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開発ユースケース紹介

VR内見×Webシステムで成約率向上:不動産業R社の成功ユースケース

プロジェクト背景とビジネスゴール

R社は創業5年の中堅不動産会社で、東京23区のマンション売買を中心に事業を展開しています。1.従来は現地での内見を重視し、内見希望者には必ず1回以上の現地訪問を依頼していました。2.しかし、遠方在住の顧客やスケジュール調整が難しい層から「内見に時間を割けない」「複数物件を短期間で見比べたい」という声が増加しました。3.その結果、内見の調整コストが増え、問い合わせから成約までのリードタイムが約30日と長期化しました。4.さらに、営業担当者の訪問対応工数も週あたり平均40時間を超え、人的コストが膨らんでいました。5.これらの課題を解決するため、R社はVRによる360度仮想内見をWebシステムに組み込むことを検討しました。6.ビジネスゴールは「問い合わせから成約までの平均リードタイムを30日→15日に短縮」「営業訪問件数を月200件→100件に削減」「成約率を10%アップ」の三点です。7.併せて、内見コスト削減効果を年間500万円程度と試算し、投資対効果(ROI)を明確化しました。8.社内の決裁をとるため、初期予算として約600万円、年間運用費として100万円の見積もりが必要でした。9.要件定義では「VR内見機能」「物件情報連携」「問い合わせフォーム」「分析ダッシュボード」の四機能を優先度順に整理。10.この段階で開発会社に求めるスキルセットや発注スコープを固め、予算(費用)感とのすり合わせを開始しました。11.同業他社の導入事例を調査すると、相場は500万~800万円程度と分かり、R社の予算枠にも合致。12.そこで次章以降で、開発会社選びとRFP策定のポイントを解説します。

開発会社選びとRFP策定のポイント

開発会社の選定では、まずVR技術とWebシステムの両方に強みを持つ企業をリストアップしました。1.具体的には、Three.jsやA-Frameを使った実績、WebGLを活用したインタラクティブ要素の開発経験が重視ポイントです。2.また、物件情報のCMS連携や不動産基幹システムとのAPI連携経験も必須の要件としました。3.さらに、予算感を共有しやすいように、各社に「機能別工数」「単価」「合計費用」の三要素をフォーマット化して提出してもらうことにしました。4.RFPには以下の内容を盛り込みました。

  • 画面要件:360度ビュー画面、サムネイル一覧、物件詳細のUI設計

  • 技術要件:WebGLライブラリ指定、CMS連携API仕様、レスポンシブ対応

  • 非機能要件:初期表示速度2秒以内、同時接続50セッション想定

  • 運用要件:CMS管理者向け編集画面、ログ分析ダッシュボード
    5.このRFPを基に、5社から提案を受領し、技術提案の内容と費用相場を比較。6.価格だけでなく、提案の充実度、コミュニケーション速度、過去事例の品質も考慮して最終3社に絞り込みました。7.交渉過程では、予算枠600万円以内に収めるため、フェーズ分割発注を提案。PoCフェーズ(100万円)と本番フェーズ(500万円)に分けて見積もりを依頼しました。8.この手法により、初期投資を抑えつつリスクを低減でき、発注時の費用増を防止しました。9.最終的に、VRと不動産システムに精通したB社を選定し、契約を締結しています。

フェーズ1:PoCで360°ビュー対応

PoCフェーズでは、まず最小限の機能で360度ビューを実現し、ユーザー体験と技術的実現性を検証しました。1.B社には「360度画像のアップロード」「ビューア表示」「簡易編集機能(タグ付け)」の三機能で見積もりを依頼。2.工数は合計30工数、相場として約45万円と想定しました。3.期間は4週間を設定し、2週間で開発、2週間で社内検証と修正を行いました。4.技術スタックはThree.jsとReactを選択し、物件写真をS3にアップしつつCDN配信で高速表示を実現。5.PoCの成果として、

  • 初回表示3秒→2秒以内

  • 操作レイテンシ30ms以下

  • モバイルでも動作確認OK
    を達成しました。6.社内ユーザーテストで、営業部門から高評価を獲得し、PoC期間中も追加要件(ビュー上下位置切り替え)に対して数万円の調整費用で対応。7.RFP通りの工数管理が可能であったため、予算超過はゼロでした。8.PoCで得た技術検証結果と費用感を経営層に報告し、本番フェーズへの予算承認(500万円)を正式に獲得しています。

フェーズ2:本番システム開発とクラウドインフラ設計

本番開発フェーズでは、PoCを発展させて以下の機能を実装しました。1.物件一覧ページからのVR内見起動、2.タグ情報や間取り図との連動、3.問い合わせフォームへの情報自動反映、4.管理画面での物件追加・編集。5.さらに、アクセス解析用のダッシュボードを実装し、どの物件が何分表示されたかを可視化しました。6.クラウドインフラはAWSを採用し、S3+CloudFrontで静的ファイル配信、Lambda@Edgeでリクエスト振り分けを実装。7.バックエンドAPIはAPI Gateway+Lambdaでステートレス化し、スケールアウト対応を容易に。8.RDSはAurora Serverlessを利用し、コストを月額10万円以下に抑制。9.フェーズ2の工数見積もりは本体開発240工数、インフラ設計50工数、テスト50工数の合計340工数、相場約500万円としました。10.実際の発注では、「開発会社単価×工数」の他に「インフラ設定費用」「運用サポート費用」も含め、最終見積もりを550万円に調整。11.予算枠600万円の余裕を最大限活かし、追加要件の混載を抑えながらプロジェクトを進行しました。12.開発中に発生したAPIレスポンスのパフォーマンス問題も、キャッシュ追加とLambda最適化で工数10工数、費用15万円で解決。13.このようにフェーズ分割と明確な工数管理が、予算内開発を可能にしました。

テスト戦略と品質保証

本番リリースに先立ち、テスト戦略を綿密に計画しました。まず、ユニットテストではVRビューアの描画ロジックと物件情報連携APIのレスポンス処理を分離してカバーし、PHPバックエンドではPHPUnitでコア処理を約80%のカバレッジを目指しました。次に、統合テストでは、VR内見画面と問い合わせフォーム、CMS経由の物件更新フローの一連の操作をSelenium+Codeceptionで自動化し、主要なユーザーパスを定期的に検証します。E2EテストはNightwatch.jsを用い、ブラウザ間の互換性チェックやモバイルレスポンシブの動作確認も含めました。さらに、パフォーマンステストではWebPageTestとLighthouseを活用し、初回表示速度やインタラクション応答時間を計測。特に、VRビューア起動時の初回ロードを2秒以内に収めることを品質基準に設定し、必要に応じてCDNキャッシュや圧縮率調整を実施しました。エラーリトライやフォールバック動作についても、Service Workerを活用した機能テストを行い、オフライン状態でも問い合わせフォーム入力が可能になることを確認しました。テストと品質保証の作業は、開発会社への発注時に「テスト自動化工数」「カバレッジ要件」「パフォーマンス目標」を具体的に要件定義書に落とし込み、見積もりレンジを明示して調整を行ったことで、追加費用を最小限に抑えられました。

ユーザー教育とトレーニング

VR内見システムの導入後、営業部門やカスタマーサポート向けにユーザートレーニングを実施しました。まず、営業スタッフ向けワークショップでは、実際にVRヘッドセットを装着しながら操作方法を体験してもらい、物件タグの追加方法や問い合わせフォームへの誘導フローをロールプレイで学習。次に、管理者向けトレーニングでは、CMSの物件登録画面や分析ダッシュボードの見方をハンズオン形式で説明し、更新作業から公開までの流れを一通り実践してもらいました。トレーニングマテリアルは動画とPDFマニュアルを用意し、イントラネット上にナレッジベースとして蓄積。また、オンボーディング期間中はSlackチャンネルを立ち上げ、操作上の疑問や不具合報告をリアルタイムで受け付ける体制を整備しました。これにより、導入初月の問い合わせ件数を従来比60%減らし、ユーザー側の習熟コストを大幅に削減できました。さらに、定期的に「操作Q&Aセッション」をオンラインで開催し、FAQを更新することで、トレーニング後のサポート費用を抑えられています。こうしたユーザー教育の取り組みは、システムの定着率向上と問い合わせ対応の効率化に直結し、発注時に含めた「運用・教育工数」を効果的に活用できました。

公開後の運用・保守とKPI測定

本番運用フェーズでは、まず運用開始直後のKPIを設定し、ダッシュボードでリアルタイムに可視化しました。主な指標は「VR内見利用率」「問い合わせ転換率」「平均セッション時間」「ページ表示速度」「エラー発生率」の五つです。これらはGoogle Analyticsと社内BIツールをAPI連携し、毎朝メールで営業部門へ自動レポートを配信。さらに、Datadogを使ってWebサーバーとLambda@Edgeのレスポンス統計をモニタリングし、しきい値を超えた際にはSlackでアラートを飛ばす設定を行いました。運用チームと開発会社は週次ミーティングを開催し、KPIのトレンドをもとに優先度の高い改善要望をバックログに登録。たとえば、内見セッション時間が短い物件には追加の360度パノラマ画像を手配したり、問い合わせ途中で離脱率が高いフォームはステップを減らす改修を優先しました。こうしたPDCAサイクルを高速に回すことで、運用・保守に要する費用を初年度の「年間保守予算100万円」内におさえ、ROIを最大化しています。

トラブルシューティング事例

運用初期には、特定のブラウザ環境下で360度ビューのドラッグ操作がカクつく問題が発生しました。調査の結果、Three.jsのレンダラー設定が原因で、Canvasのピクセル比率が端末解像度を超えていたためでした。解決策として、レンダラー設定を動的に切り替え、モバイルでは低解像度モードを自動適用。また、パフォーマンス解析はChrome DevToolsのPerformanceタブを活用し、レイテンシ改善に要した工数は約8工数、追加費用は12万円程度に収まりました。さらに、問い合わせフォームの送信ボタンが同時多発アクセス時にタイムアウトしやすい課題があったため、エンドポイントをLambdaからAWS AppSyncのGraphQL APIに切り替え、バッチ書き込み機能で負荷を均すアーキテクチャに改修。これにより、タイムアウト率は2%→0.1%に改善し、サポートコストの増加を未然に防ぎました。これらのトラブル対応時にも、フェーズ分割発注で確保した予備予算を活用し、追加費用を抑制しています。

他社事例との比較と差別化ポイント

同業の不動産企業X社は、VR内見を採用しているものの、専用アプリをダウンロードさせる方式をとっていました。その場合、アプリ開発・維持コストが高額になり、相場で年間800万~1000万円の予算が必要とされます。一方、R社のWebシステムはブラウザ上で完結するPWAとして実装しているため、初期開発費用600万円、年間運用100万円という低コストを実現。また、Three.jsなどのオープンソースを活用することで、ライセンス費用0円という差別化ポイントを持ちました。加えて、R社は問い合わせから成約までのリードタイム短縮を狙ったCMS連携やダッシュボード分析を標準機能化し、競合他社にはない「成果を見える化するシステム」を提供しています。こうしたユースケース比較で、開発会社選びの際には「PWA対応」「ライセンスコスト」「成果指標の可視化」といった差別化要件をRFPに明示すると、より競争力の高い提案を得られます。

成功要因と学び

本プロジェクトの成功要因は複数ありますが、中でも以下の三点が特に大きかったと振り返っています。

  1. フェーズ分割発注:PoC→本番→運用の3段階に分け、リスクを限定しつつ、予算(費用)調整を段階的に実施したこと。

  2. KPIドリブンな改善サイクル:導入後すぐにKPIを定義&可視化し、ユーザー行動をもとにした改修を速やかに繰り返したこと。

  3. 競合比較と差別化要件の明示:RFP段階で同業他社の相場感や導入方式を調査し、自社に最適な技術選定と予算枠内発注を実現したこと。
    これらの教訓は、次のプロジェクトにおけるシステム開発会社の選び方や予算策定、発注戦略にそのまま活用できます。

今後の展望:AR連携とAI内見機能

R社では次フェーズとして、AR(拡張現実)を活用した家具配置シミュレーションや、AI画像解析による「物件の劣化度判定機能」を計画中です。AI機能の開発は外部APIとオンプレモデルのハイブリッド構成を想定し、工数は80工数(相場120万~160万円)、AR機能は50工数(相場75万~100万円)を試算しています。これらを追加発注する際も、今回のフェーズ分割およびKPIドリブンの手法を踏襲し、予算内でリスクを管理しながら進める予定です。更に、海外市場向けに多言語対応やVRライブ内見を組み込むことで、グローバル展開の可能性も広がります。こうした拡張計画では、開発会社選びや発注時の単価設定、費用相場の見極めが一層重要となります。

まとめ

本ユースケースでは、VR内見システムをWeb化し、PWA+Three.js×クラウドインフラで成約率10%アップとコスト削減を実現したR社の事例を紹介しました。開発会社の選び方では「VR+不動産システム実績」「フェーズ分割の提案力」を重視し、発注時には相見積もりで600万円の予算枠内に収めています。要件定義からトラブル対応、KPI測定、成功要因まで、実務者視点の教訓を詰め込んだ開発ノートとして、読者の皆さまが自社プロジェクトを企画・発注する際の参考になれば幸いです。

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