ノーコード×カスタムAPIの融合で実現した変化対応型業務システム構築の舞台裏

業務フローが頻繁に変わる業種、たとえば物流、出版、介護、イベント管理などでは、パッケージ型の業務システムでは対応しきれないことが多くあります。クラウドSaaSも万能ではなく、細かい現場のニーズを満たすにはどうしても「開発」が必要になります。
本記事では、こうした変化に強いシステムが求められる業種で、ノーコードツールとカスタムAPIを併用した開発ユースケースをご紹介します。システム開発会社に依頼する際の要点や費用対効果、失敗しない開発会社選びのコツまでを網羅的に解説します。
ノーコードだけでは解決できない現実
ノーコードツール(例:Airtable、Glide、Make、Retoolなど)の進化は目覚ましく、社内で小規模なアプリを素早く立ち上げるのに適しています。しかし業務フローが複雑化したり、他の既存システムと連携が必要になった途端に、ノーコードでは限界が露呈します。
例えば以下のような課題があります:
- 業務ロジックが複雑でノーコードでは表現しづらい
- 既存の基幹システムやERPとデータ連携したい
- API経由で外部サービスと連携する必要がある
- 品質やセキュリティ基準をクリアした設計が必要
このような状況で必要になるのが「ノーコード×カスタム開発」のハイブリッドアプローチです。
実際の開発ユースケース:出版業向け業務進行管理システム
今回紹介するユースケースは、出版関連企業向けの業務進行管理システム構築事例です。
背景と課題
- 出版案件ごとに進行フローが異なる(例:書籍、雑誌、ムック)
- フリーランスとの原稿受け渡しが頻繁に発生する
- クライアントとの校正やチェックも非同期で管理したい
- 案件数は年間300件超、Excelでは限界
導入技術と構成
- フロントUI:Retool(業務担当者がドラッグ操作で使える)
- ワークフロー制御:Make + Google Apps Script
- データベース:Airtable(柔軟なテーブル構成とノーコード編集)
- カスタムAPI:Node.js + Expressで構築
- API連携:Slack通知、Box連携、請求システムとの接続
導入の効果
- 年間約800時間の手作業削減
- 業務変更時も社内で設定変更可能
- 情報の二重入力が解消し、校正ミスも大幅に削減
システム開発会社の選び方:失敗しないポイント
このようなハイブリッド構成のシステムは、単なるノーコード支援会社でもなく、従来のウォーターフォール型SIerでもなく、柔軟な提案力と技術選定力を持った受託開発会社に依頼する必要があります。
選定の際には以下のようなポイントを重視しましょう:
- ノーコードとコードベースの開発に両方対応できるか
- ノーコードツールの制限や特性を理解した提案ができるか
- API設計・データ連携の実績が豊富か
- 小規模段階でも柔軟に開発体制を組めるか
- 業務要件のヒアリングに長けたチームか
特にヒアリング力と設計力が重要で、「ノーコードで済むと思ったが実は複雑な仕様だった」というケースも多いため、技術力だけでなく要件定義から並走してくれるパートナーを選びましょう。
開発費用と予算感の目安
ノーコード+カスタムAPIの構成は、従来のフルスクラッチ開発よりも費用が抑えられる一方で、API設計やテストフェーズには一定のコストがかかります。
参考価格帯は以下の通りです:
- ノーコード部分:30万円〜100万円(RetoolやAirtable構築)
- カスタムAPI設計+実装:50万円〜150万円
- 外部連携開発(Slack、Box、会計連携など):20万円〜80万円
- 全体相場:100万円〜300万円(機能と連携数により変動)
初期費用を抑えたい場合は、まずはノーコードで構築し、段階的にAPIを追加するアプローチも現実的です。
保守運用と運用負荷への配慮
システム開発後の運用も非常に重要です。ノーコードで構築された部分は、担当者がある程度メンテナンスできる一方で、API側は継続的なモニタリングやエラー対応が必要です。
開発会社と保守契約を結ぶか、運用に入る前に以下の観点をチェックしましょう:
- APIのログ監視と障害通知体制の有無
- ノーコード側の変更履歴管理方法
- UIの更新によるAPI仕様変更への影響度
社内にIT担当がいない場合でも、一定のドキュメント整備とサポート体制があれば、現場で十分に運用可能なケースが多くあります。
まとめ:変化に強い業務システムを構築する選択肢として
業務内容が頻繁に変わる企業ほど、「ノーコード×API連携」によるハイブリッド開発の恩恵は大きくなります。
コストを抑えつつも柔軟性と拡張性を確保できる構成は、業務にフィットしたシステムを目指す上で非常に現実的な選択肢です。
開発会社選びにおいては、ノーコード単体での知見よりも「その先の連携」を含めた提案ができるかどうかを見極めることがポイントです。プロトタイプだけでなく、実業務に耐えるシステムとして、段階的に導入・進化させられる設計を重視しましょう。