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開発ユースケース紹介

中小飲食チェーンがモバイルオーダー×デジタルクーポン配信システムで売上20%増を実現した開発ユースケース

プロジェクト背景と経営課題

東京都内で5店舗を展開するカフェチェーン「Cafe Lumière」は、コロナ禍による来店数減少と人手不足が同時に重なり、業績が伸び悩んでいました。従来の紙クーポンや電話注文では、予約漏れや忘れ物トラブルが後を絶たず、システム投資の検討が急務となっていました。
特に以下の課題が浮き彫りになっていました。

  • 注文データの属人化:店長やベテランスタッフしか使いこなせない発注フロー

  • クーポン配布の非効率:紙やメール一斉送信で反響率が低い

  • 人件費の増大:電話オーダー対応に1日30分×スタッフ数の工数コスト

これらを一気に解消し、売上回復とリピート率向上を狙うべく、モバイルオーダー機能と連動したデジタルクーポン配信システムの導入を決意しました。

開発会社の選び方と比較ポイント

Cafe Lumièreが開発会社を比較検討する際に重視したポイントは下記です。

  • 飲食業界の導入実績:モバイルオーダーやPOS連携の経験が豊富なベンダー

  • 相場感の透明性:初期費用・月額費用の明確化、追加開発の単価

  • 技術スタック:クロスプラットフォーム対応(iOS/Android)、クラウド基盤

  • サポート体制:緊急時の障害対応やバージョンアップ対応の可否

具体的には、以下の開発会社にRFPを発注し、3社の提案を受け取りました。

  1. A社(大手SIer系)

    • 提案内容:豊富な開発実績で安心感あり。要件定義~運用まで一括請負

    • 見積もり:初期費用300万円~、月額保守20万円~

  2. B社(スタートアップ系)

    • 提案内容:デザインに強く、UI/UX重視。短期間でPoC開発可能

    • 見積もり:初期150万円~、月額保守10万円~

  3. C社(海外オフショア+国内PM)

    • 提案内容:コスト最安。ただしコミュニケーションに多少ラグあり

    • 見積もり:初期100万円~、月額保守8万円~

最終的には、B社を選定。理由はPoCを含む短納期体制と、コスト/機能バランスの良さが決め手でした。

予算策定と開発工数見積り

B社との初回打ち合わせで出された見積りは以下のとおりです。

  • 要件定義・設計フェーズ:30人日(約60万円)

  • モバイルアプリ開発:80人日(約160万円)

  • バックエンド(API、DB設計):50人日(約100万円)

  • クーポン管理ダッシュボード:20人日(約40万円)

  • 総合テスト&デプロイ:20人日(約40万円)

合計:400万円(税別)+月額保守10万円(初期3ヵ月は無料トライアル付き)
この見積りは、開発会社を選ぶ際の「相場感」とほぼ一致しており、予算超過リスクを低減できました。

費用構成のポイント

  • 人月単価:アプリ開発20万円/人月、バックエンド18万円/人月

  • インフラ費用:AWS Lambda+RDSで月額1万円程度

  • 初期導入費用にサポート3ヵ月分を含め、発注後すぐに運用試験可能

予算配分では、要件定義フェーズに30%を割き、後続の仕様変更コストを抑制する設計を重視しました。

システム構成と技術的特徴

Cafe Lumièreのシステムは大きく以下の4層で構成しています。

  1. モバイルアプリ

    • React Native採用でiOS/Android両対応

    • 店舗検索、メニュー選択、オーダー/決済機能

  2. APIサーバ

    • Node.js+Expressフレームワーク

    • JWT認証+RESTful設計

  3. デジタルクーポン管理

    • 管理画面はVue.jsベース

    • クーポン条件設定、配信タイミング制御機能

  4. インフラ/運用基盤

    • AWS:APIはLambda、データベースはAurora Serverless

    • CI/CD:GitHub Actionsでテスト→ステージング→本番自動デプロイ

技術選定のメリット・デメリットは以下の通りです。

  • React Native

    • メリット:ネイティブに近いUI、クロスプラットフォームで開発工数削減

    • デメリット:カメラ連携など一部ネイティブ機能は追加開発でコスト発生

  • Serverlessアーキテクチャ

    • メリット:アクセスピーク時のスケールアウトが容易、費用は従量課金

    • デメリット:Cold start問題によるレスポンスタイム増加の懸念

開発フェーズで直面したトラブルと対応

B社との開発中、以下の課題が発生しました。

  • 決済連携モジュールのバージョンアップ

    • 原因:サードパーティ決済SDKのメジャーアップデートに伴うAPI仕様変更

    • 対応:SDK提供元と共同デバッグし、2日で修正パッチを実装

  • 多店舗データ同期の遅延

    • 原因:全店舗の在庫情報を都度フェッチする実装がボトルネックに

    • 対応:在庫更新時にPub/Sub連携でプッシュ同期へ切り替え、レスポンス改善

  • クーポンコード重複発行リスク

    • 原因:同時アクセス時にシーケンス管理が漏れ、同一コード生成の可能性

    • 対応:発行ロジックをDBのユニーク制約+Redisロック機構へ見直し

これらの障害対応も含め、開発会社との密なコミュニケーションと、変更管理の仕組みを事前に契約に盛り込んでいたことで、追加費用は最小限に抑えられました。

リリース準備とスタッフ教育

開発完了後、Cafe Lumièreでは店舗へのシステム導入準備を慎重に進めました。まず、本番稼働前に全5店舗で同時にリハーサルを実施し、スタッフが実際のオーダーからクーポン発行までの一連の流れを体験しました。各店舗からのフィードバックをもとにUIを微調整し、特に注文画面の遷移速度と決済完了通知の見やすさを改善しています。業務マニュアルは動画マニュアルも用意し、ITに不慣れなアルバイトにもわかりやすい工夫を盛り込みました。
次に、店長会議でKPIと運用ルールを共有。売上速報の見方、クーポン配信タイミング、在庫不足時のアラート対処法を重点的に解説しました。各店舗の店長には月次レポートの解析方法をレクチャーし、データドリブンでの意思決定を根付かせる狙いです。
また、リリース当日のオペレーションを円滑に進めるため、サポート窓口(B社のオンコール体制)を24時間対応に延長。トラブル発生時には遠隔操作で即時パッチ適用する体制を整えました。これにより、リリース初日にはわずかなバグも即解消し、オペレーションに混乱は起きませんでした。
最後に社内コミュニケーションツールで日次報告スレッドを立ち上げ、スタッフ間の疑問や成功事例をリアルタイムで共有。導入初月からスムーズな運用が定着し、店舗スタッフの技術リテラシー向上にも寄与しています。

安定稼働に向けたモニタリングと改善サイクル

リリース後は、AWS CloudWatchと独自ダッシュボードでAPIレスポンスやエラー率、決済成功率を24時間監視。パフォーマンス低下の兆候はSlack通知で全員にアラートが飛び、迅速な対応を可能にしました。特にピークタイム(11時~14時、17時~20時)のリクエスト増加時には、Lambdaの同時実行数を即時引き上げる自動スケーリングルールを適用し、レスポンスタイム低下を防止しました。
また、デジタルクーポンの開封率や利用率をKPIとして週次でトラッキング。最初の2週間は開封率が50%を下回っていましたが、配信タイミングを来店直後に絞ることで75%まで向上。その後、クーポンのデザインと文言もABテストを重ね、最適化を図りました。
ユーザーアンケートをアプリ内ポップアップで実施し、UI/UX改善に反映。メニュー写真の拡大表示や、カート画面の合計金額自動更新機能など、小さな改善を継続的にリリースし、顧客満足度を高めています。
これらの改善サイクルは3週間をワンイテレーションとし、スクラム方式でB社と共同運用。短期間のタスクでPDCAを高速回転させることで、システムの成熟度を着実に高めました。

効果測定:売上・リピート率・ROI算出

導入から3ヵ月の段階で、Cafe Lumièreは以下の成果を報告しました。

  • 売上増加20%:月間売上はリリース前の平均600万円から720万円に伸長。モバイルオーダー経由が全体の30%を占めています。

  • リピート率15%向上:クーポン利用者のうち再来店率が50%から65%へ上昇。

  • 人件費削減:電話オーダー対応時間が半減し、月間約8万円のコスト削減に成功。

  • ROI 150%:初期投資400万円に対して、3ヵ月で回収200万円、年間で約600万円の利益寄与を見込みました。

これらの数字は、月次売上レポートとアプリ内トラッキングデータを組み合わせて算出。特にROIの計算では、インフラ費用や保守費用を含めたトータルコストと、売上増分から得られる粗利を対比しています。投資対効果を経営会議で共有したことで、さらなるシステム投資への社内理解も進みました。

今後の拡張と教訓

当初のモバイルオーダー+クーポン配信にとどまらず、Cafe Lumièreは次フェーズとして以下の拡張を計画しています。

  1. 顧客ステータス連携:来店回数や購入履歴を基にしたパーソナライズドクーポン配信

  2. SNSシェア機能:クーポン利用後にSNSでシェアすると追加ポイント付与

  3. 多言語対応:訪日観光客向けに英語・中国語UIの切り替え機能

  4. 外販モデル:パッケージ化して他の中小飲食チェーン向けに提供

今回の経験で得られた最大の学びは、早期のPoC(概念実証)と短いイテレーションでの改善サイクルが成功の鍵だったことです。システム投資の予算・費用相場を押さえつつ、事業側と開発会社が密に協働したことが、追加費用や納期遅延を防ぎ、スムーズな発注・運用を実現しました。
また、人のオペレーションに依存しない仕組み設計が、パンデミックや人手不足といった外部要因にも強いシステムをつくり上げるポイントです。Cafe Lumièreでは今後も、技術的負債を溜めずに継続的改善を進め、事業成長を加速していきます。

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