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開発ユースケース紹介

農業DX最前線:ドローン×AIでブドウ畑を可視化した事例

ぶどう畑DX構想:ブドウ品質向上の狙い

国内ワイナリー「サンライズヴィンヤード」社は、手作業中心の栽培管理に限界を感じていました。土壌の乾燥度や病害の早期発見、果実熟度のばらつきなど、見た目や熟練度に頼る運用では、「システム化による可視化」が喫緊の課題です。そこで同社の醸造長である吉田氏は、ドローンによる空撮とAI画像解析を組み合わせ、畑ごとの健全度をリアルタイムに把握する構想を立案。従来の点検作業は月1回の目視巡回でしたが、新システムでは週1回の自動フライトで病害リスクを80%以上の精度で検知できる見込みです。
このプロジェクトでは、まず以下を要件として定義しました。

  • ドローンで撮影した画像から葉の色ムラや病斑をAIで自動検出

  • 取得データをクラウド上で蓄積し、ダッシュボードで可視化

  • 畑ごとの水分量や日照量をIoTセンサーで補完

  • 農作業担当者へスマホ通知でリスクアラート配信

これにより、畑間の「費用対効果」を比較しやすくし、収穫量と品質改善に直結させる狙いです。予算は初期導入で約1,200万円、年度運用費用は月額100万円程度を想定し、相場調査では同規模プロジェクトの平均導入費用が1,000万~1,500万円程度であることを確認しました。発注前には、予算感と「開発会社の選び方」指針を社内経営会議で共有し、リスクを洗い出したうえでGoサインを獲得しています。

開発会社選定とPoC実施

吉田氏は要件定義をもとに、ドローン制御とAI解析の両方をワンストップで提供できるA社、B社、C社の三社にRFPを発行。評価軸は次の四つです。

  1. ドローン運用実績:農業分野での自動フライト経験

  2. AI画像解析技術:植物病理検出の精度とチューニング力

  3. クラウドインテグレーション:データ蓄積・可視化プラットフォーム経験

  4. コストパフォーマンス:相場感に照らした工数・単価設定

各社の見積もりは、PoCフェーズで約200万円、本開発フェーズで約800万円。「予算」として想定した1,000万円をクリアできるかが選定の鍵となりました。最終的に選ばれたのはA社で、PoCでは3haの試験区画で飛行ルート自動生成、撮影→AI解析→ダッシュボード表示までを2週間で実現。解析精度は80%以上を達成し、PoC報告会では具体的なデモとコスト試算を提示してくれた点が高評価でした。PoC合格後、本開発発注を正式に実行し、A社とマイルストーン契約を結びました。

AI画像解析モデル開発と予算調整

本開発では、PoCで採用したTensorFlowベースの葉色分析モデルを強化し、以下の機能追加を行いました。

  • 葉面積自動算出機能:葉の密度を計測し、光合成効率を推定

  • 病斑エッジ検出:BOTrytisなどの初期症状を境界線検出で高精度識別

  • 時系列比較分析:過去データとの比較で早期異常を検出

これらの追加要件に伴い、当初予算800万円に対して追加費用見積もりが約150万円発生。一方で、葉面積算出による生育スピード最適化で肥料費を年間100万円圧縮できる試算が得られたため、追加予算を承認。最終的なAI部門の費用は950万円となり、投資回収に必要な効果試算もあわせて経営層へ報告しました。予算策定では、PoC成果をもとに変動費を明示した「見積もりフォーマット」が役立ち、新規投資に対する社内信頼度を高めることに貢献しています。

ドローン運用システムとAPI統合

ドローン管理プラットフォームはDJI製APIを利用し、以下の機能を実装しました。

  • 自動フライトルート生成:QGIS上の畑境界から最適飛行経路を算出

  • フライト状況リアルタイム表示:位置情報を地図にプロット

  • 障害検知リカバリ:飛行中断時の自動再離陸機能

また、AI解析結果はGraphQL API経由で可視化ダッシュボードに連携。BIツールでレポート生成する際はRESTエンドポイントを提供し、農機具のIoTセンサーとデータ統合を実現。これにより一つの「システム」でドローン、AI、IoTをシームレスに結び、現場運用担当者はスマホやタブレットからワンクリックで異常箇所を把握できるようになりました。API設計には認証トークンとレートリミットを厳格化し、セキュリティ対策と運用コスト最適化を両立しています。

データ分析と予兆保全連携

「FactoryIQ」で取得した空撮データとIoTセンサー情報は、BIダッシュボードでリアルタイムに可視化されるだけでなく、過去データを機械学習モデルに投入して予兆保全にも活用されています。具体的には、ブドウの葉色・葉面積推移と土壌水分推移を組み合わせ、下記の解析を実行しています。

  • 時系列クラスタリング:健全区画と異常区画を自動分類

  • 回帰分析:水分過多・乾燥過多のリスクしきい値算出

  • 異常スコアリング:畑単位で異常確率を0〜100で表示

この解析結果は、畑ごとに「要注意」「要監視」「正常」の3段階で色分けされ、現場担当者へスマホ通知が自動送信されます。これにより、病害や乾燥リスクの早期検知が可能となり、農薬投入量や灌水量の最適化が実現。年間で肥料・農薬費用を約15%削減し、「予算対効果」を向上させています。さらに、解析ロジックは将来的に他の果樹や野菜にも転用可能な汎用モジュールとして発注先の開発会社へパッケージ提供し、相場よりも低コストでカスタマイズを実現しました。

現場運用とトレーニングイニシアチブ

技術導入効果を最大化するには、現場担当者のITリテラシーと運用フロー定着が不可欠です。サンライズヴィンヤード社では以下の取り組みを行いました。

  1. 現場トレーニング:ドローン操作とアプリ利用をセットにしたハンズオン研修を全社員向けに実施

  2. eラーニング:オンラインマニュアルと動画教材を社内ポータルに常設

  3. 専任サポート:1年間は週次で現場巡回し、ヒアリングと改善要望を収集

  4. ユーザーコミュニティ:現場同士のナレッジ共有用フォーラムを開設

これにより、現場運用開始1ヶ月でアプリ利用率が90%を超え、農業未経験者でもスムーズに操作可能に。運用保守フェーズの費用も月額100万円の保守契約内でカバーでき、システム導入に伴う「費用対効果」をさらに押し上げています。現場視点を重視した研修とサポート体制の整備は、導入コストを抑えながら効果を最大化する成功要因です。

効果測定とROI算出

プロジェクト成果を経営層に説明するため、KPIを四半期ごとに定量評価しました。主要指標は以下です。

  • 病害早期検知率:従来の目視60% ⇒ システム80%(約1.3倍)

  • 収穫量向上率:平均10%向上

  • 肥料・農薬費削減:年間15%削減(約200万円相当)

  • オペレーション工数削減:巡回作業週10時間削減(年間520時間)

これらをもとにROIを算出すると、初期導入1,200万円に対し、年間コスト削減と収益向上効果は約1,800万円に達し、投資回収期間は約8ヶ月と試算。レポートはBIダッシュボードに組み込み、経営会議でリアルタイムに共有しています。このROI可視化は「次フェーズの予算」取りにも有効で、追加機能開発や他圃場への横展開の「相場感」を社内に示す大きな根拠となりました。

将来展望:ドローンネットワークと自動化

次のステップとして、サンライズヴィンヤード社は独自ドローンネットワークの構築を検討中です。複数ドローンを自動編隊制御し、10haを超える広大圃場でも連続自動飛行を実現。以下の技術要素を計画しています。

  • ドローン自律飛行ルート最適化:AIによる飛行経路再計算

  • ワイヤレス給電ステーション:太陽光+無線給電で24時間運用

  • エッジAI解析:飛行中にオンボードで病斑検出し、リアルタイム警報

  • クラウド連携パイプライン強化:5Gネットワークによる高速データ同期

これらを社内開発チームと開発会社A社のハイブリッド体制で推進し、追加「費用」を相場よりも抑制する方針です。自動化率をさらに高めることで、人的工数を削減しながら安定品質の果実生産を目指します。

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