フリーアドレス時代のオフィスを支える!座席予約システムの開発ユースケースと導入ポイント

導入
テレワークが一般化するなかで、多くの企業がオフィスの在り方を見直しつつあります。その代表的な取り組みが「フリーアドレス制」の導入です。社員が自由に席を選べる柔軟な働き方を支える一方で、座席の混雑状況や予約管理が課題となりつつあります。
こうした背景を受けて、ある中堅IT企業が「社内向け座席予約システム」をスクラッチで開発しました。市販のSaaSを使わず、自社運用に最適化された設計で、利便性と柔軟性の両立を実現しています。
この記事では、その開発ユースケースを通じて、座席予約システムに求められる要件、実装の工夫、運用効果、そして開発依頼時に確認すべきポイントを詳しく解説していきます。
開発の背景:オフィスの“空席問題”と非効率な管理
このプロジェクトが立ち上がったきっかけは、次のような実務上の課題でした。
・出社しても席が空いていない/逆にガラガラで無駄が多い
・総務部が座席表を手動で更新しており、タイムラグが発生
・「誰がどこに座っているか」がすぐに分からず、コミュニケーションが滞る
・外部来客用の応接席と内部用の区別がなく、予約がかぶる
・固定席希望者とのバランス調整が煩雑
こうした問題を根本的に解消するには、運用ルールの整備だけでなく、それを支える仕組み=システムの導入が不可欠と判断されたのです。
システムの主な機能と設計のポイント
この座席予約システムは、以下のような機能を中心に構成されています。
・座席マップ上での視覚的な予約・確認機能
・日付別・時間帯別での予約設定(終日/時間単位)
・グループ・部署別の座席エリア制御
・使用履歴・予約履歴の管理
・スマホ対応(レスポンシブ)
・Slack連携による「本日どこに座っているか」の自動投稿
・予約のキャンセル・譲渡機能(代理予約対応)
・定期予約/固定席運用への対応
特に工夫されたのは「マップUIの設計」です。実際のフロア図面をベースに、クリック操作だけで空き状況と予約操作が完結するように設計され、ITリテラシーが高くない社員にも好評を得ています。
技術スタックと開発体制
今回のシステムは社内利用を前提に、スモールスタート可能な構成で設計されています。
・フロントエンド:Vue.js
・バックエンド:Laravel(PHP)
・DB:MySQL
・地図描画:SVGベースでインタラクティブ操作対応
・インフラ:AWS(EC2/RDS/S3)
・CI/CD:GitHub Actionsでデプロイ自動化
・外部連携:Slack API、Google Calendar連携(試験実装)
開発期間は3ヶ月、保守・改善を含めたアジャイル開発で現在も継続的にアップデートが行われています。
導入による業務改善と成果
システム導入後、以下のような効果が確認されています。
・出社率の見える化により、オフィススペースの最適化が実現
・総務部の座席表作成業務が完全に自動化され、月10時間分を削減
・席取りの混乱がなくなり、来客応対や社内ミーティングの調整がスムーズに
・部署異動や人事異動に伴う設定変更が柔軟に対応可能に
・「誰がどこにいるか」が社内チャットと連動して共有され、コミュニケーションが活性化
また、リモート勤務とオフィス勤務を組み合わせた「ハイブリッドワーク」の最適化にもつながり、勤務形態の柔軟性が高まったことも副次的な成果として挙げられました。
市販SaaSではなくスクラッチ開発を選んだ理由
既存の座席予約SaaS(例:Zelo、Lark、Condecoなど)ではなく、内製・受託による開発を選んだ背景には以下の事情がありました。
・フロアレイアウトが複雑で、既存SaaSのカスタマイズが困難だった
・社内ポリシー上、外部クラウドへの社員データ連携が制限されていた
・SlackやGoogle Workspaceなどの社内ツールと独自連携したかった
・週次単位の自動予約や代理予約といった細かな運用ルールに対応できる柔軟性が必要だった
このように、業務ルールやセキュリティ要件を踏まえたうえで、自社に合った仕様に仕上げられた点が大きなメリットといえます。
開発依頼時に確認すべきポイント
同様の座席予約システムを開発会社に依頼する場合は、以下のような要素を事前に整理しておくと見積もりや設計がスムーズになります。
・フロア構成と座席区分(部署別、用途別など)
・予約単位(終日・時間単位)と繰り返し予約の要否
・ユーザーごとの制限設定(権限、予約可能数など)
・外部連携の要件(Slack、Outlook、Googleカレンダーなど)
・利用ログ、レポート出力、出社率管理などのレポート機能
・スマホ対応やPWA化の必要性
・クラウド利用の可否(社内イントラ限定など)
このように、単なる「席を取れる仕組み」にとどまらず、オフィス運営全体を支えるインフラとして設計すべき点が多いため、開発依頼前に実運用に即した要件を整理しておくことが極めて重要です。
まとめ:座席予約システムは「オフィス活用の可視化ツール」である
フリーアドレス制やハイブリッドワークは、今後ますます一般化していくと見られます。そのなかで、座席予約システムは単なる業務支援ツールではなく、「オフィスというリソースの見える化と最適化」を支える基盤です。
自社に合った仕組みを整えることで、働く環境の柔軟性・効率性・快適性を高めると同時に、組織全体のパフォーマンス向上にも貢献できます。
スクラッチ開発によって、細かな運用ルールや独自要件に対応した“本当に使いやすい”座席予約システムを実現することは、オフィス改革の第一歩となるでしょう。