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設定変更のブラックボックスを解消する:「リモート設定エディタ」導入による運用改善のユースケース

はじめに:設定項目の属人化がもたらす運用課題

業務システムやWebサービスの開発において、「設定変更」は避けて通れない運用業務の一つです。環境ごとに異なるパラメータ、拠点別の仕様差分、一時的な施策の切り替えなど、柔軟性を持たせるために構成ファイルや環境変数が多用されます。

しかし、こうした設定値が「Gitで管理されるが開発者しか触れない」「どこを変えるとどうなるかが不明」「運用担当がコードに依存しなければならない」といった状態になると、運用の属人化やブラックボックス化が進み、障害時の対応や新機能リリースのスピードに支障をきたします。

特に、組織が成長し設定の種類が増えるほど、「設定を変えるために開発者を通さなければならない」体制は運用のボトルネックとなりやすくなります。さらに、設定項目の設計自体が曖昧で、更新の影響範囲や履歴が管理されていないと、運用トラブルの原因になります。

本記事では、こうした課題を解消するソリューションとして「リモート設定エディタ」を導入したユースケースを紹介します。システム設計とUXの工夫によって、非エンジニアでも安全に・柔軟に・履歴付きで設定変更できる仕組みの実装事例を解説します。

導入背景:設定変更が「開発タスク」になっていた現場

本事例は、複数拠点で稼働する業務支援SaaSを提供する企業からの依頼で、リモート設定変更機能を実装したプロジェクトです。

当初の問題点は次の通りでした:

  • 拠点別やキャンペーン対応などの設定変更を毎回エンジニアがGit経由で反映していた
  • 設定項目の仕様がドキュメント化されておらず、運用担当では変更の判断が困難
  • 誰がいつ何を変更したかが記録されておらず、バグ調査や原因特定が不可能に近い
  • 設定変更の反映にはリリース作業が必要で、即時反映ができなかった

こうした課題に対し、「設定を管理画面から変更でき、履歴も残るようにしたい」という要望が生まれ、開発プロジェクトが始動しました。

設計方針:非エンジニアでも扱えるUXと堅牢な設計の両立

JSON Schemaベースでスキーマ定義とバリデーションを標準化

まず、すべての設定項目をJSON Schema形式で定義する方針を採用しました。これにより、設定項目の入力制限や型情報が明示され、以下のような利点を得られました。

  • 入力内容の妥当性をフロントエンド・バックエンド共通の基準でチェック可能
  • UIの自動生成が可能になり、実装コストを大幅に削減
  • スキーマファイル自体がドキュメントとしての役割を果たす

これにより、設定項目が増えてもメンテナンス性が落ちにくく、拡張に強い設計を実現できました。

UI自動生成とカスタマイズ性の両立

フロントエンドにはReactを採用し、react-jsonschema-formなどのスキーマベースUIライブラリを導入しました。これにより、スキーマ定義を変更するだけで自動的にUIが変化する仕組みを構築しています。

また、以下の工夫により運用現場の使いやすさを追求しました。

  • 項目ごとの説明テキストやツールチップの表示
  • 入力ミス防止のためのインラインバリデーション
  • 設定項目のグループ化による情報整理

これにより、非エンジニアでも直感的に操作できるUIを実現しました。

安全性を担保する運用フロー設計

設定変更を安全に運用するため、以下のようなワークフローを導入しています:

  • 「下書き保存」→「承認」→「反映」の3ステッププロセス
  • 高リスク項目は即時反映できないよう制御
  • 差分確認画面での変更内容レビュー

これにより、重大なミスや設定漏れを防ぎつつ、迅速な変更が可能になりました。

実装の工夫:変更履歴・権限管理・監査ログの整備

差分を残す変更履歴機能

すべての変更操作は以下の情報とともに記録されます:

  • 操作ユーザーIDと名前
  • 操作日時
  • 変更前後の差分(JSON Patch)
  • 操作理由(任意)

この情報はUI上でフィルタ・検索可能で、エクスポートにも対応。設定ミスや障害発生時の原因究明に大きく貢献します。

RBACによる柔軟なアクセス権設計

操作レベルをロールごとに明示し、システム管理者が操作権限を細かく設定できるようにしました。以下のような役割分担が可能です:

  • 閲覧専用(現場担当)
  • 編集・申請可(運用リーダー)
  • 申請承認・即時反映可(システム管理者)

この仕組みにより、業務分掌と安全性を両立しています。

定量的成果と現場での実感値

半年間の運用で以下のような成果が得られました:

  • エンジニアの月間設定作業時間:15時間→3時間に削減
  • 即時反映できる設定変更率:38%→91%
  • 設定変更の初動時間(障害発生時):45分→12分
  • 運用担当による月間設定更新件数:0→52件

運用担当者からは「安心して設定できる」「開発に依頼せず業務改善が進められる」といった声が上がっています。

まとめ:設定運用の民主化が生むチームの生産性

設定変更は地味ながらもシステム運用の中心にある要素です。その運用が属人化していると、スピードも信頼性も低下します。今回のような「リモート設定エディタ」の導入は、単に便利な管理画面を用意するだけでなく、組織的な設定運用体制の設計そのものに寄与します。

受託開発やシステム設計に携わる立場としても、「設定とは誰が・いつ・なぜ・どう変えるべきものか?」という問いに向き合う姿勢こそが、プロジェクトの品質と信頼性を底上げする基盤になるはずです。

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