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チェックイン文化を業務DXに応用する:フィールド業務における「訪問記録アプリ」開発ユースケース

はじめに:なぜ「チェックイン機能」が業務で必要とされているのか?

日常生活に深く根付いた「チェックイン」や「現在地共有」といったユーザー体験(UX)は、SNSや地図アプリを通じて広く普及しています。その技術的基盤は、位置情報取得、リアルタイム通信、クラウド同期などで成り立っており、コンシューマ領域においては当たり前の機能として受け入れられています。

しかし、この「どこで・いつ・誰が・何をしたかを記録する」という仕組みは、業務の現場においても強いニーズがあります。特に以下のような業種では、現地での行動をデジタルに可視化し、証跡を残すことが求められます:

  • 訪問介護(介護記録・滞在時間の証明)
  • 設備点検(点検開始・終了ログ、写真記録)
  • フィールド営業(訪問実績・面談内容の記録)

本記事では、これらのニーズに応えた「業務用チェックインアプリ」の開発ユースケースを、実際の受託開発事例をベースに、設計思想・実装技術・導入効果まで深く解説していきます。

課題の出発点:訪問業務におけるブラックボックス化

訪問対応型の業務には、特有の情報ギャップと運用課題が存在します。従来のアナログ的な運用では、現場の情報が「現場スタッフの頭の中」にしか存在せず、以下のような問題が日常的に発生していました:

  • 担当者が「どこに」「いつ」訪問したかを正確に追えない(位置情報・時刻記録がない)
  • 現地での対応内容が記録されず、トラブル時の説明責任が果たせない
  • 紙の報告書やExcelファイルによる管理では、転記ミス・確認漏れ・検索性の低さが運用効率を阻害
  • 新人スタッフが前任の情報を把握できず、引き継ぎの質が低下

このような運用の「ブラックボックス化」を解消するには、「現場で起きていること」をリアルタイムで可視化し、記録として残す仕組みが必要です。

ユースケース概要:点検・訪問・報告を一気通貫にする

今回の開発事例では、点検業務を担う現場スタッフが1件の訪問業務を一気通貫でこなせるように設計されたアプリを構築しました。以下のステップで業務を進行します:

  1. ログイン後、当日の訪問先リストが自動で表示
  2. 各訪問先で「チェックインボタン」をタップ → 現在地・時刻を記録
  3. 点検項目の入力:
    • 写真撮影(端末カメラ連携)
    • メモ入力(音声入力サポート)
    • 点数・状態選択(選択肢+フリー記述)
  4. 必要に応じてクライアントサインの取得(画面上でサイン)
  5. 「チェックアウト」操作により記録を締め、クラウドへ即時送信

このように、「現地で完結するワークフロー」と「本部側で確認可能なデータ蓄積」を両立することで、現場と運用の両視点に配慮した仕組みを実現しています。

設計で意識したポイント:現場起点のシンプルUIと非同期処理

現場スタッフは業務のプロであってもITの専門家ではありません。そのため、アプリ設計において最も重視したのは「ストレスなく操作できるUX」です。

UI/UXの工夫

  • 操作画面はタップ数を最小限に抑え、1画面で主要機能が完結
  • GPS位置取得はバックグラウンドで自動処理
  • 項目ごとのガイドテキストやツールチップを設置
  • サイン入力はペンでのなぞりに対応(静電タッチ対応)

通信とオフライン対応

  • オフライン時でも記録をローカルに保持し、通信復旧後に自動同期
  • 非同期でのバックエンド送信(Pub/Subキュー経由)により、UXへの遅延影響を最小化

これにより、「現場で使える」「本部で管理できる」アプリとして高い実用性を実現しました。

バックエンド構成とデータ設計

本プロジェクトでは、Google Cloud Platformを活用した以下のアーキテクチャを採用しました:

  • 認証:Firebase Authentication(ID連携とログイン制御)
  • データ管理:Cloud Firestore(NoSQLで柔軟なスキーマ設計)
  • ログ伝搬:Pub/Sub → Cloud Functions → BigQuery(分析基盤)
  • 管理画面:Next.js + Supabase(軽量でリアルタイムな表示に対応)

データモデルの設計

データ構造は以下の6レイヤーに分け、アクセス・集計・エクスポートのしやすさを担保:

  1. 拠点(地点単位の管理)
  2. 担当者(ユーザー管理)
  3. 訪問(1回ごとのアクション単位)
  4. チェックイン(訪問開始時刻・位置)
  5. チェックアウト(終了時刻・報告)
  6. 記録内容(点検項目・写真・コメントなど)

導入後の成果と定量的効果

このシステムを導入したクライアント企業では、次のような改善効果が明確に現れました:

  • 月間42件あった訪問漏れ・対応ミスが、6件にまで減少(約85%削減)
  • 訪問履歴確認の工数が大幅に短縮(約80%の時間削減)
  • 業務引き継ぎ時の情報伝達ミスが減り、新人対応でも安定稼働
  • 月次報告の作成が従来の3倍速で完了

さらに、クラウド上でのデータ蓄積により、後からのトレース・トラブル対応が格段に容易になったとのフィードバックが寄せられました。

顧客視点で評価されたポイント

導入企業の担当者からは、以下の点が高く評価されました:

  • 現場スタッフが「直感的に使える」UI設計(トレーニング不要)
  • 顧客との信頼構築に役立つ「証跡データ」の自動生成
  • 管理部門でも扱いやすいCSV出力・検索・エクスポート機能
  • 新規拠点展開にもスムーズに対応できるスケーラビリティ

結果として、追加導入や再委託の機会が増え、クライアントとの関係性強化にも貢献しました。

まとめ:「業務ログ」を武器にするアプリ開発

チェックイン・チェックアウトという「時と場所を記録する」機能は、業務プロセスを可視化・証跡化する上で極めて重要です。特に訪問型業務では、その瞬間を逃すとログは残らず、責任所在が不明瞭になりがちです。

本ユースケースが示すように、「現場で起こる行動を、その場で・その瞬間に記録できる仕組み」を構築することは、単なる業務効率化にとどまらず、事業の信頼性やスケーラビリティに直結します。

開発会社としては、UXと運用性、現場感と管理機能、そのバランスを取った提案・設計が、競争優位と継続的な取引の鍵となるでしょう。

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