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製造業向けIoTセンサーデータ可視化システム導入事例:Y社が歩んだ5つのステップと成功の秘訣

プロジェクト背景とY社の課題

日本有数の金属加工メーカーであるY社は、現場の生産機械に取り付けたIoTセンサーから得られる温度・振動データをリアルタイムに可視化し、不良率低減と設備稼働率向上を目指していました。しかし、既存のERPやMES(製造実行システム)は大量データの可視化には向いておらず、新たなシステム選定が急務となっていました。
現状把握の遅延が毎月数百万円の損失要因になっており、IoT基盤を早急に整備する必要があったY社は、以下の課題を洗い出しました。

  • データ連携の複雑さ:センサーごとに通信プロトコルやフォーマットが異なり、標準化が必要

  • 可視化プラットフォームの選び方:グラフ描画のパフォーマンスや費用対効果の相場が不明瞭

  • 予算・費用の不確実性:PoC(概念実証)段階から実運用フェーズへの予算移行が見えづらく、開発会社への発注タイミングを判断できない

これらの課題を解消するため、Y社はまず開発ユースケースとして「異常検知アラート」「ダッシュボード自動生成」「運転条件の最適化シナリオ」の3つを定義し、PoCを通して検証する方針を決定しました。

開発会社の比較・選定プロセス

Y社が複数の開発会社を比較・選定するにあたり、重視したポイントは「システムアーキテクチャ提案力」「予算・費用感の透明性」「過去実績に基づく相場感」の3軸です。特に、初回見積もり段階での機能粒度と工数根拠の説明が詳しいベンダーは信頼度が高いと判断しました。

選定フローは以下の通りです。

  1. RFP(提案依頼書)作成:IoTセンサーからのデータ取得方式、可視化要件、将来の拡張性を明記

  2. 候補ベンダーへのヒアリング:各社のクラウド/オンプレミス両対応可否、ミドルウェア選定理由、見積り内訳を詳細に質問

  3. PoC提案評価:3社からのPoC計画を比較し、Y社側で重点検証すべき指標(APIレスポンスタイム、不良検出率)を設定

  4. 最終調整:予算交渉時には、追加発注の単価、保守フェーズでの費用相場も合わせて擦り合わせ

最終的に選ばれたベンダーは、初期開発費用を抑えつつも将来的な拡張(機械学習モデルの組み込み)に柔軟なシステムを提案した点が評価されました。予算内訳の透明化により、追加費用リスクが最小限にとどまりました。

予算策定と費用交渉のポイント

Y社がプロジェクト予算を策定する際には、以下の要素を細かく見積もりました。

  • 要件定義フェーズ工数:現場調査、RFP作成の工数を社内・ベンダー双方で想定

  • 開発会社への発注費用:バックエンドAPI開発、フロントエンドダッシュボード開発、データベース設計・運用設計

  • インフラ費用:クラウドリソース(IoTゲートウェイ、ストレージ、可視化プラットフォーム)のランニングコスト

  • 保守・運用費用:モニタリング体制、障害対応、開発会社への月額保守契約

特にクラウドの費用相場は、IoTデータのリクエスト数やストレージ容量により大きく変動するため、PoC段階で想定工数とデータ量を基に試算し、実運用フェーズに必要な予算を早期に確保しました。また、発注時には「要件追加時の単価」「保守時間超過時の時間単価」を契約書に明記し、後続の費用トラブルを回避しています。

予算交渉のコツとしては、機能単位でのフェーズ分け(MVP→フェーズ2→フェーズ3)を設計し、初期フェーズの費用を抑制しつつ、実績に応じて予算を積み増すスタイルを採用しました。これにより、PoCでROI(投資対効果)が確認できた段階で追加予算を柔軟に確保でき、システム拡張にもスムーズに移行できました。

開発プロセスと進行管理の工夫

Y社プロジェクトではウォーターフォールではなくアジャイル開発手法を採用し、2週間スプリントでMVPの機能を順次リリースしました。主な進行管理のポイントは以下の通りです。

  • スプリントレビュー時の現場巻き込み:現場エンジニアや品質保証チームに毎スプリントの成果をデモし、フィードバックを即時反映

  • バックログ優先度の定量化:ROI試算、緊急度、技術的難易度を数値化し、開発会社と合意

  • コミュニケーションツールの統一:チャットツール、チケット管理、ドキュメントはすべてクラウド上で共有し、情報の属人化を防止

  • 定例会の短時間化:週次定例は30分以内にし、決定事項のみ記録。長時間会議を排し実装に集中

このように進行管理を最適化した結果、当初予定より20%工数を削減し、開発期間の短縮と予算内での納品を実現しました。

クラウド vs オンプレミスの比較

Y社では初期PoCをAWSクラウド上で実施し、可視化プラットフォームにはAmazon QuickSightを採用しました。クラウドのメリットは以下の通りです。

  • スケーラビリティ:センサー台数増加時にもサーバーリソースを即時拡張できる

  • 短期導入のスピード:インフラ構築に要する時間が数時間~数日で完了

  • 初期費用の抑制:オンプレミスのハードウェア調達費用が不要

一方、オンプレミスの強みも無視できません。特にY社のように工場内で厳格なセキュリティ要件がある場合、データを工場ネットワーク外へ出さずに完結させられる点は大きな安心材料になります。また、ランニングコストが固定化しやすいため、長期的な運用費用を一定に保ちやすいという利点もあります。

Y社ではPoCフェーズでクラウドを採用し、実運用フェーズへ移行する際に「データ暗号化」「ネットワーク分離」「アクセスログ監査」などのセキュリティ要件を満たすAWS PrivateLinkやVPN構成を追加しています。結果として、初期導入スピードとセキュリティ体制を両立でき、予算内に収めつつコンプライアンス要件もクリアしました。

テスト戦略と品質保証

工場現場で稼働するシステムのため、テスト戦略には以下のフェーズを設けました。

  1. 単体テスト:APIエンドポイントやセンサーデータ処理モジュールの自動化テスト

  2. 統合テスト:IoTゲートウェイからクラウドまでのデータフロー検証

  3. 性能テスト:ピーク時の同時リクエスト数・ストレージ書き込み速度の検証

  4. ユーザ受入テスト:現場エンジニアによる実機接続・ダッシュボード操作確認

特に重要となったのは「異常値」を想定したテストケースです。製造現場ではセンサー誤差やノイズがあるため、一定の閾値を超えるデータが混入した際の異常検知アラート挙動を重点的に確認しました。また、インフラ側の自動スケールアウトが正しく機能するかを性能テストで繰り返し検証し、ピーク時にも応答遅延が1秒以内に収まることを確認しています。

こうした品質保証体制をベンダーと共同で整備することで、「リリース後に不具合対応のための追加費用が膨らむ」というリスクを未然に防ぎました。社内の予算管理担当者からも「開発会社の品質保証プロセスが明確だったため、メンテナンスコスト見通しが立てやすい」と高評価を得ています。

導入後の運用と改善サイクル

本番稼働後は、週次で以下のような運用改善サイクルを回しています。

  • ダッシュボード閲覧ログ分析:どの指標がよく参照され、どのアラートが多発しているかを把握

  • ユーザヒアリング:現場エンジニアとの定例会で「現場で欲しい新指標」や「表示レイアウトの改善要望」を収集

  • データクレンジング:センサーノイズや欠損値を定期的に見直し、データ品質を向上

  • 機能追加の優先度決定:集めた要望をROIや工数で評価し、次期スプリントのバックログに反映

また、運用開始から3か月で不良品発生率が15%改善され、機械ダウンタイムも月間10%削減という成果を確認しました。これにより、IT投資に対する事業責任者からの評価も上がり、追加フェーズとして「機械学習による予防保全モデル」の開発予算が承認されました。

データ分析と次フェーズの展望

次フェーズでは、収集したIoTデータを活用した高度な分析機能を実装します。具体的には「異常予兆検知モデル」「生産予測ダッシュボード」「コスト分析レポート」を計画中です。これにより、単なる可視化から一歩進んだ「自動アクション提案」を実現し、現場の運用効率をさらに高める狙いです。

予算・費用相場としては、機械学習モデル構築に約300~500万円、リアルタイム予測APIの運用に月額20~30万円程度が一般的と言われています。Y社ではPoC段階でコスト試算を行ったうえで、次年度予算にこれらの費用を組み込み、発注計画を進めています。

また、開発会社とのリレーションを維持し、保守契約での割引率や機能追加時の割増率を事前合意しているため、予算超過リスクを抑えつつ継続的な機能改善が可能です。これからシステム発注を検討される企業様にも、ベンダー選びと予算策定のポイントとしてぜひ参考にしていただきたい事例です。

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