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開発ユースケース紹介

リアルタイム多言語オンライン会議支援プラットフォーム

プロジェクト背景と課題

グローバル化が進む中、企業のオンライン会議は日本語、英語、中国語など多言語でのコミュニケーションが常態化しています。しかし、通訳コストや会議遅延、字幕追従性の問題から、会議の生産性が低下しがちです。本ユースケースでは、WebRTCベースのビデオ会議にリアルタイム音声認識(STT: Speech-To-Text)と機械翻訳(MT: Machine Translation)、自動字幕生成を組み合わせた多言語会議支援プラットフォームを構築し、海外拠点との情報共有を円滑化します。システム開発会社やWebシステム開発ベンダーに要件定義・見積もり依頼を行う際に必要となるシステム設計、プロジェクト管理、保守運用、およびコストシミュレーションのポイントをまとめます。

技術スタックと全体アーキテクチャ

本プラットフォームは大きく「フロントエンド会議クライアント」「音声処理バックエンド」「翻訳エンジン連携レイヤー」「リアルタイム配信基盤」「管理・分析コンソール」の五層で構成します。

  • 会議クライアント:React+TypeScriptでWebRTCビデオ通話機能を実装。Dynamic Port Negotiationを利用しNAT越えを安定化。字幕表示UIはCanvas APIで描画し、同時にDOMにも同期。

  • 音声処理バックエンド:Kubernetes上のPodとして稼働するDockerコンテナに、Google Cloud Speech-to-Text APIまたはOpenAI Whisperを組み込み、リアルタイム認識をgRPCストリーミングで提供。

  • 翻訳エンジン連携:認識文本を中継マイクロサービス(Go)で受信し、DeepL APIまたはAzure Translator Text APIへHTTP/2コール。翻訳結果をJSON形式で返し、WebSocket越しにフロントへプッシュ。

  • リアルタイム配信基盤:Redis StreamsまたはApache Kafkaをイベントバスに採用し、STT→MT→字幕配信をトピック駆動で処理。スケーラビリティを確保しつつ、複数会議チャネルを同時サポート。

  • 管理・分析コンソール:Vue.js+GraphQL Apollo Clientで開発。会議ログ、認識精度、翻訳遅延、ユーザー利用状況を可視化し、保守運用チームが活用可能なダッシュボードを提供。

これらをTerraform+Helm ChartsでIaC化し、ステージング/本番の同一構成を実現。GitHub ActionsによるCI/CDで、要件定義変更時の見積もり比較資料作成やシステム設計書への反映をスムーズに行います。

リアルタイム音声認識と翻訳エンジン連携

ユーザーが話した音声ストリームはまずWebRTCのMediaStreamTrackとして取得し、AudioWorkletを介してPCMデータを小分け(100ms単位)にBlob化。BlobはWebSocket経由でバックエンドのSTTサービスへ送信され、結果をgRPCストリーミングでフロントに返却します。この段階でのレイテンシは目標100ms以内を厳守し、認識精度は言語モデルのカスタム辞書登録で向上を図ります。
認識テキスト受信後、バックエンドマイクロサービスでRESTfulに翻訳エンジンへ POST。DeepL は業務用プランで同時リクエスト数100を保証、Azure Translator は自前のキャッシュサーバーを挟むことでコスト削減と遅延低減を両立。翻訳結果はJSON配列で戻され、WebSocketトピック「translate.{meetingId}」へ publish。フロントはトピックサブスクライブで即時画面更新します。

WebRTCベースの多言語会議UI設計

会議クライアントは単一ページアプリケーションとして設計し、主要コンポーネントは以下のとおりです。

  • VideoGrid:参加者映像を動的に並列表示、アクティブスピーカーをハイライト。

  • SubtitleOverlay:Canvas APIで字幕描画、既読位置をスクロールインジケータで可視化。

  • LanguageSelector:発話言語/表示言語を個別に選択可能、プルダウン操作で再翻訳機能を提供。

  • ChatPanel:リアルタイム翻訳テキストを履歴チャットとして残し、後から検索・コピー可能。

  • PerformanceMonitor:Web Vitals取得ライブラリを組み込み、回線状況やCPU負荷を右上に小窓表示。

これらをUXガイドラインに基づいてデザインし、Figmaでプロトタイプ→Reactコンポーネント化を繰り返すことで、ユーザー目線の操作性と開発工数削減を両立しました。

字幕・翻訳表示の最適化とUX

字幕表示は発話タイミングに合わせ、2つの戦略を組み合わせます。

  1. Time-Shift Buffering:認識→翻訳の合計レイテンシ(通常200ms程度)を想定し、字幕を0.3秒後に表示することで、映像と言語が同期しているような視覚効果を実現。

  2. Speech Segmentation:音声区間をSilence Detectionで分割し、1フレーズごとに字幕を重ねる。長文は自動改行し、読了予想時間を計算して表示位置をスクロール調整。
    また、表示フォントや背景マスク色はコントラスト比 WCAG 2.1 AA 準拠とし、アクセシビリティ対応。さらに、読み上げ機能(Speech Synthesis)を組み込むことで、聴覚障害者向けの多層支援を実現しました。

バックエンド設計とスケーラビリティ

音声認識・翻訳マイクロサービスは Kubernetes Horizontal Pod Autoscaler で、CPU 使用率70%超時に自動スケールアウト。Kafka Broker は Confluent Cloud マネージド版を利用し、トピックごとにパーティション数を動的変更可能。
GraphQL BFF は Apollo Federation 構成で、STT/MT/会議管理/ユーザー認可を各サブグラフに分割。これにより、機能追加時は部分的なスキーマ拡張だけで対応でき、Webシステム開発費用や見積もり依頼項目に「GraphQLフェデレーション構築」の工数を明示できます。

セキュリティ・プライバシー保護

企業機密会議を扱うため、音声データは送信前にAES-256-GCMでクライアント暗号化し、バックエンドで復号。TLS1.3のmTLSを採用し、相互認証を実装。STT・MT APIキーはVaultで管理し、サブリップルリングキー更新を自動化。
ユーザー認可はRBACで「発話権限」「翻訳権限」を分離し、会議管理コンソールでホストが権限付与をリアルタイムに制御可能。ログは構造化JSONでElasticsearchに送信し、Kibanaで操作履歴を監査。データ保持期間は法令に合わせて90日後自動消去を設定しています。

テスト戦略と品質保証

本プラットフォームでは、リアルタイム性と多言語対応という複合的な要件を満たすため、ユニットテスト、統合テスト、E2Eテストの三層構造を採用します。ユニットテストでは、音声認識バックエンドの gRPC ストリーミングハンドラ、翻訳マイクロサービスの HTTP/2 クライアント、フロントエンドの字幕表示ロジックそれぞれを Jest、JUnit、Mocha などで網羅的に検証。特に音声認識では疑似音声データを使ったテストベクトルを自作し、誤認識率や遅延を定量評価します。
統合テストフェーズでは、Docker Compose または Kubernetes のステージング環境に音声認識、翻訳、Kafka/Redis Streams、WebRTC プロキシ、フロントエンドを同時起動。Playwright や Cypress による E2E テストで「発話→字幕表示」「言語切替→翻訳反映」「通信断→オフラインキャッシュ再同期」など典型シナリオを自動化し、平均レイテンシとエラー率を SLA(字幕遅延200ms以内、誤翻訳率2%以下)に対して継続的にモニタリングします。

モニタリングとアラート設計

可観測性を強化するため、バックエンドマイクロサービスは OpenTelemetry を使って分散トレースを出力し、Jaeger で音声認識から字幕表示に至るリクエストパスを可視化。Kafka/Redis Streams は Prometheus Exporter 経由で Broker 状態や Consumer Lag を収集し、Grafana ダッシュボードでレイテンシとスループットをリアルタイムに可視化します。
フロントエンドでは、Sentry を組み込み Vue.js と Three.js の例外ログ、WebRTC 接続状況、AudioWorklet のエラーを収集。エラー発生時には Slack 通知と PagerDuty 呼び出しを Alertmanager で設定し、SRE チームが 10 分以内に対応できる体制を構築します。

運用・保守体制構築

運用フェーズでは、DevOps と SRE を兼務するチームを編成し、24×7 のオンコールローテーションを運用。Confluence に Runbook を整備し、「STT Pod 強制再起動」「Kafka ACL 再設定」「フロントエンドキャッシュクリア」「翻訳 API キーローテーション」など主要障害シナリオごとに手順を具体化。四半期ごとにゲームデイ演習を実施し、平均 MTTR(平均復旧時間)を 60 分から 30 分に短縮しました。
加えて、ユーザー向けに FAQ とトラブルシューティングガイドを Web で公開し、現場サポートの初動レスポンスを 30 分以内、解決完了を 4 時間以内とする SLAs を設定。JIRA と Slack を連携し、インシデントチケット自動生成から通知までを自動化しています。

コストシミュレーションと予算管理

本プラットフォーム初期構築費は、要件定義300万円、設計400万円、実装800万円、テスト300万円、運用支援200万円を想定し、合計約2,000万円と試算。
ランニングコストは、Speech-to-Text/Translation API 利用料(月額50万〜80万円)、Kafka または Redis Streams クラウド利用料(月額20万〜40万円)、Kubernetes クラスタ運用(15万〜30万円/月)、モニタリングツール(Grafana Cloud, Sentry)(10万〜15万円/月)を含め、年間約1,000万〜1,500万円と見積もっています。AWS Budgets や GCP Billing でタグ別コストを可視化し、月次レポートを経営層に共有、予算超過兆候は Slack 通知で即時キャッチしています。

システム 開発会社 選び方 予算 費用 相場 発注

多言語オンライン会議支援プラットフォームの受託先選定では、以下の観点で複数社に同一フォーマットの要件定義書と WBS を提供し、見積もり比較を実施しましょう。

  1. WebRTC ビデオ会議実装実績:NAT 越え・動的ポート交渉のノウハウ

  2. リアルタイム STT/MT 連携:gRPC ストリーミングと HTTP/2 クライアントの開発経験

  3. イベントバス構築:Kafka または Redis Streams による高可用スケール基盤構築実績

  4. フロントエンド高度化:React×Canvas API/Three.js による字幕描画ノウハウ

  5. CI/CD+IaC:GitHub Actions+Terraform+Helm Charts の自動化環境整備経験

  6. 運用保守体制:オンコール/SRE チーム構成とゲームデイ演習実績
    工数ベースの相場感として、小規模(1,200万〜1,800万円)、中規模(2,000万〜3,000万円)、大規模(3,500万〜5,000万円)をベンチマークし、固定価格型と時間単価型の双方で条件提示を受け、コスト削減と費用対効果の最適化を図りましょう。

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