エッジコンピューティング向けフレームワーク比較:Cloudflare Workers vs Vercel Edge vs Fastly Compute

エッジコンピューティングとは何か
エッジコンピューティングは、従来のクラウド中心のアーキテクチャと異なり、利用者に近い「エッジ」側で処理を行う技術です。ユーザーからのリクエストをインターネットの末端で受け取り、応答を返すまでの遅延を最小化できるため、リアルタイム性が求められるWebアプリやAPIに適しています。通信距離が短縮されることで、レスポンス速度の向上とネットワーク帯域の削減が期待でき、動画ストリーミングやIoTデバイス管理、AR/VRなど多種多様なシステム開発のユースケースにマッチします。また、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)を基盤とするため、インフラ運用の負担を軽減しつつ、世界中のエンドユーザーに均一なパフォーマンスを提供可能です。一方で、複雑なビジネスロジックや大規模なデータベース操作は苦手な場合があり、アーキテクチャ設計時には標準的なサーバーサイドやマイクロサービスと組み合わせることが重要です。予算感としては、小規模なエッジ機能のみであれば月額数万円から、グローバル展開する大規模システムでは数十万~百万円規模になる場合が多く、開発会社選びの際にも費用相場を確認する必要があります。
主なエッジフレームワークの概要
現在、代表的なエッジコンピューティングプラットフォームとしては以下の3つが挙げられます。
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Cloudflare Workers:CloudflareのCDNネットワーク上でJavaScriptまたはRustを実行できるサーバーレス環境。グローバルで広大なエッジロケーションを持ち、無料枠も用意されています。
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Vercel Edge Functions:Vercelのホスティング環境でNext.jsアプリとシームレスに統合できるサーバーレス機能。静的サイト生成(SSG)やISR(Incremental Static Regeneration)とも相性が良く、ReactベースのUIフレームワーク利用時に特に効果を発揮します。
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Fastly Compute@Edge:FastlyのエッジネットワークでWebAssembly(Wasm)モジュールを動かす次世代エッジプラットフォーム。C、Rustなど複数言語をサポートし、高速性と柔軟性に優れます。
これらのツールは、それぞれ異なる開発体験とコスト構造を提供します。たとえば、Cloudflare Workersはリクエスト数ベースの従量課金で、月間10万リクエスト程度まで無料のため、予算を抑えたい小規模プロジェクトに最適です。Vercelはチーム規模やビルド数によってサブスクリプション費用が変動し、相場として月額20~50万円程度のプランが一般的。Fastlyはよりエンタープライズ向けの価格設定で、年間契約が前提となり、予算計画の策定が重要になります。実際にどの開発会社に発注するかを検討する際は、これらコスト構造とサポート体制、運用負荷を比較し、自社の要件と照らし合わせることがポイントです。
Cloudflare Workersの特徴と導入メリット
Cloudflare Workersは、Cloudflareの世界200以上の都市にまたがるエッジロケーションでJavaScript/TypeScriptコードを実行するプラットフォームです。以下に主なメリットをまとめます。
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グローバル展開のしやすさ
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世界中のエッジでコードが動作し、地域ごとのパフォーマンス均一化を実現
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従量課金モデル
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10万リクエストまでは無料、以降も0.50ドル/100万リクエストという低コスト
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KVストレージ連携
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Workers KV
を使ったキー・バリューストアで、セッション管理やキャッシュデータをエッジに保持
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豊富な拡張エコシステム
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Durable Objects、R2(オブジェクトストレージ)、画像処理サービスなど、関連機能を追加発注可能
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導入の際は、システム要件として①レスポンスタイム1秒未満②ミドルウェアレベルの認証処理③簡易データキャッシュという要件を定義し、Cloudflare Workersが標準でカバーする範囲をRFPに明示すると、発注時の見積もり精度が向上します。また、開発会社選びのポイントとして、TypeScript開発経験やWorkers KV利用経験があるパートナーを選定すると、運用後のトラブル発生リスクを軽減できます。
Vercel Edge Functionsの強みと注意点
VercelはNext.jsの開発元として知られ、Edge FunctionsはNext.jsアプリに組み込みやすいサーバーレス環境です。特徴は以下のとおりです。
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Next.jsとの統合
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getEdgeSideProps
やMiddleware APIを使い、既存のReactコンポーネントにエッジ処理を注入可能
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プレビュー環境の自動生成
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プルリクエストごとにプレビューURLが自動作成され、レビュー工数を大幅に削減
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SSG/ISR対応
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静的生成を活かしつつ、エッジで即時キャッシュクリアや再生成が可能
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チームプランと課金体系
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月額20万円~のチームプランで無制限デプロイ。必要に応じて、リクエスト数とバンド幅で追加費用
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ただし注意点として、エッジ関数のタイムアウトが50ms~500ms程度に制限される場合があり、重い処理や外部API呼び出しが多いシステムには不向きです。また、標準プランだとログ保持期間が短いため、別途ログストレージ連携を発注しておく必要があります。予算策定の際には、サポートプランやバンド幅オーバー時の追加課金を見込んだ試算を行い、費用相場を把握しておくことが成功の鍵です。
Fastly Compute@Edgeの特徴とユースケース
Fastly Compute@Edgeは、WebAssembly(Wasm)モジュールをエッジで動かせるプラットフォームです。主な特徴と利点は以下の通りです。
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高性能なWasm実行環境
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C/C++、Rust、Goなど多言語コンパイルに対応し、パフォーマンス重視の処理もエッジで実行可能
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細かなルーティング制御
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VCL(Varnish Configuration Language)を拡張した設定で、リクエストごとに細やかなルール分岐が可能
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セキュアなサンドボックス環境
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各モジュールは独立したサンドボックス内で実行され、他のエッジ処理と干渉しない
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エンタープライズ向けサポート
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大規模トラフィックの安定配信、SLA 100 Tbps以上のネットワーク帯域、24/7サポートを提供
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ユースケースとしては、以下のような場面で特に効果を発揮します。
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動画/画像の動的最適化
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リクエストに応じて画像のリサイズやフォーマット変換をWasmで高速処理
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認証・認可処理の分散化
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JWTトークンの検証やAPIキーチェックをエッジで実施し、オリジンサーバー負荷を削減
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カスタムヘッダー加工・リライト
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要件にあわせたHTTPヘッダー調整やパスリライティングを低レイテンシで行う
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Fastlyは年間契約が前提のため、予算策定時にはトラフィック量に応じた帯域使用料とComputeリクエスト数を見積もり、費用相場として月額数十万~数百万円程度を見込む必要があります。特に、高頻度リクエストや大容量コンテンツを扱う場合はコストが急増しやすいので、発注前にPoCで試算を行うことが重要です。
各プラットフォーム比較まとめ
ここまで紹介してきた3つのエッジフレームワークを、主な評価軸で整理します。
指標 | Cloudflare Workers | Vercel Edge Functions | Fastly Compute@Edge |
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実行言語 | JS/TS, Rust | JS/TS | Wasm(C, Rust, Go, etc.) |
グローバルPoP数 | 約275カ所 | 約50カ所 | 約80カ所 |
無料枠 | 10万リクエスト/月 | プレビューは制限なし | なし |
課金モデル | 従量課金(リクエスト数) | サブスクリプション+従量課金 | サブスクリプション+従量課金 |
タイムアウト | 最大30秒 | 最大500ms | 最大50ms~1s |
拡張性 | Durable Objects, R2, KV | Next.js統合 | VCL + Wasm |
運用工数 | 低め | 中程度 | 高め |
推奨ユースケース | 小中規模API、軽量ミドルウェア | Next.jsサイト、SSR/ISR | パフォーマンス重視処理 |
この比較からわかるように、システム要件や予算、求める開発体験に応じて最適なフレームワークを選ぶことが重要です。たとえば、開発会社選びでは、Next.jsベースのUIを重視するならVercelパートナー、Wasmベースの高性能処理が必要ならFastly経験者を選定するとよいでしょう。
技術選択のポイント
エッジフレームワーク選定時に押さえるべき技術的要素は以下の通りです。
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レイテンシ要件
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ミリ秒単位が求められるAPIならFastly、数十msで良ければCloudflare
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開発生産性
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JavaScript/TypeScriptで統一したい場合はWorkersやVercel、Wasmに慣れている場合はFastly
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拡張性と連携
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Durable Objectsや外部ストレージ連携が必要ならWorkers、Next.jsと連携ならVercel
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コスト管理
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予測可能な定額課金を使いたいならVercelチームプラン、従量で柔軟に使いたいならWorkers
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運用体制
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ベンダーサポートや開発会社のスキルセットを確認し、SLAやオンコール体制を整備する
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これらポイントをRFPや要件定義書に明記し、複数ベンダーからの相見積もりを取得すると、後工程でのミスマッチを防げます。特に費用相場の把握と発注範囲の切り分けはプロジェクト成功の要です。
今後のトレンドと展望
エッジコンピューティングはまだ発展段階にあり、今後以下のトレンドが加速すると予測されます。
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エッジAI推論
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モデルをWasm化し、エッジでリアルタイム推論(例:顔認証、異常検知)
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Statefulエッジアプリ
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Durable Objectsの進化で、セッション状態をエッジで管理するアプリが増加
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分散セキュリティ
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ゼロトラスト概念をエッジに拡張し、APIゲートウェイ機能をエッジで実装
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標準化の進展
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WASI(WebAssembly System Interface)対応強化で、より多言語かつ幅広い機能のWasmが利用可能に
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これら動向を踏まえ、開発会社選びや予算策定の段階で、中長期的なロードマップを描くことが成功の鍵です。