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開発ユースケース紹介

EC返品オートメーションシステム導入のリアルユースケース──生成AI×RPAで実現するコスト25%削減

はじめに:返品処理が利益を圧迫する時代

EC市場が拡大する一方、返品率は平均15%を超えるとも言われます。人手で返品を裁く従来型オペレーションは、システム開発会社に委託しても1注文あたりの処理原価が高止まりし、経営層にとって大きな悩みです。本記事では、生成AIとRPAを組み合わせた「返品・返金オートメーションシステム」の導入ユースケースを詳細に解説します。要件定義やシステム設計、ベンダーの選び方、開発費用相場まで、総文字数8,000超の前半パートとして4,000文字以上をお届けします。

プロジェクト概要とKPI設定

導入企業は月間注文数15万件のアパレルEC。返品関連コスト比率を売上の3.1%→2.3%へ下げることが主目的です。KPIは

  • 平均返金処理時間:48時間→4時間

  • オペレーター工数:月640時間→160時間

  • 顧客満足度(NPS):+6ポイント
    と設定しました。予算は開発予算2,000万円、保守月額30万円、ROI18か月をターゲットにしています。

要件定義:返品業務を8フローに分解

返品受付〜返金完了までを以下8フローに分解し、要件定義書として整理しました。

  1. Webポータルでの返品申請

  2. 生成AIによる理由分類

  3. RPAによるWMS在庫更新

  4. 配送会社API連携で集荷手配

  5. 画像解析AIで汚損度判定

  6. QC担当の承認ワークフロー

  7. 会計システムへの自動仕訳

  8. 顧客へのメール・LINE通知

ベンダー選定プロセス:5社見積もり比較

見積もり比較では国内外のWeb開発会社5社にRFPを送付。評価軸は以下。

  • 返品特化SaaS連携の実績

  • 業務システム開発におけるAIモデル運用経験

  • システム開発フローがDevOpsに準拠しているか

  • 開発費用と内訳の透明性

  • 保守体制・SLA
    最終的に、AI推論基盤を自社ホスティングせずマネージドサービス利用を提案したA社を選定。理由は初期費用▲18%、運用コスト▲12%の試算が出たためです。

アーキテクチャ設計:マイクロサービス+イベント駆動

システム構成はNext.js+FastAPIをフロント/バックに据え、イベントドリブンでマイクロサービスを疎結合。返品申請イベントをKafkaで配信し、

費用内訳シミュレーションとコスト削減ポイント

A社の見積もりは総額1,920万円。内訳は

  • 基本設計:320万

  • 詳細設計+API設計:240万

  • 実装:920万

  • テスト:240万

  • PM/ドキュメント:200万
    クラウド費用は別途ですが、AWS Graviton+Spot Instancesを前提に月15万円で収まる想定。ポイントはAI推論をAPI Gateway+Lambdaでサーバレス化し、コスト削減を図ったことです。

プロジェクト管理:スクラム+EVMで予算監視

プロジェクト管理にはScrumとEVM(Earned Value Management)を併用。2週間スプリントごとに「出来高」を算出し、予算消化率と比較して逸脱を即時検知。EVM導入で予算超過リスクが早期に見える化し、途中でAIモデル訓練データを10万件追加する判断も迅速に行えました。

UI/UX:顧客セルフサービスを徹底

UXの肝は「返品理由入力をわずか30秒で完結させる」こと。チャットボットUIで選択肢を提案しつつ、スマホアプリ開発のノウハウを活かしてプログレッシブアプリ化。オフライン時はIndexedDBにローカル保存し、再接続時に自動同期することで離脱率を16%→4%に改善しました。

データセキュリティと法規制対応

個人情報を扱うため、ISO27001相当の運用プロセスとGDPR/改正個人情報保護法の両方に対応。トークナイゼーションで顧客IDを不可逆化し、モデル学習には擬似データを利用。開発会社選定時点で保守運用のセキュリティ資格を確認することが重要です。

テスト戦略と品質保証──ゼロ・ダウンタイムを前提にした8レイヤー検証

本プロジェクトでは「返品受付が停止する時間=売上損失」と定義し、ゼロ・ダウンタイムを絶対条件に掲げました。そこで採用したのが CI/CD パイプラインと連動した8レイヤー品質保証モデルです。ユニットテストは Python+pytest で 92% の網羅率を確保し、コンテナ単位のコンポーネントテストを GitHub Actions 上で並列実行。E2E テストには Playwright を採用し、ブラウザ種別・ネットワーク速度・モバイル端末 15 構成でシナリオを自動回帰させました。さらにデータ品質を担保するため、AI 推論結果のサンプルを毎晩 CloudWatch Events で抽出し、人手確認との乖離率が 5% を超えた場合に自動で Canary リリースをロールバック。障害演習は Chaos Engineering の手法で週次実行し、ピークタイムにノードを意図的にクラッシュさせて可用性を検証しました。

移行計画とレガシー連携──段階的カットオーバーの勘所

既存返品システムはオンプレミスの ERP に深く結合していました。そこで“ストラングラー・フィグ”パターンを採用し、返品理由分類と在庫更新をマイクロサービス側へ先行移行。Stage1 では ERP に Webhook を仕込み、新システムの Kafka トピックへエクスポートだけを行う「読み取りコピー」方式を 3 週間運用。Stage2 でトラフィックの 30% を新システムへルーティングし、KPI が悪化しないことを確認後、1 か月かけて 100% 切り替えました。ポイントは「ERP への書き戻し」を最終段階に回し、二重更新時間を極小化したことです。結果として業務停止ゼロで移行完了し、レガシーのバッチ処理は順次廃止できました。

運用フェーズ──モニタリング指標と SRE 体制

カットオーバー後は Site Reliability Engineering(SRE)チームがオーナーシップを引き継ぎました。4 つの Golden Signals(レイテンシ、トラフィック、エラー、サチュレーション)をベースに、返品申請 API の p95 レイテンシを 600 ms 以下に維持。Prometheus で収集したメトリクスを Grafana に可視化し、週次で SLO をレビュー。AI モデルについては MLOps パイプラインを別途構築し、ドリフト検知が 2% 超過した場合に Retrain ジョブを自動起動します。また運用の属人化防止として「Observability 手帳」を Notion で公開し、障害パターンと Runbook を標準化しました。

KPI 実績と ROI 検証──18 か月計画を 11 か月で黒字化

稼働 3 か月時点で返品関連コスト比率は 2.3% どころか 2.0% を達成。平均返金処理時間は 2.6 時間へ短縮し、顧客 NPS は 7 ポイント上昇。オペレーター工数は 1/4 に削減でき、算出 ROI は 11 か月でプラス転換しました。ここで重要なのは、「AI 部分の精度が出るまでは人手併用フェーズを挟んだ」点です。100% 自動化に固執せず、十分なデータを確保しながら段階的に自動化率を高めることで、ビジネス側の抵抗感を軽減できました。

経営インパクト──在庫最適化とキャッシュフロー改善

返品処理時間が短縮されたことで再販可能在庫が 72 時間早く戻り、販売機会損失が年間 4.4 億円分改善。キャッシュフローも返金タイミングの平準化により月間 1.3 億円の資金余裕が生まれました。経営陣は当初の「コストセンター改善」から「売上拡大エンジン」へと本システムを再評価し、今後は AI によるダイナミックプライシングと結合する計画が進んでいます。

ガバナンスと監査対応──内部統制部門との協業

返品データは売上高の調整要素でもあるため、内部統制部門との連携が必須です。監査ログを CloudTrail と AWSQLDB へ二重保存し、改ざん検知アルゴリズムを実装。J-SOX 控除対象額のしきい値を超える異常が検出された場合、Slack へアラートと同時に自動で監査証跡を ZIP 化して保存します。これにより半期監査工数が 40% 削減されただけでなく、ガバナンス強化が顧客企業への信頼向上にも寄与しました。

将来拡張ロードマップ──リセール EC との統合

次フェーズでは中古リセール EC プラットフォームとリアルタイム連携し、返品された商品を即時再出品する「リファービッシュ連動フロー」を追加予定です。AI が汚損度を 5 段階で自動判定し、Grading A/B なら再販、C 以下はアウトレット行きというルールをマイクロサービスで拡張。これにより粗利率+3% を見込み、開発投資 1,200 万円に対し 8 か月回収を計画しています。

まとめ──返品はコストではなく競争優位の源泉

本ユースケースが示すのは、「返品=赤字部門」という固定観念を破り、テクノロジーで競争優位を創出できるという事実です。システム開発会社を選ぶ際は、AI・RPA・DevOps まで横断できるケイパビリティを重視し、開発費用相場を鵜呑みにせず ROI シミュレーションで比較することが重要です。あなたのビジネスでも、返品や在庫の“負債”を“資産”へ変える次の一手を検討してみてください。最後に改めて、最適パートナー探しには詳細な RFP と複数社比較が不可欠です。ぜひ本記事を参考に、具体的な行動へ踏み出してください!

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