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技術解説・フレームワーク紹介

Edgeコンピューティング時代のサーバレスフレームワーク比較:Cloudflare Workers vs AWS Lambda@Edge

Edgeコンピューティングがもたらす開発変革

従来のクラウド中心のアーキテクチャでは、ユーザーとサーバー間のレイテンシが課題になりやすく、特に動画配信やリアルタイムAPI、IoTデバイス向けのユースケースでは応答性がサービス品質に直結します。Edgeコンピューティングは、ネットワークの末端(エッジ)に処理を分散させることで、以下のようなメリットを提供します。

  • 低レイテンシ:リクエストを最寄りのエッジノードで処理し、応答時間を短縮

  • トラフィック分散:集中するデータセンターへの負荷を軽減し、スケールの境界を再定義

  • セキュリティ向上:分散化によりDDoS攻撃や不正アクセスからの防御力を強化

  • コスト最適化:データ転送量やインフラ利用量を制御し、無駄な予算消費を抑制

これらの特性は、特にユーザー体験を重視するプロダクト開発会社や、予算が厳しいスタートアップにとって強力な武器になります。では、代表的なEdge向けサーバレスフレームワーク2つを見ていきましょう。

Cloudflare Workersの概要とメリット

Cloudflare Workersは、Cloudflareが提供するエッジネットワーク上でJavaScript(またはRust/C via WASM)コードを実行できるサービスです。グローバルに広がる200以上のデータセンターで稼働し、以下のポイントで高い評価を得ています。

  1. 即時デプロイ

    • GitHub連携やWrangler CLIを使い、数秒で最新コードを全世界にロールアウト

  2. シンプルな課金モデル

    • リクエスト単価×実行時間で課金され、予算見通しが立てやすい

  3. 豊富なエコシステム

    • KVストレージ、Durable Objects、R2(S3互換オブジェクトストレージ)など、状態管理機能も充実

  4. 高い並列処理性能

    • Worker単位でアイソレーションされ、他ユーザーの影響を受けにくい

導入事例として、コンテンツ配信ネットワーク(CDN)レイヤーで認証やA/Bテスト、画像リサイズなどをエッジで完結させ、開発会社と協業しつつ高速UXを実現した企業もあります。Edgeコンピューティングに初めて触れる場合、APIやルーティングレイヤーをCloudflare Workersに置き換えることで、インフラの相場感を抑えつつPoCから本番移行までスピード感を持って進められるでしょう。

AWS Lambda@Edgeの機能とユースケース

一方、AWS Lambda@EdgeはAmazon CloudFrontのエッジロケーションでLambda関数を実行できる機能です。既存のAWSインフラと親和性が高く、以下のような特徴があります。

  • CloudFront連携

    • ディストリビューション設定にLambda関数を紐付け、オリジンリクエスト/レスポンスのタイミングで処理が可能

  • Node.js & Python対応

    • AWS標準のランタイムをそのまま利用でき、社内の開発リソースが無駄にならない

  • IAM/セキュリティ設定

    • AWS IAMと統合し、細かな権限管理やログ集約が容易

  • 自動スケール

    • CloudFrontのキャッシュグローバル規模でスケールし、トラフィック急増時も安定稼働

特に既にAWS上でシステムを運用している場合、Lambda@Edgeを使うことで「発注から運用開始まで」のリードタイムを短縮でき、予算や開発会社選びの際のコスト見積もりも一貫性が担保されます。

両者のコスト構造比較と予算策定

Cloudflare WorkersとLambda@Edgeは、いずれも従量課金モデルですが、細かい行数やネットワーク利用量に違いがあります。予算策定の際は以下をチェックリストとして活用してください。

  • リクエスト数の予測:ピーク時/基礎トラフィックを見積もり、各サービスの単価と比較

  • 実行時間の分析:Cold Start頻度や関数のレスポンスタイムを計測し、秒単位の課金に与える影響を評価

  • データ転送量:エッジノード⇆オリジン間の転送コストが予算を左右

  • 状態管理要件:Durable ObjectsやDynamoDBとの組み合わせ費用を含める

これらを踏まえ、開発会社へのRFPでは「想定トラフィックと実行時間シナリオ」「転送量上限」「キャッシュTTL要件」を明示し、無駄な工数や追加予算の発生を防ぎましょう。

セキュリティとガバナンスの考慮点

両プラットフォームともに高いセキュリティ基盤を誇りますが、運用フェーズでのガバナンスには微妙な差があります。

  • Cloudflare Workers

    • Zero-trust ネットワークポリシーとの連携が容易

    • KV や Durable Objects に対するアクセスポリシーはサービス単位で管理

    • 自前のWAFルールやBot管理をCloudflare Dashboardで一元運用できる

  • AWS Lambda@Edge

    • IAMロール/ポリシーによる細かな権限分離が可能

    • CloudTrail でエッジロケーションの実行ログも収集・監査

    • AWS Shield や AWS WAF と統合し、攻撃パターンに応じた自動ブロックが可能

どちらを選ぶかは自社のセキュリティコンプライアンス要件と、運用体制に依存します。特に金融や医療系システムのように厳格なログ保存やアクセス制御が求められる場合は、Lambda@Edge+CloudTrail の組み合わせが安心感を高めるでしょう。

開発体験とエコシステムの成熟度比較

実際の開発生産性に直結するのが、SDKやCLI、ローカルテスト環境の充実度です。

  • Cloudflare Workers

    • Wrangler CLI:ローカルでのデバッグ、モジュールバンドル、自動デプロイがシンプル

    • テンプレートが豊富で、既存のJavaScriptフレームワーク(Next.js、SvelteKit)と統合しやすい

    • Docs.dev:エッジ専用APIのサンプルが豊富で学習コストが低い

  • AWS Lambda@Edge

    • SAM CLI:ローカルシミュレータはやや複雑だが、既存のAWSサービスと同じツールチェーンが活用可能

    • CloudFormation/CDK:インフラをコードで管理しやすいが、エッジ固有の設定はやや冗長

    • Lambda Layers:共通モジュールのパッケージ化が容易でチーム間の再利用が進めやすい

チームのスキルセットがJavaScript/TypeScript中心であればWorkers、AWS環境に慣れたエンジニアが多ければLambda@Edgeのほうが開発効率を高められるでしょう。

パフォーマンスチューニングとベストプラクティス

エッジ処理のパフォーマンスを最大化するためのポイントを整理します。

  1. キャッシュの有効活用

    • Cloudflare:Cache APIで動的キャッシュをエッジ側に配置

    • CloudFront:Cache-Controlヘッダーを細かく設定

  2. バンドルサイズの最適化

    • 必要なモジュールだけをインポートし、treeshakingを徹底

    • WASM利用時は初期ロードサイズに注意

  3. Cold Start の軽減

    • Workers:関数呼び出しはほぼInstant Start

    • Lambda@Edge:バージョン管理によるWarm Upプラグラムを定期実行

  4. ステートフル処理の排除

    • Durable Objectsや外部データベースはあくまで補助

    • エッジ処理は可能な限りステートレスで実装

これらのベストプラクティスを踏まえれば、サーバレスの相場感で言えば「リクエスト単価+データ転送量」で、従来のサーバー構築コストに比べて70%以上のコスト削減が見込めるケースもあります。

具体的なユースケース:A社の導入事例

ここでは、架空のECベンチャー「A社」がCloudflare WorkersとLambda@Edgeをどのように使い分けたかをご紹介します。

  1. 背景と課題

    • A社はグローバル展開中のECプラットフォームを運営。

    • 商品検索APIのレスポンスが遅く、特に欧米地域のUX低下が顕著。

  2. 検討フェーズ

    • PoCでCloudflare Workersを採用し、検索クエリの一部をエッジでキャッシュ。

    • Lambda@Edgeでは、A/Bテスト用のクッキー制御や地域別プロモーションの動的挿入を実装。

  3. 導入結果

    • 平均レスポンスタイム:300ms→50msに短縮

    • 開発会社への追加発注は最小限に留めつつ、わずか2週間で本番リリース

    • 予算:PoC込みで月間約20万円の運用コスト増。新規顧客獲得による売上増でROIは1.5倍

  4. 学びとポイント

    • 早期から運用コストをシミュレーションし、予算管理を徹底

    • キャッシュヒット率を監視し、TTLやパージ戦略を適宜チューニング

    • 開発会社には「エッジ化対象」「非エッジ処理」を明確化した発注仕様書を用意

このように、大規模なシステム改修ではなく、エッジへの部分的な機能移行で高いビジネス効果を短期間に実現できる点が大きな魅力です。

まとめ:フレームワーク選定のチェックリスト

最後に、あなたのプロジェクトに最適なフレームワークを選ぶための簡易チェックリストを示します。

  1. 既存インフラとの親和性

  2. 開発チームのスキルセット

  3. 予算と費用モデルの整合性

  4. セキュリティ/ガバナンス要件

  5. パフォーマンス要件(レイテンシ、スループット)

これらをもとに、社内エンジニアや外部の開発会社と要件をすり合わせ、無駄な発注工数を抑えながら最適なシステム構成を描いてください。

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