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開発ユースケース紹介

ユースケース紹介:スマート農業IoTプラットフォームで省力化と収量向上を実現

プロジェクト概要と導入背景

中小規模の農業法人「GreenField」は、天候変動による水やりのタイミング管理や肥料散布作業の負荷に課題を抱えていました。
従来は経験に頼った手動管理で、人手不足の影響もあり、省力化と収量最適化の両立が困難でした。
そこで、GreenFieldの事業責任者であるAさんは、IoTセンサーによるリアルタイムデータ収集とクラウドシステムを組み合わせたスマート農業プラットフォームの導入を決定しました。
導入の狙いは二つあります。ひとつは畑の土壌湿度や気温、光量を継続的にモニタリングし、最適な散水・散布タイミングを自動化すること。もうひとつは、収集データを可視化して肥料や水の予算・費用配分を最適化し、経営判断を支援することです。
このプロジェクトでは、初期導入費用の相場として約500万~800万円が見込まれ、年次の運用費用を100万~150万円程度と試算しました。
要件定義フェーズでは、システムで取得すべきセンサー項目、データ保存期間、アラート閾値などを洗い出し、発注スコープを明確化しています。
スコープ策定と同時にROIを試算し、投資回収期間を2年以内とした数値目標を経営層に提案。
GreenFieldはこの目標を承認し、いよいよ開発会社への発注準備を開始しました。

開発会社選定と予算策定のポイント

開発会社を選ぶ際、GreenFieldは三社にRFP(発注依頼書)を送付しました。
RFPには以下の要件を明記しています。

  • IoTハードウェアとクラウド連携の実績

  • データ可視化ダッシュボード開発経験

  • モバイルアプリ連携のスキル

  • 継続的な運用サポート体制
    また、工数と単価を機能別に提示してもらい、予算(費用)配分の透明性を重視しました。
    各社からの見積もりは、初期開発で約550万、年間保守費用相場は120万前後でした。
    GreenFieldでは相見積もりを活用し、PoCフェーズを200万、正式開発を350万という二段階発注案をまとめ、リスクを分散。
    このフェーズ分割発注によって、PoC後の要件追加や調整での予算超過リスクを最小限に抑える計画です。
    最終的に、IoT連携実績と運用サポートの手厚さを評価し、B社をパートナーに選定。
    契約時には、追加要件発生時の単価ルール、スケジュール調整のフロー、支払いタイミングを明確に定めました。
    これにより予算超過の懸念を払拭し、プロジェクトを円滑にスタートできます。

IoTセンサー連携と通信ネットワーク構築

PoCフェーズでは、まず小規模畑に土壌湿度・気温・照度センサーを10台設置し、LoRaWANネットワークでゲートウェイに接続しました。
センサーからゲートウェイへのデータ送信間隔は10分、再送制御を加えることで通信コストを最適化しています。
ゲートウェイは農場ハウス内に配置し、Solar Poweredなので電源不要です。
B社はゲートウェイからクラウドのMQTTブローカーへの接続を実装し、TLS暗号化でセキュリティを担保。
クラウド側ではAWS IoT Coreを採用し、デバイスのオンボード認証とデータ保管を行います。
この段階の工数は30工数、相場50万~80万円と見積もり、予算内でPoCを完了。
通信品質の検証では、LoRaWANのレンジテストを実施し、接続率95%以上を確認。
同時に、必要に応じてセルラー通信(NB-IoT)へのフォールバック機能を検証し、
数件のエリアでパケットロスが懸念されたためNB-IoTゲートウェイを追加しました。
この柔軟なネットワーク設計により、通信トラブル時の追加費用を抑制できました。
今後本番展開時は、200台規模でのセンサー接続を想定し、ゲートウェイ台数を10台→5台にスケールアウトする計画です。

クラウドシステム設計とデータ分析基盤構築

本番フェーズでは、センサーデータをAthenaによるクエリとQuickSightダッシュボードで可視化する設計を選びました。
B社はデータレイクをS3で構築し、Glueでスキーマ検出を自動化。
これにより、データ収集からBI表示までのリードタイムを数分に短縮。
アラート機能はLambda関数とSNSを連携し、土壌湿度が設定値以下になると自動で絞り込み散水ポンプを起動します。
API連携を活用し、農場内の制御システムとも双方向通信が可能な設計です。
インフラ費用は相場感で月額10万、年間で120万円。
開発工数はデータレイク構築20工数、ダッシュボード設計15工数、API開発25工数の合計60工数、相場90万~120万円でした。
発注時に工数と単価を分離し、要件変更時のコスト影響を明確化。
要件定義段階で「ダッシュボード表示速度2秒以内」「APIレスポンス100ms以内」をSLAに定め、
サービスレベル合意を契約書に盛り込むことで、後から発生しやすいパフォーマンス要件変更の追加費用を防ぎました。

運用・保守フェーズとトラブル対応

本番リリース後は、IoTプラットフォームの運用・保守体制をB社と協業で整備しました。まず、デバイス障害や通信断の検知のため、AWS IoT Device Defenderを活用し、異常検知ルールを作成。センサー未送信が15分続くと自動でメール通知し、オンサイト対応をトリガーします。さらに、クラウド側ではCloudWatch AlarmsでMQTTメッセージ失敗率やLambda実行エラー率をモニタリングし、閾値超過時にSlackチャネルとSMSへアラートを発信する仕組みを構築しました。定期メンテナンスでは、デバイスファームウェアの更新管理をOTA(Over-The-Air)で実施し、現地作業なしにバージョンアップを可能に。

運用初期には、ある雨天時の水位センサー異常で散水が停止し、作物にストレスが発生したトラブルがありました。調査の結果、センサー内部の水滴誤認識によるデータバイアスが原因と判明。対応策としては、センサー側にソフトウェアフィルタを追加し、「連続異常値が3回以上続いた場合のみアラート」とするロジックを組み込みました。この修正は約8工数、追加費用約12万円で対応でき、発注時に「運用時追加工数10工数」の予備予算枠を確保していたため、予算超過を回避できました。

また、クラウドコスト予実管理のために、毎月の実使用量レポートを作成し、予算(費用)が当初試算から乖離しないかをレビュー。AWS BudgetsとCost Explorerを使い、センサー増設やデータ保持期間延長によるコスト増を刻々と把握し、必要に応じてデータの圧縮や保存期間の短縮を実施しました。こうした運用フェーズでの負荷分散と予算抑制策は、本番稼働後のランニングコストを想定の年間120万円以内に収めることに貢献しています。

成果指標とROI評価

GreenFieldプロジェクトの成果は、定量的に次のKPIで測定しました。

  • 土壌湿度適正範囲達成率:従来60%→90%

  • 水使用量削減:年間200トン→120トン(40%削減)

  • 収量増加:作付面積あたり平均20%増

  • 作業工数削減:週20時間→週5時間

  • システム稼働コスト:年間150万円→120万円

これらの成果を金額換算すると、水道代・肥料代のコスト削減が年間約300万円、作業人件費削減で約200万円、加えて収量増加による売上向上が約500万円となり、年間約1,000万円の付加価値を創出したことがわかりました。初期投資700万円を考慮しても、ROI回収期間は約8カ月と試算でき、経営層への報告資料でも高い評価を得ています。

こうした評価には、PoCでの小規模検証→本番拡大→運用改善のフェーズ分割発注と、予算(費用)管理ルールの明文化、KPIドリブンの成果可視化ダッシュボードが大きく寄与しました。導入後も開発会社B社と週次レビューを継続し、成果指標が目標を下回る場合の改善施策を適時実行。これにより、投資対効果を最大限に引き上げています。

今後の拡張計画:AI予測養分管理

GreenFieldでは次フェーズとして、AIを活用した養分予測モデルの導入を検討しています。過去2年間の土壌データと収量データを機械学習モデルに学習させ、季節や気象条件に応じた肥料投与量の最適化提案を自動生成するイニシアティブです。

具体的には、

  1. データ収集の拡張:pH、EC(電気伝導度)、微量栄養素濃度などの追加センサーを設置

  2. モデル開発:外部AI開発会社とPoC契約を結び、60工数(相場80万〜100万円)で初期モデルを構築

  3. API連携:モデル推論結果をIoTプラットフォームに取り込み、散布スケジュールへ自動反映

  4. ユーザービジュアル:ダッシュボードに「次週の推奨散布量」と「予想収量」を可視化

  5. 成果検証:AI導入後半年で収量増加率を追加10〜15%見込む

発注時にはPoCフェーズと本番フェーズを分け、PoCで得られた精度に応じて本番予算を決定するフェーズ分割発注を計画。予備予算15%を確保してAI開発のリスクに備えます。AI機能が成功すれば、GreenFieldの差別化要因として営業資料にも活用可能です。

まとめと教訓

本ユースケース紹介では、GreenFieldのスマート農業プラットフォーム導入事例を時系列で解説しました。
主な学びは以下のとおりです。

  1. 要件定義の定量化:スケーラビリティや通信品質、KPIを数値で定義し、予算と発注スコープを明確化

  2. フェーズ分割発注:PoC→本番→拡張の段階的発注でリスク・費用をコントロール

  3. 成果可視化:ダッシュボードによるKPI管理で投資対効果をモニタリング

  4. 運用ルールの契約明文化:追加工数やパージポリシー、SLAを契約書に盛り込み、予算超過を防止

  5. 継続的改善:運用・保守で得られる知見を次フェーズや他プロジェクトへ横展開

初期予算700万円、年間運用費120万円という相場感で導入し、年間1,000万円以上の価値を創出できた点は、事業責任者やマネージャーの皆様にとっても説得力のある成功事例です。開発会社選びや発注戦略の参考にしていただき、自社業務課題のIT化・システム導入をぜひ検討ください。

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