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技術解説・フレームワーク紹介

モノリスからマイクロフロントエンドへ――最新UI分割アーキテクチャと主要フレームワーク比較

はじめに:マイクロフロントエンドの潮流

近年、バックエンドのマイクロサービス化が一般化する中で、フロントエンドにも同様の分割アーキテクチャを適用する「マイクロフロントエンド」が注目を集めています。
従来の単一ページアプリケーション(SPA)は、ひとつのビルド/デプロイユニットとして全画面を管理しますが、プロジェクトが大規模化するとコードベースが肥大化し、チーム間の開発競合やリリース調整が煩雑化します。
そこで、UIを小さな機能単位に分割し、独立したマイクロアプリとしてビルド・デプロイできる仕組みが登場しました。これにより、複数チームが各ドメインごとに技術選択や開発サイクルを自主運営でき、スケール性・保守性が飛躍的に向上します。

  • 利点

    • 小規模チームの独立リリース

    • 技術選択の自由度向上

    • ビルド時間・バンドルサイズの縮小

  • 課題

    • 認証・セッション共有

    • 共通UI/共通状態管理の整合

    • レイアウト崩れ防止のCSSスコープ設計

この潮流を実現するために登場した主要フレームワーク・ツールを紹介し、導入のポイントを解説します。

フレームワーク①:Module Federation(Webpack 5)

Module Federationは、Webpack 5のコア機能として提供されるマイクロフロントエンド向けの仕組みです。
各マイクロアプリを「ホスト」と「リモート」に分け、ホスト側のビルドにリモート側のモジュールを動的に読み込むことができます。

  1. セットアップの流れ

    1. ホスト側のwebpack.config.jsにModuleFederationPluginを設定

    2. リモート側にも同プラグインを設定し、エクスポートするモジュールを指定

    3. ホストコードにimport("remote/Button")のように動的importを記述

  2. メリット

    • 既存のWebpack設定を大きく変更せず導入可能

    • 同一バンドルに依存せず、リモートアプリ単体で独立デプロイ

  3. デメリット

    • バージョン衝突対策のshared設定が複雑

    • 初回読み込み遅延のキャッシュ戦略設計が必要

この仕組みを採用すると、マイクロサービス側と同様にUI側もマイクロ単位でシステムを分割できます。

フレームワーク②:Single-SPA

Single-SPAは、フレームワーク非依存で複数SPAを統合するマイクロフロントエンド用ライブラリです。
Angular、React、Vueなど異なる技術スタックを横串で統合し、起動タイミングやルーティングを一元管理します。

  • 基本構成

    • ルートコンフィグで各サブアプリを登録

    • サブアプリのライフサイクル(bootstrap, mount, unmount)をSingle-SPAが制御

  • 特徴

    • 技術選択の幅が広く、レガシーアプリの漸次移行にも最適

    • 共通ライブラリは外部CDNから読み込むことで、バンドルサイズを圧縮可能

  • 留意点

    1. グローバルCSSのカプセル化

    2. 認証トークンの共有機構設計

    3. 初期起動スクリプトの最適化

マイクロフロントエンド化の初期段階で「まずSingle-SPAでログイン画面」「次にダッシュボード画面」という段階的導入がしやすい点が魅力です。

フレームワーク③:Piral

Piralは、「ピラルアーキテクチャ」を提唱する商用OSSプラットフォームです。
コンテナアプリの上で「パイル(pile)」と呼ぶ機能モジュールをプラグインとして届ける仕組みで、マイクロフロントエンドを実現します。

  1. 利点

    • パイルのパッケージ化が容易で、NPMモジュール登録可能

    • API拡張ポイントを豊富に提供し、認証・テーマ・国際化などの共通機能をプラグイン化

  2. 注意点

    • 商用ライセンス要件の確認

    • プラグイン互換性の管理

Piralを選ぶと、開発会社選び方のポイントとして「Piralエコシステム経験」「独自プラグイン開発力」を重視すべきです。

技術選定のフレームワーク比較一覧

項目 Module Federation Single-SPA Piral
技術依存性 Webpack 5 なし Piral専用ランタイム
異なるフレームワーク混在 △(要調整)
プラグイン拡張性
導入難易度
保守性

これをもとに、自社プロジェクトの予算や開発チームのスキル、リリースサイクルに合わせて最適なフレームワークを選びましょう。

マイクロフロントエンド導入時の注意点

  1. 認証・認可

    • OAuthトークン共有、SSO連携設計を事前に確定。

  2. 共通UI/デザインシステム

    • StorybookやBitなどでコンポーネントを集中管理。

  3. 状態管理

    • ReduxやMobXを全体で一元管理するか、サブアプリ別に持つか検討。

  4. テスト戦略

    • E2Eテスト、契約テスト(Pact)で相互依存を保証。

これらの要件をRFPや見積もり依頼時に明示し、費用相場を把握しておくと、開発会社とのコンセンサスが取りやすくなります。

マイクロフロントエンド×マイクロバックエンド統合設計

従来、UIとAPIは一体で設計されることが多く、フルスタックチームが一括で開発・デプロイを行っていました。しかしマイクロフロントエンドを導入した場合、フロントエンドとバックエンドも同様にマイクロ化し、両者を疎結合に保つことが重要です。

  • APIゲートウェイの活用

    • マイクロサービスごとに独立したエンドポイントを持つが、クライアントからは統一エンドポイントに見せる

    • 認証・認可、レートリミット、キャッシュなど横断的関心事をまとめて実装

  • GraphQLフェデレーション

    • 各マイクロサービスがスキーマの一部を提供し、統合されたGraphQLエンドポイントを構築

    • フロントエンドは必要なデータのみを1リクエストで取得可能

  • APIバージョニング戦略

    • フロントエンドごとに異なるバージョンのAPIを併存

    • 非推奨APIは段階的にフェーズアウトし、新APIへの切り替えを容易にする

こうした設計によって、UI側とAPI側の予算開発会社選び方を別々に最適化でき、全体の費用相場に合わせたフェーズ分割が可能になります。

CI/CDパイプラインの構築と自動リリース

マイクロフロントエンドはシステムが複数の小規模アプリ群に分割されるため、CI/CDパイプラインにも工夫が必要です。以下は代表的なパイプライン構成例です。

  1. プルリクエスト単位のビルドとテスト

    • 各リポジトリ(マイクロアプリ)でPRごとにLint/ユニットテスト/契約テストを実行

  2. スナップショットデプロイ

    • PR環境(ステージング)に自動デプロイし、E2Eテストやパフォーマンステストを実施

  3. マージ後の本番ビルド

    • Master/main ブランチへのマージでDockerイメージまたは静的ファイルをビルド

  4. バージョニング&リリースノート自動生成

    • Conventional Commitsに基づきバージョンを自動インクリメント、CHANGELOGを生成

  5. Canaryリリース

    • マイクロアプリ単位でトラフィックの一部に新バージョンを配信、異常がなければ全体ロールアウト

自動リリースにより、チームごとの独立したリリースサイクルが実現し、発注タイミングと予算消化を細かくコントロールできます。

パフォーマンス最適化とキャッシュ戦略

分割されたマイクロアプリは初期読み込み時に複数ファイルを取得するため、パフォーマンスへの影響が懸念されます。最適化のポイントは以下の通りです。

  • HTTP/2 or HTTP/3 の活用

    • 複数並列での軽量リクエストを高速化

  • Edge Cache/CDN 配信

    • 各マイクロアプリを独立したルート(例:/app1/*, /app2/*)でCDNキャッシュ

    • キャッシュヘッダー(Cache-Control, ETag)を適切に設定

  • プリフェッチ/プレスロード

    • ルーティング直後に必要となるマイクロアプリを先読みし、UXを向上

  • バンドル分割とコードスプリッティング

    • 共通ライブラリはsharedとして一度だけ読み込み、マイクロアプリ本体は差分のみ取得

  • サービスワーカーを使ったオフライン対応

    • Workboxを用いてマイクロアプリのキャッシュ戦略を柔軟に定義

これらの施策により、UXを損なわずにマイクロフロントエンドを導入できます。

セキュリティ考慮とCSP導入

複数アプリを統合するマイクロフロントエンドでは、スクリプトの注入やサードパーティライブラリによるリスクが高まります。セキュリティ強化の基本は以下の通りです。

  1. Content Security Policy(CSP)の設定

    • スクリプトソースを自社ドメインに限定

    • 動的import先やCDNもscript-srcに明示

  2. サブリソース整合性(SRI)

    • CDN配信するライブラリにハッシュを設定し改ざん検知

  3. XSS対策

    • React/Vueなどフレームワークの自動エスケープ機構を活用

    • ユーザー入力をDOMに挿入する場合はinnerTextを使用

  4. 認証トークン管理

    • CookieベースのHttpOnly, Secure, SameSite属性を設定

    • JWT利用時は短命トークン+リフレッシュトークンでセッション制御

こうしたセキュリティ要件を見積もり時に明示しておくことで、開発会社との認識齟齬を防ぎましょう。

スケーリングと可観測性の確保

マイクロフロントエンドは各マイクロアプリが独立運用される分、障害切り分けや性能監視もマイクロ単位で実施する必要があります。可観測性向上のポイントは下記です。

  • ロギング設計

    • 各マイクロアプリで共通フォーマット(JSON)によるログ出力

    • Correlation IDをヘッダ/コンテキストで付与し、関連ログを追跡可能に

  • 分散トレーシング

    • OpenTelemetryでフロント→バックエンドまでトランザクションを可視化

  • フロントパフォーマンス測定

    • Web Vitals(FCP, LCP, CLS)を取得し、Datadogなどに送信

  • アラート設定

    • レイテンシ閾値、エラーレートが一定以上になった場合にチャンネル通知

これにより、どのマイクロアプリ/バックエンドがボトルネックになっているかを迅速に特定できます。

組織運用とガバナンス

技術アーキテクチャだけでなく、組織/プロセス面でもマイクロフロントエンドへの移行を円滑に進めるためのポイントです。

  1. チーム編成

    • ドメイン別(会員管理、商品管理、レコメンドなど)に小規模チームを編成

  2. コーディング規約と共通ライブラリ

    • ESLint/Prettier設定を共通化

    • UIコンポーネントはStorybookでドキュメント管理

  3. 設計レビューとアーキテクチャガイド

    • 新規マイクロアプリ追加時に必ずアーキテクトレビューを実施

  4. 予算管理

    • 各マイクロアプリごとにベロシティ・工数・ランニングコストを可視化

    • 優先度に応じて発注タイミングを調整

このようにガバナンスを整備することで、技術分割のメリットを最大化しつつ、全体最適を維持できます。

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