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開発ユースケース紹介

AI×IoTで水管理を最適化!スマート灌漑システム導入ユースケース紹介

現代の農業現場では、水資源の効率的な活用が大きな課題となっています。特に中小規模の農家では、人手や費用の制約から、灌漑のタイミングや量を経験則だけで決めざるを得ないケースが少なくありませんでした。そんな中、スタートアップ企業「アグリウォッチX社」が提案したのが、AIとIoTを組み合わせたスマート灌漑システム。今回は、IT未経験の農業法人「緑風ファーム」様が、どのようにこのシステムを発注し、導入し、成果を上げたのかを時系列で振り返ります。これからシステム発注を検討する事業責任者やマネージャーの方々に向けて、開発会社の選び方や予算・費用の相場感、発注時の注意点まで、リアルなユースケースをお届けします。

中小農家が抱えていた水管理の課題

緑風ファーム様は、水稲や野菜の栽培を中心とした地域密着型の農業法人です。毎年の天候変動により、過剰潅水による土壌の窒素流出や、水不足による生育不良に頭を抱えていました。

  • 経験則の限界
    長年の勘や天気予報を頼りに灌漑タイミングを決定していましたが、大雨の直後に潅水を続けてしまい、追加費用がかかるケースも発生。

  • 人手不足の深刻化
    高齢化と兼業化の進展で、圃場を巡回して目視点検するリソースが限られ、見逃しがちに。

  • 費用対効果の不透明感
    灌漑用ポンプの稼働時間増加に伴う電気代やポンプの摩耗コストが不明瞭で、次年度予算化が困難でした。

そこで緑風ファーム様は、IoTセンサーで土壌水分をリアルタイム計測し、AIで最適な潅水量を算出する「スマート灌漑システム」の導入を検討。限られた予算の中で、開発会社の選び方や発注フローを慎重に進める必要がありました。

開発会社の比較・選定から発注までのプロセス

1. 評価軸の設定

「予算は500万円程度、発注リスクを抑えつつ実績ある開発会社に依頼したい」という経営判断のもと、以下の評価軸を設けました。

  1. IoT実績:過去に農業分野でのセンサーシステムを手がけた事例があるか

  2. AIアルゴリズムの提案力:天候データや土壌データを学習し、独自アルゴリズムを持つか

  3. 予算感の透明性:初期費用、ライセンス費用、保守費用の相場を明示できるか

  4. 発注フローの柔軟性:要件変更に応じた見積り更新や、段階的リリースに対応可能か

2. 候補リストアップ

農業IoTの展示会やオンライン検索、既存の業界ネットワークを活用し、5社の開発会社をピックアップ。Webサイトや過去の導入事例をレビューし、それぞれの得意領域を可視化しました。

  • A社:大手電機メーカー系子会社。ハードウェアからAIまでワンストップだが、初期費用が高め。

  • B社:スタートアップで農業IoTに特化。予算は抑えられるが、実装事例がまだ少ない。

  • C社:システム開発会社の老舗。多数の業界実績あり、要件定義から保守まで安定感。

  • D社:クラウドプラットフォーム企業。スケーラブルだが、カスタマイズ費用が見えにくい。

  • E社:農機メーカー系ITベンダー。機器連携の実績豊富だが、AI部分は外部協業。

3. RFP(提案依頼書)の作成と提示

評価軸に基づき、要件定義書(RFP)を作成。以下を明記しました。

  • センサー設置台数と設置イメージ

  • 土壌水分、気温、降雨量の取得要件

  • AIによる潅水判定の頻度と可視化画面イメージ

  • 初期予算(開発+ハードウェア+設置含む)と維持費の希望レンジ

  • 発注後3か月以内のPoC(概念検証)で成果を確認するスケジュール

RFP提示後、各社から見積もりと提案書が提出され、概算予算の「費用相場感」が明確に。PoC込みの相場は約450~600万円と判明しました。

4. ベンダー決定と契約交渉

最終的に、C社が提示した柔軟な開発体制と透明性の高い費用体系が評価され、選定。契約にあたり以下ポイントで交渉を実施。

  • 予算上限の明記:追加要件は都度見積もりし、上限を500万円に固定。

  • 段階リリース:まずはクローズド環境で6圃場のPoC、その後拡張フェーズへ移行。

  • 保守・運用費:月額20万円、障害対応SLAを24時間以内に設定。

  • ナレッジ共有:開発中のコードや仕様書はConfluenceで常時アクセス可能とする。

これにより、予算超過リスクを抑制しつつ、要件変更にも柔軟に対応できる契約が締結されました。

PoCで見えた追加課題と調整

続いてPoC段階での成果と学びを紹介します。以下の点で当初RFPに含まれなかった細かな要件変更が発生しました。

  • センサー校正ロジック:導入時に土壌の種類によってセンサー感度調整が必要と判明。

  • モバイル通知のタイムラグ:圃場の通信環境により、コマンド送信から実際の潅水開始まで最大30秒の待機が生じたため、UI上に「実行予定時刻」を表示する機能を追加。

  • 費用発生の透明化:PoC終了後、実績工数を正確に計算するために作業ログを自動取得し、レポート生成機能を組み込むことに。

これら調整コストは合計で予算の5%程度に抑えられ、最終的な発注費用は約525万円となりました。

ここまでで、開発会社の選び方、予算・費用の相場、発注からPoCフェーズまでの流れを具体的にご紹介しました。次は、最終導入フェーズでの成果、ビジネスメリット、そして今後の運用体制と拡張計画について深掘りします。

本番環境へのスムーズな移行と拡張フェーズ

PoCで得た知見を反映しつつ、緑風ファーム様は本番稼働に向けた準備を進めました。システムや発注フローの振り返りから、次のようなプロセスを経ています。

  1. ハードウェア・設置拡張
    PoCで使用した6圃場から、最終的に全15圃場へセンサーと潅水バルブを追加設置。開発会社C社は、現地調査~設置までを3週間で完了させました。設置台数が増えたことで、ハードウェア費用は約150万円の追加。

  2. クラウド基盤のスケールアップ
    PoC時点で10台相当だったIoTゲートウェイを、15台に対応できるクラウド構成に再設計。予算の圧迫を避けるため、サーバースペックは中程度をキープしつつ、Auto Scalingの閾値設定を最適化しました。

  3. 保守運用プロセスの最終確認
    障害時の初動対応フローや、定期メンテナンススケジュールを緑風ファーム様と共同で策定。月次レポートは自動生成され、ダッシュボードでいつでも確認可能に。

これらのプロセスを経て、本番環境は契約予算内に収まり、約5か月でフルローンチを達成しました。

導入効果の定量・定性評価

定量的な成果

導入から半年後、緑風ファーム様では以下のようなKPIを達成しました。

  • 水使用量の削減率:25%
    センサー×AI制御により、過剰潅水を回避。節水に伴い電気代やポンプ摩耗コストも同率で減少。

  • 収穫量の安定化:10%向上
    水管理の精度向上で作物生育が均一化し、歩留まりが改善。

  • 作業工数の削減:週4時間の省力化
    圃場巡回と水やり作業が自動化され、現場担当者の工数を本来比で約15%削減。

これらは、投資対効果(ROI)として約1.2年で回収可能な水準です。

定性的なメリット

  • ノウハウ蓄積:潅水タイミングや気象変動への知見が可視化され、農場運営の知的資産として蓄積。

  • 組織の意識変革:ITによる業務改善の成功体験が、次なるシステム投資への後押しに。

  • ブランド価値の向上:スマート農業を実践する先進事例として、地元メディアで取り上げられ、集客・販路拡大にも貢献。

今後の運用体制と拡張計画

緑風ファーム様は、次のフェーズとして以下を検討しています。

  1. 季節・作物別AIチューニング
    夏野菜や冬野菜といった異なる作物ごとに学習モデルを細分化し、さらに節水と収量向上を両立。

  2. 施肥システムとの連携
    土壌分析IoTと潅水システムを統合し、水と肥料の最適同期制御を実現。

  3. 異業種展開
    農業以外の園芸施設やゴルフ場など、水管理が重要な別業種へのシステム展開を視野に、開発会社と共同でビジネスモデルを検討中。

また、開発会社C社との契約を翌年も継続し、保守運用フェーズでの改善提案や次期機能開発を進める予定です。引き続き、予算や費用の相場感を見ながら、段階的に拡張していく方針です。

導入プロジェクトの教訓と成功のポイントまとめ

本ケーススタディから得られる、事業責任者・マネージャーの皆様への示唆は以下の通りです。

  • 明確な評価軸を設定する
    「実績」「予算透明性」「発注柔軟性」をRFPに落とし込むことで、開発会社選定の精度が大きく向上します。

  • PoCでの小さな成功を本番に活かす
    適切なフェーズ分割により、要件変更や追加予算を抑制しつつ、効果を小刻みに確認できます。

  • 継続的な運用・改善を契約に含める
    保守運用フェーズのSLAやレポート機能を初期契約で定義。運用中の追加要望も段階的に吸収できる体制を整えましょう。

  • 定量・定性の両面で成果を可視化
    節水率や収量向上だけでなく、社内外への認知度向上やITリテラシー向上といった定性的効果も併せて評価することで、次期予算の正当性が高まります。

これらを踏まえ、システム開発の予算策定や開発会社の選び方、発注後の進行管理に活かしてください。

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