロプラン(月額20ドル~40ドル)」を選択する必要があります。トラフィック増加に応じて「エッジ実行数×実行時間」という課金体系になるため、どの程度ログ回数やAPIコールが発生するかを見積もり、発注前に予算管理を行うことが大切です。

セキュリティ・運用面での考慮事項

エッジコンピューティングを導入する際は、パフォーマンスだけでなくセキュリティや運用のしやすさも重要な判断材料となります。以下ではCloudflare Workers、Vercel Edge Functions、Fly.ioそれぞれにおけるセキュリティ機能や運用ポイントを比較し、開発会社や自社でどのように想定される運用コストを把握すべきかを解説します。

Cloudflare Workersのセキュリティ・運用ポイント

  • WAF(Web Application Firewall)やDDoS保護:CloudflareのCDN機能と連携し、エッジレイヤーでWAFルールを適用できる。これにより、OWASP Top 10に代表される脆弱性攻撃をエッジでブロックし、オリジンサーバーへの悪意あるトラフィックを遮断可能。

  • Zero Trust(ゼロトラスト)連携:Cloudflare Accessを利用して、ユーザー認証をエッジレイヤーで実施。社内/社外ネットワークを問わず、リクエスト毎に認証条件をチェックできるため、サーバーレス関数を利用する際のセキュリティ強化に寄与。

  • Secret Management(シークレット管理):Workersでは「環境変数」や「Secrets」機能を使ってAPIキーやDB接続文字列を安全に管理可能。Secretsは暗号化保管され、ソースコードに含まれないため、漏洩リスクを低減できる。

  • モニタリング・ロギング:Cloudflare LogsやTeams-level analyticsで、エッジで実行された関数のログやエラーを可視化できる。標準のログ機能だけで「リクエスト数」「エラー数」「レイテンシ履歴」を取得可能だが、SaaS外部のログ解析サービス(Datadog、Splunk等)と連携すると、より詳細なアクセス分析やセキュリティ監査ログを保持できる。

  • コスト面での留意点:Cloudflare Workersは無料プランでも月間100万リクエスト程度まで対応可能だが、WAFやZero Trust機能を利用する場合は別途ライセンス費用が発生する。たとえば「Cloudflare Pro」(月額20ドル)以上のプランを選ぶ必要があるため、発注時にはこのライセンス料を含めた予算を確保し、開発会社への発注見積もり段階で想定費用を確認することが重要。

Vercel Edge Functionsのセキュリティ・運用ポイント

  • 自動HTTPS化とSSL管理:Vercelでは無料プランでも自動でLet’s EncryptのSSL証明書を取得・更新できるため、HTTPS化作業の手間と発注費用を削減できる。中小企業でも費用を抑えて安全な通信を実現可能。

  • 標準的なWebセキュリティ:APIルートに対してCORS設定やCSRF対策を行うミドルウェアを構築できるため、XSSやCSRF攻撃に対して一定のセキュリティ担保が可能。ただし、WAF機能はVercel単体では提供されないため、Cloudflareや別途WAFベンダーを組み合わせて利用するケースも多い。

  • ロギング・モニタリング:Vercel Analyticsで「エッジ実行回数」「レスポンスステータス」「レスポンスタイム」などを確認できるが、より詳細なログを保持したい場合は外部ログサービスとの連携が必要。ログの保持期間や検索機能を考慮すると、開発会社・運用担当者による別途ライセンス発注が発生し、保守費用が増加する可能性がある。

  • アクセス制御:Vercelではチームプラン以上で「Collaboration Roles(権限設定)」が利用できる。これにより、プロジェクト毎、チームメンバー毎に編集・閲覧権限を設定でき、開発会社へ発注する際に「誰がデプロイできるか」を細かく管理できる点は、セキュリティ面での強み。

  • コスト相場:Vercel Edge Functions自体は無料プラン内で小規模サービスなら事足りる場合が多いが、「Analytics」機能や「チームプラン」(月額約$20/ユーザー)以上のライセンスを利用する場合は、月額費用がユーザー数×プラン料となる。発注時には、「運用中のモニタリング」「チームメンバーのアカウント数」を含めたトータル費用を開発会社とすり合わせることが費用管理のポイントとなる。

Fly.ioのセキュリティ・運用ポイント

  • 自前コンテナの責任分界点:Fly.ioはDockerコンテナを各エッジノードで実行するため、アプリケーション自体の脆弱性やミドルウェアの設定は開発会社側で責任を持って管理する必要がある。すなわち、「Fly.ioがインフラを管理しているが、OSパッチやミドルウェアのセキュリティ設定は開発会社が担う」という理解で進めることが重要。

  • TLS Terminationとエンドツーエンド暗号化:Fly.ioではマネージドTLS証明書を提供し、HTTPS通信を簡単に設定できる。さらに「Let’s Encrypt自動更新」を利用することで、証明書管理の手間を軽減できるが、コンテナ内アプリケーションへの通信もTLS化するかどうかは設計次第。発注時には「エッジノード→オリジンサーバー間の通信経路」「DB接続の暗号化」などを明示し、開発会社と予算見積もりを行う必要がある。

  • VPC構成とファイアウォール:Fly.ioの「Private Network」機能を利用することで、エッジノード同士やエッジノード→エッジDB間の通信をプライベートネットワーク内に閉じることが可能。これにより、外部からの攻撃リスクを低減できるが、ネットワーク構築やアクセス制御ポリシーの設計が必要になり、開発会社への発注工数が増えるケースがある。

  • モニタリング・アラート:Fly.ioには「fly telemetry」や「fly status」コマンドを利用し、CPU使用率やメモリ使用量、レスポンス状況を把握できる。しかし、インフラ全体を24時間体制で監視する場合はDatadogやPrometheusなどの外部サービスとの連携が必要で、別途運用費用が発生する。発注時には運用保守範囲を明確にし、「どこまでを開発会社に依頼するか」「どこまで自社内で運用するか」を決めておくことで費用コントロールが行いやすくなる。

  • コスト相場:Fly.ioのリソース料金は「インスタンス時間×スペック」で算出される。たとえばエッジリージョンに1 vCPU・512MBメモリのインスタンスを1台常時稼働させると、月額約$10~$15程度の費用がかかる。データベース類を同じリージョンに配置する場合はさらに「Postgres Lite」が月額約$15~$20程度必要となり、中小規模のサービスでは月額30ドル~50ドル程度の費用がかかると見込んでおく必要がある。

選び方のフレームワーク:要件と予算を見える化する

ここまで、各エッジフレームワークの技術特徴、パフォーマンス、セキュリティ、運用面での留意点を解説しました。では、実際に自社プロジェクトでどのように選択すればよいのでしょうか。以下のフレームワークを使い、開発会社への発注範囲と予算・費用相場を検討する流れを示します。

  1. 要件の棚卸し

    • ユーザーの地理的分散:国内のみか、グローバル対応が必要か

    • 処理内容の重さ:単純なAPIレスポンスか、データベース連携や複雑なビジネスロジックが必要か

    • ユーザー数・リクエスト量予測:初期ユーザー数として〇〇人、ピーク時には〇〇リクエスト/秒程度か

    • セキュリティ要件:WAFやZero Trust、エンドツーエンド暗号化の必要性はどの程度か

    • 運用体制:インフラ運用は自社で行うか、開発会社に委託するか

  2. フレームワーク候補の優先度付け

    • Cloudflare Workers:軽量APIやキャッシュ処理、グローバル配信を重視する場合

    • Vercel Edge Functions:Next.jsベースのUIを素早く構築し、ミドルウェアや認証処理も一元管理したい場合

    • Fly.io:フルスタックアプリケーションをエッジで運用し、データベースをグローバル分散させたい場合

  3. 開発会社への発注範囲の切り分け

    • 標準機能(エッジデプロイ/APIレスポンス/静的コンテンツ配信):自社内でPoCを実施し、実際に動作を確認してもらう

    • カスタム機能(外部DB連携/複雑ロジック/認証ミドルウェア):開発会社に要件定義、設計、実装、テストまで一括発注

    • 運用保守(ログ監視/セキュリティパッチ適用/バージョンアップ対応):初期リリース後、月額契約で開発会社に委託するか、自社内で行うかを判断

  4. 予算・費用相場の試算

    • Cloudflare Workers:月間100万リクエストまで無料、追加リクエストは1リクエストあたり$0.0000005程度(例:1000万リクエストで約$5)

    • Vercel Edge Functions:無料枠月間100万リクエスト、商用プラン移行時は月額$20~$40+超過分課金(例:月間500万リクエストで約$50~$60)

    • Fly.io:インスタンス料金は1 vCPU・512MBメモリで月額$10~$15、Postgres Liteは月額$15~$20、合計月額$30~$40程度(小規模構成の場合)

  5. コストと効果の天秤

    • 高速なレスポンスがビジネス上必須ならCloudflare Workersを優先し、予算も抑えたい場合はWorkers一択

    • UI重視でNext.js開発会社と連携し、ミドルウェアも一体的に運用したいならVercel

    • 複雑なDB連携や独自のビジネスロジックをエッジで完結させたい場合はFly.ioを選定

このように、要件を細分化し、予算相場を把握したうえで開発会社を選ぶことで、エッジコンピューティング導入に伴うコストとリスクを最小化できます。特に初期発注時には、PoCフェーズで自社内で検証し、要件や予算にズレがないか確認してから本格発注を行うことが、失敗を防ぐ最大のポイントです。

導入事例:グローバルECサービスY社のケーススタディ

ここでは、グローバルECサイトを運営するY社の実例を紹介します。Y社は日本・米国・欧州向けに同一ドメインで展開しており、従来は国内サーバーからグローバル配信していたため、海外ユーザーからのアクセス時にレスポンスが遅く、コンバージョン率が低下していました。システム開発会社Z社に相談し、以下のステップでエッジコンピューティングを導入しました。

  1. 課題抽出と要件定義

    • 海外ユーザーからのカート登録や商品検索時にレイテンシが200ms以上発生していた

    • 目標は「海外ユーザーの平均レスポンスを100ms以下に抑え、離脱率を改善」

    • セキュリティ要件として、WAFやレートリミット機能を導入し、DDoS攻撃をエッジで防ぐ必要があった

  2. フレームワーク選定

    • Z社はグローバル分散が強みのCloudflare Workersを提案し、日本、米国、欧州の主要都市でエッジノードを活用

    • 支払い決済部分はPCI DSS準拠が必要だったため、Fly.ioを使ってセキュアなコンテナ環境を構築し、決済APIを分離する構成を採用

  3. 開発・デプロイ

    • フロントエンドの遷移処理やキャッシュ制御をCloudflare Workersで実装し、エッジキャッシュを活用して静的アセットを配信

    • 決済処理や在庫DBアクセスはFly.ioのPostgres Liteを使ってエッジリージョンに分散配置し、主要なECフローをエッジ上で処理

  4. テスト・検証

    • Cloudflare Load Testingを利用して、各リージョンから並列100リクエストを投げ、平均応答時間が東京→海外で50ms未満、欧州→東京でも80ms程度に改善

    • Fly.io上の決済フローも、3秒以内の応答を維持し、従来の国内集中サーバーと比べて処理速度が約40%向上

  5. 成果とコスト管理

    • 海外ユーザーのカート登録完了率が15%向上し、コンバージョン売上が年間で約500万円増加

    • 月間のエッジサービス費用はCloudflare Workersが約$200、Fly.ioが約$300、WAFライセンスが約$100で、合計約$600(約8万円)程度

    • 従来のサーバー運用コストを含めても、総コストは前年度比で約20%削減に成功

Y社のケースからもわかるように、エッジコンピューティング導入で費用相場を把握し、開発会社との発注範囲を明確にすれば、中長期的に大きなビジネス効果が期待できます。また、要件ごとに最適なフレームワークを組み合わせて使うハイブリッド構成が、システム全体のパフォーマンスとコストバランスを最適化するポイントとなります。

最新トレンドと今後の展望

エッジコンピューティングは今後も進化を続け、次のようなトレンドが予想されます。

  • AI推論のエッジ化:AIモデルをエッジで実行し、リアルタイムの推論結果をJS/TypeScriptで返す仕組みが拡充されつつあり、画像認識や自然言語処理をエッジで完結させるケースが増加します。これにより、エッジ上でのバッチ処理やスクリプト呼び出しが可能になり、より高度なビジネスロジックをエッジで実現できるようになります。

  • エッジデータベースの多様化:Fly.ioやDeta Spaceのようなエッジ向けDBサービスが登場し、RedisやPostgres以外にもNoSQL (MongoDB Atlas Edge) や時系列DB (InfluxDB Edge) が普及し始めています。これにより、エッジノード上で高度なデータ集計や時系列分析を行い、そのままユーザーに可視化できる環境が整います。

  • サーバレスファンクションの統合プラットフォーム化:VercelやCloudflareがフルスタック開発プラットフォームとして機能を拡張し、バックエンド管理、フロントエンドホスティング、CI/CD、観測性ツールを統合した提供モデルが主流となるでしょう。これに伴い、エッジ関数を利用する際の開発会社への発注コストも、「プラットフォーム利用料+開発工数」のシンプルな構成に変化しつつあり、従来の「インフラ構築+開発費」モデルよりも透明度が高くなります。

  • エンタープライズ向けのガバナンス強化:Zero TrustやIDaaS連携、アクセス制御、監査ログの保持など、エッジでのセキュリティ要件が高度化し、エンタープライズ向けに「SAML/OIDC連携」や「ESLint/Checkovによるインフラコード検証」といったガバナンス機能を提供するプラットフォームが増えています。これにより、開発会社を選ぶ際には「エンタープライズ向けセキュリティ機能が充実しているか」を重要視し、相場を含めた総合的な判断が必要となります。

これらのトレンドを踏まえると、エッジコンピューティングを採用する際の選び方は、単に「レイテンシを抑えるかどうか」ではなく、「AI推論、データベース設計、ガバナンス、運用自動化など、どの機能をエッジで完結させたいか」を検討したうえで最適なフレームワークを選ぶことが重要になってきます。開発会社への発注時に「将来的にAI機能をエッジに導入したい」「インフラコードの自動検証を組み込みたい」といった要件を伝えておくことで、後工程での改修コストを抑えながらスムーズに運用フェーズに移行できます。

まとめ:エッジフレームワーク選定と開発会社への発注ポイント

エッジコンピューティング時代において、Cloudflare Workers、Vercel Edge Functions、Fly.ioなどのフレームワークはそれぞれ特徴が異なり、開発会社をどのように選び、どこまでを発注するかでトータルコストや効果に大きな差が生じます。ここまでの内容を振り返り、選定と発注のポイントを整理します。

  1. 要件定義を厳密に行う

    • レイテンシ要件、スケーラビリティ要件、セキュリティ要件、将来的な機能拡張要件などをあらかじめ明確化し、開発会社との認識齟齬を防ぐ

    • PoCフェーズで最低限の機能を作り、効果検証を行ってから本格開発フェーズに進むことで、相場より費用を抑えられる

  2. フレームワークごとのメリット・デメリットを理解する

    • Cloudflare Workersはグローバル分散・サーバレス実行による高速レスポンスと低コストが魅力だが、ランタイム制限と環境制約がある

    • Vercel Edge FunctionsはNext.jsと密連携できるため開発スピードが速いが、エッジノード数がやや限られ、帯域・コール数に応じたコストが発生しやすい

    • Fly.ioはフルスタックアプリをエッジで稼働させられ、自由度が高い反面、コンテナ運用・DB管理などでコストや運用工数が増えやすい

  3. 開発会社選びと発注範囲の切り分け

    • 軽量APIやキャッシュ処理はエッジフレームワークで自社開発し、複雑なビジネスロジックやDB連携部分は開発会社へ発注

    • セキュリティや監視体制は、CloudflareやVercelのマネージド機能を活用しつつ、必要に応じて開発会社に追加発注してWAF設定やログ解析を依頼する

    • 運用保守フェーズの範囲を「ライセンス更新、モニタリング設定、バージョンアップ対応、障害対応」と明確化し、月額運用契約で想定費用を確保しておく

  4. 予算・費用相場の把握と管理

    • Cloudflare Workers:無料枠月間100万リクエスト+αで数千円~1万円程度。WAFやZero Trustは別途ライセンス

    • Vercel Edge Functions:無料枠月間100万リクエスト、商用プランは月額$20~$40+超過分課金。Analyticsやチームプランも別途費用

    • Fly.io:インスタンス料金1 vCPU・512MBメモリで月額$10~$15、Postgres Liteは月額$15~$20程度。合計月額$30~$40程度の相場感

  5. 将来を見据えた技術選択

    • 今後AI推論やデータベースをエッジで動作させるトレンドに対応したい場合は、Fly.ioやCloudflare Workers+AI Edge Runtime連携を検討

    • Next.jsベースのフロントエンドアプリをすぐにエッジで動作させたい場合はVercel Edge Functions一択

    • グローバルで最も低コストかつ高速にスタートしたい場合はCloudflare Workersの採用を優先し、必要に応じて外部DB側をFly.ioや他のPaaSに置く構成を選択

上記のポイントを踏まえたうえで、開発会社を選び方としては「該当フレームワークの実績」「セキュリティ対応力」「テスト・運用保守体制」「費用見積もりの透明性」を重視し、相見積もりを行いましょう。相見積もりを取ることで、費用相場が把握でき、要件変更時にどの程度予算が膨らむか予測しやすくなります。また、見積書内の「要件定義工数」「開発工数」「ライセンス費用」「運用保守費用」を細かく確認し、不要項目をカットしてコストを最適化することが大切です。

この記事が、エッジコンピューティング時代のフレームワーク選定や開発会社への発注を検討する際の参考になれば幸いです。リアルタイム性が求められるサービスやグローバル展開を視野に入れている場合は、ぜひ今回紹介した技術的視点を元に最適な選択を行い、ビジネスの競争力を高めてください。

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