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開発ユースケース紹介

国際カンファレンス向けリアルタイム音声翻訳システム導入ユースケース

プロジェクト背景:通訳コスト削減と参加者利便性向上

海外から多数の講演者を招く国際カンファレンス運営のGlobalConf社は、従来数十人規模の同時通訳チームを手配し、「費用」相場で年間約5,000万円を通訳料に充てていました。しかし、手配から当日のブース運営、機材レンタルにかかる「費用」とオペレーション工数が年々増加し、限られた「予算」での開催が難しくなっていました。
加えて、参加者にはリアルタイムにスピーカーの言語を選べる字幕配信を求める声も高まり、GlobalConf社のCTOである鈴木氏は「システムを活用した自動音声翻訳」によるコスト最適化とUX向上の両立を目指すことを決意。発注にあたっては、開発会社の選定基準として「音声認識精度」「翻訳エンジン連携」「低遅延ストリーミング」の三つを重視し、PoCを通じて実現可能性を検証する方針を固めました。

開発会社選定のプロセスと選び方ポイント

開発パートナー選定では、A社、B社、C社の三社にRFPを発行しました。評価軸は以下のとおりです。

  • 技術実績:音声認識や機械翻訳APIの導入事例

  • 開発スピード:PoCまでの期間とリソース体制

  • コストパフォーマンス:「予算」1,000万円前後での初期構築可否

  • 運用サポート:イベント当日のオンサイト対応体制

  • 拡張性:多言語対応や将来的なAIモデルの入れ替えの容易さ

各社から提示されたPoC費用はA社¥1,200,000、B社¥900,000、C社¥1,000,000。B社はローコストでしたが、イベント運用サポートが含まれずリスクに。A社は大手SIerらしく体制が厚いものの「費用」がやや高めでした。最終的に選ばれたのはC社。C社はオープンソース音声認識エンジンとクラウド翻訳APIを組み合わせた提案で、演算コストを抑えつつ高い精度を担保すると評価されました。C社への本開発発注「予算」はPoC成果を加味して7,000,000円に設定し、マイルストーン契約を締結しました。

要件定義とPoC:精度と遅延の両立検証

PoCフェーズでは、以下の要件を明確化しました。

  • 音声認識精度:騒音環境下でも80%以上の文字起こし精度

  • 翻訳精度:専門用語を含む講演内容で75%以上の翻訳正確率

  • リアルタイム性:音声入力から翻訳字幕表示までの遅延500ms以内

  • 多言語対応:英語→日本語、英語→中国語の2言語

  • ストリーミング方式:WebRTC+Media Serverによる配信

C社は3日間で簡易的なWebアプリを納品し、騒音を再現した会場セットで検証。Google Cloud Speech-to-TextとMicrosoft Translator Text APIを組み合わせ、前処理にノイズリダクションライブラリを導入した結果、文字起こし精度82%、翻訳精度78%、総遅延450msを達成しました。追加要件として、専門用語辞書のカスタマイズ機能を実装し、精度をさらに向上させるためのチューニングフェーズも提案されました。PoC完了後、C社の対応力と技術共有体制が評価され、本開発への移行が正式に承認されました。

システム構成とアーキテクチャ概要

本開発では、以下のアーキテクチャを採用しました。

  1. クライアントアプリ:React+WebRTCでブラウザベースのUIを提供

  2. 音声ストリーミング:WebRTCのAudioTrackをMedia Server経由でC社の自社サーバへ転送

  3. 音声認識エンジン:DeepSpeech OSSをコンテナ化し、GPUインスタンスでリアルタイム実行

  4. 翻訳API:Microsoft Translator Textを用い、REST API接続で日本語・中国語に変換

  5. 字幕配信:翻訳結果をWebSocketでクライアントへプッシュし、ライブ字幕を描画

  6. 管理コンソール:CloudWatch+Grafanaで音声処理遅延、認識精度、APIコール数を可視化

この構成で、1セッションあたりのクラウド費用(GPUインスタンス+翻訳APIコール)は約¥2,000/時間に収まり、イベント規模50時間なら¥100,000程度の追加「費用」で運用可能となりました。システム全体の「相場感」を事前に把握し、運用コストを予算枠内に収めるかたちでC社と発注契約を結びました。

開発スプリントとコミュニケーション手法

本開発はアジャイル開発で進め、2週間スプリントを6イテレーション実施しました。スクラムイベントは以下の流れです。

  • プランニング:PoCで洗い出した課題をバックログに登録し、優先度順に着手

  • デイリースタンドアップ:Slack+Zoomで進捗・障害報告を共有

  • デモ&レビュー:完成機能を実際の会場音響とカメラを用いたステージング環境で検証

  • レトロスペクティブ:コミュニケーションの改善やテスト自動化の導入ポイントを抽出

スプリントごとに専門用語辞書やノイズフィルタのチューニングを重ね、UI/UX面では翻訳結果の色分け機能や講演者名表示を追加。追加工数合計は約120時間、追加「費用」は¥1,200,000でしたが、イベント当日の使い勝手が格段に向上し、費用以上の価値を得られました。コミュニケーション面では、週次定例以外にもSlackチャンネルを用意し、リアルタイムで音声認識ログや翻訳結果のスクリーンショットを共有することで、問題発生時の意思決定を迅速化しました。

テストと品質保証

リアルタイム音声翻訳システムは、ライブイベントの“顔”ともいえるため、テストには徹底的な品質保証が求められます。まず、ユニットテストでは各コンポーネント—ノイズフィルタリング、音声認識、翻訳API呼び出し、字幕配信—を個別に検証しました。次に統合テストでは、ステージング環境に実際の会場音響を再現し、複数マイク入力やAV機材ノイズを含む音声データを使ってKPIをチェック。スループットテストでは、連続3時間のステージングストリーミングを実行し、平均レスポンス500ms以内が99%を超えることを確認しました。さらに、リグレッションテストを自動化し、毎スプリント後に主要シナリオをNightly Buildとして回し、障害検知率を高める仕組みを構築。エラー発生時のロールバック手順をCI/CDパイプラインにも組み込み、問題が起こった場合に即座に前バージョンへ復旧できる安全性を担保しました。セキュリティテストでは、WebSocket接続の認証バイパスや、翻訳APIキー漏洩リスクに対するペネトレーションテストを外部専門チームに依頼し、脆弱性を事前に摘出・修正。また、字幕表示のXSS対策やCSRF対策も含めたOWASP Top10対応を完了し、品質保証体制を一気に引き上げることができました。

本番リハーサルとイベント当日の運用

本番直前のリハーサルでは、会場の帯域制限やモバイル回線によるパケットロスを再現したネットワーク環境で総合試験を実施。ラウドスピーカーをオフにした“最悪ケース想定”での認識精度と遅延をチェックし、最大遅延600msを500ms以内にスライドさせるチューニングを完了しました。複数言語の同時送信テストでは、日本語・中国語の字幕を別ストリームで配信し、ユーザー側がUI上で切り替えられるUXを確認。リハ当日のスケジュールには30分刻みでマイク切り替えテスト時間を確保し、トラブルシューティングマニュアルを現場に配布しました。イベント当日は、オンサイトでC社エンジニア3名、GlobalConf社のITサポートチーム5名体制で待機し、音声・翻訳サーバーのモニタリング、クライアント端末の接続確認、字幕遅延アラートの監視を24時間体制で行いました。会場Wi-Fiの負荷状況はGrafanaダッシュボードで可視化し、異常トラフィックが発生した際には瞬時に帯域を再割り当て。結果として、3日間連続した本番運用で字幕遅延や翻訳精度の低下は発生せず、参加者・講演者双方から高い評価を獲得しました。

運用保守・サポート体制

イベント後も、リアルタイム翻訳システムの安定運用に向けた体制構築が欠かせません。GlobalConf社はC社と年間保守契約を締結し、月額¥500,000で24時間オンコールサポートと、月次リリースによる翻訳モデルチューニングを受託しました。運用チームは、ログ分析ツールでAPIコール数やエラー率、処理遅延のトレンドを毎日報告し、異常傾向が見られた場合は即座にホットフィックスを実施。クライアントからの問い合わせフォームには「翻訳が不自然だった箇所」「音声が途切れたタイミング」などを入力できる機能を盛り込み、フィードバックを受けながらモデル改善に反映しています。こうしたサポートの結果、運用開始後3ヶ月で「翻訳修正依頼数」が月20件→5件に減少し、サポート工数を40%削減。また、追加機能発注はPoCでの予備検証を経て行うルールを確立し、「予算」内での機能拡張を継続的に実現しています。

効果測定とROI算出

本システム導入によるコスト削減効果とROIは以下の通りです。

  • 通訳コスト削減:従来¥50,000,000/年 → 自動翻訳システム+少人数オンサイト通訳で¥12,000,000/年に削減

  • 運用工数削減:通訳手配・機材運用工数を年間1,000時間削減(相場工数単価¥5,000=¥5,000,000相当)

  • 参加者満足度向上:アンケートで「字幕品質に満足」が70%→90%に改善

  • 追加売上効果:多言語対応による海外参加者増加でイベント収益が15%向上(約¥10,000,000)

初期「費用」7,000,000円 + PoC¥1,000,000円 = ¥8,000,000 に対し、年間効果は50,000,000−12,000,000 + 5,000,000 + 10,000,000 = ¥53,000,000。
ROI = (53,000,000 − 12,000,000) ÷ 8,000,000 × 100 ≒ 513%、約0.2年(約2.4ヶ月)で回収可能な試算です。この数値を基に経営層へ報告し、次年度の追加「予算」獲得に成功しました。

今後の拡張計画

GlobalConf社は、リアルタイム翻訳システムをさらに進化させるため、以下の拡張を予定しています。

  • AI専門用語辞書の自動学習:過去の翻訳結果と修正履歴から自動チューニング

  • 多言語同時配信:5言語以上のリアルタイム字幕を同時に配信可能に

  • モバイルアプリ連携:スマホアプリで個別言語選択と音声通知機能を提供

  • VR会場対応:メタバース空間へのリアルタイム字幕埋め込み機能

  • オフラインキャプション:講演録画データへの自動字幕埋め込みエクスポート

これらは追加PoCを経て、合計¥5,000,000程度での発注を想定。開発会社C社と継続的な関係を築きながら、次世代システムへと進化を図ります。ぜひ

で御社プロジェクトの「費用感」を把握し、音声翻訳システム導入の第一歩を踏み出してください。

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