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開発ユースケース紹介

小売業向け在庫管理アプリで業務効率を飛躍的に改善した事例

背景と導入のきっかけ

東京都内に50店舗を展開する「リテールハンズ株式会社」は、店頭での売れ筋商品把握が店舗ごとにバラバラで、在庫過多・欠品が頻発する課題を抱えていました。紙ベースの在庫リストをエクセルで集約し、週次で本部に報告する運用ではリアルタイム性がなく、需要変動に追いつけませんでした。
社長の小林優子氏は、店舗マネージャーからの「発注に必要なデータがわからず、見込み発注が機能していない」という声を受け、ITでの業務改善を検討。システム開発の発注にあたり、

  • 自社業務に最適化された在庫管理機能

  • モバイル端末から店舗で簡単に入力・確認できるUI

  • リアルタイムの需要予測データ連携

を要件にまとめました。
これにより、従来の発注・予算策定フローを見直し、より正確な費用相場と予備費を含めた予算計上を目指すことになりました。想定する初期投資は800万~1,200万円、月額運用費用は20万~30万円が相場と考え、迅速な承認を得るために概算見積もりを複数社へ依頼しました。

開発会社の比較・選定プロセス

小林氏は以下の観点で開発会社を比較しました。

  1. 実績:小売・卸業向けシステム開発経験

  2. コミュニケーション:週次定例+チャット対応の充実度

  3. 技術力:モバイル対応PWAやリアルタイム同期技術の有無

  4. 費用透明性:人月単価・工数明細・クラウド費用内訳の提示

  5. 将来拡張:AI需要予測やデータ分析機能へのロードマップ提案

3社へRFP(提案依頼書)を送付し、

  • A社:Firebase+Vue.jsでのPWA提案、初期費用900万円・月額25万円

  • B社:オフショア混成チームによるReact Native+GraphQL提案、初期費用750万円・月額20万円

  • C社:ローコード+Vue.jsハイブリッド提案、初期費用600万円・月額30万円

という見積を受領。最終的に「店舗入力のUX」「将来の分析機能追加を見据えた技術提案」が優れていたB社を採用。支払い条件は「要件定義完了時30%」「MVPリリース時40%」「本番稼働後30%」とし、予算管理をしやすく設定しました。

設計・開発フェーズのポイント

B社とキックオフ後、2週間で要件定義を完了し、次のMVP設計に着手しました。主な開発ポイントは次のとおりです。

  • PWA採用:ブラウザでインストール不要、オフラインキャッシュ対応

  • リアルタイム同期:GraphQLサブスクリプションで在庫数を即時反映

  • UI/UX設計:店舗スタッフ向けに「スキャン発注」「写真添付」「チャット問い合わせ」機能を実装

  • セキュリティ:JWT認証+SSL通信強制を要件に盛り込み

開発はスクラム体制で2週間スプリントを回し、初期リリースから3スプリント(6週間)でMVPを公開。在庫過多アラートと欠品予測をコア機能とし、本部・店舗双方からフィードバックを取得。設計段階から

  1. 業務フローに即した画面遷移

  2. ネットワーク切断時の入力データ保護

  3. データベース構造の拡張性

を意識し、後続フェーズでAI予測や本部ダッシュボード機能をスムーズに追加できるアーキテクチャを構築しました。

テスト・納品・運用移行

開発完了後は、以下のプロセスで品質を担保しつつ本番移行しました。

  • 自動テスト:ユニットテスト80%カバレッジ、E2Eテスト20シナリオをPlaywrightで自動化

  • UAT(ユーザー受入試験):10店舗の店長が参加し、実データで操作検証

  • トレーニング:オンラインマニュアル+店舗向けハンズオン研修を実施

  • 運用ガイド:イントラWikiに「故障対応」「更新手順」を明文化

納品時のリリースではカナリアリリース方式を採用し、まず5店舗で3日間限定運用。問題がなかったため、残り45店舗へ展開。本稼働後1カ月で欠品率は15%→5%に改善し、発注ミスによる追加発注コストを月20万円削減しました。運用開始後は月次定例でKPIをレビューし、定着率や利用状況を確認。

フェーズ2:AI需要予測と高度分析の導入

MVPリリース後、リテールハンズ社はさらに業務効率化と売上拡大を狙い、AI需要予測機能をフェーズ2で実装しました。
まず、既存のPWAアプリに以下のデータ連携基盤を追加しました。

  • 販売実績ログ:各店舗のPOSデータをCloud Functionsで集約

  • 在庫履歴:Firestoreの補完テーブルから日次スナップショットを転送

  • 気象情報・イベント情報:第三者APIから取得し、BigQueryに格納
    これらを組み合わせたビッグデータ基盤をGCP上に構築し、

  1. データクリーニングと前処理をDataflowで自動化

  2. 機械学習モデルをVertex AIでトレーニング

  3. 予測結果をリアルタイムにFirestoreへ反映
    というパイプラインを開発会社と共同で設計・実装しました。

AIモデルの評価指標として、以下を設定:

  • MAE(平均絶対誤差):10%以内

  • RMSE(平方根平均二乗誤差):15%以内

  • 再現率:欠品予測時に95%以上
    これらはPoC段階で検証し、データ量が不足する初期フェーズでは単純移動平均からスタート、徐々にLSTMやXGBoostを適用するハイブリッド戦略を採用しました。モデル更新頻度は週次とし、毎週スプリント内で改善策をレビュー。これにより、AI需要予測の初期導入コストは約400万円、月間運用費用は30万円と算出されましたが、予算内でフェーズ2を完遂することができました。

効果測定とROI評価

フェーズ2リリースから3ヵ月後、効果測定を実施しました。主なKPIと成果は次の通りです。

  • 欠品率:5%→2%(▲3ポイント)

  • 在庫回転率:月平均4回→6回(+50%)

  • 余剰在庫減少量:前月比20%削減

  • 売上増加額:月間300万円増加
    これらの成果をもとにROI(投資対効果)を計算すると、初期投資1,600万円に対し、初年度増収効果3,600万円。ROIは2.25倍と高い数値を記録しました。
    事業責任者への報告用には、

  1. 投資額内訳(開発会社費用・クラウド費用・AIモデル運用費)

  2. 増加利益の内訳(欠品減少分・売上増分)

  3. 回収期間(月数)
    をスライドにまとめ、承認決定を加速。また、

    で示した開発費用感と実投資の差分を示し、社内了承を得る際に大いに役立ちました。

運用中の継続改善とPDCA

リリース後の継続改善は、2週間スプリントでPDCAサイクルを高速回転。主な取り組みは:

  • Plan:各店舗のフィードバックとKPIトレンド分析から改善テーマを抽出

  • Do:ダッシュボードUIのフィルタ機能追加、予測アラート閾値調整、チャットボット通知文言改善

  • Check:改修後1週間でABテストを実施し、利用率や業務時間削減効果を定量評価

  • Act:成功施策は全店舗に展開し、失敗施策は再プランニング

具体的には、AI予測誤差が大きかった店舗向けにカスタムモデル生成サービスを提供し、予測精度を10%向上。また、業務チャットボットに「今週の発注予測」機能を追加し、店舗スタッフの発注準備工数を週2時間削減。これらの改善は全てJIRAチケットで管理し、開発会社との共同バックログとして優先度を明確化。PDCAを組織文化として定着させることで、継続的な品質向上とコスト適正化を実現しています。

コスト管理と予算見直しのポイント

長期運用では、当初想定よりクラウド費用が増大することがあります。リテールハンズ社では以下の施策を実践しました:

  1. 予約インスタンス活用:BigQueryやVertex AIのリソースを1年単位で予約し、30%コスト削減

  2. 不要ログ削除:Cloud Storageのログ保持ポリシーを6カ月に見直し、年額20万円節減

  3. 関数最適化:Cloud Functionsのタイムアウトとメモリ設定を最適化し、ランニングコストを25%圧縮

  4. 外部API契約見直し:気象・イベント情報APIのプランを見直し、外部費用を15%削減

これらはすべて月次でKPIダッシュボードと併せて可視化し、経営会議で報告。予算消化率や費用アノマリーを早期検知し、適切な予算リバランスを行うことで、次年度予算を当初見積の95%以内に収めることができました。

組織への定着化施策

システムを単に導入するだけでなく、組織文化として定着させるために以下を推進しました:

  • ナレッジ共有会:毎月「在庫DX Day」を開催し、各店舗の成功事例と改善ポイントを共有

  • イントラQ&Aフォーラム:Confluence上にQA掲示板を開設し、スタッフの疑問をリアルタイムに解決

  • インセンティブ制度:予測精度向上や欠品削減に寄与した店舗を表彰し、モチベーションを向上

  • OJTメンター:店舗マネージャー向けにシステム操作ワークショップを開催し、内製化スキルを育成

これにより、システム利用率は初月70%→6カ月後95%に向上。レビューサイクルが短期化し、ユーザー自身が改善要望を挙げるようになったことで、開発会社への追加発注要件が精緻化され、費用対効果がさらに高まりました。

今後のロードマップと拡張機能

リテールハンズ社は今後、以下の機能をフェーズ3以降に計画しています:

  1. AR発注支援:スマホカメラを使った棚撮影→在庫自動認識

  2. サプライチェーン連携:発注データをEDI連携で卸業者と自動同期

  3. マイクロマーケティング:店舗来店データと連携したリアルタイムプロモーション

  4. サステナビリティ指標:廃棄率をAI予測し、環境コストを可視化

これらはすべて初期RFPにオプション費用として盛り込み、総予算の20%を確保済みです。フェーズ3以降も「開発会社選び」「予算・費用管理」「発注条件」の観点でロードマップをレビューし、リスクを最小化しながら拡張を進めていきます。

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